~70 タケル襲来3 三柱 vs 親衛隊No.1、2、3~
「ハァァ、怖かったのう。
珍しく怒っておったの、タケルは」
「主殿は自分のことより
他人の事の方が怒りますからねぇ」
「主はオモシロ可笑しいのが一番」
氷の女神、絶対零度の司神、無慈悲の氷神など
呼び名は色々だが、
そんなスカージが珍しく怒っていたタケルに
珍しく焦っていた。
炎神と雷神の二柱も其々感想を言い合っている。
そんな余裕を持って話している3人の態度に
怒りが沸点に達したスカルペルが動いた。
「ちょっとは強そうだけど
所詮アンデッドマンの下僕だろ!!――
ーー糸斬焼灼!!」
広範囲に網状の炎糸を撒き絡め取りそのまま切り刻む。
なかなかに残酷であり、
また先程の「糸突焼灼」同様、
魔力操作の難易度が高い
スカルペル得意の魔法であるのだが、
三者三様でスカルペルの魔法を掻き消す。
「フン、礼儀のなっていない奴じゃ。
妾が躾直してやろうかの、面倒だがの」
「ホ、それではワタクシは
そちらのお嬢様のお相手を致しましょう」
「だと思った。じゃ、私はそこの」
アッサリと得意の魔法を掻き消されたスカルペルは
「僕を躾るだって!!!! 冗談でもコロス!!!ーー
ーー糸突焼灼!!」
ーー糸斬焼灼!!」
ーー糸波焼灼!!」
既に冷静さを失っており魔法を乱発する。
味方であるエグゾネスレとサージェリーも
巻き込む勢いである。
「ムゥッ、敵の戦力も分からんと言うのに」
「何してんのよ!! 危ないでしょ!!」
スカルペルの魔法効果範囲から逃れるため、
二人が距離を取るのと同時に
ユウコ、ベレヌスが動いた。
「オジサン、ちょっと気絶して」
「舐めるなよ!!!!」
雷神ユウコとヴルカヌス親衛隊VVVNo.1が激突する。
雷神ユウコ vs 焦熱のエグゾネスレ
大剣を大きく振り被り斬って払うと、
十字に高温の炎の波がユウコに向かって飛んでいく。
彼の持つ大剣は魔剣であり炎剣「アトス」と言って、
振るうだけで中程度の炎の魔法を発生させることが
出来る優れモノである。
その攻撃を皮切りに、
更に高難易度魔法とスキルで隙を作り
自身の持つ最大の奥義で葬ってやろうと考えている
エグゾネスレ。
「大剣技 焦熱滅斬!!」
向かってきた十字の炎を虫でも払うかのように
手を一振りさせて掻き消すユウコ。
が、続いて高温の炎を纏った斬撃が複数飛んでくる。
ほぼ同時に詠唱を済ませた得意の炎系大魔法を放つ
エグゾネスレ。
「焦熱沼陣!!」
高温の炎の斬撃と
頭上と足元から溶岩に似た固体であり液体でもある
超高温の物質がユウコを捕らえようと競り上がり
覆い被さって来る。
一見逃げ場は無いように見えるが
ユウコは言わば雷そのものである。
ユウコがその速さを凌駕されたのは
ここ数百年では一度だけ。
戦いは速さだけではないが重要であるのもまた事実。
そのユウコを以てすればどんな状況でも
逃げ場が無いということは無い。
(……遅すぎて欠伸が100回くらい出る?
もう寝る? 当たる? 回避する?
? なんか準備してるし当たる)
ドゴボォォオオーーー
ドドォォォォーーーー
ジュルゾルジュルジュルーーーー
ジュシュゥゥゥウウウウーーーー
ユウコがそんなことを考えているとは露知らず
高笑いと共に自身の持つ最大の奥義をユウコに
叩き込もうと構えに入るエグゾネスレ。
「カッカッカッ!!
なんだビビッて損をしたぞ!!
もうシんだのではないか??
まぁ念のためだ、シね!!――
――炎系大剣技 奥義 焦熱刺突等活地獄斬!!」
シャッッッッ!!!!
ジャジュウウウウウーーーー
ゴォォオオオオオオーーーー
炎の魔法と大剣技を組み合わせた
エグゾネスレの最大の攻撃力を誇る技である。
受ければ切り刻まれ同時に超高温の熱により
蒸発してしまう。
ユウコはと言うと、
(なんか当たった。
……ちょっと熱い。
魔力体だから斬撃と魔法を組み合わせて使うのは正解。
少し削られた?
どうしよう? 弱すぎてヒマ。
とりあえず気絶させること考える)
たくさん考え事をしていた。
真面に受けたユウコを見て口の端を歪め
さっきよりも更に大きな高笑いの声を上げる
エグゾネスレ。
「グァッハッハッハッハッハッ!!!!
全て真面に受けおったわ!!
フゥ、高位精霊クサイと思っておったが
杞憂じゃったか。
まぁこの魔法なら高位精霊でも只では済むまいて。
どれ」
周囲は煙が充満しており視界がすこぶる悪い。
念のためエグゾネスレは
先程までユウコが居た場所に魔力探知と気配察知を
使用する。
その瞬間ーー
ーー雷撃」
ドンッッッッ!!
ドォジュゥゴゴゴゴォォォォーーーー
「グワァァァァァァァアアアアアーーーー
ユウコの代名詞とも言える雷撃がエグゾネスレを襲う。
……黒焦げになったエグゾネスレは宙から落ちて行く。
「ダメ」
落ちて行くエグゾネスレを雷の檻で囲み捕縛する。
「……主殿。
暑苦しいし弱いし3人とも私一人で良い。
でもたまには外に出ないといけない。
身体に悪い。
ハッ!? 主殿の気遣い??……(ポッ)」
タケルのことも含め色々と思うところがあったユウコ。
そして、そもそもこれは戦闘と言えるのだろうか?
と考えていたのであった。
それでもとりあえず任務完了と周囲を見渡す。
最初にユウコの目に入ったのは
スカージとNo.3スカルペルとの戦いであった。
氷神スカージ vs 焼灼のスカルペル
「どうしたのかのお坊ちゃま?
いつになったら本気とやらになるのでちゅか?」
「うるさい!! 僕を子ども扱いするな!!!!ーー
ーー糸突焼灼!!」
ーー糸突焼灼!!」
ーー糸突焼灼!!」
飛んでくる数百本の炎糸を
ヒラヒラスルスルと舞うように避け続けるスカージは
スカルペルを揶揄って遊んでいる。
「ハァハァ、ハァ、クソッ!!
当たりさえすれば、当たりさえすれば
お前なんか消し炭にしてやれるのに」
ひとつ溜息を吐くスカージ。
「貴様は本当にお子ちゃまじゃの。
今まで自分より強い敵と戦ったことが
ないんじゃないのかの?
思い通りにならんとスグに癇癪を起こす。
自分でも思わないかの? 子供だとの」
「う、うるさーーーーい!!!!
当たりさえすれば……当たりさえ」
(あ~ウルサイ。
煩いのは自分ではないか。
前に主と見た〇物くんでも始まるのかと思ったのじゃ。
しかしこの幼子、自分より弱い者には強く
強い者には弱い典型だの、ハァ。
おっ、ユウコが終わったようじゃの。
さて、妾もそろそろ終わりにしようかの)
決着を付けるべく
打ちひしがれているスカルペルに声を掛けるスカージ。
「そんなに当たればというなら当てさせてやろう。
ホレ、ホレ、当ててみれば良い」
そう言ってスカルペルに向かって
自分の胸を指差すスカージ。
「……グ、ク、ク、ゼッッタイコロス!!!!
シねーーーー
ーー糸海焼灼!!!!」
超高温の炎糸で編まれた赤黒い炎が
スカージ含め広範囲を埋め尽くす。
「面倒臭いーー
ーー氷塊」
赤黒い炎が一瞬にして凍り砕けていく。
ついでにスカルペルは、
「……」
魔法を放ったままのポーズで氷像となっていた。
「おお、危ないの。
落とすと砕けるからの。
しかし当てろと言って
本当に当てさせるとでも思ったのかの。
戦闘中であるぞ。
幼子な上にバカでもあるのか、救えんの」
スカルペルの氷像を浮遊の魔法で浮かべながら
宙で寝そべるスカージ。
「さて、後はあのストーカーだの」
ストーカー認定されるベレヌスの戦いを
傍らまで来たユウコと
退屈そうに観戦するスカージであった。
炎神ベレヌス vs 炎熱のサージェリー
「キヤァァァァアアアアアアーーーーーー
イヤァァァァアアアアアアーーーーーー
ーー炎熱包幕」
ーー炎熱包幕」
ーー炎熱弾幕」
ーー炎熱弾幕」
ーー炎熱暗幕」
ーー炎熱暗幕」
「フム、お嬢さん。
なぜそんなにも逃げ腰なのですかな?」
泣き叫びながらも自身の持つ最高難易度の魔法を
連発しているサージェリー。
「も、も、もうキモいのよっ!!!!
これだけ、これだけの魔法なら、キャアアアア!!ーー
喋る合間に叫び声を上げながらも器用に宙を飛び回る
サージェリー。
ーーふ、普通そこいら中焼野原どころか
更地になってるはずなのに、イヤァァアア!!
ーーな、なんでこれだけ喰らって服も焦げないし、
キモイィィィィーーーー!!
ーーそもそもなんでそんなに近いのよっっ!!!!
このヘンタイィィィィーーーーッ!!!!」
サージェリーは美人である。
男子諸君も好みはあろうかと思うが
美人の範疇に入っても差し支えない程度の女性である。
目もパッチリと大きく鼻も高く鼻筋も通り、
アップにした項がまた艶っぽいが、
可愛らしい雰囲気もある顔との対比で
少女でもあり大人でもある女性、女子である。
そんな女性をベレヌスが見逃すはずもなく、
サージェリーを戦闘の相手に選んだのである。
またベレヌスは戦闘開始当初から付かず離れずではなく
離れずどころか、
もう抱き着いても可笑しくない程、
自身の顔をサージェリーの顔や
上半身果ては下半身にまで近付けて離れなかった。
その距離計ったように5㎜。
戦闘開始から今までずっとその状態である。
そもそもベレヌスは炎神とまで呼ばれる
炎の化身である。
焦熱か炎熱か焼灼か知らないが
戦闘前から結果は決まっていたのである。
ベレヌスを炎系統魔法で倒すならそれ以上の
超超超高温でないと話にならない。
それでもどうかと言うレベルであるのに
サージェリーが適う訳はない。
まぁそれを良いことに趣味全開で飛び回るベレヌスも
どうかと思うが、
ここには咎めるサクラも居ない訳で……
「も、もう、ダメ。シんじゃ……う。
魔力、魔力が……
魔力多い……の、に わた……し」
ガックリと項垂れて
地上へ落下しようとするのをお姫様抱っこで
受け止めるベレヌス。
「フゥ、少々興奮してしまいますな。
"もうダメ。シんじゃう"などとは、フッ」
変態が極まりつつ、いや既に極めているベレヌスも
内容は別としてタケルの言い付け通りサージェリーを
捕獲したのであった。




