~69 タケル襲来2 vs ヴルカヌス①~
「ッチ、お前か」
振り向きサクラを見て忌々しそうに舌打ちをする
アレクサンドル。
「早くしろ」
ディースが急かしてくるが
ゆっくりと怠そうに立ち上がり、
「なんだよ、予定の話すんじゃなかったのかよ」
ディースに問い掛けるアレクサンドル。
「事情が変わった。
外の様子が可笑しい。
念のためここを出る」
困惑するフリのサクラ。
「あの、わたし着替えとかーー
ーーそんなのは向こうへ行ったら
いくらでも揃えてやる」
(フ~ン、えらく慌てますね。
不測の事態に万が一があっては困るというのは
分かりますが……
やはり聖光神の指示が最優先ですか。
外はタケルと御三方。
ここへ来た理由は置いておいて負ける道理が無い。
となると、拘束すればここの情報は取れますか……
更に情報を得るにはやはり聖光国ですね。
ここは素直に付いて行きましょうか。
ちょっと不安ですけどねぇ。
キャッ、不安とか乙女みたい♡)
冷静に状況を分析するサクラ。
しかし割りと緊張感が無いのは
タケルが来ている安心感からか。
その思考を遮るようにサクラに毒吐くアレクサンドル。
「おい、今はコイツも居るし我慢してやるが、
向こうへ行ったらお前は絶対ブチコロス!!」
物騒な物言いが気にならないこともないが、
それよりも……
そこまでサクラが考えたところでディースが
話を止めさせる。
「おい、必要の無いことは控えろ。
それよりもう行くぞ」
そう言ってディースは部屋の奥へ向かい扉を開けて
二人を手招きするのであった。
王城ヴァスト 尖塔部
王城の尖塔部分に取り付いたタケル。
下を見ると衛兵達が何やら騒いでおり、
たまに魔法も飛んで来るがまだ組織だった動きは
出来ていないようだ。
「ワリいねぇ。
大将がなかなか出て来んから」
障壁を破ったので
目的のヴルカヌスが城の中に居るのを確認したタケルが
動き出そうとしたその時、
「お、やっとお出ましか」
タケルの目の前に現れたのは、
「……アンデッドマンか」
(もう「そうだ」って言ってもいいかな?
それよりさっきのは?
コイツもしかして……)
考えるタケルを他所に話し掛けるヴルカヌス。
「街を襲わんところを見ると
単に我が国に攻撃を仕掛けた訳では無さそうだな」
「だから言ってるじゃん。聞きたい事があるって」
「フン、ここでは被害が出る。付いて来い」
王都ブラント東側 海岸付近
王城上空から移動し更に王都を避けた
東の海岸近くまでやって来たタケルとヴルカヌス。
「ここら辺りで良いだろう」
ヴルカヌスは王城上空の3体が精霊で
力も相当であることは見抜いており、
組まれると厄介ということもあって
タケルと引き離したかった。
タケルは一般人に被害が出てもマズイと思っていたので
丁度お互いの目的が一致した形である。
王都ブラント 城下町
「あれは? タケルでは?」
上空を移動するタケルを見付け呟くエレーナ。
決勝戦が終わった後、
混雑する周囲を掻き分け
サクラにお祝いの声を掛けたエレーナは
宿に戻った後、帰り支度でもしようかと思っていた。
そんな折、城の方から大きな何かを叩く音、
その後の何かが割れる音に
通りに出て目を凝らして城を確認していたが
尖塔の辺りから飛び立った人影に目を留めたところだ。
通りも周辺の店舗も大騒ぎになっている。
「まさかの空を飛んでますわ……
それもですけど、あれはヴルカヌス王?
あの子一体何してるんですの!?」
好奇心とタケルを心配する気持ちも相まって
追い掛け始めたエレーナ。
タケル達はそこまで速度を上げていないので
上空を見ながらも付いて行けそうであった。
王都ブラント東側 海岸付近
「……何者だ貴様?
ただのアンデッドマンではないな?」
(「ただの」ってなんだよ?
挙げ句にアンデッドマンって名前でもないし。
「そうだ」って言ったら後の展開どうなるんだ?
それはサクラに考えてもらうとしてだなーー
ーーそんなのはどうでも良いよ。
お前マニスちゃんに何したんだ?」
ジロリとタケルを睨むヴルカヌス。
「シーマンは裏切ったか。
まぁ仕方あるまい。
もともと使い捨てで考えていた駒だ。
もう余命もあるまいし構わんかーー
もう魔方陣は解除したわい!!
腹立つけど、もちっと我慢だ。
ーーで、聞きたいことはそれだけか?」
如何にも大した事で無いような振る舞いから
逆に聞き返されたタケル。
「……まだまだあるけどな。
お前、人の命をなんだと思ってんだ」
溜息を吐きながら答えになっていない答えを
答えるヴルカヌス。
「王城で滅殺してやっても良かったのだが、
アンデッドマンとかいう大会での道化がどんな奴かと
思って来てみれば……
フゥ、とんだ時間の無駄であったか」
肩を竦めて見せるヴルカヌスの所作が
タケルの逆鱗に触れた。
それが開始の合図となる。
「お前はボコる!!」
「やってみろ」
先手はタケル。
「剣聖演義!!」「皆伝 獅子滅裂!!」
リュックから取り出したスコップを
目では捉え切れない速度で振り回すタケル。
数万の剣閃ならぬスコップ閃がヴルカヌスを捉える。
!?
「焦熱地獄」
黒い炎がタケルに襲い掛かるが
瞬時にヴルカヌスの背後に回ったタケルはこれを回避、
再度攻撃を仕掛ける。
「奥義 破邪剣聖」
空間を割るような豪撃、これもヴルカヌスを捉えるが
幻影のように掻き消えるヴルカヌスの身体……
一旦距離を取るタケル。
同じ場所に現れ始めるヴルカヌスが
ゆっくりと振り向く。
「ククク、
貴様大会ではどれだけ手を抜いておったのだ?
あの3体の精霊と言い強いではないか?
部下に欲しいぐらいだ」
ジッと探るように見ていたタケルが問い掛ける。
「アンデッドマンだからな。
それよりお前……精霊だな?」
アンデッドマンの意味は分からないし、
とうとう自分で認めてしまったが、
ヴルカヌスの正体を見極めたようだ。
それに対しヴルカヌスは、
「フ、そうだ。
そもそも剣なぞ、いやスコップか。
また器用に魔力を纏わせおって。
まぁどちらでも良いが、当てられたのも久しぶりだ。
まぁそもそも物理攻撃自体意味が無いからなーー
続けるヴルカヌス。
ーーあの3体の精霊を飼ってるなら分かるだろう?
どうする? 余には勝てんぞ」
(飼ってる、とかって……
アイツら聞いたらコイツ地獄にすら行けねぇぞ。
知~らね)
沈黙を迷いを取ったのかヴルカヌスはタケルに尋ねる。
「貴様はVVVより余程使えそうだ。
どうだ?
余の配下になって聖光神様と共に世界を浄化せんか?」
タケルの答えはーー
ーーボッッッッ!!!!
左拳でヴルカヌスの胸付近を打ち抜く。
また幻影のように散ったヴルカヌスが、
今度はタケルの頭上で元の人の姿を取る。
「フン、大した拳速だ。
余でもほぼ見えんわ。
だが、交渉は決裂だな……
シね!!!!ーー
ーー獄炎黒死漠」
海が一気に蒸発し始める。
黒い炎がタケル含め辺り一面を覆い尽くし、
岩や砂、木に纏わり付き黒く染めていく。
シュアアアアアアアーーーー
「ハァッハッハ!!
この炎は超高温もだが、
それよりも纏わり付いたら離れん地獄の炎よ!!
消し炭になってシぬだけだ。
ハァッハッハッハッ!!」
遅れること十数分。
少し遠いが黙視できる位置に到着したエレーナ。
「なんですの……この戦いは……」
少し遠いところで止まったのは、
戦闘が激しくここまで熱波が来るため
近付けなかったからだ。
タケルのことは自分よりも少し強い、
訳有りの同じ異世界人程度の認識であったエレーナ。
呆然とその戦いに見入ってしまう。
そこへヴルカヌスの放った「獄炎黒死漠」
辺り一面の黒い炎が
エレーナの居る場所にも侵食して来る。
タケルは黒い炎の範囲から既におらず、
「これ消すのどうしよう?」
と考えていたところ、目の端にエレーナを見付ける。
!?
エレーナの傍に転移するタケル。
(間に合え!!)
エレーナは向かって来る黒い炎に気が付いたが
その圧倒的な熱量と膨大な魔力量に、
恐怖と諦めから反射的に目を瞑って背中を向け
踞ってしまう。
ゴォォオオォオオオオーーーーー
地獄の業火が周辺を焼き尽くす、
と言うより溶かし尽くす。
黒い炎が周囲を包み込む中タケルとエレーナはーー




