~68 タケル襲来1~
「ほんじゃ行ってくる」
「サッサと行って帰って来い。
手ぐすね引いて待っておいてやるワイ」
「ハハ、ヴルカヌス等はお気の毒さまだね」
獣王国アリア 聖炎国ヴァッケン 国境
転移で国境前までやって来たタケル。
国境は転移阻害があるので飛び越える。
ーー何者だ!?
ーー追え!! 追え!!
ウワァーーー
ザワザワーーー
ひと騒ぎあったが関係なく進むタケル。
国境を越えてから王都ブラントまでを
ベックス達と来た道を飛んだり跳ねたりしつつ
逆走している間、
そういえばヴァッケン国内入ったら転移使えたな、
と思ったが今更なので、準備運動のついでに
これまでの情報を整理する。
ベックスさんとセンターさん、マニスちゃんは
セイラさんの計らいも有って魔国への入国許可が
下りたようだし、
ーーウン下りるわそりゃ、連絡先魔王だったもんーー
んで、追っ手のこともあるので
少し休んだらサッサと出発する。
魔国では魔王はじめイブリスさん達と会って
ヴァッケンや聖光国の情報を共有、住むとこなんかは
また考えるとして暫くはアドラ城に居るみたい。
まぁかなり綿密詳細に調べられるそうだけど、
それは仕方ないよね。
あとサクラが残って潜り込むのは説明しておいたけど
今から引っ掻き回しに行くからどうなんのかなぁ?
まぁサクラだし何とかするだろ。
それとエレーナさんのこともあるけど、
オレかサクラが連絡するか、いずれにしてもアリアには
帰るから後はセイラさんに任せることになったと。
マニスちゃんが変なことになってんのも
追々明らかになるだろうと思うんだけど。
さて、何人か追っ掛けて来てんな。
ま、関係ないけどね。
とりあえずセイラさんの言う通り一般市民にも
兵士にも、兵士は良いんだっけ?
まぁ被害は出してないぞ。
しっかしよくもまぁあんなヒドイこと出来るよな。
あっ、考えてたらまた腹立ってきた……
ま、サッサと済ませるかね。
ボッコボコにしちゃるかんな!!
でも捕まえなきゃなんないから
ヤリ過ぎないようにしないとな!!
そしてとうとう王都に到着するタケルであった。
王城ヴァスト上空
「ヴルカヌス~~!!ーー
一拍置いて続ける。
ーーちょっと顔貸せ~~!!」
ちなみに王城周辺は球状に分厚い障壁が張って
あったのは王都に居たときに確認しているタケル。
なので、
ドッッッゴゴォォォォーー
ゴッッゴゴゴゴーーーー
ゴオオオンーーーー
一応軽く3回ノックしたようだ。
王城ヴァスト 大広間付近廊
国境から王都含め
各都市へ侵入者有りと報せは届いている。
迎賓館でベックスとセンター、シーマンことマニスの
報告と共に侵入者の報せを受け取っているヴルカヌス。
しかしベックス達のことに比べると優先順位は落ち、
どうせ捕まるだろうと思っていたのだが……
「なに!! あの上空の者がそうなのか!?」
「ハッ!!
各都市を飛び越え走り抜けて来た模様で、
業腹ではありますが誰も追い付けずここまで……」
報告しているのは王都警備隊の副隊長、
センターの次席。
受けているのはヴルカヌス。
「何者だ? そんなバカは?
まさかセイラではなかろうな?」
やはり「バカ」で認識されているため
念のため確認されるセイラだが、
「いえ、男であります……ただ」
言い淀む副隊長を急かすヴルカヌス。
「構わん!! 何でも良いから言ってみよ!!」
躊躇しながらも恐る恐る伝える。
「その、アンデッドマンに似ていると……」
「ハ?」
一方サクラは、
(ちょちょ、ちょっと待って!?
タケルの声よね? 何してるの? バカなの?
パニックだわ? 元AIの私がパニックよ!?
漫才師の方が突然観客席に向かって「コロしますよ」
って言い出したときくらいパニックだわ。
あ~いつ見ても◯ラスマイ◯スさんの漫才はオモシロイ
ですねぇ……
って、チガウ!!!!)
珍しくパニックのサクラであるが避難誘導の最中に
ポツンと柱の影に立っているディースを見付ける。
(ホント気配も魔力も消し去ってますね。
何かのスキルでしょうか?
あっ、でも匂いはどうでしょう?
いやいやつい分析してしまいますね。
えっと、どうしたんでしょう?)
ディースもサクラを確認したようだ。
サクラの方へ近付いて来るディース。
「お前も来い」
「エ?」
「巻き込まれては困る」
サクラの手を取って歩き出すディース。
(「お前も」? って他にも誰か居るの?)
困惑するが抵抗して騒ぎになるのも困るので
手を引かれるまま付いていくサクラであった。
王城ヴァスト上空
少し時間を置いたタケルは上空から王城内の様子を
探っていたが障壁が分厚いため大まかな状況しか
掴めていない。
「まぁノックはしたし、避難する暇も取ったぞ。
念のため声も掛けたし。
あっ!! サクラに念話で連絡しとくか?
う~ん、
いや止めとこう面倒事の最中だと困るだろうしな」
面倒事を起こしているのは本人であったが、
お小言を言われそうなことも相まって連絡を止める。
まぁサクラだし大丈夫だろうと見切り発車するタケル。
「さて、やっぱり出て来んし、
そろそろやりますか、せーのーー
「糸突焼灼」
飛んでくる炎系統の上級魔法。
細い糸の様であるが魔力が凝縮されており
一本一本が岩や鉄くらいなら軽く貫きそうだ。
それが数百本。
続いて、
「炎熱包幕」
背中から波の様に見える触れただけで蒸発するであろう
赤黄色のカーテンが迫る。
ほぼ同時に、
「大剣技 焦熱滅斬」
左手下方より上方へ抜ける軌道で
幅5m程の深紅の剣閃が向かって来る。
(うわぁ、全部暑そう)
右手側へ避けるタケルであったが、
そこには多節剣を横に構える
No.3焼灼のスカルペルが待ち受ける。
「ぐるぐる巻きで焼き切って、エ?ーー
高速戦闘を得意とするタケルには
容易に攻撃は当たらない。
サクラとの模擬戦での一撃は記憶に新しいが
タケルにとって師匠以外で当てられたのは
ーー神様は除いてよ、あんなのムリだしーー
本当に久々であったため焦っていたのであった。
スカルペルの多節剣は手で巻き取って
バキバキに壊したタケル。
ちょっと熱かったので自分のせいなのに
イラっときて3人をジロリと睨む。
自信を持って放った攻撃を軽く躱され警戒する3人。
「ック、僕の百鱗剣が……」
「……」
「……」
そんな中、沈黙を破ったのはタケルであった。
背中のリュックの紐を解く。
3本の魔剣が姿を現し
途端に周囲に圧倒的な魔力を撒き散らす。
雷神剣 ユウコ
膝上丈のワンピースドレス。
黄色が太陽に映えて良く似合ってるな。
氷晶剣 スカージ
何の気分か知らんが今日はパンツスーツだな。
真っ白なのは変わらんけど。
黒炎剣 ベレヌス
相変わらず髭が渋いな。
モーニングは一緒か。洗ったのかな? ップ。
「お呼びで」
「なにタケル」
「御用で主殿」
それぞれに顕現する3柱の精霊神。
「こいつら拘束してくれ。
ちょうど3対3で楽だろ。
オレはちょっと下に行ってくる」
「「「御意」」」
珍しく素直に言うことを聞く3柱。
タケルが怒っているのを分かっているからである。
そこで魔剣から召喚された得体は知れないが
圧倒的な魔力とその神々しい雰囲気を見て取り
焦った声で3人から其々疑問の声が上がる。
「き、貴様、アンデッドマンではないのか!?」
「そうよ!! だ、誰よこいつら!?
魔力圧が可笑しいわよ!!」
「ア、アンデッドマンのくせに!!」
順にNo.1、2、3。
(アンデッドマンであると言えばアンデッドマンだけど。
定着したなぁ……
ぜんっぜん嬉しくないけどな!!)
思考が逸れそうになるが修正し
この場を任せヴルカヌスに向かうタケル。
「任せた」
フッと消えたタケルは王城の障壁に蹴り、拳、拳と
喰らわせる。
バキバキバッキィィィィンーーーー
ゴゴゴゴォォォンズズンーーーー
バキバキバキバキーーーー
ゴゴゴゴォォォンズズズンーーーー
バリバリィィィィンーーーー
ゴゴゴォォォォズズズズンーーーー
3重障壁を全て破り王城天辺に取り付くタケル。
王城ヴァスト 迎賓館の廊下
タケルが王城の障壁を破壊した丁度その頃。
ズッズズンーーーー
!?
(ユウコ様、スカージ様、ベレヌス様!!
勢揃いではないですか!?
ハァ、今は念話は……
この人が近過ぎますね、止めておきましょう)
立ち止まって天井の更に上を見透かすように
王城の方角を向き目を細めているディース。
「……なんだあれは?
上空の3体魔力量が可笑しい。
!?
まだ居るのか? 城の尖塔に取り付いたか」
城を攻撃している相手を確認し、
すぐに手を引かれてヴルカヌスとディースと話した
部屋に入る。
ガチャ
「おう遅かったなぁ、この音のせいか?」
ソファに後ろ向きに座って声だけしか分からないが、
この声をサクラは聞いたことがある。
「ここを出る。準備しろアレク」
大会でサクラに敗れた
異世界人のアレクサンドルであった。




