~65 怒ってますね、珍しく~
ダグザが帰り、
タケルとセイラはマニスと他の疑問点や
身の振り方について話し合おうと
しているところだ。
しかし奥で映像を見ていた二人の様子が可笑しい。
ジト目で見ている二人に気付いたセイラが
声を掛ける。
「なんじゃお主等? 見終わったのか?」
……
答えるのはセンター。
「……ああ、見終わったよ。何度も目を疑ったがなーー
一拍置いて続けるセンター。
ーーお前、これヤバ過ぎるだろ!!」
ベックスも感想を伝える。
「スゴ過ぎて殆ど何も見えませんでした……」
「俺もだよ!!」
それを聞いたセイラは大層なドヤ顔で答える。
「フッフッフッ良く分かったじゃろう。
ワシが超絶スゴイのが」
色々混ざった複雑な表情でそれに答えるセンター。
「……あぁ良く分かった。
けど、映ってんのタケルだよな?
これでアンタの凄さをどう分かれと?」
「ハァ?」と驚くセイラの傍らのタケルは
センターの方を見て
そしてセイラをジト目で見据える。
そんなことは関係ないセイラは、
「そうじゃ、こ奴とマザーの模擬戦は
とんでもなかったじゃろう??ーー
一拍溜めてセイラは続ける。
ーーさぁ良く思い返してみろ?
お主等と会ってからのワシとタケルを」
何の質問か分からないセンターとベックスは
とりあえず目を瞑ってセイラと会ってからのことを
思い返してみる。
……
「あぁ、思い返した……」
「どっちが強い?」
……
「お、お前かも……」
「……」
「……」
アホな遣り取りはあったが、この後
セイラはベックスとセンターに加えて
マニスにもこれまでのタケルとサクラの事情や
行動履歴などについて簡単ではあるが説明した。
また対聖光神に向けて竜の里、魔国に
ダグザのニダベリルを加えた3か国同盟が
結ばれていることを説明する。
「それに獣王国アリアにも先日話を付けてきたんで
4か国が同盟にある。
さっきと同じじゃ。
タケルとサクラの模擬戦で揺らいでおった後、
マザーとの模擬戦見せたら一発じゃったわい!!
ダッハッハッ!!」
「ゼヒライテ様、マザー? 何にしろ神話の竜だろ?
そりゃあれ見たら逆らう気無くなるわぁ。
聖光神もタダもんじゃねぇが、なぁ」
「ええ、もうね、人外ですから。
あっ、神様でしたね……
渡り合うタケル君がもう、ね」
その様子を見て満足げに頷くセイラが一言。
「ウム、なのでお主等裏切るなよ。
と一応釘を刺しておこうかの」
裏切るも何も今日明日には
お尋ね者になってしまう二人である。
大丈夫だろうと、そこは気にしていないタケルは
それよりも気になっていたことをセイラに
念のため聞いておく。
「それは大丈夫だと思うけど。
それより、あれ見せて良かったのセイラさん?
まぁ任せるけど」
満足げな顔のままタケルを見て答えるセイラ。
「味方になる者に戦力の把握をさせるのは当然じゃ。
まぁ釘を刺す意味もあるがの」
「まぁ良いけど」
上映会でも開いてるんじゃないかと気になって
何となく聞いてみたが、
その答えに一定の理解を示すタケルであった。
また映像も終わったので
5人での話し合いに戻るのだが
マニスの件については途中でダグザも来ており
只事では無いことは察している
ベックスとセンター。
ただマニス本人の意思を尊重したいため、
この後話し合いを続けて事情が知られても良いか、
念のため確認するタケルとセイラだが
今更であると答えたマニスであった。
ただ、と若干の不安感を漂わせて
話し始めるマニス。
「まぁ今更わたしがシんでたのは覆しようがないし
良いわよ。
それに私は助けてもらってるし
裏切るも何もないけど、
この身体のこともハッキリさせたいし、
お姉ちゃんのことも……」
それを聞いてタケルが言葉を継ぐ。
「セイラさん、
マニスちゃんのお姉さんのことは言ったと
思うんだけど、
それで聞きたかったことがあってーー
タケルの説明は記憶の混濁や消去のためマニスが
エレーナの顔をハッキリ思い出せなくなっている
かもしれないこととは別に、
エレーナも姿が変わっている可能性について
であった。
それだとマニスと同じ目に合っていても
可笑しくないからだ。
アリアに転移してきているため可能性は少ないと
思っているが聞かずにはいられなかった。
それを聞いて答えるセイラ。
「フム、アリアに来た異世界人については
ワシもアリアのアホウから聞いておる。
1年前に来てから容姿が変わったなどと言ったことは
聞いておらんし、
アリアがそう言った禁忌に手を出すことは
絶対にないから安心せい」
ホッと胸を撫で下ろす4人だが、
そうなると問題はマニスである。
セイラがマニスに尋ねる。
「となるとマニスよ、問題はお主だ。
お主姉の顔を思い出せるか?
記憶消去の術式も解除されておるから
これ以上記憶の混濁や消去は起こらんと思うが」
目を瞑って
頭の中を探るように記憶の確認を行うマニス。
一頻り黙って様子を見守る4人。
「……分かってると思ってたけど、
そもそもそれが合ってるのかどうか
分かんなくなったわ……」
それを聞いたベックスとセンターが言葉を掛ける。
「俺たちゃ、詳しくは聞いてねぇから
分かんねぇけどよ。
とりあえずマニスは俺達と一緒に
魔国に行くってのはどうだ?」
チラリとセイラを見るマニス。
それに気付いたセイラが言葉を掛ける。
「ああ構わんぞ。
マニスも一緒に行って一旦身を隠せ。
追手も出るじゃろうしの。
魔王にはワシから
検問は2秒で通せと言っておいてやるワイ」
それを聞いて少し安堵する3人。
そんな中、タケルが珍しくジワリと怒りを滲ませて
言葉を吐く。
「ハッハッハッ!!
とにかくマニスちゃんの身体のこととか
記憶のこととかは王さんか親衛隊だっけ?
に聞かないと分からないよね。
ということで、
とりあえず3人は魔国に行っちゃって。
後はサクラと何とかするからさーー
更に続けるタケル。
――ちなみにセイラさん、
ヴァッケンの上の方潰しても良いんだよね?」
滲み出るタケルの怒りの空気に当てられ
薄く汗を搔いていた4人だが、
その言葉に呆気に取られる。
唯一セイラが言葉を発する。
「フン、貴様、
言葉と雰囲気が合っておらんではないか。
分かりにくい奴めーー
溜息を吐いて続けるセイラ。
ーー情報収集のために潜り込んでもらう
予定じゃったが……
まぁ潰せるもんなら潰しても構わん。
ただし、民に被害を出さんことじゃ。
それに聖光神のこともある。
捕まえられるならヴルカヌスのアホウ含め上の方を
いくらかとっ捕まえて来い。
情報を抜き出してやるわ!!」
珍しく怒っているタケルを見るセイラ以外の3人は
驚いたまま声も出せず固まっているのであった。




