~64 チョロいですね~
「調べてもらってる間ヒマだし、
聞きたいことあるんだけど聞いて良い?」
フムフム言いながらセイラは
マニスの魔方陣を調べている。
マニスはタケルに聞きたいことがあるようだ。
「ん? なに?」
「あの子、サクラちゃんは
なんで私が暗部って分かったの? アァン」
「……店に居るときに
何か地面から視線を感じたからって。
初めは影魔法使った変態かと思ったって。
捕まるとこだったね、痴漢で♡」
スッと近寄って来て蟀谷をガシッと掴むのはセイラで
掴まれるのはタケル。
「エ?」
「これで良いんじゃろ?」
「ええ」
クイッと親指を地面へ向けるマニス。
「イダァッ!!イダダダーーやめ、ヤメテ!!」
一頻り悲鳴が響いたがタケル以外に影響はない。
「ちょっと冗談言っただけだろ!?
んで、なんでセイラさんと既に以心伝心なんだよ!!」
傍で笑い転げているセンター。
ベックスも明後日の方向を向いて笑っているようだ。
セイラはフムフムに戻るようだ。
「まぁそれ位にしておいてあげるわ。
それで?
それだけじゃ私って特定出来ないでしょ? アンッ」
頭を擦りながら答えるタケル。
「あ~戻ってきたなぁ、じゃない!!
イタイんだよホントに。
ああ、それで特定か。
まず店でしか視線を感じなかったこと、
んで後は店の人達ひとりひとりに鑑定を使ったって」
「待ってよ、私のステータスは偽の内容を見せるように
してるわ。ギルドのステータス鑑定の石板を通さないと
分からないはずよ、イヤン」
ああ、それならとタケルが答える。
「どの程度の偽造スキルか知らないけど、
サクラにそれは無意味だよ」
続けてタケルは
「さすがにスキル見るまで時間なかったらしいけど、
その時点でほぼ確定、
ステータス高いだろうしねマニスちゃん。
んでもって決勝に応援に来なかったら確定だって」
決勝の日マニスは休み。
サクラかタケルを監視していて、
もしその日タケルを監視していたなら
決勝の開始時間的にエルフの森近辺に居るはずなので
一緒にいるだろうと予測したようだ。
「決勝戦に応援に来てたら
知らんフリ出来るんだけどって」
「……そう ウフン」
……
「あのさ、さっきからシリアスだし我慢してたけど、
なんなのその台無しな色っぽい声は!!」
ベックスとセンターも話を聞きながら
同じように思っていたが同じように我慢していた。
「しようが無いでしょ!?
二の腕のところはちょっと敏感、アァーー
「もういいよ、耳塞いどくから」
タケルがそう言ったところでフムフムが終了したようで
セイラが難しい顔をしてマニスと共に
タケルの方へ戻って来る。
「まぁとりあえず終わったぞい。
ただちょっとのう……ああ、その前にじゃなーー
ベックスとセンターに話し掛けるセイラ。
ーーお主等ヒマじゃろ。これ見るか?」
反応したのはセンター。
「話すことあるし暇じゃ……おお!!
これ最新式の映像記録器じゃないかよ!?」
「そうじゃ。
ここに此の世の終わりのような模擬戦の記録が
あるんじゃが、どうじゃ見たいか?」
「誰と誰のか知らねぇが見たいな!!」
「ヨシ、見せてやろう。
ワシの強さを噛み締めるが良い!!
ダッハッハッハッ!!」
ヘェ~、セイラさんのか!?
オレも見たいけどマニスちゃんのことがあるからな。
我慢しよう。
「おお、セイラの模擬戦か!! 見るぞ見せてくれ!!
ベックスも見ようぜ!!」
「はい、私も見たいですね」
自慢気にニヤニヤとしながら応えるセイラ。
「なら、そこの奥で見るのじゃ。
これの先っちょを壁に向けて魔力を通せば
勝手に始まるワイ。
画面はそこの壁に合わしてあるから見やすいはずじゃ。
音量はやり方分かるか?」
「ああ、この黄色と黒のとこが大小で
魔力通しゃいいんだろ?」
そう言ってベックスとセンターはいそいそと
奥の壁際付近に陣取って鑑賞の準備をし始めた。
それを見てセイラがマニスの魔方陣について
説明を始める。
「さて、二人共よく聞けよ」
なんだろ? 珍しいな、人払い的な感じだったし。
「まず「主従契約」の魔方陣は解呪できそうじゃ。
そこは安心せい」
マニスちゃんの顔を見ると向こうもオレを見ていて、
パァっと花が咲いたような笑顔で大層嬉しそうだ。
そりゃそうだわな、
シぬっちゅうのってとこだったからな……
ただ続きがありそうだな。
「……それは何とか出来るんじゃが」
一拍置いてマニスの両肩を掴んで自分の方を向かせて、
真面目な表情で言葉を掛けるセイラ。
珍しく眼鏡の奥の瞳も真剣である。
「気をしっかり持って、よく聞くんじゃぞマニス」
マニスも只ならぬ気配にゴクリと生唾を飲むが、
「勿体付けないでハッキリ言って!!
シぬことは無くなったんでしょ?
大概のことは大丈夫だから」
その言葉を聞いてセイラがマニスの肩からゆっくりと
手を離し口を開く。
「いや、シんでおるんじゃよーー
タケルもマニスも最初は何の事か分からなかったが
続く言葉で理解することになる。
ーーお主一度シんでおるぞ」
言葉を失う二人を他所にセイラは説明を始めた。
まず調べた魔方陣は
「主従契約」の魔法言語が刻まれており
マニスの言う通りであったが内容が違う。
マニスは契約主を裏切った場合などに
魂を刈り取られシぬと言ったが、
セイラの見立てでは時限式で3年でシぬように
設定されているとのことで、
リミットまで後1ヶ月程度らしい。
また魂にも関係してるため魔方陣との繋がりを見ていた
セイラは魂と肉体の整合性が取れておらず
雑な憑依魔法に似ているということに気付いた。
アンデッドを作る際に使う術式に近いということだ。
ただ、近いということは同じということではなく
そこはイブリスかダグザに調べてもらわないと
分からないということだ。
一気に説明し二人の顔を見るセイラが
更に追い打ちを掛ける説明があると言う。
「……マニスちゃん」
「……とりあえず続きをお願い」
俯いて少し震えているマニスだが気丈にも先を促す。
「ハァァ、イヤな役回りを押し付けおって。
まぁいい、貸しじゃからのタケル」
流石に茶化す気になれないタケルは頷くだけで
マニス同様先を促す。
セイラは深い溜息を吐きながら更に続きを話す。
「記憶じゃ、記憶を弄られた形跡がある。
しかも常時少しづつ記憶を消しに掛かっておる。
一つの魔方陣に主従契約に記憶消去それにもう一つ。
あの魔方陣かなり特殊じゃ。
ワシも術式の研究は長いから大概のことは分かる。
……あれは禁忌の類じゃぞ」
精神的にあまりにも重い話なのでセイラも
マニスの表情を見たがどうするか迷っている。
後ろではベックスとセンターが静かに映像を見ており
時折音が流れてくる。
そんな中、俯いたまま震えたままではあるが
マニスがセイラに尋ねる。
「……本当なのねその話?」
真剣な眼でマニスを見据えて答えるセイラ。
「ワシの誇りと命に懸けて誓おう、本当じゃ。
まぁ魔方陣は今すぐにでも解除に掛かれるし
シぬことは回避できるが……」
間髪入れずにマニスがセイラに向かって絞り出すように
言葉を投げる。
「解除はお願いしたい……です。
それと自分の身に何が起こったのか知りたい!!
この身体が本当に他人のモノなのか、
そうだったらその人はどうなったのか?
それに元の私の身体は? それに記憶も……」
マニスの決意を見て取ったセイラはすぐに答える。
「ヨシ。
魔国にはイブリスもおるし途中にはダグザもおる。
すぐにヤツ等にも魔国にも連絡を取ってやるから
今からでも行け。
普通の手順じゃから商人なんかと一緒になるが
スッ飛ばして入国できるよう手配してやるワイ」
先程から話を聞いていた中で、
そういえばとタケルがセイラに話し掛ける。
「そういえばダグやんに会ったぞ」
「ハ? なんじゃ? どこでじゃ?」
「マニスちゃんが召喚してたぞ」
二人してマニスの顔を見る。
「え、ええ。
だけどバイトだとかなんとか言ってたじゃない」
ひとつ溜息を吐いてセイラがマニスに言う。
「ハァ、あ奴は何をやっとるんじゃ?
まぁ良い、ワシが今からダグザに連絡してやるから
その召喚術ここでもう一回やってみぃ。
あ奴に召喚されるように言うてやるワイ」
目を見張ったマニスは答える。
「エエッ!! そんなこと出来るの!?
寿命も取られ……そういえば取られなかったわ」
「大丈夫じゃ、
寿命などとそんなことワシがさせんから呼んでみぃ!!
調べるのもここで出来るし丁度良いワイ」
と言って早速連絡用魔道具で連絡を取るセイラ。
何が起こったのか、
と映像を見ていたベックスとセンターも振り返って
見ていたがセイラが連絡用魔道具を使い出すと
また映像を見始めた。
なんかこの二人セイラさんの行動に慣れてきてんな。
……良いのかな?
ちなみに魔国とダグザと竜の里には
すぐ連絡が取れるよう同盟を結んだ折に
直通の連絡用魔道具を其々持っているとのことだ。
ダグザにはすぐ繋がったようだ。
「……ナンだ?」
「今すぐこっちに来るのじゃ!!
召喚やるからこっちに飛んで来い!!」
言いながらマニスに手で召喚術を使うよう指示する
セイラ。
「意味がワカランが?」
セイラの勢いに押されて慌てて召喚術を使用する
マニス。
マニスの少し前、
タケルとセイラの間にある中空に黒い渦が出始める。
「……なんか連絡が入ったが」
少し間が空いてダグザが答える。
「……闇の召喚術を使っておるようだな。
バイトどうします? と言っておるがこれだな?」
「そうじゃ。タケルもおるぞ」
セイラが答えた後、少し間が空いて。
「貴様等、一体余をなんだと思っておるのだ?
何をさせるつもりか知らんがタダ働きはもうせんぞ」
そこでセイラが間髪入れず答える。
「寿命ならワシのを持っていけい!!
10年くらいならくれてやるワイ!!」
「……ハァァ、タケルも居るし。
お主と会ってから碌なことが無い。
貴様の寿命など貰ったら
魔王に何されるか分かったもんじゃナイ。
すぐ行ってやるからコレっきりにしてクレ」
そう言って連絡用魔道具を切った直後に
目の前の黒い空間からダグザが現れた。
マニスの召喚術は闇系統のものでリッチという
上位のアンデッドを召喚するものだが、
核を壊されない限り復活する不死の魔物で
寿命を差し出すことでこちらの命令を聞いてくれる
奥の手なのである。
それがこうも簡単に呼び出して何の対価も無しに
命令するセイラを見て、
マニスは自分の常識が崩れ去っていくのを感じていた。
この人……この人達(タケルも入れた)は
一体なんなんだろう? と。
しかも横ではセイラがダグザに事の説明を行った後
「早うせい!!」だの「もっと調べぃ!!」だの、
まるで病院に来た不当要求患者のようなことを
言っている。
何かと疲れたマニスは静かに時が過ぎるのを
待つことにした。
時間にして数十分後。
「……調べたゾ」
「どうじゃ?」
セイラの問いにイヤそうにするダグザ。
でも一応答えるダグザ。
ダグザによると、
概ねセイラの見立てで間違いないが
もう少し詳しく説明すると、
まず魔方陣の術式について
セイラではハッキリしなかった部分と魂を調べたところ
生きている生物から魂を抜き取る術式が刻まれており、
また、その肉体的にはまだ生きている生物に強引に魂を
捩じ込むという術式も見つかったそうだ。
「なかなかに外道な術式であるな。
流石に余もやらんぞ。
とんでもなく魂に負荷が掛かって痛みも尋常ではない。
そもそも定着も非常に難しい。
だからその娘の存在が不安定なのダ」
それを聞いた3人はあまりにも重い内容に
口を噤んでいたが、
ダグザが帰りたそうにしながら話し始める。
「もう良いか? ついでに魔方陣の解除はしておいたぞ。
あと、その娘の存在は
不安定だが相性は良かったのだろう、その内落ち着く」
空気は重いが、
まずはセイラでも調べ切れなかった術式の内容を
解いたダグザに礼を言う3人。
「あの、調べて下さって有難うございます」
「ウム、スマンかったのうダグザ。
流石は死霊魔法、憑依魔法でも名を馳せるだけはある。
もうイブリスよりも上かもしれんな!!
助かった礼を言う」
「流石ダグやん。もう魔法の研究では世界一だね!!
ありがとう!!」
言われたダグザは、
「ウ、ウム、そう褒められると、
ちょっと照れるではないか」
「イヤイヤ、ホントスゴイよねセイラさん?」
「そうじゃぞ、誇るが良い。
ワシもダグザの論文を読みたいとまで思ったワイ」
「お、おお、そんなにか? 余はそんなにスゴイか?」
「ウム、スバラシイぞダグザよ。
本当なら宴でも開きたいとこじゃが
今日は場合が場合なんでな、また設定してやろう」
「イヤ~良いもん見たなぁ」
「そ、そうか……
今日のところは帰るが何かあったらまた呼んでくレ!!
ではな」
と言って帰っていった。
「チョロイな」
「チョロイのじゃ」
良いように使われたダグザ……
ひとつ疑問が解消されたが
ベックスやセンターの件もあり、
まだセイラには伝えていないが更にエレーナの件も
あるため気を引き締め直す3人であった。
ちなみに映像を見ていたベックスとセンターは
なぜか疲れた様子でジトっとセイラを見ていた。




