~62 フィーネに行きましょう!!~
距離にして20m程離れていたところに居た
マニスが掻き消える。
瞬時に悟るタケル。
ベックスは反応できていない。
センターは
「イリオス・ゴディン!!」
ベックスとセンターの周囲を銀色の幕が取り囲む。
(ナイス!! センターさん!!
だけども一応やらせん!!)
ガッッ!!
「チイッ!!」
センターの張った銀色の幕のすぐ外に現れたマニスを
タケルが蹴りで対応したところだ。
(コイツ!! なぜ分かった)
矢継ぎ早にスキルを放つマニスーー
「影縛鎖」「影僧兵」「影弾幕」
ーー今度はタケルに向かって。
(対応が速いな。
どう見ても忍者系、暗部だな。黒◯ューズだし♡)
まだ余裕のあるタケルは
3つのスキルの分析を一瞬で終わらせている。
(これくらいで参ってたら
師匠とやったら1秒持たんからね)
影の鎖が30程巻き付いてくる、
槍を持った影の僧兵20体程が突きを繰り出し、
黒い弾丸が数百以上向かって来るが、
全て空を切りーー
ーーホイッ!!
タケルの真後ろから現れたマニスに肘を喰らわせる。
ゴッッスゥ!!
「グッ!!」
なんとか両腕でガードするマニスはタケルから
一旦距離を取る。
……
センターが防御魔法であろう銀幕で
ベックスを守っているのを横目で確認するタケル。
「貴様、本当に何者だ?
影魔法は希少だ、見たことがあるのか?
なぜここまで対応出来る?」
「質問が多いねぇ。
それよりこっちの話もーー
ーー必要ない」
またしても掻き消えるマニス。
「やはりお前は危険だ。
我が国に取って驚異となるものは排除する。
確実にな!!ーー
ーー闇王冠」
マニスは消えたままだが、
すぐ目の前の空間に黒い染みが出来、
それがみるみる広がっていく。
その広がった黒い空間から現れたのは
大量の瘴気とローブを纏い煌びやかな王冠を戴いた骸骨
死霊王リッチであった。
「ククク、
これで貴様等を一気に始末してやれる。ヤれ!!」
……
ん? この魔力……
見詰め合うタケルとリッチ。
「? 何をしている?
早くそこの奴等を始末しろ!!」
命令するマニス、質問するタケル。
「ダグザンだよね?」
「……そのフザケタ呼び方。変わらんな」
またも一拍の沈黙。
「何してんの? その格好も?
んでもってリッチじゃないよね?
確かリッチより上位の存在で神にも指先掛かってる
とかって誰かが言ってたぞ」
「……バイトだ」
……
「……そんなバイトあんの?」
「割りと時給が良いのだ」
「何もらうの?」
「召喚者の寿命だ」
「フーン」
周囲は二人の会話を聞いてチンプンカプンで
どこか遠い世界の出来事のように見ているが、
最も訳が分からないのはマニスである。
「ちょ、ちょっとーー
ーー余は帰るぞ、寿命は勘弁してやる。
召喚したそこの女には悪いが相手が悪い。
ヤるなら他のを呼べ、どうせヤられるがな。
それにな、そんなとこに隠れておっても
引き摺り出されてオロチされて瀕死に……
クワバラクワバラ、ではな」
帰って行ったダグザン。
「久し振りだったなダグザン。元気そうでヨカッタよ」
影から姿を現したマニスは、
「ヨカッタよ、じゃないわよーーーー!!
なんなのアンタ、なんなのよっ!!」
とタケルの胸倉を掴んで激しく揺すりながら
絶叫している。
ベックスとセンターの二人はその光景を
呆然としながら見ている。
「ちょちょっとちょっと、
吐く吐く、揺れると吐くのよオレ」
それを聞いて手を止めたマニスにタケルが話し掛ける。
「フゥ、とりあえず話を聞いてくんないかな。
マニスちゃん」
「こっちが疲れたわよ。
それに……わたしはマニスじゃない。シーマンだ」
疑問が浮かぶタケル。
危険は去ったかも? くらいの判断ではあるが、
ベックスとセンターが防御魔法を展開したままでは
あるが少しづつタケル達のほうへ近寄って来る。
「それって黒〇ューズのこと?」
「そうだけど、そうじゃない!!
マニスじゃなくてシーマンなの!!」
どうも話が嚙み合わないと思ったタケルは
こう理解することにした。
「ウンウン分かった。そんな時期ってあるもんな!!
オレもあったよ(遠い目)
マニス・シーマンだね」
「オマエは、本当に、ホントにバカなのか!?」
どうしても黒〇ューズから離れられないタケルの結論は
マニスの言いたいこととどうしてもズレが生じる。
そもそもそんなことはどうでも良いのだ、
と思い直したシーマンことマニス。
「もういい!!
とにかくこの事を国に持ち帰らねばならん。
それが最低限の仕事だ。
業腹だがな!!」
そう言って、
タケルと戦っていた時も頻繁に使っていた影移動で姿を
消そうとするーー
ーーが、
「それは拙いので止めてちょうだいね」
タケルがマニスの襟首を掴んで影から引っ張り出す。
「き、貴様!!
なぜそうも簡単に影の空間に干渉できる!?」
「あっ、そういうのはサクラに聞いて。オレ専門外」
と、たらい回しにされる役所に行ったときの気分を
味わったマニスは、
先程ダグザンことダグザが言っていたことを思い出し、
とりあえず話を聞くことにした。
防御魔法を解いたベックスとセンターも
近付いて来るので一緒に話を聞くようだ。
3人が立ったままではあるが話を始めるタケル。
しかし疲れたのか、
タケルは肘を立てて頭を支えた体勢で寝転んでいる。
「とりあえず話が進まないからマニスちゃんって呼ぶけど
その前に覆面脱いでくれない?
なにかと話し辛くてイカン。
それ以上変身されたらオレはもう他の仲間も呼ぶぞ?」
「……アンタねぇ、
わたしが覆面取る前に寝っ転がんのヤメなさいよ!!
寝っ転がる意味も分かんないし、わたし一応敵よ!!
それとこれ以上というか変身なんてしないわよ!!
あと仲間というか部下の前でもこの格好はしてるから
別に問題ないわよ」
「いや、〇ュア〇ロディとかーー
――チッガーーーーウ!! そういうのじゃない!!
……けど、ちょっと好きだったから、
そのデザインはちょっと……」
「ウンウン、分かるよマニスちゃん。
そういう時期ってあるよね(更に遠い目)」
深い溜息を吐くマニス。
「アンタにそれを言われると異様に腹が立つわ。
そもそもねぇーー
マニスが言いかけたところでベックスが口を挟んだ。
ーーあの、そろそろ話を聞きたいのですが。
タケル君もとりあえず起きてね」
ベックスの一声でとりあえず覆面を脱ぎ出すマニス。
渋々起き上がるタケル。
「いやぁ、
一応空気が重いからリラックスしたほうが良いかな、
と思ったんだけど。
まぁいいや、それでやっぱりマニスちゃんだね」
傍らで覆面を取った素顔を見たベックスとセンターは
驚いているが、
先程までの雰囲気とは違いマニスに対して思うところが
あるようだ。
「本当にマニスさんだったのですね、そうですか……」
「お前がまさか……」
それを見たマニスが
答え合わせをするように話し始める。
「そうよ、わたしが暗部リーダーのシーマン。
商会ではマニスで通ってたわよ」
そして開き直ったかのように
強い言葉を投げつけるマニス。
「お察しの通り私だったり部下だったりはするけど
国抜けや閣下からの命令で
たっくさんコロしてきたわよ!!
でないと、でないとーー
一拍置いて叫ぶマニス。
ーー国に帰れないじゃない!!
お姉ちゃんに、親に会いたいのよ!!!!」
少し落ち着たマニスがポツリと呟く。
「まぁこれでまた一からやり直しだし、
そもそも消されるかもね」
それに反応するタケル。
「? どういう意味」
マニスの説明では、
ヴァッケンに召喚されてから保護の名目で衣食住の保証
をする代わりに3年間ヴルカヌスや親衛隊3人の命令に
従えと言われたらしく、
当時右も左も分からないマニスは
当然その条件に従うしかなかった。
そして素養があったのか影魔法を学びグイグイと頭角を
現し現在に至るとのことだ。
そしてその3年間の満了年が今年らしく、
その条件を満たせば国に帰る方法を教えてくれる
というのだ。
ただ任務の失敗は許されないとも……
一同は重い内容に沈黙を守っていたが、
タケルが口を開いた。
「とりあえずお姉さんとは会えるんじゃないかな?」
その言葉にジロリとタケルを睨むマニス。
「……なんでアンタがお姉ちゃんを知ってるのよ」
その問いに口角を上げて答えるタケル。
「フッフッフッ、甘く見てもらっちゃ困るなマニス君。
あなたのお姉さんはーー
わざわざ一拍置いてから話し出すタケル。
――エレーナ・ウィリアムだろう!!」
ビシッとマニスを指差しドヤ顔のタケル。
……
「……そうだけど違うわ。あの異世界人のことでしょ?
名前は一緒だし、
私もすぐ確認したけど姿形が違うわよ」
あ、あれ?
どうやら違うらしいぞサクラ?
見事な伏線回収な気がしたのは気のせいだったのか……
黙っているタケルを見てマニスが、
「ただ、よくそこまで分かったわね。なぜ分かったの?」
サクラの予想が外れたことに呆けていたタケルだが、
とりあえず質問に答える。
「あ、ああ、
マニスってマレー語で甘いって意味なんだろ?
それでエレーナさんが妹の名前がスウィートだって
言ったからだな。
シンガポールに留学してたって言ってたし」
腕組みをして俯いて考え込むマニスは、
徐にタケルに問い掛ける。
「……名前もこっちで聞かれたときに咄嗟に出たのが
同じ意味のマニスだったから、
それは正解だし良いんだけど。
あのエレーナがそんなことを言ってたの?」
答えるタケル。
「ああ、それは間違いないぞ」
……
少し間を置いて、
若干の希望を持った表情で話し始めるマニス。
「……名前やシンガポール留学のことを
赤の他人が知っている訳ないわ。
もしかしてお姉ちゃんなの? でもなんで?
姿が全然……」
スルリと逃げていったドジョウが期せずして
もう一度柳の下に戻ってきたような感覚で
タケルが口を開く。
「実は転移じゃなくて転生だったとか?
そもそもエレーナさんもマニスちゃんに気付かないの
可笑しいし。
どっちにしても一回確かめるために会ってみたら?」
しかしマニスはまた俯いてしまう。
「ううん、もういいの……」
「なんでだよ?」
「もしお姉ちゃんだったとしたら、
良くしてあげてタケルくん」
空元気も甚だしいマニス、
口調もシーマンではなく商会のマニスに戻っている。
「あのね、私にはこれがあるから……」
と言って、
手袋を外し二の腕まで上げたシャツから出して見せた、
かなり禍々しい紫と黒が入り混じったような色で
刺青のようになっている魔方陣の説明する。
「これはね、
3年前に保護されたときに付けられた「主従契約」の
魔方陣なの」
マニスが説明するには「主従契約」の魔方陣は
主として設定した者、
今回の場合ヴルカヌスと親衛隊3人、の命令に
従わなかったり裏切った場合は
魂を刈り取られシに至るとのこと。
色々と思うところはあるベックスとセンターだが、
またも重い話で口を噤んでいる。
それを聞いたタケルが解決策とも言えないような
答えを話す。
「ああ、良くあるよなそういうの。
とりあえずお姉ちゃんのことも含めて
サクラかセイラさんに任せれば大丈夫だと思うぞ。
そもそもマニスちゃんが暗部かも、
んでもってエレーナさんの妹かもって言ってたの
全部サクラだし。
なんとかなるんじゃないかな?」
それを聞いたマニスは俯いて
タケルを見ないまま答える。
「でも「主従契約」はそんな簡単にはーー
すべてを言わせず、
タケルは散歩に行くような軽い声音で
マニスに言葉を掛ける。
「とりあえずフィーネに行こうぜ!!」
不安な迷い子のような目で見ていたマニスだが、
どうせシぬかもしれないならと静かに頷いたのだった。
ただしセイラと言う名前に
不安を感じていたのは内緒だ。
一文入れるの忘れてましたので改稿しましたm(_ _)m




