~61 正体見たり枯れ尾花、であれば良かったのに~
「それでは行ってきますね。
……申し訳ないですが後は宜しく頼みましたよ」
今日はいつもと少し違う雰囲気の見送りの人達。
ベックスは商会関係の引き継ぎ書類は全て準備し、
商会起ち上げ時から一緒だった主だった人達に
後を託している。
その中には一時期結婚を考えた人も居て
結局巻き込むことを嫌って独身を貫いているそうだが、
その人に伝えた時は流石に泣かれたそうだ。
しかし最後は
「後はお任せ下さい……ご無事を祈っております」
とニコリと笑って送り出してくれたそうだ。
ウ~ン、商会ごと移住できれば良いんだけど
王様が変わるとか……結局行き着く先は聖光神か。
何者なんだろ?
断片的に情報はもらったけど。
セイラさんと接触してもらえば何かしら情報は入る
だろうし、しっかり送んないとな。
タケルがそんなことを思いながら、
商会を出発しようとしていると傍らのサクラから
念話が入る。
(ん? 緊張でお腹痛いのか?)
(チ・ガ・イ・マ・ス!!)
(んじゃ、なんだよ?)
(……少し気になることがあるので推測と対応を
話しておきます)
(?)
……
ーー分かった。
「お~い、タケル。行くぞ!!」
「はいよ~センターさ~ん、今行きま~す!!」
(んじゃな、サクラ!! 連絡待ってるぞ)
(はい!! タケルも気を付けて)
そしてついに商会を出発した3人。
まずは国境を越えてエルフの森へ向かう。
王都ブラント 検問所
「!? タケルは国を出るのか!!
サクラの決勝も見ずに?
センターも名目はベックスの護衛。
タケルを連れていく意味があるのか?
いや素材採取に付いて行くだけなのか?
午後は決勝を見に行くのか?」
タケルの動きが予想外で
腕組みをして俯いたまま考え込むシーマン。
「……分からんが監視はし易くなったか。
何もなければそれはそれで構わんしな」
エルフの森へ向かうのに通る
王都の検問所で張っていたシーマンは
そのままタケルとベックス達を監視するのであった。
獣王国アリア、聖炎国ヴァッケン国境
「じゃあ、後は予定通り王都へ帰ってください。
ここまで、いえ、これまで有難うございました」
「グス、旦那様もお元気で」
彼も商会設立時ではないものの
長らく商会に勤めている人である。
少し湿っぽい光景だが、
両者ともに最後は笑顔で別れていたので、
これで良かったんだろう。
ということで、
御者さんは国境を出て少し行ったところで
王都へ帰ってもらった。
一緒に行けないしね。
何か聞かれたら「帰れ」としか言われていない
と話すように言ってあるとのこと。
(さて、これで3人になったぞ?)
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武の聖地 メイン闘技場
大会最終日 決勝 魔人ゼット VS サクラ
ーーキャアアーサクラちゃーん!!
頑張ってーー!!
ザ・グ・ラ・ヂャーーーン!!
ウォオオオ、サクラちゃーーん!!
勝ったら店長昇格だぞーーー!!
もう会長でいいぞーーー!!
カワイイィィィィーーー!!
ワイワイーー
ガヤガヤーー
「勝ったら会長ですの??
しかしスゴイ歓声ですわね。
え、とタケルはまだ来てませんの?」
応援に来たエレーナであるが周囲の応援が凄まじく
若干引き気味ではあるが、
自分も応援すべく商会の従業員達が集まる席近辺へ
近寄っていくのだった。
控室 サクラ
「そろそろ国境ですか」
タケル達一行の進み具合を口にしたサクラは、
ひとつ溜め息を吐き、
「来てなかったですね……」
そう呟いて闘技場へ向かうのだった。
貴賓席 ヴルカヌス一行
「フム、大変な人気だな。サクラとやらは」
答えるのはNo.1焦熱のエグゾネスレ
「そうですな。
ただ殿の御前でもありますし、
人気倒れの評判倒れにならんことを祈りますがな」
続いてNo.2炎熱のサージェリー
「結局は魔人とサクラちゃんになったわねぇ。
準決勝もトンデモなかったけど今日はどうかしらね?」
それに答えるのはNo.3焼灼のスカルペル
「そうだねスゴかったね!!
あんな魔法があったんだね、僕も知らなかったよ」
「で、結局貴様等の予想はどうなのだ?」
そこで決勝の予想を促すヴルカヌス。
「「「サクラ(ちゃん)」」」
えらく高い評価だな、と思うヴルカヌス。
まぁいずれにしろ囲い込んで
我が国のために働いてもらうのだから構わんのだが。
「さて、シーマンの報告も気になるが
まずは決勝を楽しむとするか」
決勝戦が始まる。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
タケル達3人は、
とっくに国境が見えなくなる場所まで来ていたが
タケルの指示でエルフの森目前まで歩を進めていた。
「さて、こんだけ離れりゃとりあえず大丈夫か」
「本当なのか?」
「本当ですか?」
タケルは別方向に話し掛けることで答えにする。
「もう尾行も飽きただろ? 出て来いよ」
……
街道の脇から姿を現したのは、
黒色で目と鼻から下が出ている覆面を被っている。
覆面は両の蟀谷辺りから顎まで伸びている触角のように
なっている部分、
また後ろに靡いているように見える髪の毛を意識
したような作りになっている。
首には白のファー、腕は肘まである手袋でこれも黒。
二の腕から少し白色のシャツのような部分が見える。
靴は太腿まであるロングブーツでこれも黒。
マントも羽織っていてまたも黒。
……
ハートが額に付いてないだけ良かったよ……
安心するタケルを他所に現れた者は疑問を口にする。
「……なぜ分かった」
「黒◯ューズのことーー
ーーち、違う!!
違うが、貴様異世界人だな!?」
「チ、チガウ!!」
赤面する黒仮面と青褪めるタケル。
(まぁた、やっちまったぜ!! テヘ、アブない!!
やらんぞ!!
でも、さすがにあの格好は反応するだろ。
覆面ないとこ真っ赤っ赤だし)
ベックスもセンターも今の遣り取りは分からないが、
警備隊責任者でもあったセンターも
付けられていたことに気付いておらず驚いている。
ベックスも当然目を見張って謎の人物を見ている。
「そっちのネタばらしはしないけど、
来るかもしれないって言ってたヤツがいてね」
「……」
「マニスちゃん」
「「!?」」
驚愕するベックスとセンター。
ベックスはケーキ店で、
センターはサクラと一緒にいるところを
何度も見掛けている。
「やはり貴様は危険だ!!」
黒〇ューズのような格好のまま凄まれて
ちょっと感動していたタケルだが、
マニスは関係なく襲い掛かってきたのであった。




