~59 決勝進出ですね~
昨日の決勝トーナメント初日も終わり、
今日は大会9日目、準決勝2試合が行われる。
準決勝 第1試合 魔人ゼット vs 天眼のラピス
第1試合まずは魔人の猛攻で始まる。
身体能力と魔法を組み合わせた手数も力もある攻撃に
天眼はその魔法発動の速さで魔人の猛攻を凌いでいく。
しかし麻痺眼も効果が無く次第に捌き切れなくなり
隙が出来たところを逃さず魔人のスキル「穿孔撃」が
止めを刺した。
控えていた回復魔法師が直ぐに駆け付け治療を行い
天眼は事無きを得ていた。
「うわぁ、スゴイ一撃でしたねぇ、モグモグ
何か隙間を縫うというか一点突破のもっと細い感じの」
「よく見えましたわねぇ、モグモグ、
確かに力が凝縮されていましたのは分かりましたわ」
火山湖饅頭を食べながら
第1試合の感想を話すマニスとエレーナ。
ーー女の子ってすぐ仲良くなんのな(タケル談)ーー
マニスは昨日は仕事でサクラの応援もお休みであったが
今日は晴れて仕事は休んできたそうだ。
休みではなく休んできたとのことで晴れてかどうかは
分からないがサクラの応援に来たことは確かなようだ。
「ありがとうねマニスちゃん、エレーナさん」
「何言ってるのサクラちゃん!!
準決勝まで残ってるんだよ!!
絶対来るに決まってるじゃない!!」
「わたくしも向学のためもありますが、
純粋に応援させて頂きますわ!!」
エレーナさんとも仲良くなったようだが、
マニスちゃんとは特に仲が良いようで、
いずれにしてもサクラは嬉しそうだ。
そこでタケルが第1試合の感想を漏らす。
「こうして見ると結構アブナイ大会だなぁ」
「ハァ、何を他人事みたいに。
昨日まであそこで戦ってたでしょうに」
「まぁねぇ。ま、気を付けろよサクラ」
マニスもエレーナも試合前ということもあって
サクラに一言掛けるようだ。
「ヤっておしまいなさいサクラさん」
「ヤっちゃってサクラちゃん♡」
キミ達は人の話聞いてるのかな??
「フフフ、9割9分9厘9毛コロシに挑戦してきますね♡」
二人に対して親指を立て闘技場へ向かうサクラ。
後姿を見送りながらボソリと呟くタケル。
「コワ……」
準決勝 第2試合 サクラ vs 拳闘士セスタ
『今大会初めてサクラ選手が一撃で倒せない相手ぇ!!
セスタ選手との激しい拳撃の応酬ぅぅ!!
しかし
どちらも当たらない当たらない当たらないぃ!!』
ドッドドドドドーーーー
シャッシシシシーーーー
「やりますね」
「あなたこそ」
お互い譲らず主導権争いを繰り広げている。
そこで一歩下がるセスタ。
『あっ動きますねセスタ選手』
「豪衝波!!」
鋭い震脚、掌底から跳ばした広範囲衝撃波が
サクラを襲う頃には
追い掛けるように肘打ちも同時にサクラの腹部に
到達するーー
ーー柳水
『おぉーー!! これは凄い!!
豪衝破に柳水とは、
これはまた豪華な技の応酬だぁぁ!!ーー
観客席 タケルとマニスとエレーナ
(何やってんだ? 動き変だぞ?)
「キャア!! サクラちゃん!? あぶな!!
イヤァ!! やめて、そこは!! ああぁぁぁ!!ーー
「イヤァァン!! いけないそんな!! アッーー
……
(ちょっとこの子達の絶叫何とかなんないかな?
さっきから周りの視線が痛いんだが……
しかし、キャアキャア言いながらよく見えてんな)
ーーそんな!! お母さんは許しません!!
いやああぁぁぁ!!」
ーーあ、イヤよ!!
そんなどこの馬の骨とも分からない!!
ッキャアアア!!」
……
(ダメだこの子等……ちょっと離れよう)
「いやぁぁ、あれ? どこ行くんですかタケルくん?」
「アァン、ん? どこに行かれるのですか?」
無視して歩き去ろうとするタケルに、
「あぁぁぁ!! ピンチピンチですよ!!
早くこっちこっち!!」
「あっ!! そうですわピンチですわ!!」
と言ってタケルの腰に抱き付きながらも闘技場を
指差すという器用な真似をする二人。
再び闘技場
ーー素晴らしい技の応酬!! 感動を禁じ得ませんね
解説のアウタゾーンさん!!』
『ええ、素晴らしいスキルの応酬。
本当に教科書に載せたいくらいですね!!
拍手を送ります!! パチパチパチ』
ーーよく拍手すんなここの解説。
それと名前!! ギリギリだな(タケル談)ーー
ここでセスタがサクラの集中力が極端に落ちたことに
気付く。
(ムッ!! スキルの応酬で集中が切れたか!?
この隙を見逃してやるほど甘くはないですよ!!)
「奥義!! 千穿孔阿修羅連撃!!」
シッシシシッシュッドドドドドドォォォーーーー
『あーーーーっと!!
今大会初めて打撃を喰らったサクラ選手ぅ!!
どうだぁぁ!? あれ?』
もうもうと立ち昇る粉塵が晴れてきた中、
見えてきた人影はーー
ーーおぉぉぉお!! 立っています立っています!!
ふ、服が、しょ、少々セクシーが過ぎますね
アウタゾーンさん!!』
『ブーーーー(鼻血)』
所々服が破れて実況が言うようにセクシーなのだが、
サクラは在らぬ方向を見ている。
一方、相手のセスタは油断せずサクラのダメージを
確認している。
(ムゥ、あれを喰らって立っているのか?
しかし虫の息だろう)
お気付きだろうが
既に観客席は確認されてしまっている……
「ウフフフーー
温度計があれば絶対零度を示したであろう銀色の結晶が
サクラの立っている周辺を覆い始め、
身体の周りにはチラチラと雪が舞い始めた。
極寒の猛吹雪が醸し出す音が聞こえたかのような声で
口の端を上げて笑うサクラ。
審判はサクラの笑い声を聞いた時点で
既に闘技場の端までダッシュで逃げている。
ーー準決勝と同じ審判だな(タケル談)ーー
何か拙いと感じたセスタはその場から動こうとして
動けないことに気付く。
「!!」
足元が既に氷で固定されていたからだ。
「チッ!! こんなものーー
「砕ケマセンヨ……」
「ヒィッ!!」
セスタの真後ろに氷の彫像が立っており、
それが喋っているのだ。
「な、なんだ? 正面にも!!」
「ウフフフ、いつもいつも私がいないときにーー
ーーベタベタベチャベチャト……」
「な、何を言っている!?」
セスタは正面と背後から聞こえる話し声に
交互に両方を見ながら訳が分からないこの状況に
パニックに陥っている。
……
「「シねぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」」
正面からは鬼の形相のサクラがセスタの右顔面に拳を、
背後の氷の彫像はセスタの左顔面に拳を振り切る。
ガッッスゴッツッッスッッッッ!!!!
……
バタリ……
全く関係のない八つ当たりに崩れ落ちるセスタ。
色々な意味で寒くてシにそうなので身体を抱えて
蹲っていた審判は回復魔法師に顎でセスタを見るように
促し、
ジョ、ジョウジャ サーー
勝ち名乗りを上げる審判は
寒くて真面に喋れていなかったが、
そんなことは関係なく光速で観客席まで戻るサクラ。
観客席 マニスとエレーナ
……
「「……逃げましたよ(わよ)」」
「……」
服が所々セクシーなことになっているサクラを中心に
大変な人集りになっているが関係無く思うサクラ。
「後で覚えてなさい……」
王都ブラント ヴルカヌス大通り
「アッブねぇ!!
また〇ェット〇ッパー喰らうとこだったよ。
いや今度は〇ェットラ〇ンダーかも? フゥ」
サクラからの誤解も甚だしい八つ当たり会心の一撃から
逃げ出したタケル。
呟きながらキョロキョロと周りを見る。
「大通りかここ? あっ、市場がある!!」
楽しそうな声で独り言を呟きながらも
サクラに見付からないように気配と魔力を周囲に
紛れ込ませるタケル。
「せっかくだし、なんか色々食~べよっと!!」
市場で買い食いを敢行することに決めたタケル。
(しっかし、なんか重力縛りでもやってたのか?
動き遅かったしなぁ。
あと、あの技って似たようなのを見た気が……
確か師匠が昔、
ニブルヘイムから持ってきた雪と氷は魔力を多分に
含んでどうたらで、
それを使って双葉と合わせると「ほうれ」とか言って
動けないしド突き回されるわで何回かシんだ覚えが……
イカン!! ストップだ!!)
通りのど真ん中で座り込んで気分が悪そうに、
ブツブツと独り言をいうタケルを周囲の者達は遠巻きに
「ヒソヒソ……ちょっと可哀想だけど」
「ブツブツ……警備兵に通報しましょうか」
「ねーねーあのひとだれとしゃべってるのー」
「見てはいけません!!」
ハッと気が付いたタケルは、
周囲を見渡して赤面しながら市場へ向かって
走っていくのであった。
束の間の自由の後に訪れる地獄に目を向けることなく……
とにもかくにも決勝進出である。




