~58 迫るシーマン~
タケルの一言で素性が露見してしまった二人。
「どこの国に召喚されたの!? ここ? 聖光国?」
捲し立てるエレーナにサクラが言葉を掛ける。
「少し落ち着きましょう、エレーナさん」
それを聞いたエレーナは我に返ったようで、
「ええ、そうね。
ちょっと吃驚したものですから、失礼致しましたわ」
ただサクラも思うところがあったようで
エレーナに問い掛ける。
「構いませんけど、どこから来たの?
ではなくて召喚された国を聞かれたのはなぜですか?」
一つ溜め息を吐いて話し始めたエレーナによると
妹を探しているそうだ。
エレーナは召喚されて1年、そこから遡ること2年の
3年前に妹は召喚されたとのこと。
「わたくし妹が目の前で消えたのを見て、
最初は何が起こったのか分からなかったのですわ。
その後もいくら考えても分からないですし、
周りの人たちは、親も含めてわたくしの言うことを
信じてくれなくて……」
召喚だと分かったのは、
自分も召喚された際に同じ現象が起こったので
分かったそうだ。
召喚先では真っ先に妹のことを聞いたそうだが、
聞いたことがないと言われ、
その後もずっと妹を探しているということだ。
「この世界以外に召喚されておりましたら
もうお手上げですけど、
可能性がある限りは探したいと思っておりますわ」
それにと続けるエレーナは、
自分の召喚先がアリアでその他の国にも召喚されている
可能性があると知って懸命に探しているうちに1年が
経過し現在に至るとのこと。
「ですから、
あなた方が他の国に召喚された方々なら、
何かご存じないかと思いまして。
アリアでお聞きしましたらヴァッケンや聖光国には
それなりに異世界人が居るとお聞きしましたの」
ただ、とエレーナは言う。
「異世界人はアリアほど自由には動けないと。
国の管理が厳しく出られないとも……」
一気に喋ったため喉が渇いたのか
ひと口紅茶を口にするエレーナ。
「フゥ、紅茶も美味しいですのねこのお店。
今お話しした通り、
妹の手掛かりがあれば教えて欲しいのですわ。
それと最初の質問に戻りますが、
あなた方はどちらに召喚されましたの?
サクラさんもご一緒ですわね?」
そりゃサクラも当然そう思われるわなぁ。
ただ召喚じゃねぇんだけどなぁ、強制転移だし……
そんなことを考えるタケルに代わってサクラが答える。
「そうですね……
申し訳ないですがお答えしない方が良いでしょう」
「えっ?」
まさか拒否されるとは思わず驚くエレーナ。
「今はお互いのため止めておきましょう。
妹さんの情報が入れば必ずお教えしますから」
そう言われてエレーナは少し逡巡し頷いた。
「そうですわね。
わたくしとしたことが少々失礼が過ぎましたわね。
ズケズケと人のプライバシーを聞こうとするなんて。
失礼致しましたわ」
そこで思い出したようにサクラが、
「ああ、妹さんのお名前や特徴をお聞きしても」
クスリと溢してエレーナが答える。
「何もお伝えしてなかったですわね。
そうそう、わたくしの妹の名前はスウィート、
スウィート・ウィリアムですわよ。
年齢は19歳、身長は168cm、体重は55kgで私と違って
少し目尻が下がっておっとりした印象ですのよ。
情報が入れば是非お願い致しますわ」
聞くとシンガポールに留学していたらしく、
3か国語が話せる才女だそうだ。
スゲーなぁ、オレなんかサクラいなかったら
日本語とゼスチャーのみだぞ
北極でパンツ一丁みたいな感じだな、ちょっと違うか?
その後、気持ちを切り替えたのか先程までとは変わって
元気にお茶とケーキを平らげるエレーナ。
そして、
「お支払まで申し訳ないですわね。
サクラさん、明日は応援に行きますから!!
タケルは午後に浸透勁教えるのですわよ!!」
そう言って宿へ帰って行った。
あと、オレ達が異世界人である件は
こっちが口止めする前に、
「異世界人ということは絶対に言いませんから。
何かとトラブルの元ですもの。
あなた方もポロリはお気を付け下さいですわ」
エレナンが良い人だったからヨカッタけど、
ジャパンの件に続き2回目だからホント気を付けよ。
帰りの道すがら、
何やら黙って考え込んでいるサクラだが、
話し掛けるタケル。
「しかしアリアねぇ。
オレ達以外にも異世界人って来てたんだな」
チラッとタケルを見て答えるサクラ。
「覚えてますかタケル?
アリア女王が小僧共って仰ってたの」
「フン、バカが女王さんね。
あの口癖に突っ込むのどれだけ我慢したと思ってんだ。
キッチリ覚えてるぞ」
「エレーナさんと私の戦った相手アレクサンドルさんは
アリアからの出場者ですから」
「ああ、小僧共ってエレーナさん等ってことか?」
「そうです。
セイラさんが「ヴァッケンの大会にも出場させる予定」
とも仰ってましたので、恐らく間違いないかと」
「なるほどな、そんなこと言ってたっけ」
「他にもヴァッケンや聖光国にも召喚されてるらしいと
お聞きしましたよね……」
「エレーナさんな。どうかしたのか?」
「……いえ、またにしましょう」
それよりもと念話を飛ばすサクラ。
(付けられてますよ)
(分かってるよ。ああ、それもあって切り上げたのか)
(ええ、私たちのこともありますが、
エレーナさんを巻き込んでもいけませんから。
ただ、妹さんの件は気掛かりなので出来る限りの調査
はしますけどね)
(そだな)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
王城ヴァスト 某部屋
「どうだ?」
「ハッ!!
今日はカフェでタケルとエレーナとお茶を楽しんで
おりましたが、
その他特にこれといった動きはございませんでした」
「わかった」
ここは暗部の構成員が報告に上がる
暗部リーダーの執務室だ。
「その他は?」
「ハッ!!」
別の者から報告が上がる。
「予定通りアレクサンドル殿については決勝後に
王にお通しするよう手配致しておりますーー
「ウム、それでいい」
ただ、と続ける暗部構成員、
ーー1回戦で敗けたのが余程悔しいのか、
ブツブツと何事か呟いては宿の壁を殴っています」
リーダーは腕組みをして少し考えると、
「余りに不安定であっても困る。誰か傍に居させろ」
「ハッ!!」
後は特に報告も上がらず解散となり、
執務室は一人となる。
「ベックスとセンターも普段と変わらんか……」
腕組みを解き少し凝った肩を解しながら、
「サクラの決勝は観戦に動くと思うが。
準決勝はわたしも付くから問題ないとして……
やはり決勝戦のある午前中か」
ひとり呟くシーマン。
彼女の勘は未だタケルに警鐘を鳴らしたままであった。




