~幕間 セイラの事情~
ガヤガヤガヤ――
「ファ~~~~~~アーー
……
ーー眠いのぉう」
ギルドの受付カウンターで欠伸をしながら
座ったまま天井に届かせようかというように
両腕を目一杯高く上げて伸びをし、
褐色の肌に擦れ違えば
男女問わず振り向くであろうその美貌を
わざわざ台無しにするように
大口を開けて再度欠伸をする女性ーー
ーーセイラである。
彼女は冒険者としても有名である。
素性を隠して参加した聖炎国ヴァッケン王国での
世界武闘技大会での2年連続準優勝
ーー1年目は決勝戦後にバレる。
2年目は男として参加し決勝前にバレる。
敵国なので素性を隠して参加した。
わざわざ敵国に……バカなのかな♡(タケル後日談)
世界5大迷宮の単独制覇
単独特殊魔獣討伐数殿堂入り
新魔法陣の開発多数、盗賊討伐数1位
海賊討伐数1位
世界大食い大会2位
フィーネ美人コンテスト(他薦)
優勝商品の特上ブル肉1年分に釣られて出場
優勝も年齢制限により失格、
直後大暴れし会場を恐怖に陥れたのは3年程前。
冒険者として「も」というのはそういう意味である。
とりあえず後半はさて置き、
その活躍は枚挙に暇がない。
そんなセイラは先の大戦「ツイノミタマ」以降
ギルド職員として働いている。
これも殆どの者は知らないが
ギルドを起ち上げたのは
セイラとその仲間たちである。
但し現在も存命なのはセイラのみ。
セイラはダークエルフであり
他はヒト族やエルフ、ドワーフであったが
大戦後ギルドを起ち上げた後
程なくして亡くなっている。
現在はセイラに任命を受けたヴァンパイア族の者が
統括ギルド長としてその任にあたっている。
ではなぜセイラがギルドの長ではないのか?
現場での情報収集という側面もあるが、
自由に動き回れないからというのが
理由としては大きい。
現在は気楽にここフィーネのスタッフ職員として
受付、鑑定、依頼の整理などを日々行っている。
上に立ち、人を使って物事を為すタイプではない
(と本人は思っている)
それでも何度も現統括ギルド長から
統括ギルド長への就任依頼はあったが
悉く断っている。
まぁ他にも理由はあるのだが、
主な理由の一つは上述した通りである。
また誤解のないよう付け加えるが、
当然ながらセイラがそんなに偉いさんであると、
同僚のギルドスタッフは知らない。
セイラからすれば皆最近生まれた者達ばかりである
からして
「先輩、お局さん
ーーこれを口にするとシが訪れるため
誰も言わないがーー
ベテランのかなり頼れるお姉さん」
ぐらいの認識である。
勿論、噂で前述した暴れっぷりを聞くこともあるが
普段のセイラの行動や気さくな雰囲気から
誰かに疎まれたりすることも概ねは無く、
単に飲み過ぎ食べ過ぎで
たまに暴れるくんではあるが、
概ね仕事が出来るお姉さんで通っている。
一部問題はあるものの、
そんな敏腕ビジネスウーマンのセイラが
唯一頭が上がらない存在がーー
ーーこの星の母とも呼ばれるマザーこと、
神竜ゼヒライテである
☆★☆★☆★☆★☆★
ギルドは現在朝の忙しい受付の時間帯
ーー冒険者は朝が早く
割の良い依頼を朝一でチェックするーー
が過ぎ昼前で
朝出て行った一部の冒険者の換金も終わり、
ギルド内にある食堂が賑わっている。
代わりに受付にはあまり人は居ないといった
状況であった。
そんな中ーーセイラは大欠伸の最中ーー
敵対勢力を警戒し、
ここ数十年は直接連絡を取っていなかった者から
連絡が入った。
かなり驚いたセイラだが、
周りに気取られないように大欠伸から背伸び
ストレッチを自然な動作で敢行しつつも、
頭の中のその声に耳を傾ける。
(……ラ……セイラ……
聞こ え……ザザ ますかセイラ、
旧交を温めた……ザザ……ろですが時間がありま……
ザザ 手短に言いますから聞いて下さいーー
そう言ってから一拍置いて続ける。
ーー今から言 ザザ……
外見に合致する者を見付……ザザ
私のところまで連れて……ザザ
そちらから近い場所にいると思わ……ザ……
珍しい、とセイラは思いつつも瞑目し
集中して声に耳を傾ける、ストレッチは続行中だ。
ーー少し陽に……ザ
肌、黒髪……ザ 黒い背負い袋、魔力は抑え……ザ
なので逆に見付けやすいでしょう。
セイラであれば心配は要らないと……ザ
念のため警戒されないよう注意して探りなさい……
無理を ザザ……ゴメンねセイラ)
先方は最後だけ友人口調に戻り寂しそうに連
絡を終わらせる。
所謂念話での会話であるが、
先方の居る場所からセイラのギルドまでは
かなり遠くその間にとんでもなく強力な結界が
あるため、
例え少々の距離は関係が無く、
強力な魔力パスを構築している者同士の
念話といえど敵方に気付かれないよう時間も限られ
魔力も抑えるためパスも不安定になっていた。
それでも内容は充分に伝わっていた。
その連絡を聞き終えたセイラは
同時にストレッチも終了させる。
(フン、なにが「ゴメンね」じゃ。
それはこっちのセリフじゃわいーー
少し俯き加減で心の中で独りごちるセイラ。
気持ちを切り替えたのか、
セイラは肘を付いて指で顎を支えながら思案する。
先程までの寂寥感はもうない。
今は久しぶりの友人からの依頼に対する
責任感で漲っている。
ーーしかし、なにかと思えば人探しか)
しかも朝来たあの小僧ではないのか?
ククク、ワシも運が良いわい。
日頃の行いのお蔭じゃの
ーー誰か傍で聞いていれば
それは絶対に違うと突っ込んでいるだろうーー
もう一度換金に来るじゃろうから
その時キッチリと確認してやるわい。
まぁ間違いないじゃろうて。
待っておれよ、
何に繋がるのやら分からんが只事ではあるまい。
口八丁手八丁で必ず連れて行ってやるからの!!)
と、鼻息を荒くするセイラであったが、
セイラは忘れていた。
そう、
彼女はそういった画策に
トコトン向いていないと言うことを……
一方依頼はしたもののーー
ーー大丈夫かしら?ケンカして連れて行けない…
なんてことにはならないでしょう……
とは言い切れませんね(汗)」
少しばかり焦りを募らせたマザーこと
ゼヒライテであった。




