~57 また厄介事を……~
世界武闘技大会8日目です。
今日からは決勝トーナメント。
わたしの試合もお昼からの第3試合に組まれています。
今は第2試合が終わったところです。
簡単に経過を説明いたしますと、
決勝トーナメント 第1試合 勝者 魔人ゼット
結果はご覧の通りで魔人さんが終始光翼さんを圧倒。
闇属性魔法と近接戦闘で決着を付けました。
光翼さんは聖属性と光属性を組み合わせ遠距離から
攻撃したかったようですが、
魔人さんのスピードに付いていけなかったようです。
お疲れさまでした。
そして、
決勝トーナメント 第2試合 勝者 天眼のラピス
「フフフ」
「く、うごけないぞー」
天眼とはラピスさんの額に現れる第3の眼で、
神の眼とも呼ばれる多岐に渡る現象を発現する魔法効果
を伴う神の力の一端です。
またタケルが動けなかったも麻痺の効果がある視線を受けて
しまったからです。
まぁ実際はもう目的の8強まで来てますから、
早く適当に負けようというタケルのダイコン役者っぷり
が発揮されているだけなんですけどね……
という訳で、魔人さんと天眼さんが勝ち上がりました。
そして私の出番はこの後ですからお昼食べたら
直ぐに行かなくっちゃ!
「もっと早めに食っとけよ」
「試合見てたら忘れちゃってたんですよ」
「お腹痛くなって敗けるぞ」
「回復魔法ありますから大丈夫です」
回復魔法? いつの間に……
「モグモグ、
それより今日は服も汚れなくて良かったですね。
昨日ベックスさんから服も買いましたし」
「光翼さん強かったし、あんな感じで良いだろ」
「天眼ですしねぇ」
「そうそう」
ホ~
「いい天気だなぁ……って言ってる場合じゃないんだよ。
そろそろ出番だし早く行け」
「はぁ~い」
今日はマニスちゃんも応援に来てないし……
でも他の方たちも応援に来てくれてますし
頑張らないと!!
まぁ次の試合は来てくれるって言ってたから、
また名物グルメを教えても~らおっと!
緊張感の欠片もないサクラ。
それでも敗ける訳にはいかないため気持ちを切り替え
闘技場へ向かう。
決勝トーナメント サクラ vs 絶対防御のゼノン
ゼノンの装備はシンプルだ。
身の丈ほどもあるタワーシールドと通常よりも大きな
片手剣である。
どちらも補助魔法で強度を上げており、
特に盾は巨人族の一撃をも耐え得ると豪語している。
また彼の持つスキル「絶対防御」は、
魔力を込めれば込めるだけ自身の筋力に乗じて防御力が
上がるスキルだ。
また彼は最近、攻撃の軌道が見えるスキル「予測」を
習得し防御には絶対の自信を持っていた。
闘技場中央で対峙するサクラとゼノン。
「これまでの試合は全て初撃で倒していたようだが、
今日は無理だと思っておけ。
その華奢な身体を圧し折ってくれる」
「……」
「ハハハ、怖気づいたか。
まぁ構わん、直ぐに終わる。審判、開始してくれ」
ゼノンの口上の途中で観客席をチラリと確認した後
サクラは何も聞こえていなかったーー
メイン会場 観客席
「あーーーー!! やっと見つけましたわ!!!!」
大きな声でタケルを指差し他の観客の声も無視して
近付いて来るのは、
「わたくしよ、わたくし!!」
わたくしだそうだがタケルは、
「ああ、詐欺ね。 警備のーー
スキル「千剣繚乱」はスピードが無いと習得できない。
流石のスピードでタケルの口を抑えにかかる。
ーーム、ムグムグ」
「ちょっと大人しくなさい!! 誰が詐欺よ!!」
闘技場中央
「はじめ!!」
ゼノンは絶対防御を発動し、これまでの試合を一撃で
決めてきたサクラに対しカウンターを合わせる作戦を
立てていた。
(フフフ、初撃を見切りそこに全力の、
俺の最も得意とするシールドバッシュと
スキル「一点突破」を合わせた「剛撃」を叩き込んで
やろう。
なに、少々やり過ぎるかもしれんが回復魔法師もいる
ことだし大丈夫だろう)
そんなことを考えていたゼノンの耳に地獄の底から
聞こえてきたような笑い声が響く。
「ウフフフフフ……」
俯き加減のサクラの顔はゼノンからは見えないが、
審判はサクラから漏れ出る尋常でない真っ黒な影が、
目は吊り上がり口から牙が出ている般若の顔を
サクラの後ろに形作られていくのを幻視し、
猛烈な勢いで闘技場の端まで後退る。
黒く微笑むサクラ。
審判の可笑しな行動を見て、
そしてサクラを見るゼノン。
「ヒィ!!」
怖かったようだ……
「ゆ・る・さ・ん!!――
嫉妬やらなにやらを綯交ぜにした感情を
爆発させるサクラ。
ーーシね!!!!」
スキル「予測」で単なる蹴りが来ることが分かったが
何やらコワ過ぎて、
反射的にタワーシールドに隠れるゼノンだが、
ゴッッバキバキバキーーーー
ドッッガァァァァァァァーーーーーー
……
盾はバラバラに砕け散り、
闘技場と観客席を隔てる壁に減り込んだゼノンは
当然戦闘は不可能と判断され、
しょ、勝者、サーー
勝ち名乗りを聞くこともせず、
サクラは既に動き出していた。
観客席へ直接乗り込もうとするも
障壁が張ってあることに舌打ちしつつ、
慌てて回復魔法師が向かう横を入れ違いで、
闘技場入り口から光の速さでタケルの座っている席まで
戻ってきていた。
メイン会場 観客席
漸く塞がれていた口が解放されたところにサクラが
帰って来たのを見付けたタケル。
「ハレ? サクラ? 試合は?」
「ああ、この人連れなのね。
ってちょっと怖いのですわ」
わたくしさんは口から手は離したものの未だ背中から
両腕を回した状態でタケルにくっ付いている。
「は……」
「は?」
「離れなさいっっ!!!!」
ゴッッッパァァァァーーーー
アレ、お星さまが見えるよ……
★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★
強烈なアッパーカットで、
全日本ジュニアに推薦されるのではないかと思った
タケルだが抗議はしている。
「あのさぁ、モグモグ、段々誰かに似てきてんぞ」
「ゴメンなさい、つい、ネ(テヘペロ)」
「うん、そういうとこ」
試合も終わり、
お昼を過ぎたばかりであったため帰りに商会のケーキを
出すカフェに寄っているところだ。
「もう、吃驚したのですわ。
こんなアンデッドに懸想しませんわよ」
「スミマセン」
わたくしさんが何でもタケルに聞きたいことがある
ということなので一緒にお茶をしている。
ちなみにわたくしさんだが
サクラは直ぐに見抜いたようで、
「でも、エレーナさんが、
タケルに何をお聞きされたいのですか??」
ケーキに舌鼓を打ちながら答えるエレーナ。
「ここのケーキ美味しいわね。ん?
ああ、どうやって敗けたのか聞きたかったのですわ」
エレーナの説明によると、
確かにスタミナは厳しい状況ではあったが、
倒れるほどの状況ではなかったらしい。
しかも全力でいくら殴っても倒れない。
極め付けは鳩尾のちょっとした鈍痛である。
「敗けるのは仕方ないですわ、
わたくしが弱いのですから。
ただ敗けた原因だけはしっかりと認識しておきたいの
ですわ!!」
それを聞いたタケルとサクラは、
(ですわ、ですわ言うからもっと怖い人かと思ってたよ)
(ええ、礼儀正しいですし。
ちょっと癖が強いですが真面目な人ですね)
といった感想を持った。
問い質したいエレーナは更に言葉を投げる。
「不躾なのは分かっているのですわ。
どうやって敗けたのか教えてくださいませんこと。
絶対にスタミナ切れではありませんのよ」
少し黙って考えていたタケルだが、
血糊のこと以外特に隠すことも無いので
それを口にする。
「単なる拳撃だぞ、浸透勁とか発勁って言われるやつ」
(あっ、バカ)
「へ?」
……
「……それって地球産の技、あなた異世界人なの!?」
タケルの一言で素性がバレてしまった二人であった。
ブックマークを付けて下さった方、
有難うございますm(_ _)m




