~53 1回戦タケルの出番ですよ~
「同じブロックじゃなくて良かったな」
「ええ、まぁその時は
ガチでヤるだけでしたから(ニッコリ)」
(コッワ……)
(だって結局勝ち残った方が潜入して、
残りが会長とセンターさんをお送りすれば
良いだけでしょ? 計画の支障にはなりませんよ。
潜入にはタケルより私が、
逃げるのはタケル得意でしょ? 適材適所です)
会話をしているのは王都の大通り。
最終の打合せから一夜明けて、
商会を出て会場である「武の聖地」とやらに
向かって歩いているところだ。
ベックスさんは国を出るからこそ毎年やるように
店舗を回って忙しくしている。
後は信頼できる跡継ぎに商会の権利書を譲るという
遺書みたいなのを用意すれば準備は整うようだ。
大きい商会は主人の跡継ぎで揉めないように生前に
そういったモノを準備することもあるんだってさ。
跡継ぎの人は商会起ち上げ時から一緒の女性で
一時結婚も考えたそうだが異世界人である自分が
国に管理された場合を考えて思い留まったそうだ。
話をした時はかなり泣かれたそうだが、最後は
「後の事は気にせずお任せ下さい。
ご多幸を祈ります」
と言われたそうだ。
なんか良い話だけど大丈夫かな?
まぁ突然の失踪になる訳だし残る人達は
知らぬ存ぜぬで通るだろう。
本当に一人しか知らんし。
ちなみにセンターも
「ああ? 女なんぞ面倒臭えよ」
とのことで生涯独身。
とにかく前大戦からの王様の行動が可笑しいし
部下のVVVNo.1~3も可笑しいらしい。
聖光神と付き合い始めてからだそうで、
もう未練はない、と言ってた。
そうそう、彼はハーフエルフで
前大戦まではVVVの
No.2だったらしい。
長生きだねセイラさんやメゾンさんもだけど。
そんなことを思いながら歩いていると、
徐々に大会に出場するのだろうと思われる人達が
多くなってきた。
「サクラの試合は確か後の方だろ?
会場は隣だけど」
「ええ。
第1試合開始が9時ですから私は夕方頃ですね。
試合を観戦しながら待ちますよ」
それよりも、とサクラはタケルに伝える。
「それより、そろそろ第1試合が始まりますよ。
タオルと着替えの入った手提げ持ってますね。
ちゃんと受付で出場者確認してもらって
行くんですよ」
「はいはい、オカンか」
眉を吊り上げ光速でタケルの方を向いて
睨むサクラと目が合う前に
小走りで会場へと向かうタケルであった。
ヴァッケン世界武闘技大会 第4会場受付
「はい、タケルさんですね。
確認しました。
この番号玉を試合開始前に審判に渡して下さいね」
橙色の玉には4ー5と書かれてあった。
(星じゃなくて良かった……)
見当違いなことを思っているタケルと入れ替わりに
受付を行っている者の名前が聞こえる。
「はいエレーナさんーー
「様を付けなさい! 礼儀がなってないですわね」
ーーは、はい、失礼致しました、エレーナ様。
確認が出来ましたのでーー
言い終わる前に
エレーナは番号玉を引った繰って受付を後にする。
少し受付前が騒がしくなったが他の出場者の受付も
あるため通常通りの落ち着きを取り戻す。
(お~コエ~なぁ。
顔覚えられんのヤだなぁ、覆面しよかな……
無いけど。
とりあえず控え室に手提げ置きに行こっと)
そんなことがあっても時間は関係なく進み、
とうとうタケルの試合が開始されようとしていた。
第4会場 第4ブロック 第5試合
審判3名が回復魔法師を呼んで何事か確認した後、
それぞれが所定の位置に向かう。
「オオー!! 本当に出てるぞ!!」
「タケル~~!! ガンバレよ~~!!」
ーーオオ~ガンバレ~!!
ケガすんなよーー
フロ入れよーー
歯磨けよーー
ウィーーー
ーーワイワイ
(おお、ホントに来てくれたんだ。
嬉しいけど、誰だ8時に集合したの?
後は酒飲みにきてんなぁ、楽しそうでイイな~)
少し手を挙げて声援に応えると同時に対戦相手が
入場して来る。
ーーザワザワ
おお双剣かぁーー
あれが獣王国のーー
スゲー美人だなーー
キツそうーー
ガヤガヤガヤーー
タケルは名残惜しそうに
番号玉を審判に手渡している。
審判は困惑気味だ。
番号玉に別れを告げ、
闘技場の中央に進み対戦相手と対峙するタケル。
「えらく声援が多いようですわね、気の毒に」
「うん」
ピクッ
「ふん、しかも普段着ではなくって? しかも素手。
それとも魔法師かしら?」
「う~ん?」
ピクピクッ
「……あなたも礼儀がなってないようですわね。
わたくしが躾けて差し上げましょう」
ビクッ
「……いや、それはちょっと、そんな、初対面なのに」
「あなた何を言っているのかしら?」
「いや、だからそんな初対面で、
いきなりそんな、はしたない♡」
「アホかーーーー!!
んなことするか!! もういいですわ!!
試合を始めなさい!!」
番号玉を渡された審判同様、
中央の審判もアホな会話に困惑気味だが
試合は始めてくれる。
「は、はじめ!!」
「もうシになさい!! 双剣技、千剣繚乱!!」
シャシャシャシャシャシャーーーー
『オオー! これは速い!!
初めて拝見しますが、
噂に違わぬスピードとスキル!!
タケル選手は既に血塗れ!!
避けるので精一杯か!!
これは時間の問題かあ!?』
(ヘェ~実況やるんだ、解説とかいるのかな?)
シャシャシャシャシャシャーーーー
シャシャシャシャシャシャーーーー
シャシャシャシャシャシャーーーー
『こ、これは、
血塗れですが血塗れのまま避け続けてますね。
スゴい気合いと根性ですね。
同じ闘技者として敬意を表したいですね』
薄皮一枚当たっているような当たっていないような
状況に業を煮やしたエレーナ。
「ふん、なんとか避けるているようですわね。
血塗れですし血が跳んできてもイヤですわーー
そう言って、
何かを唱えながら一旦後ろに下がるエレーナ。
ーーこれで、終わりよ!! イグニア!!」
『なんと!!
これは火属性中級魔法イグニア!!』
『これはタケル選手も逃げ道がないですね』
ゴォォォォオオオーーーー
キャアアーー
ウオッーー
観客達の声が聞こえるが観客席と闘技場の間には
円形に分厚い壁と魔法障壁が張ってあるので
安心である。
(セイラさんのと比べると何か薄いね。
でも炎とかないわ~
着替え持って来といてヨカッタ)
そんなことを思いながらも、
服だけを絶妙に焦がしつつ、
どこかのアクション映画のように両腕を十字にして
頭から転がりながら炎の範囲から逃れたタケル。
「逃がさないですわ!!」
シッ!!
転がって出てきたタケルを仕留めるべく
双剣を振るうエレーナ。
ゴォロゴロゴロゴローーーー
転がる勢いが途中から一気に速くなったため
タケルから狙いが外れ歯噛みするエレーナ。
所々焼け焦げているタケル、
しかも血塗れでゴロゴロ転がっている……
「き、気持ち悪いヤツですわね。
今度こそ終わりよ!! ズ・ルール!!」
『スゴい!!
古代魔法に分類される重力魔法だーー!!
タケル選手の足を止めに来たぞーー!!』
『驚きましたね、ここまでとは。
これは流石に厳しいでしょう』
ズッ
「ウ、ウゴケネェ」
「そう。
今あなたには約200kgの重さが掛かっていますわ。
立っているだけでも大したもの。
褒めてあげますわ」
フッ、とキメ顔のエレーナがタケルに近付き
剣を振り上げたところで、
「おりゃ、あ」
とタケルが超遅いパンチを
エレーナに向かって放つ。
ぺシ
『こ、これはスゴい根性だーーーー!!
タケル選手、一矢でも報いようと……グス。
失礼しました』
『スバラシイ、しかし勝負とは無情なモノ。
せめて拍手を送ろう……パチパチパチパチ』
……
「ふん、見上げたものですわね。
その根性に敬意を表して、
最後は素手で気絶させてあげましょう!!」
ゴスッ!
「うお、お」
ぺチ
「? 気絶させてあげましょう」
ゴッスゥ!!
「ええ、い」
ピチ
「き、気絶させて」
ドドドドゴッスゥ!!!
「とりゃ、あ」
ポチ
「き、気絶」
ゴゴドゴゴゴゴーー
「う、あ」
ぺ
「き、気……」
ガガガガガドカーーーンーー
「あ」
ピ
……
『グス、し、失礼しました。
タ、タケル選手驚異の粘りでまだ立っております』
『ウォォンーー
『解説の朱剣のマーカス様も言葉になりません!!』
(マーカス様って言うのか。知らんけど)
『しかし無情にも時間が迫って参りました!!
よく、本当によく粘りましたタケル選手!!
このままでは判定で負けてしまうでしょう……
しかし、しかし、ここに新しく、
このスバラシイ試合が大会の1ページとして
刻まれることでしょう!!』
(イヤだよ!! こんな試合!!)
しかしハァハァ言いながら
なかなか倒れてくれないんだよなぁこの人。
いい加減スタミナ無いだろうに。
とは言うもののサスガに時間がヤバいからーー
ーーバタッ
『!? オ、オオーーーーっと!!
た、倒れたぁーーーー!!
エレーナ選手倒れたぁーーーー!!』
『!? ス、スゴい!!
エレーナ選手は全力で殴打してましたから
スタミナ切れでしょう、粘り勝ちですね!!
いや、スバラシイ!!
パチパチパチパチパチパチ』
勝者タケル!!
と審判のコールが響き、
勝ち名乗りでタケルの手を挙げるため
近付いてくる審判は、
血塗れで焼け焦げてキチャないヤツを触るのが
イヤそうだった。




