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~48 ベックスとセンター ~



 ベックス・ジャパン・マクフェイルは

 マクフェイル商会会長である。


 前身はジャパン商会と言って

 小さな卸売業を営んでいた。


 当時ベックスは国内のミスリル鉱山から出る

 小さ過ぎて使い物にならないミスリル、

 所謂クズミスリルを集めていた。


 ミスリルとは魔法電導率の高い魔道具や

 魔剣の素材になる鉱物である。

 希少性は低くはないが一般に流通している程度の

 高さである。


 他にアダマンタイト、ヒヒイロカネなどがあるが、

 これは希少性も高く国の管理になっていることが多い。


 使い道の無い捨てるだけのそんなもので何をするのか

 皆理解出来なかったが、

 まぁ少しでも売れるならと各鉱山から集めたミスリルで

 ベックスはある研究を行っていた。


 数年の研究後、

 開発された物が「魔力撹乱弾」といわれる

 新商品であった。


 クズミスリルを更に小さくして撒き散らすことで

 魔力探知を阻害するもので、

 これが冒険者の安全に一役買い国内ギルド全てに

 定期的に卸すまでになった。


 その商品に目を付けたのが

 現在の国王ヴルカヌスである。


 直径2cm程の球状の容器に入ったこの商品は、

 軍事用にも転用され詠唱阻害であったり、

 また連絡用魔道具の通信阻害など、

 魔法で阻害するよりも手軽に行えるということで

 国の基本軍備に採用されることになった。




 この頃からベックスの災難が始まる。


 軍事的また冒険者の安全にも多大な貢献、

 またこの頃になると国内でも有数の商会になっており

 経済的な側面でも国を支えているという理由から

 陞爵することになったのだ。


 そしてベックスは転生者である。


 孤児に転生した彼は前世の知識と授かっていた

 アビリティ「実用新案」「商売上手」

 を利用して必死に生きてきたのであった。


 魔力撹乱弾も、

 レーダーを阻害するチャフからヒントを得たものだ。


 そんな彼の何が災難かというと、

 VVV(ブイスリー)と言われる国王直轄の組織のNo.5に

 抜擢されたからだ。


 VVV(ブイスリー)は国王の選んだ

 優秀な特別補佐官が就く役職で、

 大臣よりも上に位置し正に役人のトップである。


 ただそんな優秀な人材の国外流出を防ぐため、

 常時護衛という名の監視が付き自由が効かない。


 数年前からベックスは息が詰まって仕方がなかった。


 自分は知らない世界で不安な中、

 結婚もせず必死に生きてきただけで、

 偉く成りたかった訳ではなかった。


 特に同盟国である聖光国の戦争有りきの政治方針には

 辟易しており国王のヴルカヌスがなぜ聖光国アン女王に

 あそこまで偏執的といっても差し支えないほどに

 固執、執着するのか分からなかった。


 それによってヴァッケンが暮らし難い国になっており、

 身の安全が保証されるのであれば今すぐにでも

 現在の地位を放り出して他国に渡りたいと思っていた。


 



 センター・ヴェイン・マクダウェル


 彼とベックスは生まれも育ちも全く異なるにも関わらず

 なぜか馬が合ったーー


 ーーそれが実はセンターも転生者であることから来る

 親近感であったのは

 今までお互いに分からなかったのだが……


 センターも国の方針また性格上のことも含め、

 ガチガチに縛られた今の生活にウンザリしていた。


 国境を越えられるのは隣の聖光国に行くか

 中立地帯のエルフの森くらいしかなく、

 ベックスとの素材採取は良い息抜きになるので

 護衛も兼ねて嬉々として付いていくことが多かった。


 そんな彼は王都の警備責任者であり。

 ある特殊能力の保持者であるため

 長らくその任に就いているVVVのNo.4である。


 そしてそういったことを常日頃感じている二人が寄ると

 どうにかしてここヴァッケンから逃げ出せないか、

 という話になるのであった。



 そんな思いを抱く、

 今回の武闘技大会の商業面を取り仕切るベックス、

 警備面を取り仕切るセンターは

 現在打合せの最中である。




 王城ヴァスト ベックス執務室


 センターはベックスに対し

 仕事の忙しさを一頻り労った後、

 武闘技大会の警備について簡単に打合せを済ませる。

 例年のことなのでそんなに時間は掛からないのである。



「警備はそんなもんしょ。

 んで? 耳なら今は大丈夫だぜ」


 部屋内外の耳に注意しながら話し出すベックスは、

 タケル達について簡単に説明する。


「どう思いますか?」

「大会出場者ねぇ~

 とりあえず俺が見た限りでは

 シロなのは間違いねぇな」



 他国の間者では無いようで

 ホッと胸を撫で下ろすベックス。

 


「なら、彼らに依頼するのはどうだい?」


「ん? その前に、

 シロってのは今までも居たが

 何でまたあいつらなんだ?」



 少し言い淀んでから意を決して話し出すベックス。


 自分が異世界からの転生者であり、

 センターには分からないかもしれないが、


 彼らとの会話を思い返すと

 間違いなく「ジャパン」という単語に反応しており

 自分と同じく転生者もしくは転移者であろうと

 推測できたこと。


 その後の会話で「GO」について言及したことも

 推測の確実性を増す要素となり

 自分と同年代ではないか、

 と思っていることを打ち明けた。



 それを聞いたセンターは、



「……なるほどね。

 驚愕の事実ってヤツだが

 依頼する根拠には薄くねぇか?」


「やっぱり厳しいかな?」


 一拍置いて答えるセンター。


「……ククク。

 い~や、乗ったぜその話。

 特に「GO」んとこが気に入った」


「エッ!?」


「分かんねぇと思っただろ~? 実は俺もそうだ」


 今度はベックスが驚く番になる。


「そ、そうだったのかぁ。

 もっと早く打ち明ければ良かったよ」


「いやいや俺も警戒して誰にも話してねぇからな」



 お互いの素性を打ち明け少し安心した二人は、

 同郷者であり

 また素性を隠しているであろうタケル達を訳有りと考え

 同じ立場の自分達を助けて欲しいと

 訴える方向で話を進めた。


 ダメならダメで口止めだけでもすれば

 お互い素性を隠しているため、

 それくらいの条件は飲むだろうと考え

 そこはクリアしたが進めるに当たって

 ひとつ問題が有った。



「あと問題は、

 俺達の保護をどうやって魔国に伝えるかだな」


「返事は中立国のエルデを通して

 商隊に紛れ込ませれば何とかなるんだけど……」


 二人が亡命するなら魔国と決めているのは

 単純な理由で、

 聖光国と当然ヴァッケンとも真っ向から敵対しているから

 である。


 頭を悩ませる二人であったがセンターが口火を切る。



「とりあえず外の奴等だし、

 魔国に行ったことがあるか聞いてみりゃどうだ?」


「……そうだね。

 検問は厳しいけど全く入国出来ないことはないし。

 密かに魔国出身だったりして」


「タハハ!

 そりゃ無いにしても俺たちよりゃ

 自由に動けるだろうしな。

 折角の機会に何もせずにいるよりゃよっぽどマシだ」


 センターがそういったところで、

 結構な時間が過ぎており怪しまれないためにも

 一旦お開きにしようということになった。


 今後はタケル達からの情報を持って

 計画を進めるかどうかを決めることになった。



「じゃあまた連絡するよ」


「ヘイヘイ、くれぐれも慎重にな」



 こうして

 タケル達の巻き込まれ要素が多分に含まれた事態が

 動き出そうとしているのだった。



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