~46 国境での出会い~
「な、なんなんだあいつら……」
「は、速過ぎる……」
「キ、キレイ♡」
観覧席の兵士たちはタケルとサクラの模擬戦についての
感想を言い合っているようだ。
一部サクラのファンも出来たようだが……
左掌を振り振り痛さを我慢しているタケルにサクラが
感想を聞く。
「どうでした?」
「オ~イテ、ん? あぁスゲーと思うぞ」
「……なんか適当な感想」
「まぁまたゆっくりな」
「フ~ンだ」
ベぇっ、と舌を出したサクラは
クルリとタケルに背を向けた。
後ろを向いたまま両手を握り締め嬉しさを噛み締める。
初めての実戦で思い通りに動けたことに。
そして少しでもタケルの力になれると実感したことに。
一方タケルはーー
うわぁ、ヤベーなぁ……どうすんだよ~
2秒で双葉覚えてるじゃん……
もう師匠の後継者はサクラでよろしいんじゃ……
でも結局怒られそうだし何か良い言い訳ないかなぁ……
ーー師匠に怒られない方法がないかを
模索するので精一杯だった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「あとはワシが話を付けるから
お主等はヴァッケンへ行け」
ここは先程食事をしていた貴賓用食堂。
セイラがエールを飲みたいので
再度こちらに集まることに。
他には当然アリア、そしてソニアが居る。
バロンは闘練場で指導のため
セイラ、タケル達と挨拶を交わし辞している。
「フン、バカが。大会への許可の欄は
ソニアの実家エルゲンハイム家の名前で書いて置いた。
サインも当主のソニアがしている。問題はないだろう」
アリアの言う隣に立っているソニアが軽く黙礼をする。
「ありがとうございます」
タケルがそう言うとソニアは気にするなといった風に
首を横に振る。
「ウム、助かったソニア礼を言う。
確かお主の実家はエルフの森近くが領地じゃったの。
出身地的にも完璧じゃワイ」
そう言ってセイラは、
二人の大会申請書類をタケル達に手渡した。
「ありがとう、セイラさん。
アリア女王様もソニアさんも有難うございました」
「有難うございました。お手数お掛け致しました」
そんなことよりと、アリアが溜め息を一つ吐いて話始める。
「フン、バカが。はっきり言ってまだ信じられん……
が、事実だ。
しかも二人共まだ余力があるなどなんの冗談だ」
その言葉に反応したセイラ。
「フッフッフッ、じゃから言うたじゃろう?
戦力が整ったと」
「……フン、バカが。
なんにせよ今からじっくり話し合うぞ!
小僧共の話もあるしな」
「フン、望むところじゃ!!」
あ~フッフッフッが出たときはどうなるかと思ったけど
そろそろ流行も終わりか。
あっ!! フッフッフッで思い出した!!
後でサクラのギルドカード見せてもらお。
フッフッフッもたまには良いことあんな。
セイラとアリアの盛り上がりを他所に
タケルがそんなことを考えていると、
「それではなタケル、サクラ!!
また合流するからの。
まずは気を付けて行け。
お主は戦闘以外はバカバカじゃからな。
まぁサクラがおるから心配ないじゃろ。
ホレ行け、すぐ行け、いま出て行け」
最後は出て行けって言ってるよ、ムチャクチャだ。
それよりも、だよ。
大事なことを言わないとな。
「分かったよ、行く行く行くけど……
その前に食べ物を恵んでください……」
そういえば、と。
タケルもサクラもセイラがエールを大量に飲み
美味い美味いと言ってる横に居た姿しか見ていないのを
思い出したアリアは、
給仕達に慌てて指示を出したのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「んじゃまたね、セイラさん!」
「またお会い出来ることを楽しみしてますね!」
ここはもう王都の外門。
アリア女王やソニアさんにもお別れを言って
城を出たオレ達はヴァッケンへ向かうべく
王都を出るところだ。
セイラさんは話し合いの前に見送ってくると言って
出てきてくれた。
その間に会議の準備をするんだってさ。
「ウム、心配はしとらんが何かあれば渡した
その連絡用魔道具で連絡してくるのじゃぞ」
「ハイハイ。
セイラさんは暴れて牢屋に入れられて助けて!!
とかで連絡して来ないでね」
「ウルサイわ!! んなこと……なるか!!」
(いま自信なかったんだな)
(はい……)
「そら、もう行け。終わらんワイ」
「そだね、じゃあね!!」
「ではまた!!」
そう言って歩きながら手を振り振り離れていく二人を
腕組みをしながら見えなくなるまで
見送っていたセイラ。
見えなくなっても暫くその場に佇んでいたが
徐に踵を返すと少し見えにくくなった目も気にせず
王城へ続く雑踏へと足を踏み出したのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「なんかセイラさん変だったな」
「ええ、いつもなら絡んで来そうなものですけど……」
「ウ◯コかな?」
「低学年ですか!? チガイます絶対」
「ホントに? 何もかも怪しいからなあの人」
「否定し切れないところがちょっと……」
会話をしながらの二人だが街道脇の森の中を
隠密と隠蔽を掛け情報収集しながら一気に駆け抜ける。
王都アリアとヴァッケン国境までの距離は100km程度
二人に取っては苦になる距離でもなく数時間後には
国境へと差し掛かっていた。
獣王国アリア、聖炎国ヴァッケン国境
ガヤガヤーーー
「結構な人だねぇ」
「ええ、商人さんが多いと思いましたが、
明らかに大会に出場する方々が混じっていますね」
「ああ。
それでさサクラ、王都のギルドに着く前後かなぁ?
あんま喋んなくなっただろ、あれなんで?」
「興味無くすの速! 幼児ですか!?」
もう、と少し渋い顔をして答えるサクラ。
「あれは、わたしの頂いてる服が
ホントに骸骨婦人さんの服かもしれないと思うと
申し訳なくて……少しヘコんでたんです」
「あぁ、なるほどね。
ダグザんが着るよりよっぽど良いと思うけどなぁ」
「しかし呼び方が決まりませんね……
まぁそれでもですよ」
「そっか、じゃあヴァッケンで服買おうぜ!」
「あっ! そうですね、それでこの服をお返しします!」
「有り金144デルフィだけどな……」
「……」
そうこうしている内にタケル達の順番が回ってくる。
「はい次、ギルドカードか身分証出して」
オレ達はセイラさんに言われた通り大会の申請書類を
国境警備隊の兵士さんに渡す。
「二人連れね、オワッ! スゴい美人さんだねぇ」
「ウフフ、有難うございます」
美人て得だなぁ。
セイラさんもムチャクチャだけど美人だから
何かと罪が軽減されてるように思うし。
「ハイ、書類問題なし。
じゃあ、通関料は美人さん割引で1デルフィね」
オオ~、1デルフィとはスゴい割引率だな!!
ていうか、お金要んの? 大丈夫かな?
でも144だからな(テヘ)、アブね!
セイラさん居なくても影響あんな。
「ハイ、じゃあ連れのキミは19999デルフィね」
ウォォォォォォイッ!!
タケルが驚いていると、
「いやいや冗談だよーー
どっちが?
ーー俺ら一般兵に割引権限なんて無いよ。
2人で20000デルフィってこと。お願いしますね」
……
オレ達はかろうじて持っている唯一の荷物。
オレのリュックからお金を探すフリをして
一旦列から離れた。
「……まさかお金要るとかって聞いてないよ」
「わたしも迂闊でした。
色々ちょっと浮かれてました……」
ハァ、しゃあない。
ここからなら王都まで転移で戻って
セイラさんに借りるか、
いくつかギルドの依頼は……厳しいか。
まだランク低いしなぁ、ウ~ン。
タケルが悩んでいると、
並んでいる列から離れて二人に近付いてくる
人影があった。
「もしや、お困りですか?」
(付いて行っちゃダメですよ!)
(ナンパか!?)
善意からの声掛けである可能性を捨てて
失礼なことを思う二人に
知らない男が声を掛けてきたのだった。
更新が遅くなりましたm(_ _)m




