~44 わたし達の紹介は……~
ーーといった感じで
来る度に大騒ぎから小騒ぎまで
漏れ無く起こしてくれるもんですから
ホント困ったもんですよ。
それでですね、10年前はですねーー
もう止まらないメゾンのセイラへの愚痴で
既に白眼状態のタケルは
あと10年分もある愚痴はもう聞くまいと、
無理矢理質問を挟む。
「あ~!!
それはそうと、メゾンさんてエルフ?
セイラさんになんとなく似てるし美男子だけど
肌の色と耳も少し違うね」
ーーん? 有難うございます、そうですね。
わたくしはハーフエルフですよ。
わたくしダークエルフの血が多く出ていますので
肌の色が少し濃いでしょうか?
ハーフの場合耳はそれぞれですね」
ヨッシ!! 逸れたぞ!!
タケルが喜んでいると、
ガチャ
扉が開き二人が戻って来たことで
タケルがホッとしていると、
「出来たぞい、フッフッフッ」
「フッフッフッ」
ギルドカード作成と
申請書類が出来上がったようだが、
戻ってきた二人は
同じように不敵な笑いを浮かべている。
「とりあえず二人共お疲れさん。
ありがとねセイラさん」
「あぁ、お済みですか?
それではお茶菓子とお茶をーー
と、メゾンさんが言い終わらないいうちに、
ーーいや、お茶菓子は惜しいが結構じゃ。
世話になったのメゾンよ。フッフッフッ」
「フッフッフッ」
……
なんかキモチ悪いな……なんなんだ?
フッフッフッばっか言ってるけど、
メゾンさんにはしっかりお礼を言って、
セイラさんは何か本を渡してたなぁ。
メゾンさんメチャクチャ喜んでたから
ヨカッタヨカッタ。
これでまた騒ぎ起こされんの確定だな。
ほいでもって次は王城か。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「って、もうお城だけど、
フッフッフッしか聞いてないよ。
サクラのステータスいつ見せてくれんのさ。
って、ちょっと!!」
タケルがセイラに声を掛けるが、
無視して王城第一門の門番に近寄っていく。
あまりに偉そうにズンズンと威圧を振り撒きながら
近付いていくため
門番の兵士は持っているハルバートを
今にも構えそうである。
あっ構えた。
「オイ!!」
「ヒィ!!」
あっ斬り掛かった。
あっ止めた。
あっ腹キック。
あっ気絶した。
……
この後、呆然と見ていたオレとサクラの周りにも
衛兵が集まって来たが、
隊長さんらしき人がセイラさんのことを知っており
城まで案内をしてくれた。
メゾンさんがあんだけ愚痴んの分かるわ……
んで、セイラさんがメシメシうるさいので、
城に連絡を取った門番の隊長さんが
来賓用の食堂に案内してくれた。
ホントすみませんウチのバカが、言わんけど。
……
セイラの大きな声が響き渡るここは王城アリア
ーーまたアリアかよ!!(タケル談)ーー
の貴賓用食堂の一室。
「なんじゃバロン、その格好は!?
ギャハハハハハハ!!」
腹を抱えて笑うセイラに苦笑いのバロン。
「そう、言わんで下されよセイラ殿。
自分でも分かっておりますよ似合わんことぐらい」
そういうバロンの格好は頭に菱形の角帽。
全身を覆う濃緑色のローブに片手には魔法書を持ち
もう片手には教鞭を握っている。
知らない人が見れば特に可笑しな訳でもないのだが
セイラは大受けしており笑い止むまで
一頻りかかったのであった。
「あ~~笑った笑った。
最古参の重鎮バロンをネタに使ってまで
ワシを歓待してくれるとは、
アリアには後で深く礼をせんといかんの」
先程からセイラが笑い転げては話し掛けている
この男はバロン・フィーネ・アーデルハイド。
セイラの先程の言葉通り、
ここ獣王国でフィーネの街の名前がミドルネームに
入るほどの最古参の重鎮である。
簡単にプロフィールを紹介させて頂くと、
彼は銀獅子族の族長で「銀獅子王」でもあり、
血筋も女王と親戚関係にあり近衛隊の隊長も務める。
また戦場での獅子奮迅の活躍を見たことがあるセイラが
今の彼の格好を見て噴き出すのは
無理もないことであるのだが、
それにしても笑い過ぎではある。
「セイラ殿には敵いませんなぁ。
一応これでも強面で通っておるのですがなーー
苦笑いの中にも
懐かしさを噛み締める表情のバロンが一拍置いて
ーーそれはそれとしてセイラ様、
この度は如何されましたか?」
給仕が準備したエールが入ったグラスを傾けながら
ん? といった表情のセイラ。
「あぁ、アリアも知っておろうが、
そろそろ聖光神が動き出すじゃろうしのーー
そこでグラスの中のエールを一気に飲み干して
言葉を継ぐ。
ーーップハァ!!
相変わらずアリアのエールはうまいのう、
格別じゃわい!!」
クックックと楽しそうに笑うバロン。
「そうそう、そうじゃ。
そろそろ中立国など言うとらんで協力するよう
話をつけに来たんじゃ」
給仕にエールのお代わりを要求するセイラは
横目でバロンを見る。
一拍置いてバロンは、
「……なるほど、そうでしたか」
苦虫を噛み潰したようなバロンが
何も答えないのを見てセイラは話題を変える。
「まぁ、それはアリアと話をつけるワイ。
ところでの、
お主がそんな恰好をしとるということは
講義であろう?
どうなんじゃ小僧共は、少しは使えるのか?」
「流石にご存知でしたか」
「1年近くも前の情報じゃろう?
それぐらいはギルドにおれば
嫌でも入ってくるわい。
ヴァッケンの大会にも出場させる予定じゃろうが」
バターンッ!!!
と大きな音を立てて、
貴賓用食堂の大きな扉が開き切るまで押されたため
壁に当たって大きな音を立てた。
開け放たれた扉の真ん中には、
ババァーン!!
とでも効果音が鳴りそうな勢いで
セイラと同程度の身長の女性が腕を組んで
仁王立ちしていた。
ケモミミと尻尾も見える。
「フン、バカが。それについては俺が答えてやろう」
獣王国女王
アリア・ウィント・アーデルハイドであった。
ショートカットではあるが
エメラルドグリーンの髪を靡かせた
見た目20代前半。
身長もセイラに負けない180㎝程。
如何にも気の強そうな吊り上がった眉を
更に吊り上げ、
アンバランスに可愛らしい獅子の耳と尻尾を
持った女性。
美人と言える容姿である。
服装は来賓の相手をしていたのか、
この国の色を表す薄い緑のアンクル丈のパンツと
ジャケットに、
白色のこれまた高そうなシャツを合わせている。
ジャケットには一部金の刺繍の入った縁取りが
入っており
如何にもタ○ラジェンヌを彷彿とさせる。
靴は木を表すのような茶色のショートブーツで
蹴られたら大変に痛そうである。
「フン、バカが。
久しぶりじゃないかセイラ」
やおらセイラは立ち上がり、バロンは跪く。
お互い歩いて顔が触れるような距離で立ち止まり
顔を見合わせる、というより睨みあう。
身長が同じぐらいなのでお互い腕を組んだままで
見上げるでもなく見下ろすでもなく
丁度良い視線の位置である。
良いのは視線の位置だけで雰囲気は真逆であり、
周囲は給仕たちも衛兵もヒヤヒヤであり、
バロンも跪ずいて落ち着いているように見えるが、
チラチラとその一触即発にも似た様子を
背中に冷や汗を滲ませながら窺っている。
「フン、相変わらず下品なチチじゃのう」
「フン、バカが。貴様にだけは言われたくない」
「フン、それより早う説明せんか」
「フン、バカが。とりあえず俺は食事がまだなんだ。
先に食べさせろ」
「フン、では早く食べんか」
「フン、バカが。
貴様がデカいチチを垂れ流してそこに立ってるから
卓へ行けんのだ」
「フン……ダーーーー!!
誰が垂れ流しておるのじゃ!!
キッチリ上向きであろうーー
パンパンッ!!
掌を叩く大きな音にセイラもアリアも
その音の方向へと眼を向ける
「フンフンフンフンと
お二人で何をバカな言い争いを
していらっしゃるのですか!!
サッサと座ってサッサと食べてください!!
周りの者達が困っておりますよ」
女王とその旧知の友人ということで誰も、
バロンですらも注意出来なかった
バカな言い争いに終止符を打ったのは、
バロンと髪の色は似ているが銀虎族であるソニア。
女王アリアの傍仕えの長である。
そんなソニアは
攻めるような視線をアリアに向ける。
「なんだソニア?
お前は俺よりこのデカチチの肩をもつのか?」
その一言で何やらスイッチの入ったソニアが
一拍置いて口を開く。
銀の髪の毛が鬣のように逆立ちかけている。
……ゴゴゴゴゴゴゴ
髪の毛もそうだが、
なにかしらソニアの後ろから津波や地震の前触れを
視覚化したような黒いモノが
顕現したように見える。
「……肩を持つ持たないの話ではございませんね
アリア様。
「昼を一緒に食べるぞ!!!」と叫んだかと思うと、
重要な貿易交渉の最中に飛び出して、
失礼の後始末を片付けて追いかけましたら、
フンフンフンフンフンガーーー
と時間もないのに不毛な言い争い」
……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴ大きくなっているぞ(タケル談)
「確かにセイラ様は何より大事なお客様ですが、
時と場合を考えて動いて下さらないとねぇ。
アリア様の双肩には
ウィント全国民の行く末が掛かっておりますこと
ご理解されておられるのでしょうねぇーー
もうソニアの綺麗な長い銀髪は
綺麗に逆立っている。
ーーいつもいつもいつもいつも
重要な会議の時に限って何かやらかしますねぇ。
先日もトイレに行くと言って出て行ったっきり
5時間も経って帰ってらっしゃった時に
なんておっしゃいましたかねぇ?」
今は嵐の前の静けさなのかニコニコとしているが
髪の毛は逆立っている。
ゴゴゴはピタリと止んでいる。
「おおお、お、落ち着けソニア、わ、悪かっーー
遮るようにソニアが、
低い地の底から響くような低い声で
先程の質問の回答を求める。
ーーおぉぉこぉぉたぁぁえぇぇくださいぃぃぃ」
アリアの顔からは汗が滝のように流れ、
当然ワイシャツもビチャビチャで
中身が透けそうになっているが、
それに目を向ける強者はここにはいない……
ゴクリと生唾を飲み込んだアリアは
ゆっくりとその問いに答える。
「……ウーー
セイラもゴクッと喉を鳴らす
ーーウ、ウ○チ、な、長くてゴメンって」
アリアの言葉を最後まで聞くことなく
巨大なソニアダムはとうとう決壊を迎える。
「どぉぉぉんな言い訳じゃ
ゴォルゥアアアアアアアアーーーーーー!!!!」
周囲の給仕たちは瞑目しており、
バロンに至っては落ち着いた雰囲気で跪いているが
よくみると意識をどこかに飛ばすということを
自然にやっているようで微動だにしない。
セイラはというと、
イブリスと自分との関係を比較して
「イブリスって優しかったんだ、
帰ったら優しくしよう」
などと遠い目をして
その阿鼻叫喚の光景を見守っていた。
「や、やめ、イタッ、
イダダダダダダアアアアァァァァッァァァァーー
ステータス敏捷が10万を超えそうな
眼にも止まらない速さの往復ビンタが止まらない
ソニアであったが、
アリアが意識を失っていることに気が付くと、
胸倉を掴んでいた手とは逆の手がやっと見え、
「……何度思い出しても腹立つ言い訳だ、フゥ。
まぁ今日はこれぐらいにしといてやろう、
フンッ!!」
そう言ってアリアを覚醒させ、
セイラが先程食事を取っていたテーブルまで運ぶと
フワリとイスに座らせ、
自身の顎をクイッと前に突き出して話を促した……
まだ怒ってるようだが、
台風の吹き返しのようなものなので
一応嵐は去っている。
ソニアもアリアのビチャビチャのシャツの替えを
取りに去っている
ーーちゃんと仕事はするんだ(タケル談)ーー
もう一度スイッチが入ると
どうなるか分からなかったが
とりあえず一安心である。
聞き辛いのでここからは
一時的に翻訳が付きますご容赦を(ペコリ)
「フム、バガガ。サッぎのハダしヲジてヤロう」
(フン、バカが。さっきの話をしてやろう)
「と、とりあえず回復魔法掛けんか?」
「ブ、ゾウだガ、
ゾじあじカゲてボラうドがギばリダどダ」
(ム、そうだが、
ソニアにかけてもらうのが決まりなのだ)
「(ば、罰なのか?)そ、そうか。
お主も苦労しておるんじゃな……」
そしてシャツの着替えを持ってきたソニアは
何事も無かったようにアリアに渡し、
周囲の給仕たちもバロン含め、
何事も無かったようにその場から離れ、
アリアも何事も無かったように着替え、
何事も無かったように回復魔法を掛けるソニア。
そして何事も無かったように席に着いて
先程の話の続きをしようとするアリアを見ながら、
(しかしまぁ事が起こった時の緊張感は別としても
事後処理は異様に早いの。
……慣れておるんじゃな)
そんなことを思い遠い目をするセイラ。
そして復活したアリアを目にすることで
我に返ったセイラは、ポンとひとつ掌を叩くと、
「とりあえず大丈夫なようじゃの。
話に入る前に、少しああいった場合の対処法の
アドバイスをお主にしてやろう」
と言い出した。
傍らのタケルは「いらん!!」と大声で叫んだ
……心の中で。
しかしそんなことは知るはずもない
アリアは反応してしまう。
「ほぉぉ、そんなものがあるのか?」
「これで貴様は必ずワシに感謝するじゃろう
新技じゃ!!」
「ほぉぉぉぉ、是非聞きたいな、なんだ?」
先程の険悪な雰囲気などどこ吹く風で、
そんな都合の良いモノがあるならぜひ聞いてみたい
ーーそれ程にソニアさんは恐ろしいようだ
(タケル談)ーー
というのも良く分かるのだが……
そしてセイラはとうとう伝えてしまう、
「こうやるのじゃぁぁぁーー
椅子からわざわざテーブルの上へと乗り、
大きく振りかぶってからの、
片目を瞑って人差し指をホッペに当てている。
ーースマン!! テヘ(ペロ!!)」
……
シーン
「(アリア)…………」
「(バロン)…………」
「(給仕たち)…………」
そんなものでソニアの怒りを払拭出来る訳がない、
と思っているジト目のバロンと給仕たちだが、
テヘペロが可愛過ぎてソニアを筆頭に
目がハートになっている者なども少なからず居た。
無論使用するつもりはさらさら無い。
しかしこれまでのことがトラウマになっており
ーーなら、ちゃんと仕事しろ(タケル談)ーー
なんとか逃れたいと思う心とセイラのテヘペロに
骨抜きになりかけていた
ソニアの姿がアリアの判断を鈍らせてしまった。
彼女は後日、セイラの開発した
この新技を使ってしまい
生死の境を彷徨ったという……
ウン、もう一人アホが増えたな。
師匠に手紙書こう、
"この世界はアホが多いです" と。
珍しくサクラもタケルと同じ思いであった。




