~41 感謝感激です(涙)!!~
サクラの転生用の身体がある台座の傍らで
イブリスが術式を構築、憑依魔法を
展開しようとしているところだ。
「キッチリと分かれてもらいますので、
まずは状態を確認を致します。
分かれる際に少し痛みを感じるかもしれませんが
肉体的には問題ないはずです。
まぁ魂の痛みの方が大事なんですが……」
コソッと後半に聞き捨てならんことを言ってるけど……
ただ、一旦分けるも何も元々2つの魂のはずだよなぁ?
まぁそれも含めて確認か。
ここでいつもならサクラの解説が入るんだけど
流石に当事者だけあって、それどころではないようだ。
イブリスが確認のため何かしら呟く。
……ブツブツ
少しして、
「フゥゥゥゥーー
一息吐いたイブリスはこれまでの経過を
タケル達に説明する。
ーーまずは確認しましたが、
タケル殿の魂がサクラ殿の魂を守るように
かなり分厚く覆ってらっしゃったので
少し時間が掛かりました。あとは早いですよ」
と言うと、
構築していた術式が発動し
なんとなく身体が暑いという感覚が出始めた。
「ッ痛!」
『ン!』
オレとサクラが少し痛みを感じた後、
身体の感覚に違和感を覚えたので
なんとなく下を見るとオレの身体、肉体が見えた。
恐らく霊体とか精神体とか言うものになったのかな。
イブリスを見ると彼女も身体から半分ほど
ユラユラと精神体が出てきており、
オレの左手を彼女の右手で持っている。
ーーそれでは、行きますよ」
そう言うとイブリスは自身の精神体の左手を開いて、
オレの精神体の額に置いた。
すると額の少し上の空間から目が眩むほどの光量を持つ
小指の先ほどの真っ白なものが強く輝きながら、
スッと件の女性の身体の中へ入って行った……
フッ、と体が重くなる感覚があり
肉体へ戻ったと認識できた。
目の前のイブリスも同様で
こちらを見て少しだけ微笑んでくれたようだ。
「フゥ、お疲れ様でしたタケル殿。
お身体に特に問題は?」
「はい、大丈夫です。それよりサクラは?」
スッと安置されている女性を指差すイブリス。
「ちゃんとこちらの肉体に定着致しましたよ」
その言葉を聞いて安心するタケル。
「そもそも魂は持ち主の肉体へ帰ろうとするものですし、
肉体が無ければ近くのモノに入り込もうとします。
それを利用するのが憑依魔法であり呪詛系の魔法です。
ですから、この場には肉体、精神体、魂と
揃っている人ばかりですから、
タケル殿とサクラ殿の魂を分けることさえ出来れば
後はそう難しくはないんですよ。
まぁ精神体については色々と研究しないと
分からないことも多いのですが、
まず魂が定着すれば精神体については
自然と作られますので、あと、云々カンヌン……」
イブリスさんの説明が長いが
今回は大変お世話になったんで
ちゃんと聞こうとしていると、
安置されていた女性の眼が開くのが分かった。
タケルはじめ、
その場に居る皆が一斉にそちらに視線を移す。
……
……
そろりと五感を含む全ての感触を確かめるように
可愛らしく女の子座りで
胸と下半身を恥ずかしそうにローブで隠しながら、
残った片方の手をジィっと見つめ
握ったり開いたりしている。
そして徐に周囲に眼を向けると顔を赤らめながら、
「ん……と、はじめまして、でもないですか」
と言ってニコリと微笑む姿は、
先程まで安置されていた女性と同一人物とは
思えなかった。
いや、正確に言うと姿形は当然同じなのだが、
なにか……そう、
輝きが違う、といった感じでしか表現が出来ない。
それは周りの者も同様のようで、
一番近くに居るイブリスは少し口を開けたまま
視線をサクラから移すことが出来ずに固まっている。
セイラ、ヴァル、リム、も目を見開いたまま
その後光が差すような微笑に見惚れているようで、
ヴァルのネックレスの向こう側のマザーも同様に
言葉が無いようだ。
またダグザは……
骸骨なので良く分からないが黙ったまま動かない。
そんな中、口火を切ったのは当のサクラであった。
「あ、あの、みなさん、サクラです。
宜しくお願い致します」
と言うと、
おずおずと座っていた台座からローブで
前を隠しながら立ち上がろうとしている。
脚を床に下ろして立とうとしたが
まだ実際の感覚と解離があるのか、
少しよろめいたのでオレは腕を突き出して抱き留めた。
その際にローブが落ちて全身が露わになるが、
そんなことは気にもならず
サクラの顔をまじまじと見てしまった。
……
お互いに少し沈黙した後、
タケルの顔を見上げるサクラの瞳からは
自然と涙が零れたーー
ーーそしてサクラはタケルの胸に飛び込み
顔を埋めて少しの間泣いていたが、
その間誰も話す者はおらず、
サクラの背中に手を回し愛おしそうに、
また赤子を抱くようにひどく優しく、
ともすれば触れることを怖がっているように見える
その行為は見ている周りの者達を否応なく
涙させるものであった。
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黙ってサクラを優しく抱き留めていたタケルは
徐に顔を上げ周りを見た。
鼻水まで垂らして泣いているセイラは
それでも尚美人であることに
若干の理不尽を感じるタケル。
その他の者もその光景を温かく見守っていたが、
「ウ、ウグ、グスッグスッ。
なんか分からんが見ていたら涙が出てきたのじゃ……
お主ら、これまで色々あったんじゃろう……
良かったのうタケル、サクラ……グス」
珍しく場の雰囲気に沿った殊勝なことを言うセイラ。
その言葉にタケルの胸から
ゆっくりと顔を上げたサクラがタケルの顔を
焼き付けるように見て、そしてセイラへと視線を移す。
「ウフフ。
これまでタケルの眼を通してしか
見たことがありませんでしたが、
直接この眼で確認してもやっぱりセイラ様は
超が軽く3つは付く美人さんですね」
サクラがいつも聞いていた雰囲気で話し始めたため、
周りの雰囲気も和らぎ皆がそれぞれに話し始めている。
「ッグス、
えーい、お世辞を言っても何も出んわ!!ーー
まだ少し泣きが残っているセイラだが、
いつもの調子に戻ってニヤリ、と悪い顔をしながら、
ーーそれより、貴様等いつまで抱き合っておるのだ、
いい加減離れんか!!」
と言って、こちらに向かって来る。
冷静になると今の状況はかなり照れる。
オレはそっと両肩に手をやり
サクラを体から離そうとした。
……
ローブ落ちてたの忘れてたーー
「イ、イ、イヤァァァアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
バアッチィィィィィーーーーーーーーーーーーーーー
ドッゴーーーーーーーーーーーーーーーーー
……ガラガラガラ
サクラのビンタが左頬に決まり、
オレは研究室の奥の壁に激突、衝突し、
気がつくと瓦礫の中にいた。
……ウンウン、この件でよぉぉく解った。
とりあえずサクラは物理的にオレを吹っ飛ばすことが
出来るぐらいの腕力がある、と。
やっぱり予想が当たったかヤッター!!
ってアホか!!
だと思ったよ、
当たんのはいっっっっつも悪い予感ばっかだよ!!
コンチクショウめ!!
しかし度突き漫才で突っ込みが二人か……
キツイな……
瓦礫の中で考え込んでいるオレを
大笑いするセイラとヴァル、リムの声が聞こえているが
こちらへは一向に来る気配もなく
サクラを囲んで話し込んでいるようだ。
「あ~~~笑った笑った。
100年分くらい笑った。
セイラ以上の突っ込み初めて見たよ!!」
「僕の言ったとおり面白いでしょ!!
お姉ちゃん!!」
「ウム、良いモノ持っとるのぉーー
ん? と、胸を指差すヴァルディオーネ、
ーー違うわバカ者!! 力のことじゃ!!
のうサクラよ」
「御褒めに預り光栄ですが
ちょっと加減が分からずやり過ぎてしまったようです」
少し慌てた素振りでタケルの様子を見に行こうとするが
セイラに手を掴まれ止められる。
「放っておけ。
あれくらいやらんとスケベな性格は治らんわい」
なんでだよ!! どうやったらそうなんだよ!?
というかいつもセクハラしてくる
セイラさんに言われるとは……
自分のことは一体どこに仕舞い込んだんだろう?
永久に見つからないだろうけど……
いつまでもここに居ては
いつの間にか変態犯罪者に仕立て上げられるので、
ガラガラと音を立て瓦礫の山から立ち上がって、
サクラの方を見ると、
既にローブを掛けてもらい少し心配そうに
こちらを伺っていたが、
オレが姿を現すとニコリと微笑みかけてくれた。
「スミマセン、タケル、加減が解らなくて」
ゆっくりと歩いてサクラの前まで来たオレは
ジッとサクラを見た。
「え、え、えっと、
そんなに見られると恥ずかしいんですけど」
ハッと我に返ったオレは、
「ん? いやゴメンゴメン。
まぁ良かったなぁ、と思ってさ」
……
少し間があって、
感動を噛み締めるように眼を瞑って
俯いていたサクラは徐に目を開いてしっかりと
オレの眼を見ながらーー
「改めて、これからも宜しくお願いしますね、タケル」
「ああ、こちらこそ」
ーー改めて決意を口にしたのだった。




