~38 まだ忘れてますよ~
食事用の広間ではタケルが食事をしながら、
周りからの質問に答えているところだが、
その一角で、
「いくらなんでも扱いがヒド過ぎんか? マザー」
「ゴ、ゴメンなさいねセイラ。
タケル殿とお話してたらつい、ね♡」
会議室に捨て置かれたことに
クレームを吐くセイラである。
「まぁ復讐は改めてタケルにするとしてだなーー
言葉の途中でヤメナサイ、と言うゼヒライテ。
吹けていない口笛を吹きつつ聞こえないフリで続ける
セイラ。
ーーマザーからの依頼も達成できたことじゃし、
そろそろダグザのところに顔を出すとするかのう」
その言葉を聞いたゼヒライテが反応する。
「そういえば、リムが言ってましたわね。
ダグザ殿に用事が?」
「そうなんじゃ、サクラのことでなーー
そう言って、
セイラは、ダグザの夢を詰め込んだ身体の話を
ゼヒライテに説明する。
ーーまぁちと交渉は必要であろうが策もあるしの」
それに対しゼヒライテは興味を持ったようで、
「サクラ殿ーー
「もうどっちも敬称はいらんじゃろ」
ーーサクラ、さんの身体ですか……
興味深いですね。
戦闘中の私の魔法に対する分析もお聞きしましたが、
かなり高い能力をお持ちではないかと。
ダグザ殿の夢については、
ちょっとコメント出来ませんが……」
ダグザのことは横へ置いてゼヒライテは少し考えてから
「ダグザ殿もお呼びして、
対聖光神の件も含めて協力してもらいましょう」
その提案に対しセイラに否やという返答が
あるはずもなく、
竜の里上空を巡回中の竜王
タケルがまだ知らない
最後の竜王にダグザを連れてきてもらうことになった。
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ダグザが竜の里に到着するまで、
食事をしていた広間での質問と魔法談義
ーー特にサクラーー
が一段落付いたところで
サクラの希望もあってゼヒライテに了承を得て
少し空いた時間を使い城の入口からすぐの
クリスタルの洞窟出口付近まで来ているタケル。
『ちょっとそこを触ってみてもらえますか?』
「こうか?」
『アン……こっちも、もう少し上の方です』
「……ここか?」
『イヤン……』
……
「あのな、鉱石調べてるだけなのに変な声出すな!!」
『違うんですよ!!
ここのクリスタルに含まれる魔力が
異質な動きをしているんですよ。
こう、魔力同士を繋いで回路のように流れを制御して
より大きな流れを作っているようでして。
その流れに触れて調べてもらってるんですけど、
触れると少しピリッとした感覚が……
ってタケルの感覚ですよ!』
「まぁ、少しピリッとするけどねぇぇ」
『故意じゃないんですから仕方がないでしょ!
フン! もう知らない!』
出た、乙女の「モウシラナイ」
これはどんな場面でもこの一言で
全てをチャラに出来るという非常に優れた台詞だ。
そんな軽く言い合いをする
見た目はひとりでブツブツ言うタケル達の前に、
ちょうど竜王に連れられたダグザが現れた。
……
「イタイ子であったか……」
……なんかチクショウ!
でもまぁ……そうなるわな。
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サクラのエッチな調査
ーーチ・ガ・イ・マ・ス(サクラ談)ーー
も、後は解析するだけとのことで竜王とダグザと城まで
一緒に行くことにしたタケル。
「まさかこんなところに挙動不審者が、と思えば、
それがまさかの貴様で、
更にこんなところで会うとは思わんかったわい」
フゥゥ、と疲れたように深い溜め息を吐くダグザ。
急に連れて来られた格好のダグザを見て
大変だなぁ、気の毒になぁ……
などと考えているタケルだが、
ダグザが疲れているのは目の前のタケルにも
原因があるとは1ミリも思っていない。
そこで傍らで様子を見ていた竜王が
会話が一段落付いたのを見計らって、
「コホン、ダグザの知り合いかい? どちら様?」
竜王の一角、雷竜ヴァルディオーネである。
竜王の中では水竜ナイアスに続いて
2人目の女性である。
ナイアスはじめ水竜が温厚な気性であるのに対し
雷竜の気性は荒いとされている。
そんな一般的に気性の荒い雷竜の中でも
更に上位種である轟雷竜であるヴァルディオーネは、
その中で最も強い者に送られる称号スカイマスターを
持つに至っている。
ヴァルディオーネの問いにビクビクしながら
答えるダグザ。
「え、ええ。知り合いと言いますか、
ちょっと先日ウチで暴れられました際に
彼のお蔭で死にかけまして……ヘヘ」
なんか舎弟みたいになってんな?
タケルは彼女が竜王であることは
ゼヒライテに聞いて知っている。
ただ最強と呼ばれる称号持ちだとか、
気性の荒さなどは後で判明することで、
現在は知らないことでもあり
普通に挨拶をするに至った。
「はじめまして、タケルと言います。
あと、この間はスミマセン。
ダグザく……様」
それを聞いたヴァルディオーネは吹き出した。
「プッ!! ハハハ、キミ面白いね!!
ダグザは置いといて、
ボクに気後れせずに話す奴なんてセイラぐらいだよ。
って知らないか」
メチャクチャ知ってるけど知らないフリしとこう。
セイラさん絡むと碌なことないからな。
「し、失礼いたしました」
と言って慌てて跪いて正式に挨拶をしようとするが、
首を横にフリフリしながら
ヴァルディオーネに止められるタケル。
「ん~ん、全然良いんだよ。
みんなボクを相手にすると、
あっ、ボクねヴァルディオーネって言うんだ。
ヴァルでもヴァルでも好きに呼んでねーー
『(一択……)』
二人して心の中で突っ込んでおく。
ーーってことで、ヨロシクね。
とにかくボクの前だと
みんなナゼか遠慮してばっかでつまんないからね」
「ソリャ……」
「え? なにか言ったダグザ?」
「エ? いえいえ全くなにも、何か聞こえましたか?」
「……そうか、空耳か? ってボクが言うと思う?」
バリッ!!!!
と轟音が一発だけ轟いたかと思うと、
ダグザの目の前の地面が底が見えないくらい
抉れている……
「う~~ん、お仕置きしようかと思ったけど
核を傷付けちゃうと
キミ復活するまでに時間が掛かるからね。
今日は勘弁してあげるよ。
マザーを待たせちゃ悪いしね」
ダグザは横で放尿もとい、
放心していたがペコペコと言い訳しつつ平謝りだ。
その様子を見ていたが知らんフリをしながら、
タケルもサクラも同時に理解した。
一緒だ、セイラさんと一緒、しかも雷が落ちんだぞ。
タ◯ムボ◯ンシリーズじゃん……
なんかこっち来てから多くないか?
コスモだったり炎の独楽だったり……
もうリアクションに困るから止めてくんないかな……
とりあえず、この人には逆らわないでおこう。
タケルとサクラはお互い固く心に誓ったのであった。
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ヴァルディオーネとダグザを待つ広間は、
其々がお茶を飲みながら雑談に興じていた。
そんな中、ゼヒライテとセイラの会話。
ーーでも、良くすぐにタケルが見つかりましたね」
「フン、可笑しな奴じゃったからの。
すぐ分かったわい」
「フフ、ありがと、セイラ」
と言って、ガバッとではなく、
そっと自然にハグするマザー。
「コ、コリャ。
神竜ともあろう者がなにをしとるんじゃ」
「ンフフ、だって久しぶりなんですもん。
セイラのこの爆乳」
「あのな、神が爆乳はないじゃろ、爆乳は」
呆れて溜息を吐くセイラ。
その落ち着いた様子と百合な場面を目撃した面々は
微笑ましい視線であったり、
これまでのゼヒライテの苦労を思い出し
涙ぐむ者がいたり、様々であった。
そっとハグするマザーの神々しいまでの上品な振る舞いの中、まさか会話の中に爆乳という単語が使われているとは誰も思わないだろうし、不幸中の幸いで二人の会話は聞こえていないので、その様々な良い雰囲気の思いが台無しになることはなかった。
「まぁ偉そうなこと言うたがの、
マザーとの模擬戦は度肝を抜かれたわい」
満足気な様子のマザーはセイラから離れ
真面目な表情で、
「ええ、本当に底が知れませんね。
まだ全力ではないでしょうし」
「まぁの。
ただマザーも全力ではあるまい。
とりあえずこれから見えてくるものもあるじゃろうて。
いずれにしろ大事な戦力には違いない、
ちょっとボケておるが邪心は無いわい」
周囲のザワつきを横目に見ながら、セイラが話題を変える。
「ところで、タケルはそろそろ戻って来る頃かのう」
「そうですね、ヴァルもそろそろでしょうし」
ゼヒライテがそう言ってから、
ほんの少し間を置いて広間の大きな扉が開いた。
「ヴァルディオーネ様、ダグザ様、御到着です。
タケル様も御一緒でございます」
近衛兵に謁見の広間へ通すよう指示すると、
食事用の広間からゼヒライテと共に謁見の広間へ
移動するセイラが徐にゼヒライテへと話し掛けた。
「……平和じゃな」
「ハ?」
「平和じゃ」
「?」
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サクラのこともあるが、
その後に控えるのは対聖光神についての
3国間、竜の里、魔国、ダグザのニダベリル王国、
での重要な話し合いであるため、
会議室の準備に余念がない食事も済ませた担当員達の
リーダーの男。
「さて、さっきはビックリしたが……
うむ、もう座っている方もいらっしゃらないな」
魔道具の調整、イス、テーブルの並びなどをチェックし
完璧な準備に満足した担当の男は会議室を後にする。
他の部屋の備品もチェックすべく
謁見の広間へとやってきたリーダーの男は
飾ってある装飾品の鎧がいつもと少し異なるポーズに
なっているのを見付ける。
「うむ、誰だ動かしたのは?」
担当の男がいつものポーズに直すべく
近づいて手を伸ばすと、
鎧の頭の部分が「ガラン」という音を立ててーー
「ギャアアアアアアアアアアアーーーーーーー!!!!」
ーー白眼を剥いた魔王が鎧を着せられて
器用にポージングさせられていたのだった。
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