~36 頑張りましょう!! フゥ(汗)~
「オカシイと思ったんだよ……」
『まさかお知り合いだなんて……』
顔色が白を通り越して透明になりそうで、
このまま透明になって消えたいと思っているタケル。
「ウフフ、ビックリしたでしょ?」
イタズラが成功してアンデッドの心臓が
もう一回止まりそうな笑顔で
嬉しそうに微笑みかけるゼヒライテ。
一方のタケルはそれどころでは無い。
「……確定だな」
『……はい、確定ですね』
会話を聞いていたゼヒライテは
左手の人差し指と中指を顎に軽く添え小首を傾げ
不思議そうに疑問を呈する。
「なにが確定なのですか?」
……その前にだな、なに? その指の当て方は?
普通人差し指のみじゃないのか?
そのまま額に持っていったら
魔◯光◯砲になるぞ!!
撃つのか? 撃てるのか!? 見たい!!
イヤ、チガウ!!
ダメだ!! 思考が逃げてる!!
このまま逃げたい~どこまでも~♪
エッ何の歌これ? 知らんぞオレ……
ウ、ウ、ウワァァァァーーーーーーーー
……
返事をせず俯いたまま頭を抱え
固まるタケルを覗き込むゼヒライテ。
「タ、タケル殿? ヒィ!!」
白目を向いて口を開けたまま
宙には浮かんでいるという器用な真似をしながら
気絶するタケルに代わってサクラが答える。
『ゼヒライテ様。
タケルは現在思考がダンジョン最深部のボスと
戦っていますので代わりにお答え致しますーー
「ハ、ハァ……」
サクラの説明は、
師匠が絡む依頼の難易度はやたらと高いこと。
また失敗した際の追加の修行は来世でも
トラウマになるようなもので、
結局そのことを思い出したくないタケルは
気絶して逃避したことを伝える。
ーーということで、
今回の依頼も難易度が高いことは
想像できるのですが、
少し妙ですね……お聞きしても? ゼヒライテ様」
「え、ええ」
ゼヒライテへのサクラの疑問は、
知り合いでもあるゼヒライテの世界を救う
ということにも関わらず、
それを確実に100%遂行達成出来る師匠が
なぜ出向いて来ないのか? ということだ。
キミは1000%♪
そう、だから古いって言われるんですね……
そ、逸れてる!! あぁ師匠の影響が……
サクラも横道に逸れ高速道路にまで乗ろうとしたが
タケルと違い寸前で正しい道に戻り話を進める。
『ハァハァ、
お師匠様は何か仰ってませんでしたか?』
サクラまでなぜ疲れてるのかには
怖いので触れずに、思い返すゼヒライテだが、
「そうですねぇ……
いえ、お伝えするようなことは特に何も」
間髪いれず聞き返すサクラ。
「そのお伝えするようなことでない部分が
重要なのです。
何か仰ってませんでしたか?」
完璧な記憶を持つゼヒライテは、
お伝えするようなことでないだろうと思っていた
部分を恐る恐るサクラに伝える。
「ワシ忙しいから、と最初にーー
ーーそれだ!!!!」
「キャアッ!!」
突然神速で立ち上がるタケル。
続く言葉は師匠への恨み言である。
「あのオッサンが忙しいって言うときは
絶対飲み会なんですよ!! サイアクだ!!
知り合いが困ってんのに飲み会優先だよ!!
あのオヤジィィィィーーーーー!!
ハァハァーー
大層怒りを露にし肩で息をするタケルだが、
ピタリとその動きを止め額に掌を当て考える。
ーーしかもだぞ……
そんな依頼を失敗なんてしようもんなら……」
何かを察したサクラが口を挟む。
『待ってくださいタケル!!
修行よりマシと考えましょう!!ーー
それを聞いたタケルがビクッとなり動きを止める。
ーー修行と今回の依頼、どっちがマシですか?』
「こっち!!!!」
今度は話を聞いていたゼヒライテがビクッとなる。
『でしょう、やれますよタケルなら!
修行より楽ですよ、修行より♡』
「そ、そうだな……修行よりマシだし。
買い食いも出来るし、
こっちのが楽しいに決まってるしな!!」
『そうですよ、頑張りましょう!!』
「おう!!」
最後まで会話を聞いたゼヒライテは、
問題点をズラされているタケルが
不憫でならなかったが
サクラから、
タケルには聞こえないように念話で
『あのままだと引き込もって動かなくなったまま
余裕で1年過ぎますよ』と言われ、
「と、とりあえず戻りましょうか……」
と言うので精一杯であった。
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ゼヒライテとタケルが居なくなった謁見室。
セイラと魔王は、事情を知る竜王の一角、
水晶竜ドレントから心配ないことを説明され食事を
振る舞われていた。
「セイラ殿、先程も説明した通り
少々確認したいことがあるだけで、
すぐに戻って参ります故ーー
カタカタカタカタガタガッタガッタガッシャーーー
ーーその貧乏揺すりを止めて頂けませんか」
要はモンノスゴイ貧乏揺すり、大貧民揺すりだ。
「オ、オオ、スマン……」
ドレントに謝罪するセイラ。
「マザーと一緒だし、その内帰ってくるって姉貴」
隣で魔王が何か言っているが耳に入らず、
上の空でフォークを握り締めテーブルの上の
肉らしきモノにブッ刺すセイラ。
ブッスッ
……
ブッスブスブスブスブスーーーーーー
「ウッギャアーーーーーーーーーーーーー!!」
全て魔王の手だった。
「ア、アネキ、アネキ!! 刺さってる!!」
「オ、オオ、スマン……」
……
「アネキ……」
「オ、オオ、スマン……」
ゼヒライテと共にタケルが突然居なくなり
落ち着かないにも程があるセイラは
オオオスマン教に入信していた。
そこへトテトテとセイラの傍らへやって来たのは
リムことリンデンブルムである。
「セイラ姉」
と声を掛けながら膝の上に座る。
「お、おお、リムか。なんじゃ?」
触感を刺激され正気に戻るセイラ。
「セイラ姉はマザーを信頼してるんでしょ?」
「ム、無論じゃ」
「じゃあ帰ってきたら聞くことでも考えて
待ってようよ」
「フム、そうじゃな!!
山ほど聞きたいこともあるしの。
答えんようなら身体に……グフフ。
あーして、グフフフ、こーしてーー
と最後はお子様には聞かせられない内容なので
省くが、
ともあれそのお子様に正気に戻らせてもらった
セイラであった。




