~33 さすがの存在感ですね~
突然のマザーからの呼び出しに従い、
竜の里へと向かう一行は竜王である
リンデンブルムことリムの背中に乗り
一路北へ向かっていた。
ただ魔王はセイラとタケルの二人で行かせることに
反対、セイラ及びイブリスに足を留められるが、
スーパーの床を転げ回る駄々っ子に
ジョブチェンジし愛用の飛竜ベラクルスで
同行することになった。
またベラクルスには
「セイラと二人で一緒に乗る!!」
と言ってジョブチェンジしかけたが、
あまりに聞き分けがないので転げ回った件も含め
セイラが、
飛び膝から空中でのハイキックをお見舞いするも
仁王立ちのまま身体も心も動かなかったため、
そのシスコン魂に敬意を表する形でセイラが
渋々魔王と同乗しているといった状況である。
(こ、これが魔王か、ゴクリーー
ーースンゲー……バカだ)
と、タケルは思ったが
口には出さないでおいてあげた。
一方、
リンデンブルムの背にはタケルのみが
騎乗していた。
そんな状況の中、
リンデンブルムが可笑しな空気のタケルに
話し掛ける。
「おい、タケルとやら」
『ダメですよタケル、そんなことを言っては
フフフーー
ーークック、エッ? なに?」
(ック、こいつひとりでニヤニヤしてキモいし、
ビビるどころか敬語もないし。
マザーの呼び出しが無かったら
照り焼きにするところだぞ)
マザーのお客様ということもあって、
そんな物騒なことを思っていることは
億尾にも出さず、
「いや、なんかひとりで楽しそうだな、と思って。
(緊張とかないのかこのバカ)」
「えっと、聞く……きます?」
ーー途中でサクラに敬語を使いなさいと
注意されている
「ハァ? なにを?」
「面白い話です」
(こいつ敬語に戻ったのは良いけど、
急に何言ってんだ?
本当にバカか?)
ニヤニヤしながら話したそうにしている
タケルの変な圧力に押され、
「う、うん、ちょっと時間あるし、
き、聞いてやるよ」
と答えてしまった。
ーーでね、オレの師匠がね、前に湖でね、
云々カンヌンーー
『タケル、そこは手じゃなく足が顔にですよ、
プフーー
ーーああ、そっかそっか、
それでその時の顔がーー
途中サクラにフォロー入れてもらいつつ
話すリム一行……
「「「『プ、プ、フ』」」」
……
「「『ギャーーーハッハハハッハハハハ
フフフフフフ、ハハハハアハアハハハハ』」」
大爆笑のリンデンブルムは
旋回、背面、急降下を
何度か繰り返したにもかかわらず
タケルはお腹を抱えて問題なく大爆笑していた。
無駄なところで身体能力の高さを発揮しながら、
漸く笑いが収まった。
「あ~~~マジ受ける。
こんな笑ったの100年ぶりくらいか?」
笑い過ぎて涙目のリンデンブルムは、
そうそう、と徐に質問を投げる。
「笑い過ぎで疲れたの初めてだよ。
それはそうと途中で聞こえた女の人の声は誰?」
そういえばという感じで、
隠すのも今更なのでリンデンブルムに
サクラを紹介するタケル。
『竜王リンデンブルム様ーー
「長いから、リムで良いよ」
ーーそれでは、失礼して。
リム様、先程は突然失礼致しました。
わたくしサクラと申します。
以後、お見知り置きを」
と挨拶をした後、
サクラはこれまでの経緯とタケルとの関係について
簡単に説明を行った。
リムの反応はと言うと、
「へぇ~珍しいね、人間がそんななるって。
でもタケルは面白いからなんでも良いや!!」
気に入ってもらえたようでホッとしていると、
「でも、サクラは……魂の感じから、
えっと、かなり若くない?」
これはセイラさんなんかにも話していない。
まぁ別に隠していた訳ではないけど、
話す必要もなかったため
今まで知られていなかった部分ではある。
この質問に答えようと
サクラが口を開きかけたところ、
「おっとゴメンゴメン、そろそろ着くね。
また後で教えてよサクラ」
そういうと里の入口である山間へ
一気に降下し始めたのであった。
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リンデンブルムを斜め後ろから
追いかけるようにして飛んでいた
飛竜ベラクルス上の二人。
魔王とセイラは先程の大爆笑とリムの曲芸のような
飛行について呆れながらも後で絶対に話を聞こうと
誓いつつリム同様に急降下をはじめた。
バァッファ、バッファーー
速度を抑えるため翼を縦に使い少しだけ羽ばたく。
少しだけと言っても飛竜最大種である
キングワイバーン種ベラクルスは15m
またリンデンブルムは、
レッドドラゴンの上位種フレアドラゴンの
更に上位種にあたるコロナドラゴンの中でも
最強の系譜であり子供と言えど20mを超える体長。
翼を入れた全幅は25mを超える。
その2竜の軽い羽ばたきは周囲の草叢を容赦なく
圧し折っていく。
その風圧が収まり、ゆっくりと着地する。
「さっ、降りた降りた」
『有難うございます、リム様』
「ありがとーございまーっす」
魔王、セイラもベラクルスから降りて、
こちらへ向かって来る。
リムは人化し、王都で会ったとき同様
美少年チビッ子へと戻っていた。
「タケル!!
お主また変なことしておったじゃろう!!」
降り立つなり傍へ寄って来たセイラは
半分呆れながら、
半分好奇心で一杯の溜息を吐きながら
キラキラとした瞳という器用な表情を作りながら、
ガシッとタケルの肩を捕まえ言葉を吐く。
「いや別に変なことはしていないよ。
オモシロ話してただけだし」
「面白い話じゃと?
フフフ、後で聞かせるのじゃぞ」
そんな遣り取りを後ろで見詰める魔王の視線が
痛過ぎるが無視してリムに付いて行く。
『上空には3つのゲート、この先に5つのゲート。
景色は一見普通ですが
空間と空間を繋いでますから
真っ直ぐ進んでも見えている所に到着するとは
限らないでしょうね』
(ん、厳重だな。
リム様と一緒じゃなかったら
かなり面倒だったろうな)
サクラとそんな会話をしながら動く植物の居る山と
森の中を通り、
透き通った湖かと思ったら砂湖らしく、
そこを通り、灼熱のマグマ溜まり通り、
氷山と氷山湖を通り、
クリスタルの結晶だらけの洞窟を抜けた。
時間にしたら2時間程度といったところか。
洞窟を抜けた先に見えたのは
高さ50m以上はあろうかという巨大な門。
「お、見えた見えた。
お~~~~い、帰ったよ~~」
門の傍に立つ門衛に向かって手を振りながら
駆け寄っていくリムは、
こうして見ると本当にまだまだ子供っぽく
可愛らしい。
怒るとそこら中火の海どころかマグマの海に
なりそうだけどな。
他愛もないことを考えていると、
『タケル』
「ん、分かってる」
扉の向こうから伝わってきたのは、
超重力がそこに働いているかのような
意思など関係なく強烈に吸い寄せられる感覚と
普段気に留めること無く吸い続けている空気が
突如として存在感を現したような
否応なくそこに居ることを示す存在感。
タケルたちが洞窟を出て感じたことから、
それまでは抑えていたのであろう。
魔王、また先程まで軽い足取り、
口調であったリムまで汗を掻く始末。
斯く言うタケルもこれまでの経験の中でも
稀なその存在感の大きさを示す気配に、
いつものポケッとした雰囲気ではなく
珍しくその気配を探っていた。
(デカいね)
『はい、存在そのものの格が上位であり、
その中でも上位に位置する存在でしょう』
(師匠と近い?)
『いえ、存在自体の概念でいえば
近いかもしれませんが、
お師匠様はある分野に特化されてますから、
単純に比較は出来ませんが存在意義としては
異なるように思います』
(特化……してたな修行も)
『それ以上考えるのは止しましょうタケル……』
(そ、そだな……)
異なる意味で冷や汗を掻くタケルだが、
周囲の者は先程から感じる気を抜くと気絶しそうな
圧迫感からゼヒライテの存在を否応なしに感じ、
タケルを気にしている場合ではないようだ。
そんな中セイラは、
ゼヒライテがそんな気配を放つ事情に
通じているようで
周囲の者よりは冷静にタケルを観察していた。
(フン、珍しく冷や汗か?
しかし何かが違うような気がするんじゃが……
こ奴だけはよう分からんからの。
また別のことでも考えておるかもしれんの)
タケルの行動に関しては、
なぜか鋭いセイラはそんなことを考えながら、
久しぶりにマザー、
ゼヒライテの御所へと入って行った。
案の定違うことで冷や汗を流していたことが露見し、
またもセイラから
浴びせ蹴りを喰らう羽目になるのはまた別の話。




