~29 ダグザ様?~
サクラの問い掛けに、
ウッカリ答えてしまったタケルとセイラ。
それだけなら誤魔化せたのだが、
サクラも気が緩んだのか何故かタケルとセイラに送った
念話の波長が最後の最後で魔王にも合ったようでーー
「なんか声が聞こえたんだけど……しかもソイツから?」
……
セイラは有らぬ方向を見ながら口笛を吹いているが、
ヤカンのお湯が沸いたような音を出すだけで
吹けていない。
よけい怪しいからちょっと止めて……
まぁ、とりあえずダンマリを続けても仕方ないし、
別に悪いことしてる訳でもないしーー
ーーサクラ、自己紹介」
サクラも分かっていたのか即答する。
『はいど~も~サクラでーす、ヨロシクでーす!!』
が、なにか勘違いしたノリで自己紹介をする
サクラであった。
……
「いえ、え~、
少し場の空気が重かったものですから和んで頂けたらと
思いまして……」
流石に気まずかったのか少し焦った様子で言い訳をする
サクラ。
セイラの下手くそな口笛は止まっておりサクラの発言に
顎から指を離して驚いた顔をしていたが
サクラのフォローはするようだ。
「ま、まぁこれまでには無い感じで少々驚いたが
気を遣ってくれたんじゃの。
サクラはどこぞのタケルと違ってちゃんと空気を読んで
気を遣えるから大したもんじゃ」
いや、どこぞの使い方が違うぞ。気を遣うのもーー
ーー出来ないかぁ……
言い返すことが出来ず黙っているとセイラが更に
言葉を継ぐ。
「こうなればリオンよ、お主にも分かるじゃろう?
タケルの中にもう一人おるのが」
ジッとオレの方を見つめて眉間に皺を寄せる魔王。
「ああ、確かに。
はじめて見た時に変な感じがしたのは、この所為か」
なんかサクラの自己紹介はスルーされてるけど、
その方が良いので置いといて、
それよりも挨拶しておこう。
「えっと、
そういうことで同居人です。宜しくお願いします」
『改めましてサクラと申します。宜しくお願い致します』
「よろしくな!!」
「ウム、しっかりしておるのう、
どこかのタケルと違って」
ウム、別人と思っておこう。
しかし割とスンナリ受け入れたな魔王は。
結構慣れてんのかな、などと考えていると。
「魔剣とか喋るのもいるし、魔人?
いや人人? 双子?」
ウ~ン、最後のは普通に人だから。
でもそっか、魔剣な。
そういやあいつらも剣のまま喋るもんな。
「まぁなんじゃ、肉体が無いからタケルに間借りしてる
ようなもんじゃな」
「へぇ~、一回シんじゃったの? サクラちゃん?」
『いえ、
元々わたしは単なる文字の羅列に過ぎませんでした。
タケルと長い期間一緒に過ごすうちに魂を宿すように
なったのです』
「へぇ~」
「ほぉ~」
巧いなサクラ。
オレたちが異世界人であるのがバレるのはあまり
歓迎したくないしな。
なにかと面倒ーー経験済みーーなんだよねぇ。
まぁこの人たち大丈夫そうだけどね。
「大事にされてたんだなサクラちゃん。
でないと魂が宿るなんてないもんな。
良い話を聞かせてもらったぜ……
タケルは姉貴のこと以外は良い奴なんだな……グス」
姉貴のことは知らんけど、どんな想像してんだろ(汗)
まぁ突っ込まれても何なのでなにも言わないでおこう。
『大事なんてそんな。だ、大事に思うということは、
そういうことであるということで、
それはわたしも勿論タケルを、ゴニョゴニョーー
ウン、また壊れたね、放っとこう。
ククッ、と悪い顔で笑うセイラさんがオレたちに
向かって話しかけようとした時ーー
ーードンドンドンドン
「殿、御歓談中に申し訳ありません。
至急ダグザ殿がお会いしたいと」
なぜか魔王の居所が当然のようにセイラさんと
同じ場所に居るであろうと推測されてしまうのが
良いのか悪いのかは置いといてだな、
今のはダイダロスさんの声。
それと? とタケルもサクラも考える。
なぜダグザ??
セイラも ? となっているため魔王に問い質す。
「おいリオンよ、ダグザが来とるとはどういうことじゃ?
ワシらはあの海底洞窟を苦労して
抜けて来たんじゃぞ!!
まさか……同盟でも結んだのか?」
まぁちょっと苦労したけどねぇ、違う意味で……
それより、どうなんだろ?
……
魔王は瞑目して考え込んでいるが、
その横にセイラが腕組みをして怒気を孕んだ視線を
魔王に送りながら仁王立ちしている。
カッ!! 眼を見開く魔王。
「忘れてた!! テヘ(ペロッ)」
「シねえーーーーーーーーーーーー!!!!」
ドォゴォォッバキバキバキィゴゴォーーーーン
あぁ~あ、
扉突き破ってダイダロスさんまで被害受けてるよ。
気の毒に……
しかしやりやがったなぁ、姉弟揃って……
自分も度々使うにもかかわらず
容赦のないミドルキックをお見舞いするセイラに
違う意味で感心する二人であった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
セイラの容赦のないミドルから立ち直った魔王は、
城の最上階にある謁見の間に足を運んでいた。
オレはーー当然サクラもーー部屋に残ることになった。
まぁ当然だね。
この国出身でもエライさんでもないしね。
今の内にさっきの情報なんかを整理しとくかね。
「ちょっとちょっとサクラさんや?
頭がゴッチャになってきたんで情報の整理を
したいんだけど」
『なんですか、その老夫婦みたいな呼び方……
老・夫婦……夫婦……ソンナ、フウフなんて、フフ……』
……
あれ? なんかサクラが戻ってこないぞ?
なんじゃ?
もう、しようがねぇなぁ、ハァ。
自分でやるかぁ。
さて、まずはだね、
竜の里、魔国、万年凍土の国
vs 聖光国、聖炎国、海洋国
って言ってたな? んでもってトップがだね、
竜の里 マザー
魔国ミクトラム 魔王リオン
万年凍土の国カシスグレイシア ?
聖光国アビスクリムゾン アン
聖炎国ヴァッケン ヴルカヌス
海洋国オーセル ミルリール
で、え~と、あと中立国か?
獣王国アリア アリア
岩山国エルデ ?
って感じかぁ。ちょっと抜けがあるけど。
「お~い、サクラさんや~」
『……ッハ!! はいはいタケルさんや。
情報整理ですね!! 任せてください!!』
「おっ、戻ってきたな。抜けてるとこお願い」
『はい、
わたしがセイラ様にお聞きしたところも含めてーー
万年凍土の国=最果ての国
→極冠国カシスグレイシア アゼカ様
岩山国エルデ レイア様
と、タケルの情報で抜けている箇所ですね。
それから中立国の大戦時の扱いは文献によって
差異があるようですがセイラ様によると獣王国は
当初魔国側で参戦されたようですね。
その後中立の立場を取られたとのこと。
当事者でもないガトーさんの情報とも
若干の齟齬があるのはその辺りが原因ですね。
あとは属性や国の体制などですがーー
「ファ……ん、ゴメンゴメン」
『お疲れですね、まぁ無理もないですけど』
「いや~なんだろ? やっぱ疲れてんのかなぁ。
あっーー
そうそうと、思い出したタケルが、
ーーダグザくん何しに来たんだろ?」
うつらうつらしながらサクラに尋ねる。
『十中八九クレームでしょう。
先程のお話、同盟が成立していたということであれば
洞窟での出来事をダグザ様が連絡するでしょう。
その際にセイラ様のお話も出ますから
「ちゃんと知らせて置いて下さいよぉ、
攻撃しちゃいましたよぉ、ハッハッハ」
といったあたりではないですか?
それを聞いた魔王様の対応までは知りませんけどーー
こうなるだろうことは分かっていたサクラが
タケルに声を掛ける。
ーーお疲れでしたねタケル、おやすみなさい……」
タケルは寝落ちしていた。
この世界に来てから初日の夜に
セイラに問い詰められた後、
少し眠った以外は殆ど睡眠を取っていないタケル。
来る前は師匠との修行が10日程ブッ続けだったため
疲労が溜まっていたようである。
ほんの少しの時間ではあるが、
サクラはタケルの寝息を聞きながら温かい気持ちに
なるのであった。
魂を持つようになって数年しか経っていない
サクラだが、実はこの感情を恋慕、
愛情といった類のものであると気が付いたのは
第8世代自立型AIと呼ばれていた頃に遡るが、
その話はまた別の機会に。




