~27 戦力として、ですか~
「あれは肘だな?」
食事をしながら、魔王が疑問を口にする。
「え~とですね、はい、そうです、でございます」
『プッ』
敬語を使わないと怒られそうな周りの雰囲気から、
丁寧語では拙いと思い敬語へと変化させてみたが、
サ〇エでございますみたいになり、
サクラに笑われるタケル。
「ワハハハハ!!
敬語なぞどちらでも構わんぞ、姉上の友人、
ゆ・う・じ・ん、なのだからな!!
ワァッハッハッハッハ!!」
殊更友人の部分を強調しシスコンぶりを発揮する魔王。
「だから言っておるではないか、フィアンセだと」
再度爆弾を投げるセイラ。
周りもビクッとなりセイラとタケルを交互に見詰める。
タケルはジトッとした目でセイラを見詰める。
魔王は、不安で一杯の目
ーー魔王の威厳もなにもなく涙目ーー
をセイラに向けて真偽のほどを確かめる。
テーブルに居るものは全員セイラに注目している。
「ッ、じょ、冗談じゃ、そんなことよりーー
皆の視線に流石にバツが悪くなり、
居た堪れなくなったセイラは強引に話題を変える。
ーー肘は分かるが、あの太刀筋を躱すのは至難の業じゃ
ワシから見ても切られたと思うほどの鋭さであったわ、
それを躱して後ろに回るなど、
一体どれ程の速さがあれば可能なのじゃ……」
一拍の間を置いてセイラは続ける、
「……お主、本当に一体何者じゃ?」
強引に話題を変えた割に話の内容が、
この場の全員の疑問に答えることにもなるので
特に反対の意見も出ず、
先程のセイラの冗談からのバツの悪さも緩和され、
この場の皆がタケルの言葉を待っていた。
タケルは
(セイラさんウマイこと逃げんなぁ)
などと思いつつ、
「ステータスカード見せれば良い?」
とセイラに言葉を返す。
苦笑しながら更に返すセイラ、
「そういった意味ではないんじゃが……
まぁとりあえず戦力確認としては丁度良いか」
と言って手を差し出すセイラにギルドカードを手渡す
ーー
その前に、
「ご飯食べたいんだけど」
食欲には勝てず、
まずは食事の要求をするブレないタケルであった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
タケルが食事を掻き込んでいる間、
渡されたギルドカードを見ながら、
「普通はギルドカードなりを見ればだいたいの強さも
分かるんじゃが……
どうもお主の場合はステータスが大幅に変化するのか、
どうものう……」
と、困ったように感想を漏らすセイラ。
そこへ魔王から、
「姉上よ、それでも見れば目安は分かるんじゃねぇの」
蟀谷に指を当てて考え込んでいたセイラだが、
「まぁ、何もないよりはマシか。タケルよギルドカードを
見せても構わんな?」
食べながらセイラへ向け親指を立てるタケル。
セイラはその様子を暖かい目で見ながら、
魔王は暖かい目で見られているタケルを
嫉妬の炎で焦がす勢いで見ながらギルドカードを
受け取った。
【表面】
発行ギルド・登録地:獣王国アリア フィーネ支部
ギルドランク H
名 前:タケル
職 種:戦 士
受 付:セイラ
―――――――――――――――――――
1 魔 力:15623 2 筋 力:5123
3 敏 捷:6121 4 状 態:疲労 中
―――――――――――――――――――
賞 罰:なし
【裏面】
称 号 初心者
アビリティ
ス キ ル
UQ スキル
「ン?」
と言って、ギルドカードを見て怪訝な表情をする魔王。
先程闘った相手の強さが分からないようでは
魔王は務まらない。
明らかに可笑しなステータスだと判断し、
ニヤリと口の端を上げながら美男子力をアップさせ
話し始めた。
「ククク、オレのスピードに勝る者はそうはおらん。
それが6000程度とは明らかに可笑しいな」
!!!!
テーブルの他の者達はタケルの敏捷の数値を聞いて
驚いているが、
更に自分たちの主をして、
こんなものではないと言わしめるそのステータスには、
苦虫を噛み潰したような顔のダイダロスでさえも
興味はあるようだ。
「うぅむ……どうも底が見えんのぅお主は。
まぁ十分に戦力にはなるのじゃが」
その間にもギルドカードはイブリスに始まり、
ティリトの方まで回っている。
と思ったら、ティリトはスルーされ最後はダイダロスが
見ており、目を剥いたまま固まっている。
「こ、こんな……」
驚愕の表情を貼り付けるダイダロスの様子を横目に、
その他の5将ーー特にティリトーーを見ながら段々と
眠くなってきたタケルは、
野宿でもなんでも良いから早くこの場を去りたいと
思っていた。
ただひとつ「戦力」という言葉に引っ掛かりながら。
そこへサクラから、
『眠そうですねタケル、もう少しですから頑張りなさい』
(ウ~ン、眠い!! しかし「もう少し」の根拠は?)
『タケルよりも本能に従順な、ほら、あそこにおられる
ティリト様を見てください』
再びチラッとティリトの方を見ると、
先程までボーっとしていたティリトが、
大柄な体躯を大きく傾かせてはビシッと背筋をのばし、
傾かせてはーーを繰り返す、いつ倒れてもおかしくない
ギリギリの鬩ぎあいをしていた。
『恐らく机の上に突っ伏されて寝始めると思われますので
そこで一旦お開きとなるでしょう』
(船を漕ぐっていうけど、
大型タンカーでも動きそうだな)
ティリトの座っている椅子は
既に悲鳴を上げ始めている。
ダイダロスはじめ5将ーー当然ティリト除くーーは
タケルに色々と聞きたいことがあるようだったが、
ティリトの様子を見兼ねたイブリスが、
「殿、ティリトもあの様子ですし、
今日のところは一旦ーー
ドオオーーーン
「ゴォーーッ、ンゴォォーーー」
イブリスの言葉を遮りティリトは
盛大に眠り始めてしまった。
こんなティリトには皆慣れているようで、
食事の乗った皿をテーブルから持ち上げて
避難させていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
フィーネから魔王との手合せまで色々とあったが、
まずは無事に到着したことに安堵するタケルとサクラは
食堂から近衛兵マモン
ーー「調子に乗るなよ」とボソッと言われた(汗)ーー
に案内され客間へ通されていた。
ベッドはキングサイズ、
応接セットのソファも見るからに豪華で、
絨毯も柔らかい上質のものだと分かる。
そんな部屋の大きなベッドへ、
バフッと勢いよく寝そべりながらサクラへ話しかける。
「ファ~ア、なにかと疲れたねぇ。
んで一部嫌われてんねぇ」
『致し方ありませんね。
特にダイダロス様はタケルと互角のままに終わった
模擬戦にも納得がいかないのでしょう』
ウ~ン、と目一杯伸びをしながらタケルは、
「まぁオレのステータスの数値って
あんま当てになんないしねぇ。
関係してるスキルが多いから」
『そうですねぇ』
そんな話をサクラとしながら魔王との模擬戦を
振り返っていると、
「まぁあのまま戦ってたらーー
「勝っておったか?」
「『!!』」
唐突に部屋内に現れたセイラに、
「なんで居るんだよ!!
着替えとかしてたらどうすんだよ!!」
と若干ズレた抗議の声を上げるタケル。
通常は気配探知を常時展開しているタケル。
転移でも空間が揺らぐため探知可能なタケルからすれば
驚くに値する出来事である。
と思いつつも着替えの話をするあたり相変わらず
緊張感はないのだが……
そんな中、
気配の出所に違和感を覚えたサクラは部屋内のある方向
に注意を向けて冷静に分析していた。
『……あちらの鏡に若干の魔力の残滓を感じますが』
感心するセイラ、
「ほお、流石にサクラは気付くのが早いのう」
『恐れ入ります』
いやいや、と首を振りながらタケルは、
「俺の質問スルーで、サクラだけ手練れじゃのう(ニヤ)
みたいな流れになってるのヤメテくんない」
まぁまぁ、とサクラに宥められつつタケルがセイラに
言葉を掛投げる。
「まぁ良いけどさ。
んで、何か用かなセイラさん?
……まぁ想像は付くけどね」
ホゥ、と試すようにセイラがタケルに続きを促す。
「今日の魔王さんとの会話からだけど、
要はオレを戦力として計算できるかを試したかった?
んで……その戦う相手についての説明、説得?
をしに来たって感じじゃないの?」
相変わらず100人すれ違えば120人振り返るような
美貌に気付いているのかいないのか、
少し眉を顰め困ったような嬉しいような顔をする
セイラは吸い込まれそうな笑みを浮かべ、
「ムゥ。
普段の行動はさて置き、
空気を読めないのもさて置き、
ワシの胸を揉むのを嫌がる奴がおるとは思わなんだのは
さて置き、貴様は、たま~に、たま~~にじゃが
察しが良いな」
たま~に、ってセイラさんとは
まだそんなに長い付き合いじゃないじゃん!!
推測だけで人を判断してはイカンよ!!
……でも、その通りだから黙っていよう(汗)
そんなことを考えながらタケルはセイラに言葉を返す。
「さて置きの真ん中辺りはさて置き、それで?」
「一番重要なところをさて置かれたのは、
また今度じっくり話すとしてーー
(じっくり話しませんよ!!)
心の中で突っ込むタケル
ーー戦力としてはこれ以上ないと言うておったぞ。
来る聖光神との戦に備えて力を貸して欲しい
と考えておるじゃろう」
……聖光神
ベッドに寝そべったまま考え込むタケル。
じわりとベッドに近づいて行くセイラ。
それに気付いたサクラが、
『セイラ様、城内ですから転移で行き来するような
緊急の仕掛けがあるのは良しとしましょう。
でもタケルの横にさりげなく座ろうと……って、
何をしてるんですかーーー!!!!』
セイラは寝そべっているタケルにダイブする。
「ウワッ!!」
間一髪でそのボディプレス、
いやバストプレスを躱すタケル。
「なにしてんだよセイラさん!!
バカ!? バカなの?」
「フン、冗談じゃ。
すぐムキになりおるのうタケルもサクラも」
ベッドの上で肘を付いてこちらに視線を送るセイラは
何とも悩ましい恰好であり、
これまでの奇行が無ければ抱き着いてしまいそうな
艶のある表情と身体でタケルとサクラを揶揄する。
「結局、物理的にはオレひとりがバタつくことになるから
止めて!!」
「シクシク……」
……
啜り泣くような声がした方へ視線をやると、
鏡から顔を半分だけ出した魔王がハンカチを
歯で噛み締めながら泣いている……
乙女か!!
明けましておめでとうございます、今年も宜しくお願い申し上げますm(_ _)m




