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~25 魔王帰還(後編)~



 ダイダロスは大慌てで

 大広間内にある連絡用魔道具から第一門の門衛詰所裏

 にある談話室へ連絡を入れる。



「おい!! わたしだ!!

 至急先程の者の拘束を解き、大広間へお連れしろ!!

 て、丁重にだぞ!!」



 ……オ……オイ!! オキロ!!……コラ!!



 …………



 連絡用魔道具は一方的に繋がるようで、

 向こうでの遣り取りが聞こえており

 一方的に兵士がタケルに話し掛けてているようだ。


 青褪めるダイダロスーー


 ーーおい!! な、なにかあったのか!!」



 ダイダロスの怒鳴り声に、

 広間に居る者達は聞き耳を立てている。


 そして漸く気付いた兵士が、慌てて応答する。



「も、申し訳ございませんダイダロス様!!

 少々、その……どうご説明申し上げれば良いのか」


 ダイダロスは海岸の洞窟出口近くのことを思い出し

 既視感を覚えるも、

 ジーッと目を細くして額にバッテンが付きそうな表情で

 こちらを見据えるセイラから目を逸らし、

 片手を口の端に当てながらコソコソと話す。


「な、なんでも良いから早くお連れしろ!!」


 ダイダロスも気が気ではない、

 そこに追い打ちを掛けるような兵士の返答があった。


「その、とにかく現状床に倒れておりまして腹が痛いーー

「ゆ!! 床に倒れて、ハ? 

 腹が痛いだと!? すぐ治療せんかっ!!」


 その遣り取りを聞いたセイラは髪の毛が逆立ち、

 モード山姥になり掛けている。


 もうイスからも立ち上がりかけており、

 指をバキボキと鳴らしながら、

 まるで喧嘩上等のヤンキー山姥のようになっている。


 ダイダロスはもう泣きそうである。



 ーーそれから、オモシロ過ぎ、と。」


「「「「「「ハ?」」」」」」




 大広間にいる6名

 ーー魔王、セイラ、イブリス、ティリト、ベリウス、

 ダイダロスーー

 全員が全く以て事態を把握できなかった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 門衛の兵士の要領を得ない説明と

 チンピラ風セイラの重圧に焦りまくっていた

 ダイダロスだが、

 場の全員がタケルの返事に気を取られたことで、

 とりあえず一難は去ったようだと判断した。



「ととと、とにかく、ケガなどしておらんのだな?」

「あっ、はい。

 あまりに気持ち悪い以外は至って健康かと」


 状況が呑み込めないダイダロスだが、

 とにかくこちらに無事に連れてきて貰わねばならない。


「き、気持ち悪い??

 事情はわからんが健康な状態であれば良いのだ!!

 そ、粗相の無いよう大広間まで早くお連れしろ!!」


 そこでセイラが親指と人差し指をクルクルと回して

 代われの合図をしているのを見て、

 ダイダロスは連絡用魔道具を恐る恐るセイラへと

 手渡した。



「セイラじゃ、そこに居る者と話したい、代わるのじゃ」


 ダイダロスの時以上に緊張感を露わにし、

 兵士は直ぐにタケルに取り次いだ。


「ハ、ハッ!! すぐに!!……

 オイ、オキロッテ、セイラサマ……マエト……」


 まだ寝転がっていたタケルだが

 ノソノソとやっとのことで起き上がり

 セイラの連絡に応えた。


「アーオモシロカッタ……ん? 

 繋がってんの? セイラさん?」


 パアッと明るくなった表情のセイラ、

 魔王は姉の連れてきた者が男であったため

 大打撃を受けている。

 セイラは明るくなったが魔王は暗くなった。


 周りの者は両極端の反応を見て目を白黒させている。


 確かに魔王はこれまでセイラの連れてきた者については

 誰からも聞かされていなかった。


 理由は至極当然で、

 まずはセイラの帰還が第一に報告されなければならない

 情報で、連れの者については門衛の兵士か近衛兵にでも

 説明してもらえば良いと、

 周りの重臣たちも後回しにしていたのであった。



「おおっ!! タケルか!! 大丈夫か……

 と言いたいところじゃが、

 お主さっき「オモシロイ」だのなんだのと

 言ってなかったか?

 それと倒れておったとも聞いたが?」


 周りの3将も聞き耳を立てている

 ーーティリトはあまり聞いていない…… 

 特に魔王は必死である。


「エッ? ああ、

 ちょっと昔のこと思い出してたら

 盛り上がっちゃってねぇ。

 

 もうこれが面白くってさぁ。

 笑い過ぎてお腹痛くなった上に

 イスから転げ落ちちゃってさぁ、ハハ、ハァ、ハァ。

 あ~オモシロかった。

 またセイラさんにも教えるから!!」



 笑い過ぎで息まで切れており、

 全く緊張感のない話を続けるタケルだが、

 その声を聞いて明らかにホッとしているセイラの雰囲気


 また温かい慈愛に満ちた笑顔を

 付き合いの長いイブリスも含め、

 広間の者達はこれまでにそんな表情のセイラを

 殆ど見たことがなかった。


 そしてその笑顔は生来の美貌と相まって、

 男女関係なく萌え癒される微笑。


 しかし、この場において一人だけ他の者達と気持ちを

 異にする者がーー


 ーー魔王は嫉妬の炎に萌えていた、

 いや、萌えながら燃えていた。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 開放されたタケルは、

 王宮から派遣された近衛兵ふたりに引き渡され、

 今まさに大広間の扉の前に居るところだ。



(ふーん、大きい気配が5つ、とセイラさん)

『特に一番奥の方はセイラ様と比べても遜色ないですね』

(おそらく魔王だろね)


 タケルは扉の前で声が掛かるのを待っていた。


「お入りなさい」


 声が掛かり、巨人族でもすんなり入れそうな扉を、

 巨人族の血を引くと思われる近衛兵2人に開けてもらい

 中に足を踏み入れる。


「失礼しま~す(と、おぉ、なかなか)」

『強者揃いですね』



 入ってすぐに広間に居る強者たちを見て取り、

 概ねの強さを把握する。


 同時に入室の際(特に職員室)はつい出てしまう「ま」

 を伸ばす習性「またやった」と

 タケルとサクラは思っていた。


 その入室したタケルを値踏みするように5将が4者4様

 ーーひとり空位ねーーの態度を見せる。


 その他、

 セイラはタケルを見て薄い笑みを、

 魔王は目を瞑っている。


 口火を切ったのは進行役であるイブリス。



「タケル殿、でしたか。

 此度はセイラ様の護衛、感謝いたします」

「はぁ、どうも」



 入室の際の挨拶もだが、

 何とも間の抜けた返事に、

 ダイダロスはこれ見よがしに嫌な顔をする。

 セイラには見えないようにだが。


 悪魔(デーモン)侯爵(ロード)のベリウスは珍しいのか

 興味津々で、

 タケルが部屋に入って来た時から

 ジーッと目を皿のようにして観察している。


 ティリトは、ボーっとしている……


(ひとり、ドラ○エの無駄ターンが……)

『……』


 魔王は目を瞑ったまま動かず、

 イブリスが続けて声を掛ける。



「先程の失礼のお詫びに、

 食事でもどうかと考えているのですが如何ですか?」


 フィーネを出てからなにも食べてなかったタケルは、

 この有難い申出に飛び付くが、


「それは有難いーー


 返事の途中で横槍が入る。


「待てい!!!!」



 目を瞑っていた魔王は、

 殺気と怒気と嫉妬とを綯交ぜにしたような気を

 強烈にタケルに放っている。


 そして叫んだ。



「貴様は姉貴のなんなのだ!!!!」



 実はさっきから目を瞑っていたのではなく、

 薄目を開けてセイラの行動を観察しており、

 先程からセイラとタケルの関係がハッキリしないこと

 からも、イライラとしながら手元の連絡用魔道具を

 手慰みに指で廻していたのだが、

 タケルを見つめるセイラの嬉しそうな表情を見た瞬間に

 何か感情のタガが外れたのであろう。


 タケルには魔道具がまるで高速で回転するコマのように

 見えーーそれ壊れるよ……(タケル談)ーー

 あまりの速さに摩擦熱で発火し嫉妬の炎も相まって

 魔王の周囲が燃え上がっているように見えた……

 ような気がした。


 ス、スゲ~な!! 前世の名前は石野じゃないのか!?


 そんな関係ないことを考えながら

 タケルが魔王を見ると魔王は涙目であった。


 シスコンであり、且つ変態であり……

 微塵も魔王らしくない魔王に今後どのような称号が

 追加されていくのか

 気になって仕方がないタケルであった。




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