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~24 魔王帰還(前編)~


 (マザー)なる(ドラ)(ゴン)「ゼヒライテ」


 星が生まれたとき、

 時を置かずして生まれたと言われる竜。


 最強であり最長老であり、

 この星に住む者達の神にも等しい存在。

 竜の里に棲まう竜の一族の長である。


 その強大な力故に星の秩序を保つ者とも言われており、

 幾星霜の時を過ごしてきた存在。


 あまりに大きなその力は利用できるようなものでは

 なかったが、

 それでも中にはその威を借ろうと近づいてくる者達が

 数えきれないほど居たし時には排除もしてきた。


 そのため、

 出来る限り世俗と関わるようなこともしなかった。


 しかしながら前回の大戦時は、

 この星の危機であり暴走する聖光神を止めるため

 魔王軍側へと味方したが、

 マザー自身は出産のため出撃することはなかった。


 そんなマザードラゴンも長い時を生きる中で、

 一握りではあるが懇意にする者達が現れ始めた。


 その中の一人がセイラである。


 竜の里は巨大な山脈の奥深く、

 真面に向かったのでは辿り着けないよう迷宮結界が

 張ってあり、それを越えて更に奥深い場所にある。


 当然、魔国近辺含め転移、魔道具を用いた連絡も

 出来ないようになっており、

 唯一の連絡手段は特殊な方法を用いた念話のみであるが

 それも竜の里、魔国周囲に展開する障壁により

 かなり難しくなっている。


 そんな竜の里の居城。

 悠久の年月を感じさせる洞窟を利用した荘厳な神殿

 においてセイラの弟でもある魔王との会談を終えた後


 ゼヒライテが呟いた。



「……とても大きな、力を感じます」


 周りの竜王たちも気配を感じているのか頷いている。


「セイラ殿ではないかと」



 ゼヒライテはそれには答えず、

 何百年振りかの微笑を

 薄らと口元に浮かべるのであった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 その頃、

 会談のもう一方の主役であった魔王は、

 セイラの帰還を聞き喜色満面、純粋に急ぐ、

 というよりも焦っている様子で部下に声を掛ける。



「オマエらは後で追って来い!!」



 言うが早いか、飛翔の呪文「ヴォルグライト」

 ーー魔力の注ぎ具合で速度調整が出来るーーで

 余力を残すつもりはない!!


 とばかりに最大限まで魔力を注ぎ込み一気にスピードを

 上げ王都ミクトクーリアへ向かって飛んでいった。


 イブリスの命で一刻も早くセイラ帰還の件を知らせる

 ためにやってきた空軍部隊副官。


 最速の飛龍で竜の里入口である山脈から少し離れた場所

 ーー竜の里近くは転移が阻害されるためーー

 で待っていたが当然乗って帰ってもらうべく飛竜2頭で

 連れ立って来ていた。



「確かに殿が飛ばれた方が速いか……

 待ち続けた御身内が帰ってらっしゃったのだ。

 心中御察し致します、殿」



 副官は魔王の心中を察しその姿を見送っていたが、

 直ぐに見えなくなったのを機に、

 手持無沙汰になるもう一頭を今回の会議に護衛として

 随行していた5将のうちの一人、

 悪魔侯爵(デーモンロード)ベリウスに勧めてみた。



「ベリウス様、お乗りになられますか?」



 ベリウスも目を細め温かい視線を魔王に向け同様に

 見送っていたのだが副官の声で我に返ったのか、


「ウン? フム。折角であるからして、

 空の旅を堪能させてもらうとしようか」



 往路は山脈の麓まで馬車ならぬ犬車

 ーーといっても頭が3つあるゴツイ魔犬だがーー

 で来ていたため

 残りのメンバーは犬車で帰ることになる。


 魔王が一目散に飛び去った後をベリウスと副官が

 追うようにして後に続いた。


 残りの会議出席メンバーは

 ベリウス隊の副将フルキスと、

 近衛隊長アルマスとその副長の3名となり、

 乗せる人数の減った豪奢なバスのような広々とした

 車内はその寂しさを浮き彫りにするのであった。


 頭の3つある魔犬

 ーー身体はホッキョクグマよりも大きいのだがーー


 賑やかな雰囲気が好きなグラシャラは少し寂しそうに

 するも、王都に急ぎ帰るべく3名が乗ったことを確認し

 飛竜には及ばないものの、

 時速200㎞は出るであろうその脚を存分に発揮するの

 であった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「この気配、間違いなく姉上だ……」



 王都の上空に到着した魔王はセイラが居ることを確信し

 その姿を一刻も早く確認しようと

 アドラ城のセイラのいる場所へ最短で向かうべく、

 近くの部屋のバルコニー部から、その部屋を横切り、

 壁が捲れ上がりそうになるくらいの速さで廊下を

 懸命に走っていた。


 ちなみに城の敷地内は転移可能であるため、

 転移を使ってすぐ傍らまで行きたいところではあったが

 以前も早く姉に会いたいがために、

 すぐ傍まで転移したところ反射的にとんでもない威力で

 殴られたため控えている

 ーーちょっとキモイな……(タケル談)ーー


 ちなみに、セキュリティーである障壁は魔王、

 以下5将その副官、近衛兵は認証済のため

 スルーとなっている。


 途中近衛兵から「お帰りなさいませ、殿!セイラ様ーー

 という声にも応えずただひたすらセイラのいる

 高位役職者専用食堂へと急いだ。




 バーーーン!!




 蹴破るような勢いで扉を開け放ち、

 久方ぶりの再会に心の準備を整えることもせず、

 声を張り上げる。



「姉上!!!!」



 扉に背を向けていたセイラが、

 ビクッとした後ノソっとした動きで振り帰り

 魔王を見やる。



「…………や」

「エ? や?」



 久方ぶりに会ったにもかかわらず、

 そのノッソリとした動きと喋り方に、

 魔王はやや怪訝な面持ちでセイラを見つめるも、

 姉の顔を見て頬を緩ませたーー瞬間、



「やかましぃわーーー!!!!」



 ドスゥゥゥゥッッ!!!!



 目で追い切るのも困難な速さで、

 魔王の鳩尾に肘を入れるセイラ。

 

 おねむの時間を邪魔されたセイラは扉を開ける

 大きな音に腹を立て魔王に一発お見舞いしたのである。


 ーー転移しなくても激しく突っ込まれる魔王様、

 どうせ同じ結果なら転移しても良かったのでは……

 いずれにしてもキモイですけど(サクラ談)ーー


 ある意味セイラはいつでもどこでもマイペース。

 タケルとどこか似ているところがあり、

 年月を経ても変わることがないその性格は

 待ち侘びた者達からすると、

 頼もしさすら感じてしまうほどの安堵を覚える。


 しかしながら久方ぶりの再会は台無しであった……




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「ヒデェよ!! 姉貴!!」



 やっと会えたというのに、

 いきなり急所への一発を喰らったため

 不満を露わにする魔王。


「150年ぶりの色々と苦労してきた弟に

 いきなり肘打ちってどうなのさ?」


「フン、寝起きが悪いのは知っておろうが」


 全く悪いと思っていないセイラ、

 その反応でさえ久しぶりで嬉しかったのか、


「ハァァ……

 まぁ無事だったのは監視から聞いて分かってたけど……

 良かった……グス」



 魔王が涙ぐむのを見て小さく「フッ」と呟き

 薄らと口の端が上がったのは、

 その場の誰も気付かなかった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 大きく背伸びをしながら欠伸をし涙目になっているのは

 セイラ。


 食事をした後、

 そのまま食堂で突っ伏して2時間程寝ることが出来た

 セイラの頭はかなりスッキリしていた。


 竜の里からの帰還組も到着し、

 セイラが起きたとの連絡を受け会議で使う大広間に

 集まっていた。


 まぁセイラの睡眠に付き合わされた5将の面々は、

 お疲れなのであろうと寛大な処置を取りつつ、

 その間に魔王への現状報告。


 またセイラへの質問の整理、食事などを済ませていた。


 プチ、もとい、ガチシスコンである魔王はというと、

 すぐにでも姉に抱き着き、

 色々な部分をネチャネチャと触りまくりたいという

 エロ妄想を抱きつつもセイラのこれまでの行動について

 報告を受け、

 

 妄想と案件ごとに其々判断をするという現実の職務との

 狭間で揺れ動きながらも、

 先程一発喰らったことを思い出し、

 またセイラの次に年嵩である5将のイブリスからも、



「まずは魔国のことを考えて頂きます。

 御身内のお話は会議が終わってからゆっくりと」


 と、ニコリとしながら(目は笑っていない)

 言われており、我慢に我慢を重ねているので、

 かなり機嫌が悪かった。



「んじゃあ始めるか!」



 魔王の少々投げやりな、「早く終われ」という雰囲気が

 滲み出ている号令が掛かり、早速緊急会議が始まる。

 

 まずは、進行役のイブリスから、



「セイラ様、改めまして御帰還、

 心より御喜び申し上げます。我ら一同、

 一日千秋の思いでこの日が来ることを

 待ち望んでおりました。これより我らはーー


 イブリスの言葉を遮りセイラが、


「あ~もう、そういうのは、なんだ、

 その……もう良いから進めるのじゃ」


 照れるセイラに一同クスリと笑みをこぼし、

 イブリスが会議を進める。


「それでは、

 まずミクトラムの現状報告といきたいところですが、

 セイラ様に2、3質問がございます」


「うん? 構わんぞ、なんじゃ?」


 質問があるのはダイダロスのようで、



「それでは失礼して。

 我らも困惑しておりまして……

 まずはニダベリルを如何して抜けて来られたのか

 について、先ほどの御話では俄かに信じることは

 出来ませぬ故、現在拘束中の同行者の件と併せてーー


 ピクッとセイラがダイダロスの言葉に反応すると、

 被せるように、



「なんじゃと?」

「エッ? な、なんでございましょうか? 

 なにか拙いーー


 視線だけで普通の冒険者なら卒倒するであろう

 気当たりを発するセイラは、

 眉間に皺を寄せダイダロスを睨みつけている。


「貴様……あ奴は丁重に扱えといったはずだが?」


 ゴゴゴ、という音が聞こえそうな雰囲気で

 イスから腰を浮かしかけるセイラ。


「貴様ぁ。

 ワシの話を信じぬばかりか

 ワシの連れをこ・う・そ・く、じゃと?」


「は、いえ、その、あのーー


 焦りに焦るしどろもどろのダイダロス。


 しかしこのままでは広間どころか

 城ごと壊滅してしまう。

 しかしセイラを止められるとしたら、

 それはもうーー



 シャッ!!



「姉貴!!」



 目で追えない程の速さで


 ーー魔王は、これ幸いに公然と姉に抱き付ける!!

 と思っていたがそれは内緒だ!!ーー


 ガシッとセイラを後ろから羽交い絞めにしようと、

 特に当てる必要のない胸の部分に自身の手を

 それとなく当てながら、

 当てられた方が故意と思うか不可抗力だと思うか、

 そのギリギリのラインを探りながら、

 

 その真剣な表情で

 「そうか、不可抗力か、こんな真剣な表情してるしね」

 と思う方へ誘導するテクニックを駆使していた。


 羽交い絞めをするだけであれば、

 寧ろ遠回りなやり方であるが、

 誰にも気付かれないよう、

 その必要のない行為を遂行しながら、

 無駄に器用に羽交い絞めを成功させていた。


 正に神業である。


 そして興奮の余り、素の話し方に戻り、


「やめてくれ姉貴!! 

 姉貴に暴れられたら

 城どころか城下のほうも持たねぇ!! 

 そいつを連れて来て

 詫びに一緒に食事でもどうだ!!」


 疾しいことを考えながらも実際暴れられても大変なので

 一応仕事はこなす魔王。


 それを聞いたセイラも、

 現魔王にそこまで言われては矛を収めざるを得ない。


 また羽交い絞めにされた際の力も相変わらず

 尋常ではなく姉として少し誇らしげでもあった。


(うわぁぁぁ、久しぶりの姉貴の匂い。

 サイコ~~~神様ありがとう!!)


 しかし姉の思いを他所に変態なことを考えていた

 非常に残念な魔王であった……


「フン……仕方あるまい。約束は守れよリオン」


 ふっと力を抜いたセイラも

 ファーストネームから取った愛称で魔王を呼ぶ。


 魔王もその言葉を聞いてゆるゆると拘束を緩めた。


 ゆるゆると緩めたのは、慎重になったからではなく

 魔王はもっと抱き着いていたいという欲求に

 全く逆らうことはできなかったが、


 ハッと先程の寝起きの一撃を思い出し渋々離れたため

 ゆっくりの最上級ゆるゆると離れることになったので

 あった。


 それが周りからは慎重に離れているように見え、

 魔王としては威厳を保つための小さな幸運となった。


 しかし、

 姉が絡む行動なのに珍しく真面目に対応したよね。


 魔王様……


 とは、誰も言わないのは突っ込むことによって

 これ以上時間を取られたくないからであった。


 兎にも角にも姉離れできない違った種類の変態が

 ここミクトラムにも存在したのであった。


 そして怒りの矛先であった当のダイダロスは

 かろうじて立ったまま、


「し、失礼致しましたぁ!!!!

 すぐにでも拘束を解き、

 こちらにお連れするよう計らいます故、

 暫しお時間を!!!!」



 といった経緯でタケルは拘束を解かれることに

 なったのだがーー




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