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~21 改めて、からかうのは止しましょう……上陸前に疲れました~

 


 いまオレは必死に階段を飛ぶように駆けている。


 ダグザの座っていた玉座の後ろの扉が、

 ダグザの意識が切れたからなのかなんなのか

 開いていたので慌てて飛び込んだタケル。


 サクラの指示に従って走り抜けているが、

 これもダグザの意識が切れたからなのか。


 タケルにとってはキモコワイ、アンデッドたちとは

 遭遇するものの、

 至って大人しく鉱石を採っていたり、

 生えているキノコみたいのを採取していたりと普通に

 生活している雰囲気であった。


 タケルたちが通っても何事もなかったかのように

「キャッキャッ」「ワイワイ」やっている。



 ……



「なんなんだ、今の? キャッキャッ言ってたぞ

 もうアンデッドでもなんでもないじゃん!

 見かけはちょっとアレだけど……」


『はい、なんだかむしろ平和なような……』


「ダグザくんってもしかして良い奴?」


『……分かりませんが、ダグザ王を倒さなかったのは

 タケルのファインプレーかもしれませんね』


「うん、なんかイヤな予感しかしない(汗)」



 ちょっと今は置いとこう、それよりも、だ。

 オレがなぜ飛ぶように走り抜けているかと言うと、

 後ろから殺気と怒気を孕んだ山姥が

 追いかけてくるからだ!!


 山姥はスピードがあるので、

 こっちも割と真面目に走っている。

 目視されてるからキッチリ追尾されてるしな!!


 いや冗談じゃなく、

 追い付かれたらホントなにを仕出かすか、

 されるかわからない。


 さっきも確かーー



『エルド・イグニオール、

 最後のほうは聞き取れませんでしたが間違いないかと』


「それって……イグニアってさっき使ってたよな?」

『言葉の感じから、

 おそらくイグニアという火系魔法の上級もしくは

 最上級魔法と推測されます』



 推測って言っても殆ど当たるからなぁサクラの推測……

 しかし最上級!?

 な、なに考えてんだあの人??


 あぁ、何も考えてないか、

 感情の赴くままに行動する美の体現者セイラ!!

 

 なんかのキメ台詞みたいで格好良いように聞こえるけど

 感情の赴くままはダメだろう、

 せめて本能ならマシだと思うんだけど……マシか? 

 寝たり食べたりだぞ?



『逸れてますよ!! タケル!!』

「ハッ!! イカンイカン!!

 ちょっと置いといてだな、

 しかし揶揄かうのは面白いけど

 命の危険がある訳かフ~ム……」


 一拍置いてからタケルが、


「サクラ」

『はい?』


 速度だけは緩めずに、サクラに向かって


「今後セイラさんを揶揄かうのはよそう」

『……わたしは揶揄かってませんから』



 ……そういえばオレだけか?

 いや!! サクラもなんかやってるはずだ!!



 ……(汗)



『ちなみにもう追いつかれますよ』

「わ、わかってる」



 走りながら後ろを振り返ると、もう20mほどだ。

 スピード緩めてないのに、なんて速さとスタミナと、

 そしてしつこさだ、3拍子揃ってスバラシイッ!!

 言ってる場合じゃない!!

 もっと他のことに使えないかね!!


 その彼女は山姥の髪の毛がとうとう蛇みたいになり、

 後ろに靡くはずの髪がなぜか前方に、

 風圧に逆らうように風に向かって靡いている。


「んなことあんの!?」

「魔力か!? 魔力なのか!?」

 

 驚愕の表情を張り付けながらも

 走ることを止めないタケルだったが、

 セイラはタケルが振り向いたことに気付いて、



「オイ、タケルよ、もう怒っとらんから、

 少しトマルノジャ」



 ニコッとして足を緩めた美の体現者の面目躍如

 とも言える蕩けるような微笑を浮かべるセイラを見た

 タケルは警戒しながらも立ち止ってしまったのだった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★



『語尾が棒読みでしたからね……

 嫌な予感はしましたが。

 流石にセイラ様クラスとなると、

 うまく殺気を押さえることができるものですね、

 云々カンヌンーー


 サクラがなにかしら解説してるがどうでもいい。


「止まるんじゃなかったよ!!(シクシク)」


 太腿を擦りながら、泣きマネをする。

 いや、痛いのは痛いんだよ!!


「ハァ~少しスッキリしたわい!!

 いきなり飛び出したかと思ったら突っ込んでいくし

 ビックリするわいバカタレが!!

 そもそもダグザを強敵と言うたワシがアホみたい

 ではないか、ブツブツ――


 ブツブツ言ってはいるが、

 漸く山姥から解放されたタケルは、

 機嫌の良くなったセイラに気になっていたことを

 聞くことにした。



「ところでセイラさん。

 ダグザくんが使った最後の魔法だけど、え~と確かーー


『ズ・ルルド、ですわ』


 サクラが言葉を継ぐ。


「おお、あれか!!

 ワシも久しぶりに見たわい。


 あれは術者の魔力によって重くも軽くもなるのじゃが、

 いわゆる重力魔法というやつでの。

 現在の属性魔法とは異質の古代高等魔法に

 属するものじゃ」


 へ~重力ねぇ、ふ~ん。

 と思い返しながら考えていると、

 反応が薄いように感じたのかセイラが、


「反応薄いのぅ。

 あの魔法はの結構な高等技術を要するし、

 下手すると指一本動かすことが出来なくなるのじゃ。

 それどころか潰れてしまう程の魔法なんじゃが……」


 段々と語尾が小さくなるセイラ、

 そしてゆっくりと細い目をしてタケルを見ると、

 徐に、


「そういえば貴様……動いておったな。

 しかも結構な勢いで」


 怪訝な顔をしてジッとこちらを見るセイラから、

 また山姥再燃の感じがしたのか、

 タケルはサクラに話を振る。


「そ、そうそう、そういえばあの重力魔法?

 はどれ位の重さだったのか判るサクラ?」


『そうですねタケルの体重の約7倍の重さですので

 480㎏程度の重さが掛かっていたと推測します』


 セイラは両方の肩をグルングルンと回しながら、


「どうりで、肩が凝る訳じゃわい」


 肩凝りで済むんだね……

(心の中で遠い目をしながら突っ込んでおく)


『ちなみにですが、セイラ様の場合480㎏は体重の約ーー


「やめい!!!!」


 電光石火で後頭部に真空飛び膝が飛んできた。

 すばらしい速さだね……ガクッ、バタッ



☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 もう洞窟も終わりに近づいている。

 潮の匂いがする風が上の方から吹いてくるからだ。


 あっ、ちなみにベレヌスは剣化してリュックに

 しまいました。

 さらに面倒な事態に発展するのはゴメンだからね。


 道は若干の傾斜を含んだ上り坂になっており、

 大きく左に曲がっている洞窟内の通路は人が5~6人

 一緒に通ることが出来る広さだ。

 そこを二人は少し早いペースで歩いている。


 ちなみに飛び膝の件はーー



「ヒデーよ、セイラさん!!

 オレじゃなくてサクラじゃん!!」



 若干、あくまでも若干だが悪いと思っているセイラは、



「だから謝ったであろう、致し方ないではないか。

 サクラとお主が一緒なのじゃから、声の聞こえる方へ、

 つい、な、テヘ」



 テヘでもペロでもゆ・る・さ・ん!!

 あっ許したことなかったっけ?


 引っ繰り返りそうになったことはあっても、テヘ……

 あぁもぉ、伝染(うつ)り掛けてるよ……


 そんなことを考えながら

 無言で後頭部を擦っているタケル。

 そんなタケルを見ていたセイラは目を細めながら、


「ほぉぉ~無視か……女子(おなご)が、

 一番気にする体重が今まさに知られんとした際に現れる

 無意識な自己防衛本能、単なる反射じゃというに、

 貴様はそれを許す器すら持っておらんと……

 ほほぉぉぉぉぉ~~」


 なんだかイヤな雰囲気にペースを上げようとした刹那、


 ガシッッッ!!


 と右腕を掴まれたタケル。


「ッ!」


『ア~~~!!!!』


 女性とは思えない、

 2tトラックなら片手で動かせるのではないか?

 と思える物凄い力でタケルの腕を、

 巨大なものが実っている

 上半身の一部へ持っていこうとしているセイラ。


「フッフッフッ。

 詫びの印に触らせてやろうではないか、ん?

 触りたいじゃろう、んん~?」


『セイラ様、ダメです!!

 もっとご自分を大切になさって下さい!!』


 青春ドラマの担任役みたいなセリフを吐くサクラ。


 噴出しそうになって少し力が抜けたため、

 グググッと引き寄せられる右腕に力を入れて

 抵抗しているタケルだが……



『「助けて!! ベレヌス様!!」って、

 さっき剣化してリュックに戻られましたね。


 ど、どうしましょ……ちょちょっとタケル!!

 なにを考えているのですか……もうこのまま、

 エッなんですって!!』



 キャーキャーキャーキャーと騒ぐサクラ、

 そして腕を引っこ抜く勢いで引っ張ってくるセイラ。



「シ、シンドイ……」



 もう出口は見えているのだが、

 一向に前に進まない3人(見た目2人)であった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 ミクトラムーー


 ーー魔王様と闇の眷属の方たち等が治める国ですね。


 上陸前でもありますし、

 ここで簡単に魔王様の治める国について、

 わたしの推測も含め説明致しますね。


 出典についてはギルドにあった地図上の各国の

 簡易説明からです(ペコリ)


 まず、ミクトラムの政治、経済、軍などの主要な部門

 には主に巨人(ジャイアント)族、鬼人(オーガ)族、

 吸血鬼族(ヴァンパイア)など、

 何代も魔王様に仕えている種族が全てでは無いにしろ

 担っておられます。


 一方、国民の方々は色々な種族で形成されています。

 特に移住について制限がされていなかったからですが、

 それも前回の大戦以降は制限が掛かっているようです。


 間者対策ですね。


 また国民は皆様一定以上の生活水準を保っており、

 政治経済が良いという指標にもなりますね。


 ちなみに魔王様の種族はダークエルフ、長寿であり

 総じて知能が高く、特に魔法に長けた種族ですね。


 あとは以前セイラ様のお話にも出ましたが、

 ミクトラムのある島全体は現在大規模な障壁が

 覆っています。


 この世界にある都市群にも同様の役割を担ったものは

 存在しますが、ミクトラムほど強固な防御力を発揮する

 ものは他にありません。


 ちなみにこの防御壁は出国の際は簡単に出られますが、

 入国の際は正規のルートからでないと入れないように

 なっています。


 私たちが通ってきた海底洞窟、ニダベリル王国は

 極秘ルートであり、

 本来のルートはセイラ様のいらっしゃった

 獣王国アリアとその他の国とミクトラムを繋ぐ

 地上のルートであり、数は少ないもののちゃんと

 存在しています。


 これも以前お話に出ましたが現在は封鎖、

 一部の者しか通れないようになっています。


 聖光神からの攻撃に備えているミクトラム、

 獣王国アリアも戦争の噂が出ていましたね。


 これから世界を巻き込んだ大きな戦争へと発展していく

 のでしょうか?


 地理的には、

 獣王国アリアが陸地での最前線となりますが、

 ミクトラムとしてはどう動くのでしょうか?


 現場からサクラでした(ペコリ)。




 ……




 最後のなに? 報道ステー〇〇ンか? N〇Kか? 

 ほんでもってなんで今そんなのを挟む?


 上陸前だし有難いよ。

 まぁミクトラムのことは良く分かったよ……


 でも、この状況は一向に良くならないけどな!!!!




☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 海底の迷宮洞窟、ミクトラム側の浜辺。

 出口付近を警備していた2人の衛兵――武に秀でる

 鬼神族である。


 彼らは洞窟から漏れてくる会話に

 聞き耳を立てていたのだが、

 その会話の主である2人はもう目の前に見えている。



「お、おい、何をしてるんだあの者たちは?」


 同様に覗き込む隣の衛兵に話しかける。


「いや、わからんが仲間割れ? 

 ……力比べのようにも見えるが?

 この場所でわざわざ?」



 どうにも判らんといった風に、

 お互い首を傾げながら興味深そうに見入っていると、

 後ろから声が掛かる。



「どうなっている?」


 獣が唸るような重低音の声が掛かり、

 覗き込んでいた者達を我に返らせる。


「ハッ、申し訳ありません!!

 目視できる距離に2名、こちらに向かう気配無く

 立ち止まっていると申しますか、

 如何ご報告申し上げれば良いか……」


「?」


 要領を得ない回答に、部隊長と思しき男が、

 胸に手を当て敬礼する30名程の部下の真ん中を、

 ノッシノッシと洞窟に向かって歩いていく。


(1時間程前か?

 洞窟で大きな魔力が動いたのは報告を受けるまでもなく

 分かったが……


 まずダグザが戦っていたと見て間違いない。

 報告を受けて来てみれば、まさか抜けてきておるか……

 

 このルートは一部の者しか知らぬはずだ。

 しかもダグザを抜いてきたと言うことか? 誰だ?

 最悪この場所は隔離できるが……

 ウヌ? 確かに2人いるな)


 これまでの話にも出てきたが国の騎士兵士、

 また国から依頼を受けた冒険者が

 この海底洞窟に挑んできたが、

 ほぼ全員が洞窟前半部で逃げ帰るか、

 闇の中へと消えニダベリル国民となっていた。


 また数十年に一度、

 ダグザの居る広間まで辿り着いた者は居たが、

 ダグザに、というかその前に子飼いの首なし怪物、

 怨念の塊デュラハンやその他多すぎる不死の王国民兼

 兵士達に敗れ去り、その屍を晒していた。


 まぁ屍は直ぐに復活するのだが……


 いわゆる平和であったのだ

 ーーウン、キャッキャウフフしてたしな(タケル談)

 ウフフはしてません(サクラ談)ーー



 最も警戒する敵、

 聖光神もしくはその子飼いが動いたという情報もない。

 それは諜報部にも確認が取れていた。


 では誰が?


 しかも通り抜けて来たと思ったら、

 直ぐにこちらに入り込んで来ることもなく、

 出口手前でなにやら立ち止まっている……


 この男が訝しがるのも無理のないことであった。


 怪訝な面持ちで洞窟の出口から、

 そこにいるであろう2人を覗き込む。



(ん? 一人は男か?

 もう1人は男と被さっておって見えんな?)


 黙っていても埒が明かないと見た男は、


「おい!!!! そこの者たち!!!!

 用が無ければ早々に立ち去れぃ!!!!

 ここはミクトラム、魔王様がおわす国、

 軽々しく立ち入ることーー


 男は途中で気が付く。

 件の男の体が僅かだが後ろに反ったため被さっていた

 向こう側の者が見えたのだ。



「ムゥッ!! ま、ま、まさか!!」


 周りに集まってきている衛兵達は、その男の歓喜とも

 驚愕とも取れる表情、また狼狽える様を見たことが

 なかった。


 兵達は何事かと、出口を塞ぐように集まってくる。


 いつもなら雷から発せられる轟音のような声で

 兵の乱れを注意するところだが、

 今はその轟音は異なる者に向けられた。



「セ、セイラ様!!!!

 セイラ様ではありませぬか!!!!」



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