~13 そんな人はいませんよぉ~
仰け反ったままで胸を凝視されたまま
ーータケルがしっかりと凝視しているのは確認しており
トラウマになるくらい説教しようと思っているーー
では話しにくいので普通に座ってもらうよう
セイラに促すサクラ。
『セ・イ・ラ・さ・ま、普通に座って頂けますか。
タケルに近付き過ぎです』
「お、ウ、ウム」
少し冷ややかな口調のサクラ。
まだ驚きを隠し切れず一拍置いて椅子に腰掛けた
セイラが少し瞑目してからサクラに話し掛ける。
「……タケルの意識の中に居る感じか。
フム、念話か、サクラとやら」
『仰る通りです。
今は波長を合わせてタケルとセイラ様にだけ
声が届くようにしています』
ウム、と納得したように小さく首を縦に振り、
また聞きたいことを整理するように
蟀谷に指を当てるセイラさん。
どうやらオレの中を探っている感じがするな。
「ウーム……
精霊などの精神体が憑依している状態か?
いや、魂の部分同化か?
意識が共有されておる状態ということなら
それが最も近いか」
俯いて呟いているセイラさんをどうしようかと
考えていると、
『あの、セイラ様。
私のことはどうご理解頂いても構いませんが
今後の協力関係については信用しても良いんですよね』
「あ、ああ、それについては信用してもらって構わん。
さっきも言った通りじゃ」
『それを聞いて安心いたしました。
タケルは……わたしたちは、その、これまで色々あって
周囲をあまり巻き込みたくないのです。
要は出来る限り目立たず行動したいというのが
本音です。
ですので、騒ぎにならないよう私がカードの内容を
少し弄りました。
騙すつもりはなかったのですが……申し訳ありません』
サクラからの言葉を聞いて少し間を置いてから
セイラは言葉を返す。
「ウム、まぁ分からんでもない。
お主等の目的というだけじゃから
あまり周囲を巻き込むのも気が引けるじゃろうてーー
そこまで話したセイラは何かを思い出したようで、
ーーそうじゃ!!
そういった大会に出るというのはどうじゃ??」
渡りに船と思い付いた大会の説明をセイラは始める。
簡単に言うとここ獣王国アリアの南側、
さっきから名前の出ている
聖炎国ヴァッケン王国という国で開催される
世界武闘技大会のことである。
またこの大会は世界でも有数の強者が集まり
1週間かけて行われる名実ともに
世界一を決める大会だそうだ。
それを聞いたタケルは、
「ヘェ!! そんな大会があるんだ。
そりゃあ有難いけどねぇ」
『そうですね。
それだとお師匠様の意にも添いますし
良いんじゃないですか!!』
ただ、と続けるサクラ、
『確か聖炎国は敵対してませんでしたか??』
それに答えるセイラ、
「ああ、それなら大丈夫じゃ。
敵対国ギルド所属や出身者にはヴァッケン側が
ある程度監視を付けるじゃろうが、
そもそも怪しいのは書類選考で撥ねられるわ」
「書類選考なんかあんの!?」
「そうじゃ。
ちゃんと所属のギルドマスターや国からの許可等を
得た者が参加できるのじゃ」
「それでも敵対国の出身とか大丈夫なのかねぇ?
拉致監禁されんじゃないの?
まぁ書類審査通れば大丈夫なのか、あっ書類ーー
と続けようとしたタケルにサクラが言葉を継ぐ
ーータケル、書類については恐らくセイラ様が
何とかして下さると思われます。
また身分証代わりのギルドカードは必須でしょう?
そちらの数値も戻しましたし問題ないのでは?
でないとそもそもご提案しませんよね?』
満面に自慢と書いてあるように錯覚するぐらいの表情で
セイラが、
「そうじゃ!!
ギルドカードは審査に必要じゃし後で貸すのじゃぞ。
貴様の真の実力も見たいしの。
ジックリ穴が開くほど見てやるわい!!」
一息吐いてつづけるセイラ。
「勿論、モチのロン、見るのは書類を作る者だけじゃし
提出時は数値は記載せんからの。
要するにワシだけということじゃ安心せい!!」
(ワ、ワザワザ言い直してるよぉ。
だから古いって……
ちょっと慣れてきてる自分がイヤだ!!)
そんなことを思うタケルを他所にサクラが続けて、
『それから敵対国の件ですが1週間も開催するのであれば
経済的にも相当に潤うはず。
推測でしかありませんがこの大会は大戦前から
続いているのではありませんか?』
とセイラに向けて問うサクラ。
それに対するセイラの説明はというと、
大会はサクラの言う通り大戦前から続く
伝統のイベントで大戦時の1年だけは空いたが、
その後は毎年開催しておりヴァッケンにとっても
美味しいとのこと。
ヴァッケンには武の聖地という場所があり、
そこに敬意を表して開催しているとのことだ。
「オオ~なるほど~、よく分かったよ。
そもそもお祭りな感じだな。
その期間はちょっと色々忘れてみんなで楽しもう
ーーオリンピックみたいのか?(タケル)
そうそうそうですね(サクラ)ーー
みたいな側面もあるんだろうねぇ」
『そうですね。
それに例えばですけど敵対国の、
以前の大戦で相手方に膨大で多大で莫大なダメージを
与えたような方が出場することはないですしね』
「あっ、そうか!!
そこまでメチャクチャした人が出たら流石に書類でも
ストップ掛かるしな!!
まぁそもそもそんな相手方にムチャクチャしてて
出場しようって思うヤツって控えめに言ってもバカだし
普通いないよな!!」
『そうですよ居ませんよぉ。
大きな大会なんですから
ヴァッケン王国の重鎮さん達も観戦にやって来る
ド真ん中にわざわざ行く人なんてドMの変態さんで
パッパラパーですよぉ』
「ダハハ!!
パッパラパー!! 久々に聞いたわ!!
パッパラパー、パッパラパー!! アハハハハァーー
『プフフフフフフ』
…………
あれ、セイラさんが静かだな??
セイラに目を向けると、
そこにはプルプルと震えるセイラが
ジョッキを持ったまま俯いて何かを堪えるように
座っていた。
(ッグ、グググググゥ、
こ、こ奴ら、まさか知っておるのか?
ワシが大会に出たことを……
いや、このアホウと会ってから1日経ってない。
と、となると天然か……
ウググゥ、ここで暴れるのは簡単じゃが、
マザーのこともある!!
こ、ここは我慢じゃワシ!!)
などとセイラが考えているなど露知らずタケルは
心配して言葉を掛ける。
「エッ、大丈夫セイラさん? ウ〇コ??」
ブチッッッッ
「だぁれがウ〇コじゃああああああ!!!!ーーーー
『ッキャァアアアアアーーーー
☆★☆★☆☆★☆★☆★☆★
「ヒデェよセイラさん!!
そんな両手挟み込みビンタ久しぶりにされたよ!!
ほっぺた突き破りそうになって拍手みたいなったし!!
メチャクチャ痛いし!!
ちょっと心配だから
ウ〇コかなって声掛けただけだし!!」
ビンタすることで少し落ち着いたセイラだったが、
「うるさい!!
ウ〇コウ〇コ連呼するな!!
ウ〇コではないわ!!」
「じゃあなんで挟み込まれるんだよ!!」
「うるさい!!」
「やっぱりウ〇コ……
バチーーーーン!!
「しかしながらウ……
バチーーーーン!!
…………
『もうやめませんか……キリないですし』
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サクラの一言で若干の気不味さがありながらも
落ち着きを取り戻した二人。
「まぁとりあえず水に流してやるわい。
大会のことは任せておけ。書類などお手のものよ」
「そのセリフはオレが言うんだけど普通……
まぁでもセイラさんに助けてもらわないと
分からないこと多いしね。よろしくセイラさん」
「ウム、タケルもサクラもよろしくじゃ」
途中図らずもセイラのSAN値をゴッソリと削った
タケルとサクラは必要以上にニコニコしながら、
楽しかったひと時が過ぎた風に名残惜しさを
前面に出しつつもセイラの帰宅を促す。
「ハァ~楽しかったねぇ。
楽しい時間はあっと言う間だよねぇ~。
おっともうこんな時間かぁーー
わざとらしく時計を見て
ーー28時まである掛け時計、円を28等分か……
こまか!!ーー
驚くフリのタケル。
ーーじゃあ、今日はこれでおひらきってことで。
また明日ねセイラさん!!」
『そうですね、名残惜しいですが。
お気をつけて!! セイラさま!!』
シーン
…………
暫し沈黙の後、
怪しさタップリの笑顔を張り付けたタケルとセイラの
眼が合い、そのままジト目でタケルを睨むセイラ。
そしてタケルの額から汗が滲む頃、
「アホかぁぁぁぁぁ!!「よろしくまた明日」
などと言うてニッコリ笑って帰るとでも思うたか!!
サッサとカードを貸さんかバカタレェ!!!!」
今更誤魔化すつもりはなかったのだが、
なんとなくノリでこういったことをしてしまうのは
タケルの悪い癖であった。
またサクラも意識共有しいるからかタケルに引っ張られ
割と乗ってしまうので、
このコンビの悪乗りは結構な頻度で師匠を悩ませたり
怒らせたりしており、
怒られるのはいつもタケルだけ、
といった話はまた別の機会に。
お忙しいなか読んで頂き有難うございますm(_ _)m




