~12 それでは、わたしサクラです~
タケルのを話を聞いて
「暇潰し」で「面白そう」だから案内してやろう。
と言ったものの内心では大層安堵していたセイラ。
(フゥ~、ちょっと綱渡りじゃったが流石ワシじゃわい。
これでこ奴らを誘導して
マザーのところに連れていけるわい。
作戦通りじゃな!! フッ、流石ワシじゃ!!)
などと思っていたが、当のタケル達からすれば
ーー特にタケルーー
現在の目的は出来ればゆっくりすることであったものの
この世界について
詳しいと思われる協力者が出来たことは
歓迎すべきことであっただけ。
ということで、セイラの作戦ではなく
ーーそもそも行き当たりばったりだし
それを作戦と言わないのだ(タケル談)ーー
ホントたまたまの偶然である。
そんなことは関係なく、
結果良ければすべてヨシ論賛成派のセイラから
今後一緒に行動するのであれば信頼関係にも
影響するだろうということで、
お互いに疑問点を解消すべく
質問タイムを設けることになった。
「まずはワシに聞きたいことがあるじゃろ?
ホレホレ」
と言って
攻撃力の高そうな胸を下から支えて揺らすセイラ。
(さっきのも凄かったけど……ス、スゲエ)
『コラー!! 見過ぎっ!! エロ反対!!』
いやいや男子としては目を離したくても離せない時って
ありますよね?
牽引ビームが出ているように視線が外せないでいる
タケルにサクラがデモ行進のような声を響かせる。
「お主も好きじゃのう。
まぁ一緒に旅をするんじゃからそのうち、のう?」
「ん、んん゛っ、なにが、のう?
なのかわかんないし、チチに対する質問もないし。
ただ別でひとつ聞きたいことがあるんだけど」
『ホント、タケルって……ハァ』
オレが悪いわけでは断固としてないのだが、
サクラの非難と落胆を咳払いで誤魔化しつつ
チチに対する質問が無いことを伝えると、
「興味ないのか?
つまらん奴じゃのう、まぁ良いわ。で、なんじゃ?」
フン。
と鼻からひとつ溜息を吐きタケルからの質問に
耳を傾けるセイラ。
「まぁ追々聞きたいことは出てくるとは思うんだけど。
とりあえず、
さっき一石二鳥って言い掛けたのも気になるし……
でもまぁまずはコイツはヤバいっていうヤツ教えて」
(絶対近づかんぞ!!)
『それでは師匠に怒られますよ……』
(いや、その……ほら、
セイラさん強いだろうから倒してしまうかもだし。
あと、ちょっとはゆっくりしたいし……)
と本音がダダ漏れるタケルを他所に、
椅子に腰掛け足を組みながら、
セイラはその大きな眼を虚空へと向ける。
そして顎に手を当て
何かしら思い出すようなフリをしながら、
(チッ、わりとボケボケかと思っておったが
変に細かいところは気が付くな、こ奴め)
「ウ~ン、一石二鳥なぞ言うたかのう?」
「まぁそれは後でい~よ」
『悪意はなさそうですしね』
誤魔化せていると思っていたセイラに呆れながらも
先を促すタケル。
「お、おう、そうかーー
ウ~ン、と一拍考えてからセイラは続ける。
ーーそうじゃのう、戦争のことは聞いたか?」
ガトーから、と頷くタケル。
「そうか。今はのう、
簡単に言うと
この獣王国と北にある国の魔国 vs
南側の聖光国、聖炎国といった構図での」
ガトーとの情報に少し齟齬があるものの
現在は特に影響も無いため後で整理しようと
考えるサクラ。
続けてセイラは、
その南側の国、聖光国の「聖光神アン」
獣王国のあるこの大陸の南側大半を支配する
広大な版図を持つ国の女王について言及する。
「こ奴はの、ある時期から神と名乗り出しての……
聖炎国と共に、中立を貫いておる獣王国の国境へ
度々兵を派遣しておっての。
そろそろ大規模な軍を派遣して
獣王国を蹂躙するつもりじゃと
キナ臭い噂が流れておるんじゃ」
と一息吐くセイラ。
「スマン、ちょっと話が逸れたの。
まぁその聖光神アンがお主の聞きたいヤバイ奴じゃ」
続けてセイラは、アンがどうヤバイのかを説明する。
簡単にいうと聖光教という宗教に入信しない国は
敵対国とみなして聖戦と称し敵対国を蹂躙するらしい。
そのため聖光国と獣王国の間にあった数か国の中小国は
全国民を聖光教に、
という聖光国からの一方的な通達に
耳を貸さなかったため全て滅ぼされたとのこと。
またさっきのある時期とは凡そ150~160年ほど前の
ガトーさんに聞いた世界規模の戦争「ツイノミタマ」の
少し前だそうだ。
世界には、
その際のアンの強さと残忍さが未だに恐怖として
残っているのだという。
先ほどまでの柔らかい雰囲気ではなく真剣な表情の
セイラから説明を聞いたタケルは、
「へ~、でもセイラさん強いし大丈夫でしょ」
努めて明るくセイラに返すタケル。
実は自分が近付きたくない、
という願望の表れでもあったのだが……
ただそんな思惑は知らないセイラは
ニコニコとした表情で答えるタケルに重い雰囲気で
話していた自分に気が付き良い意味で肩を透かされた
気持ちになったようだ。
今は考えても仕方ないと
気持ちを切り替えようとしたところで、
なにしから閃いたようで右手で作った拳で左手の掌を
ポンッと叩いた。
(表現古いなぁ、誰かと似てんな……)
『……なぁんですってぇ!?』
「そ、それよりセイラさんどうしたの?」
不穏な空気を醸し出すサクラに気付かないフリをして
セイラに振るタケル。
「お~そうじゃそうじゃ。
ヤバイというか強いと言えばミクトラム、
ああ、魔国じゃな。
その島の北側には竜族の棲む領域があってのう。
そこにおる神竜と呼ばれる長と
配下の竜王達は強いのう」
『へぇええ、そういった竜族の方々もいらっしゃるのですねぇ』
(しめたっ、食い付いた!!)
『後で覚えてらっしゃい……』
(ウゲッ!!)
タケルにとって後々憂鬱な遣り取りはあったが、
関係なく話は進む。
「まずはその竜族に会いにいくのはどうじゃ?
ワシもちぃと用事があるし、助かるんじゃが。
まぁなんにしてもワシは必須じゃぞ」
ビシッと自分を指差すセイラ。
ス、スゴイ気迫だな。
なんでそんな力入ってんだよ……
う~んサクラに相談ーー
胸に穴が開きそうなぐらいの勢いで何度も自分を指差す
セイラ。
ーー必死過ぎてコエーなぁもう、大丈夫かなぁ?
やっぱなんかあるんだろうなぁ。
て、今更か。
まぁサクラに怒られんのは確定
ーー怒られ慣れているーー
として少し俯いて考えを整理するタケル。
(まぁまずはセイラさんが行きたいってところに行くのが
良いのかな。
特に目的地もないしな。
とりあえずそんな急に動くこともないだろうから
薬草なんか採取しつつガトーさんとこで
ゆっくりし~よをっと!!)
タケルがそんなまったり旅生活を思い描いていると、
その考えをセイラが中断させる。
「ところでのーー
声のトーンがガラッと明るい、
むしろちょっとアホになったのかと思う雰囲気へと
変わったセイラさんが何か思い出しように、
目をキラキラさせながら話し掛けてきた。
嫌な予感を抱きつつ、
何かと思っていると「ギルドカードのことじゃが」と
前置きされ、
色々と疑問に思っているところをぶつけられた。
ーー確かにお主は読み取り石に手を置いておったが、
魔力を隠すのは構わんとしても数値はきっちり読むはず
なんじゃがのう。
となると書き換えたんじゃろうが、
カードの情報を書き換えるには上書き出来んように
組んである術式を一旦解術せんといかんのじゃ」
一拍置いて続けるセイラ、
「じゃが、
なぜか解術された様子もなく嘘っぱちのカードが
出来上がりおった。
おいそれと書き換え出来るもんではないんじゃがのう。
そもそも組んだのワシじゃしの。
じゃからカードを書き換えた方法をどうしても
聞きたいんじゃ。
ギルドの安全管理の面からも、
またお互いの、しん・らい・かん・けい!!
のためにも種明かしをして欲しいもんじゃのぉう。
説明を頼めるかのぉう」
眉を八の字にわざとらしい怪訝な表情をしながらも
ドヤ顔という器用な表情を作りながら語尾と信頼関係の
箇所をやたらゆっくり言うセイラ。
なにがギルドの安全管理だよ、
絶対考えてないだろ!?
ック、んで語尾と顔がまた腹立つなぁもう……
まぁ気にしたら負けだ。
フウ、え~とだな、改竄方法はバレてないんだな。
そうなるとだな……
タケルは俯いて瞑目しながら時間を稼ぐ。
(どうする?)
『そうですね、改竄について説明するとなると……』
(だよなぁ。
まぁもう弄ったのはバレてるし
セイラさんなら構わないかな。
ちょっと、いやかなりアホだけど……)
額に手を打つと、ペチッと音がした。
そのまま手で額をゴシゴシと擦りつつ、
目を瞑ったまま溜息を吐いた。
タケルは
ーー言い訳も面倒臭いと思い始めたこともあったがーー
少しの時間ではあるがこのセイラという人間、
もといエルフと話してみて信用できない裏表のある
人物のようには見えなかった。
人の生において短いと考えられる期間に
地球に居た頃では考えられないほどの
濃い経験を積んでいるタケル。
そのことを踏まえ、
また悪意には特に敏感なサクラが
何も言わないということも相まって
セイラが聞きたいことについて答えても良いか、
アホだけど。
という気持ちになっていた。
そして、
「……わかった」
ドヤ顔からニヤリと悪い顔へ変化したセイラが、
「そうじゃ、どうやったか言うてみい」
仕方ない、と思いながらもう一度確認する。
「ハァ、さっきも言ったけどオレたち
のことは出来る限り目立たないよう……頼むよ」
「? くどい、サッサとせい!!」
オレたち、の部分に反応したセイラが
怪訝な顔をしながらも急かしてくる。
(サクラ、構わないか?)
『ハァ、なにを今更。いつでもいいですよ』
今更感たっぷりのサクラ。
まぁでもオレ以外にも話し相手がいたほうが良いしな。
ただし相手が信用できる場合に限られるけど。
変に研究だのなんだの言われても困るしね。
んじゃまぁ、紹介するか。
「えーコホン、では紹介します。サクラです」
『あ、あ~あ~。
聞こえますかセイラさま?
初めまして、サクラと言います』
「!!!!」
瞬間、
目を剥いたセイラが額がくっ付きそうなぐらいまで
身を乗り出してきたのでタケルは思わず
椅子の後ろ足2本で体重を支え背もたれに身体を預け
仰け反ったのだった。
セイラの胸をしっかりと凝視しながらではあったが……




