~106 獣王国 vs 連合軍⑤ 決着~
少し時は遡りここは国境東側付近。
連合軍右翼と相対するのはアリア率いる獣王国軍
既にアリアが指輪を砕き魔国への連絡指示を
飛ばしてから20分程度経っている。
部隊同士は一進一退。
近接戦闘がそこかしこで行われ魔法が飛び交う中
アリアと第1王子タリスの戦闘も激しさを増す。
既に手出し出来ない領域のため周囲の兵士は
同じ兵士同士での戦いに没頭している。
こちらは獣王アリアが速さに任せ手数で圧倒するが
タリスは何発か喰らうものの
防御魔法と異空間収納から取り出した
防御力50%アップ効果の付く「祝福の盾」と
着込んでいる鎧で
ほぼノーダメージで受けに撤している。
ドドッドドドッドド――――
ガガガッガガッガガ――――
隙を見て大技を繰り出すアリアであるが、
「獣神拳舞 奥義 豪華拳爛!!」
ズッッドドドドドッドドオドオッドオオオ――――
ガッッガガガガガッガガガッガガガガガガ――――
概ね全てを受けきられ千日手となっている。
(フン、バカが。予想以上に硬いな。
奥の手は温存しつつ早く蹴散らして
他のところにも回りたいのだが……
などとは言ってられんな)
アリアが力の温存を止め覚悟を決めたところで、
!?
国境西側と更に西の海岸に大きな魔力が現れる。
東側海岸についても同様であるのだが、
「クックックッ……?
何だ? 東、西、他にも!?」
手を止めてまずは西側に意識を向けるタリス。
それを見てひとまず安堵するアリアであるが、
一つ疑問は残る。
(フン、西も東海岸も予想通りだ。
お二方も動いてくれたようだ、有難い。
しかし西海岸は早すぎる?
いやヴァルディオーネ殿なら有り得るのか?)
いずれにしてもアリアにとっては好都合。
しかし時間稼ぎをしていたはずのタリスは、
結果、逆に時間を掛けさせられていたことに気付き
憤慨するも表には出さずアリアに向き直り
問い掛ける。
「……貴様、西海岸には気付いていなかったのでは
なかったのか?
先程の慌てぶりは演技か?」
国境西側付近、東西海岸も戦闘が始まったようで
魔力が膨れ上がったのが両者には理解できた。
それを感じタリスは
今度は苛立ちを隠さず言葉を吐く。
「フ、やるではないか汚らしい獣人の割に」
負けていないアリア。
「フン、バカが。
その汚らしい獣人に貴様は敗れるのだ」
睨みあったのも一瞬。
直ぐに戦闘が再開される。
今度はタリスも攻め始めるが、
例え聖剣「ガーランド」であろうと当たらねば
意味がない。
タリスの剣の技量は決して低いわけではない。
王族が代々修めてきた聖光国正統剣技である
「光国流剣術」の師範にまで昇り詰めている
腕前だ。
しかしながら獣王アリアは剣技こそタリスに
劣るものの元から拳での戦いを得意としており
戦場で剣同士で勝負しよう、という訳にもいかず
また速さが段違いなため受けには強いがどうしても
攻め切れない。
「クッ!! ちょこまかと!!
光国流剣術 奥義 光剣爆閃!!」
全方位へと超速の光刃が乱れ飛ぶ。
周囲の敵味方関係なく
兵士達が切り刻まれてゆく様を見て
アリアの怒りのタガが外れる。
「貴様!!」
光刃を弾きながらアリアは、
「貴様は許さん!!
獣神拳舞 超級奥義 星墜 壱の型!!」
超超圧縮され拳の形を取った魔力が乱れ飛ぶ。
光刃を爆砕しながらとんでもない数の拳が
タリスに襲い掛かる。
ゴオッ!!!!
ドカドカッドッカドドドドドド――――
そして爆発を伴う。
ドッッガァァァアアアアアアア――――
中心部のタリスは跡形も無く吹き飛ぶ、
と見えたが
徐々に煙が晴れたそこには満身創痍ながらも
罅の入った「祝福の盾」を前面に構え
聖剣を杖代わりに立ち上がるタリスが見える。
それを見たアリアが言葉を投げる。
「フン、バカが。
城で縮こまっていれば良いものを。
貴様は終わりだ」
唇から血を滴らせているタリスであるが、
負傷しているのが原因ではないようだ。
「グッ、クッ、クソが!!」
そのタリスの後ろから影が現れる。
仮面を被った黒装束の人物。
「連絡が入りました。
といってもその様子じゃ聞いていませんね――
タリスは突然現れた人物に呆けていたようだが、
満身創痍ながらも我を取り戻して問い掛ける。
――ゴホッ、な、なんの連絡だ」
警戒しながらも黙って見ているアリア。
「撤退です。話は後で」
そう言うと懐から取り出した
宝珠のような真っ白な宝石を放り投げ何事か呟く。
アリアは撤退と言う言葉を聞き、
「フン、バカが。
今回は見逃がしてやろう」
そう言った途端に周囲に
目を開けていられない程の光が撒き散らされ、
収まった頃にはタリスも謎の黒装束も
姿を消していたのであった。
周囲の敵兵にもその通知は伝えられていたようで、
撤退が始まっている。
それを見たアリアは生き残りの味方兵士に向かって、
「構わん!! 追わずとも良い!!
国境から離れるな――
一拍置いて、どこまでも響くような声で続ける。
我らの勝利だ!!」
ウワァッァァァアアアア――――
勝ったぞ――――
バンザーイバンザーイバンザーイ――――
メシだメシ!!――――
アリアバンザーイバンザーイ――――
ウワァァァァアアアア――――
湧き上がる国境付近のアリア軍兵士達の
怒号の様に聞こえる大歓声。
オッサンが多いからなのは言うまでもない。
アリアの周囲にも兵士達が殺到し取り囲み
握手やら抱き着かれるやら、
ドサクサでチチを触られるやらであった。
チチを触った兵士はシッカリと地平線の彼方まで
吹っ飛ばされていたのだが……
そんな中、とりあえず一段落し安堵するアリア。
(フン、バカが。
他のところも上手くやってくれたようだな。
特に西側の海岸は誰だ?
あれが間に合わなければ大被害を被ったぞ……
フゥ、まぁとりあえず確かめに戻るとするか)
こうして前大戦以降初めての戦争と言って
差し支えない大きな戦闘が行われ
獣王国アリアの勝利に終わったが、
これは序章に過ぎなかったことを
後の世の歴史家が書に記すことになる。
もうすぐ夜明けであったが、
勝利に沸く国境の兵士達の騒ぎは収まらない。
その騒ぎに紛れ3名の人物が
アリアへと侵入したことは今のところ
誰にも気付かれなかった。
☆★☆★☆★☆★☆★
国境の砦へと戻って来たアリア。
またバロン、ソニアと共に
ベレヌス、スカージも戻って来たが
タケルの居所が分かっている二人は
直ぐにタケルの元へと向かう。
久しぶりですのでーーベレヌス談ーー
戦闘が終わった際にタケルとは連絡を取り
魔物と相手の情報は既に共有し終わっていたのだが
今後の動きを伝えるため一応直接顔を合わせに
行ったのである。
一応、主だしのーースカージ談ーー
ベレヌスは仕事があるからと
スカージは、
「後で東の海岸を見ておけよタケル。
妾の傑作に刮目するのじゃの。
それと今はそんなじゃから構わんが
約束は守るのだぞ。
ファ~ア、働き過ぎだの。
お肌に悪いのう」
と言ってベレヌスと一緒に
城へと戻ったところである。
そしてタケルの「そんな」状況はと言うと
「フン、バカが。
なんで牢屋に入っている?」
牢番の兵士2名は先程からいつの間にか現れた
妖艶な美女、加えてモーニングを着た老紳士まで
来るわ、
来たら来たで牢屋の中で寝っ転がっている男に
何やら城に帰るだの海岸を見ておけだの言うが
ハッキリ言って美女も老紳士も誰だかワカラナイ。
ただこんな砦の地下にまで単身もとい二人で
戦場とは思えない格好で堂々とやましい雰囲気など
一切なくやって来る訳なので
王都の偉いさんだと思うことで納得していたが、
納得できないのは不審者として捕らえられた
牢屋の中の男である。
そこへ今度は不審者の件を報告に上がった上司に
代わって、
女王アリアに将軍のバロンに側近のソニアまで
現れる始末。
牢番は既に思考を放棄していた。
そんな中、
話し掛けられたタケルはアリアに気が付くと、
「ああ、アリア様。
不審者として捕まってしまいました。
テヘ――
――ペロ♡」
スバラシイ反応を見せるアリアであるが、
周囲の視線はソニアを筆頭にスカージの魔法よりも
冷たい。
それに気付いたアリアが知らんフリを決め込みつつ
「フ、フン、それより貴様がなんでここに居る?
まぁいずれにしろここでは話も出来ん、オイ」
そう身振りで牢から出すように
牢番の兵士へと指示を出す。
牢屋から出してもらったタケルは伸びをしながら
「あ~シンド。
有難うございましたアリア様。
それとスバラシイ反応でしたね」
そう言うタケルに慌てて話題を変えるアリア。
「フ、フン、それは今は置いておけ。
あ、後で大変なことになる。
そんなことより、
貴様ならこんな牢屋など直ぐにでも
出られたであろう。
俺を待っておったのではないのか?」
流石スルドイ、と感心しつつ
話し始めたいタケルだが場所が場所なので
一旦アリア城へと戻ることになったのであった。
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