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~105 獣王国 vs 連合軍④~



 獣王国アリア側国境から約10㎞程東側にある海岸



「なんだか気持ち悪いのが出てきたわね?

 なにアレ?」


「恐らくヒュージスライムかと思うのですが

 あんな色とりどりなのは見たことがありません」


 海岸には身体の大きさは50m程、

 チューリップではないが

 赤白黄色に時折青や黒、他の色も混ざり合った

 そのゼリー状の身体をウネウネと波打たせながら

 少しづつ内陸部へと向かおうとしている物体が

 見える。


 それは身体から無数の弾丸のような透明の溶解液を

 振り撒きながら進んでいるため


 何人かの兵士が犠牲になったが

 現在は障壁を張りつつ魔法で応戦しているところ

 であるが成果は芳しくない。


 敵兵も巻き添えを喰わないようスライムの後方へ

 下がっている。


 そんな中でのスカージとソニアの会話である。



 そしてこのスライムもゾンビ・アースドラゴン同様

 魔界から召喚された魔物である。

 


 デス・ヒュージスライム 変異種

 魔界で育ったヒュージスライムの変異種

 デス・ヒュージスライムの更に変異種。


 物理攻撃は一切効かない上に

 バラバラになっても再生する能力を持つ。


 また色とりどりの体色は各々が各系統の魔法を

 現しており、それぞれに耐性を持ち

 物理攻撃程ではないが魔法についても

 大層効きにくい身体であった。


 攻撃については無色の溶解性の散弾を

 巻き散らすことで周囲の物を一掃する。


 また身体を大きく伸ばし獲物を包み込み

 捕食するのはスライム系魔物に良く見られる攻撃

 であるが、

 この特殊なスライムも例外ではない。


 その身体の大きさと質量含め厄介な魔物であり、

 この魔物が通ったあとは草木一本どころか

 土や岩まで無くなってしまうので、

 食欲が満たされるまでは近付かないのが一番では

 あるが今はそうもいかないのである。



 当然、スカージもソニアも初見の魔物なので

 上述の様な情報を持っていない。


 その能力についても詳しく分からず、

 鑑定もしてみたが名前すら分からない。


 しかしこれまでの戦闘経験等から

 どういった攻撃と能力を持っているのかは

 何とはなしに察しが付いていた。


 ということで、



「まぁ、いいわ。

 メンド臭いけどやるから

 兵を下がらせてちょうだい」


 一言告げるスカージ。

 答えるソニアは即座に反応し、

 身振りでスカージより後方へと下がるよう

 指示を出す。



「下がれ!! スカージ様より前に出るな!!」



 障壁を張りながらジリジリと後退する兵士達。

 その最中にも溶解弾は飛んで来るが

 スライムの歩みが遅いため

 スカージよりも前に居る兵士は何とか後方へと

 下がることが出来た様だ。


 それを見届けたスカージは間髪入れず魔法を放つ。




千年凍土(アイス・キングダム)




 ピッ キシィーーーー




 スカージが手を翳した方向の直線状にあるものは

 全てその動きを止め氷の彫像と化した。


 兵士も沖に待機していたであろう軍船も隠蔽工作等

 関係なく全て凍っており遥か向こうの水平線まで

 その氷の世界は続いている。


 この場で動くものはスカージより前には

 存在していないかの様に見える。

 

 しかし、




 パキ パキ




 気付いたソニアがスカージに声を掛ける。



「スカージ様!!」


「分かっておる、急くでない」


 答えるスカージ。

 少しづつではあるが

 凍らせたデス・ヒュージスライムの上部が

 溶解しているようだ。


 その開いた上部からウネリウネリと

 体の半分ほども出て来たところで、



千年凍土(アイス・キングダム)



 またもスカージの魔法が放たれ動きが止まる。

 その後同じことが何度か繰り返されているのを、

 ソニアはじめ兵士たちは訝し気に眺めている。


 既に危険はないため

 周囲を警戒しながら落ち着いてはいるものの

 怪訝な表情で尋ねるソニア。



「あ、あのスカージ様?

 もう問題なければ

 国境の方へ応援に行きたいのですが?


 それともずっと魔法を掛け続けていないと

 いけないとか?

 そうであれば封印を施さねば――



 全てを言わせず遮って答えるスカージ。



 ――ククク、ちょっと待っておれ。

 封印など要らんわ、もう完成じゃ」



 そう言ってここまでで一番の気合を入れ

 魔法を放つ。




凍氷宮殿アイス・パレス!!」




 魔法を放ち凍らせたデス・ヒュージスライムを

 満足げに眺め、

 傍らのソニアの方を見るスカージ。



「どうじゃ? 傑作の完成だの」



 呆気に取られる周囲を他所にスカージだけは

 その出来に満足しタケルの作るケーキに

 思いを馳せるのであった。




☆★☆★☆★☆★☆★



 東側海岸での様子を離れたところから見ていた

 連合軍側の軍監。


 スカージ達からは距離もありスキルとそのスキルを

 強化する仮面を被っており本人は気付かれていない

 と思っている。


 そしてほぼ同時刻に同じ様に西側海岸で

 ヴァルディオーネに全滅させられたオーセル軍と

 セルキの様子を監視していた軍監は

 その報告に幕舎へと急ぎ足を運んでいた。


 少し遠い西側の海岸を担当していた軍監が

 到着した時に東側海岸担当の報告がちょうど

 終わったところであった。


 通信傍受を避けるため

 軍監たちは直接報告するのが定番である。


 まぁ敵味方お互い通信傍受の妨害は行っているが

 軍監については

 念のためその情報を直接報告するのである。


 また転移を使用しての報告もひとつだが、

 まず使用可能な者が少数であること。


 また魔力が膨大な者達はポンポンと当然のように

 何度も行うがそんな者達は世界でも一握りである。


 例え軍監を任される優秀なステータスやスキルを

 持つ者達でも身体強化の魔法や独自のスキルで

 出来る限り早く移動、報告することが

 普通なのである。


 そして、その軍監たちが揃って

 魔力枯渇寸前まで速さを重視して

 幕舎へ戻って来た理由は当然のことながら

 戦闘の勝敗と相手の情報である。



 疲れ切った軍監を労うことも無く

 こちらも疲れ切った表情で問い掛けるラウル。



「お前もか?」


「ハァハァ、その仰りようだと東も?」


「わたしが聞いておるのだ!!!!」




 ガラァァァァン ガシャアン――




 幕舎のテーブルを引っ繰り返し

 言葉を荒げ問い返すラウル。


 いつもの落ち着いた好々爺たる振る舞いしか

 見たことが無い西側海岸担当の軍監は

 その様子に少し驚くが落ち着いて答える。



「……ヴァルディオーネの落雷に部隊はほぼ壊滅。


 ただ落雷の前に一時、大量の”烏”や”魔力弓”が

 降って湧いたように部隊を足止めしておりましたが

 詳細は分かりません。


 セルキ様は離脱、同様に味方の艦も――



 続きを口にしようとしたことろで遮り

 怒鳴り散らす。



 ――もう良いわっ!!! フゥフゥッ」



 怒りが収まらないラウルであった。

 頭の中では、



(一体何がどうなったら精霊の、

 しかも高位精霊が2体もアリアに?


 もしかして以前報告にあったヴァッケンに

 現れた奴らか?

 そうなるとヴァッケンの件も

 裏で糸を引いていたのはアリア?


 クソッ!!!!

 推測ばかりで何も分からん!!)



 そこまで考えて、

 少し落ち着きを取り戻した

 ラウルの判断は早かった。



「撤退する。

 殿下にそこの魔道具で連絡してくれ」



 そういうと物言わず立っているのは椅子だけの

 幕舎から出て行くラウル。


 出たところで国境の方を見ながら心の中で呟く。



(西にヴァルディオーネ、

 国境と東に高位精霊が2体、化け物が3体も揃って

 こっちは手札も無い状態……


 何だ? 何なのだ?

 セイラ一人ではここまでは出来まい。

 せいぜいヴァルディオーネまでだ。


 あの高位精霊にヴァルディオーネが来る前の

 ”烏”や”魔力弓”も気になる。


 アリアにはわたしの知らない何かがある……

 早急に調査を入れる必要があるな。

 あの暗部共をそのまま使うか。


 ちょうど良い。

 このドサクサで3名くらいなら潜り込めるだろう。


 トワは確か行方不明の捜索か。

 まぁドゥが居れば神都は問題無いだろう)



 今後の動きを確認し、

 少し落ち着いたところで幕舎に戻る。


 しかし自身で引っ繰り返したテーブルを見て

 自業自得にも関わらず

 怒りを再燃させるラウルであった。

 


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