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第五十五話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 王弟エルランドは、生まれ変わる前の世界では、無料で閲覧できる小説サイトを好んで利用をしていたわけだ。


 当時は悪役令嬢ものが流行であり、ざまあされたり、ざまあされたり、ざまあされたりする、勧善懲悪の物語が大の好物だったという覚えがある。


 翻って考えてみるに、この世界はゲームの世界を模してはいたものの、ゲームの内容の通りに進む世界ではないということ。エルランドが思うに、この世界の悪役令嬢とはハリエット・オーグレーンに他ならず、良くある展開の通り、美味しいところは全て持って行ったのがハリエットではないかと考える。


 殿下の婚約者候補として名前をあげながらも、誰にも注目をされなかったモブ中のモブ、それがチート知識を利用して活躍し、結果、王子の愛を手に入れて立派に成り上がりを果たしたのだから、改めて凄いな〜と感心してしまう。


 ようやく帝国との話し合いも決着がつき、アハティアラ公爵領のその先に広がる、魔物の棲家として今まで手がつけられなかったアスプルンドの原生林が帝国側から譲渡される運びとなったのだ。


 つい最近、帝国に滅ぼされる事になったナーコン・パトムの住民もまた、労働力としてエヴォカリ王国へと移動する事が決定。


交渉の場では、落とし穴の誘導役であったエッべ、デニス、バートの3人が活躍する事となり、特にアスンプルトの原生林については、後から帝国側が文句を言い出すほどの資源の宝庫である事が、後に発覚する事となる。


 ようやく周辺の状況が落ち着いてきたという事もあって、エルランドは自分と同じように前世の記憶を持つイングリッド、ハリエット、そしてハリエットのオマケでついてきたレクネンを自分の執務室に招き入れる事にしたのだった。


 軍の統括も行うエルランドの執務室は王宮から離れた兵務所に設けられているのだが、そこそこに広い作りであるし、他国の要人が見学に訪れる事もある関係から応接室には重厚なソファやサイドボードが置かれていたりするのだ。


「ところで、レクネンにはよく分からない話となるのかもしれないが・・・」


 ハリエットの隣に座るレクネンは、フンと鼻を慣らしてそっぽを向いた為、ハリエットが申し訳なさそうに頭を下げながら、

「黙っているって言っているので、置き物程度もしくはベビーシッターだと思ってください〜」

と、言い出した。


 この国の王太子を置き物扱い、ベビーシッター扱いもどうなんだろうと思いながらも、ハリエットが腕に抱く赤子の方も実はさっきから気になって仕方がないのだ。


「ねえ、ねえ、ハリエットったらいつの間に赤ちゃんなんか産んでいたわけ?お腹が大きくなっていたところを見ていないと思うんだけど〜?」


 ソファの上で胡座をかくフリーダムなイングリッドは、よほど男装が気に入ったのだろうか。戦地から帰ってきてからも、男装をやめないで兵舎と知識の塔とを行ったり来たりして過ごしているのだ。


「この赤ちゃんはツクバルの街で拾い上げた子なんです。殿下が拾って来た関係で王都まで連れて来たんですけど、近々、養子に出す事が決定しそうなんです。王子の離宮で働く侍女で子供を産めない人が居るようで、とりあえず今日は顔合わせのために連れて来たのですけどね?」


 おくるみに包まれた赤子はすやすやと健やかな寝息を立てている、褐色の肌をしているように見える事から、ジュバイル人の血が混ざっているのかもしれない。


「名前はねルリちゃんって言うのです」

「ハリエット、カエル(ルリ)ちゃんじゃなく、ルーリちゃんだろ?」

「まあ!私ったらまたルリちゃんって言っていましたか?」


 慌てて自分の口元を押さえるハリエットを、愛おしい眼差しで甥が見つめている。


「確かにカエル(ルリ)ちゃんだなんて名前をつけていたらネーミングセンスを疑うところだった」


エルランドが紅茶を片手にそう言うと、キョトンとした顔でイングリッドがエルランドの方へ金色の瞳を向けてきた。


「なんで?なんでルリちゃんだとおかしいんだっけ?」

「だって、ルリだとカンベリア語でカエルの意味になるだろう?」

「そうだぞ、月の庇護を得るためにと私がルーリと命名したのだ。南ベルディフ語で月を意味する名前を付けたというのに、月とカエルでは意味がガラリと変わってしまうではないか」

「ええーー・・そうだったかー〜」


 イングリッドは月光を溶かし込んだようにも見える美しい髪をバリバリと掻きむしりながら言い出した。


「自分の前の名前が瑠璃だったから、考え付かなかったな。せっかく7カ国語をマスターしたのに、カエル(ルリ)の意味に気が付かないのは迂闊だったな・・・」


 その言葉を聞いたハリエットは、赤ちゃんを隣に座るレクネンに渡しながら、前のめりとなった。


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