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第十八話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 エヴォカリ王家は直系の数が異様に少ない。


 近親婚を繰り返した弊害によるものなのか、王家に子供は少なく、現在の王であるマグナスにしても、十五歳年が離れた弟のエルランドが生まれるまでは、王国のたった一人の王子として真綿に包み込むようにして、大事に、大事に育てられたのだ。


 ただ、ただ、従順に、汚れを知らず、まっすぐに育った王子は、生まれて初めての恋をした。


 頼りない自分を支えられるようにと用意された婚約者は、幼い時からしっかり者で、いつの時でも常にマグナスを支え続けてくれたものの、

「ごめんなさい・・私・・本当に何も出来なくて・・・」

と、困り果てた様子で笑いながら自分を見上げる男爵令嬢の可愛らしい顔を見下ろした王子は、自分が守ってやらなければならないと思う存在に遂に出会ってしまったのだと思い込んだ。


 男爵令嬢フレドリカと王太子マグナスの恋は当時、市井では有名な話となり、知識の塔の長となるミカエルは、半ば呆れ返る思いでいたものだった。


「子爵や男爵の位の男子であれば何の問題もないが、マグナス王子は王位を継ぐ者以外の何者でもない。王となる者が自由に王妃を決めたいと考えるのであれば、何者にも負けぬ強大な力を持たぬ限りは夢物語にしかならない。真綿に包まれたヒヨッコが恋人を王妃にしたいと訴えたとて、到底、認められるものではない」


 結局、問題の男爵令嬢は修道院へ送られる事になった。

 マグナス王子の運命の恋人などと言いながら、複数の貴族令息との逢引きが明るみとなったからだ。


 恋人の不貞を知り、ショックを受けたマグナスを立ち直らせたのが王妃ペルニアであり、マグナスの所為で失墜した王家の権威を今の状態にまで持ち直したのも王妃ペルニアの手腕によるもの。 


 そうして王と王妃の間にレクネン王子が生まれ、王子の婚約者の選定が始まった頃、正式な婚約の儀は王子が成人となった後に行う事とすると王妃自身が宣言した。


 十歳の時にマグナスの婚約者となったペルニア王妃には、男爵令嬢フレドリカの所為で婚約を破棄される寸前にまで追い込まれたという過去がある。


煮湯を飲まされた覚えがある王妃としては、王子が成人して気持ちが定まるまでは、正式な婚約者はつくらないようにしようと考えたわけだ。


 何のかんのと言いながらも、周囲はレクネン王子がイングリッド嬢の事を憎からず思っている事を理解していたし、下位の貴族令嬢という艶やかな蝶に王子が戯れるのも、イングリッドの関心を引きたい一心によるものであると理解していた。


 淑女の鏡とも言われるイングリッド嬢が殿下以外の人間に視線を送る事はない。アハティアラ公爵のイングリッドに対する態度について、良い印象を抱く者は少なかったものの、食べ物を与えなかったり、使用人のように働かせたり、暴力を奮ったりという事は一度として行われていないのは明らかだった。


 公爵は令嬢に対して無関心を貫き通しているものの、王家としては、王妃を輩出する生家が下手な欲を持つよりは良いと考えているし、イングリッド嬢は8ヶ国語を自由に操れる才女でもある。容姿といい、身分といい、中身ついても何の過不足もない令嬢だと言えるのだ。


 そんな、ほぼ、ほぼ、レクネン王子の婚約者はイングリッド嬢で決まりというような雰囲気の中で、突如、存在感を出し始めたのが、イングリッド嬢の義妹となるフィリッパだ。


「ミカエル様・・・ミカエル様・・・」

 

 知識の塔とは、才気あふれる者が集められる場所であり、自国の産業に貢献させるために作られた機関である。日用品から軍事用品に至るまで、日々、様々なものが開発されている場所でもある。


 中肉中背のアレッソがミカエルの執務室に入って来た。

 王弟の申し入れにより、イングリッド嬢が知識の塔を見学する事になった為、その案内をしていたアレッソが戻って来たという事になる。


「エルランド様と令嬢はもう帰ったのか?」


 塔の長であるミカエルの問いに、アレッソはやたら挙動不審な様子となって、

「お二人はドルフと共に武器倉庫の方へと移動しました」

と、自分の指先をくるくる回しながら答えている。


 アレッソは、医師や薬師を排出するベルマン家の出身であり、焦茶の髪色に平凡そのものの顔をしたこの男は、王国一の毒の使い手であると断言する事ができた。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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