Grigio Capitolo Uomo Ⅰ 灰色の章 Uomo ゲートレース
Grigio Capitolo Uomo Ⅰ 1本目
「さぁ北米学生チャンピオン ロイ•サンダーの1本目の滑走だ」
DJのアナウンスが響き渡った。
「で……どうなんだ❓️ヤツの腕は 宙也❓️」
志賀が聞いて来た。
「ヤツはじゅうぶんに速いですよ‼️ラフファイトなんかしなくたってね……」
既にロイの滑りを視ていた。
宙也は志賀に言った。
宙也は咲耶の父である洋二の勤める銀行の保養所が、野澤にあり、洋二が支店長に頼み、早くから野澤で調整をしていた。
其の日は
ペガサスコースのリフトハウスの脇で、ブーツの調整をしていた時に、リフトを降りてきた白人の男性に禍々しいただならぬ雰囲気を感じた。
『コイツが例のロイ•サンダーだな』
宙也は瞬時に分かった。
ストレッチを終えて、ロイが滑りはじめた。
しばらくはロイの滑りを観察した。
クロスオーバー ストレート内傾だが……
恵まれた体格を活かして豪快な滑りをみせる。
『荒い 狂暴と言ってもいいな…でも…さすが スキーハンドリングが上手いな。』
ロイのスキーはグングン加速していった。
2本目を滑るために上がってロイが、すぐに斜面を滑り降りていく。
「いくぞ カウボーイ‼️」
宙也はステップを切った。
『うん⁉️』
ロイのサングラスの内側にひとりの男が映った
完全にロイにエイミングを定めた宙也は
SHAMALのターンスピードを加速さ
せていく❗️
『尾けられてる⁉️情報では、たしかオオサワはまだキャンプ·インしていないはず❗️あのウェアは····
さっきリフト近くにいたヤツだな❗️
バトルの相手を探していたのか❓️
""ストリート·レーサーか⁉️""
ジャマしやがってムカつくな❗️
ジャップごときが……格の違いをみせてやるぞ』
ロイはSKIを加速させた。
『なに⁉️離せない‼️それどころか…
オレとの距離を少しずつだけどつめてきてる。
ストリートレーサーごときが…
オレのフリースキーを…
つめられるワケないだろう⁉️
この追撃速度はオノヅカのオオサワなのか❓️』
ロイは宙也の追撃に気付き、彼もステップを切って、さらに加速させた。
『チッ 気付いたな❗️』
宙也は斜面 斜め前方に抜重をしてTipo 零をスウィングさせて切っ先を斜面に正対させた。
『片手平突刺』
そう称される彼の強烈なカーヴィングターンで雪面を斬り込んでいく。
「なに···さらに距離を詰めてきてやがる⁉️
ウソだろう❓️ジャップにこんなヤツがいるのか⁉️」
「やっぱり、さすがに速いな····いくか‼️」
其の刹那····宙也の脳裏に咲耶が浮かんだ。
『ダメよ 宙也····まだ技をみせてはイケナイわ』
「····咲耶の言う通りだ❗️不必要なリスクを冒せない」
彼は制動をかけて、左側の森林コースに入っていった。
しかし結果は……この迂回したことが良かったのである。
LEVANTEの北米から、驚くべきロイの情報が志賀にもたらされた。
ロイはラフファイトが得意なダーティな男だった。
別名『デストロイヤー』と呼ばれていた。
LEVANTEのようにスキー·ワールド·カップ·サーカスを長い時間をかけて参戦していれば······
様々な情報をもたらされるが·····
他のチームはただ······
『北米学生チャンピオンが出場する』
其れだけがもたらされた。
其の結果•••••
『相沢より、""ロイ•サンダー""を墜とせ‼️』
ロイのダーティな情報は伝わらずに……
オノヅカをはじめとする各チームは、宙也からターゲットをロイに切り替えた。
そして•••••
続々と各ワークスチームが野澤に集結した。
各チームの若手エース級が本番前にロイとの前哨戦を仕掛けようしていた。
「すげぇな❗️ゲートレースなのに、各ワークスの若手のトップクラスのレーサーがぞろぞろ来てる‼️」
『フリースキーイングというリングでロイとの乱打戦がはじまる·····』
コレは宙也には都合が良かった。
『ラッキーだな‼️ロイのおかげでマークが外れて集中できる』
学生ナンバーワンの呼び名が高い大澤はもとより、
オノヅカ·チームはかなりの力の入れようだ。
選手権の雪辱をぶつけるかのような勢いだった。
かなりのスタッフを動員してロイ·サイドの一挙手一投足をリアルタイムで伝えていた。
「ロイがコースインしたら、すぐ伝えてくれ」
大澤とそのスタッフは臨戦態勢で臨んでいた。
ロイ側もモチロン大澤をターゲットとして狙っていた。
しかしこう連日、各チームからマークされていて、
彼のフラストレーションはピークに達していた。
ーオオサワを潰せば障害がなくなり後はラクな展開になる····。
ロイは決めた。
問題は何処でオオサワを潰すかだ❗️
シナリオを考えはじめた。
「オオサワにロイを追いかけさせて、抜かせたところでトラバースしてきたスノーボーダーに接触しそうになり、回避して滑落させるなんてどうだい❓️」
マネージャーが言った。
「そうだな。コントロール不能に見立ててトラバースしてきたことにするのが自然だな。コレならヤツにとって不幸な事故に見せかけられる」
ロイはマネージャーのシナリオに納得した。
「場所は尾根伝いの連絡コースがイイだろう。幅は狭いから。スピードの出し過ぎには注意だな。」
マネージャーは不敵な笑みを見せた。
「そうだな。分をわきまえず煽るからケガをするのさ」
ロイはニヤリとした。
其の日
「ロイがゴンドラに乗った」
待機していたオノヅカスタッフがラヂオで伝えた。
「ヨッシャ出るぞ」
大澤は気合をいれた。
愛機である『トライアン SL』をセットアップ
セカンドである坂本と一緒にゴンドラに向かった。
宙也はマネージャーの志賀と一緒にコースインするためにメインゲレンデでストレッチをしていた。
「宙也 大澤達が動いたぞ。何も起こらなければ良いがな」
志賀も自分のカンを信じる方で、彼のなかで不穏なモノを感じていた。
ーイヤな予感がする
「宙也。コース変えよう。山頂コースを止めて、シュナイダーコースに行く」
『ロイは面白くないだろうな。ココまで張り付かれてはな 俺だって嫌気がさすな』
宙也でもそう思っていた。
「ハイ、分かりました」
こういう時の志賀の判断を宙也は信頼している。
以前もあるコースでトレーニングしようとしたら、
志賀に制止された。
『其の時は何言ってんの❓️』
そう思っていたが····
其れから2時間後、コースに表層雪崩が起きて数名が巻き込まれた。
それ以来、宙也は志賀の判断を信じるようになった。
宙也達がシュナイダーコースを降りて、メインゲレンデに戻ると、パトロール隊がスノーモービルに乗り、慌ただしく出動した。
『何か遭ったな』
其処に事故を伝えたセカンドの坂本がいた。
志賀は坂本に近寄り声をかけた。
「坂本君 どうした❓️何か遭ったのか⁉️」
坂本の顔は青ざめていた。
「志賀さん❗️大澤が尾根コースから滑落しました」
「なに····⁉️」
予感は当たっていた····志賀は絶句した。
大澤達が、フリースキー中にロイの追撃をはじめた。
1·2本目はお互いの手の内を見るように、表面上は何事も無く滑り降りた。
そして····3本目
ロープウェイを降りて、トライアンを履いた時に大澤は坂本に言った。
「仕掛けるぞ❗️」
ロイの方も準備万端だった。
大澤達の方を見た。
ぢつは其の後ろにスノーボードを持ったロイの取り巻きが2人いた。
「Go」
サインを送った。
ロイは抑え気味に滑り出した。
其れに続く大澤と坂本
そしてスノーボードの取り巻き達
「尾根から出たらイッキに勝負だ」
尾根コースの終盤に差し掛かったところで大澤が前に出ようと加速させた。
ロイの前に出た大澤
ーココだ···come on go to hell。
ロイはニヤリと笑い、長めのエッジングをして、さらに大澤との距離を開けてスペースを取った。
そして····スノーボードは大澤を目掛けて迫り、抜いて右斜め前からトラバースをかけた。
『バカ野郎‼️こんなところでトラバースかけやがって ヘタクソが⁉️』
彼の前を横切るボーダーにたまらず、左側にエスケープした其の瞬間···
左側は冬の強風で雪庇が育っていた。
其処に大澤は乗ってしまった。
『しまった‼️』
「うわぁ‼️」
短い叫び声を上げて大澤は堕ちていった。
ロイ達は止まらずに何もなかったように降りて行った。
ー彼は何ものかの大きな力に作用されたように····
そして落下する一個の物体となって、雪の積もっている個処と全然雪をつけていない山肌が露出している沢に堕ちた。
坂本は急制動をかけて停止した。
そして彼が堕ちた箇所から下をのぞいた。
大澤が着ているオノヅカチームのユニフォームが見える
「オ·オ·サ·ワ」
坂本は大澤の名を叫んだ。
しかし反応はない。
坂本は、いま自分は何をすべきであろうかと思った。
そして1分後に、坂本は自分のなすべきことが、降りて救援を呼ぶこと以外にないことを知った。
パトロールの救援を待っている間に、オノヅカチームの首脳陣の聴き取りに···
「アレはワザです。ボーダーとタッグを組んで大澤を潰す作戦です」
一部始終を見ていた坂本は首脳陣に言った。
ー見ていた坂本にはそう感じられるが····しかし証拠はない····。
ー連中は知った事かよ····てなもんだ
ー効果はバツグンだ。
ロイ達はほくそ笑んだ。
『ロイに仕掛けるな‼️』
坂本からもたらされたロイのラフファイトのウワサに各チームは彼に恐れをなした。
◆◆◆
一本目 ロイがゴールした。
「あぁ速い‼️トップだぁ」
宙也は1秒35遅れの15位
そしてロイは····アメリカらしく自分達のルールを強引に押し付けてきたのだった。
「観戦に来ている駐日大使が予定があり、最後まで観ていられない。大使はロイの滑りを観るのを楽しみにしているから、今回に限りフィリップ30を変更してくれ」
そう申し出てきたのだった。
ロイは現在、首位なので二本目最後のスタートだった。
大會運営側は駐日大使を持ち出されて、面倒なことになるのを避け、その申し出を受け入れた。
ロイは駐日大使がいられる時間内の20番スタートとなった。
あとはクジ引きとなり、運悪く⁉️
宙也は最後の30番目のスタートとなった。
『ラストか❗️かえって気がラクになった』
宙也は思った。
「相沢君の出走はまだみたいです。1本目15位なんですが何か遭ったみたいですね」
首位のロイが2本滑り終えていることを不思議に思った、グランド マスターの小山はグランド マスター付きのスタッフに宙也の出走を確認して来た。
「分かりました。ありがとう。ブースに向かいましょう」
「荒木役員」
グランド マスターの小山が駆けつけ、荒木に声をかけた。
『ゲッ⁉️グランド マスターかよ‼️なにしにやって来た⁉️相沢を観に来たのか⁉️』
グランド マスターの出現に荒木は驚いた‼️
すぐに気を取り直してこころにもないことを言った。
「グランド マスター‼️わざわざお越し頂きましてありがとうございます‼️相沢君もハッスルすると思います‼️佐々君、すぐ志賀マネージャーを呼んで来て❗️」
荒木は近くいた佐々というスタッフに志賀を呼びにやらせた
「相沢君はもう滑り終わったのですか❓️」
「まだでございます」
「まだなのですか❓️」
荒木が答えたところで志賀がやって来た。
「グランド マスター❗️お越し頂きましてありがとうございます。相沢は1秒35遅れの現在15位です。
コレから2本目の滑走になります」
「コレから❓️何か遭ったのですか❓️」
小山は怪訝そうに言った。
「アメリカ側がロイの応援に駐日大使がやってきておりまして、大使のスケジュールの都合上、滑走順が変更になりまして相沢は最終のスタートになります」
志賀が答えた。
「おぉ そうですか❗️其れなら好都合です‼️私は彼の滑りを観られるのですね‼️」
「グランド マスター 相沢君は後半が強いですから、さらなるランクアップが期待出来ます」
荒木が軽く言った。
『ヲッサン‼️余計なことを言うな❗️グランド マスターが来たことが、宙也にマイナスにならなければ良いが·····』
志賀が心の中で唸った。
「志賀君❗️相沢君を呼んでくれ。グランド マスターに挨拶をさせないと」
荒木がさらに調子にのって、要求してきた。
「グランド マスター、荒木役員 申し訳ありませんが、相沢は滑走準備に取り掛かってます。
現在、コンセントレーションを高めております。滑走前のデリケイトな時なので·····
滑り終わってから、相沢にご挨拶をさせますので、
現在はどうか御理解を賜りたいのです」
『荒木役員❗️調子にのって仕切んぢゃあねぇよ このアホが‼️
宙也に結果を出させたいのなら、黙って見ていろ……‼️』
志賀はハラを立てた。
「荒木役員、志賀君の言う通りです。私に気遣いは無用です。私は彼には少しでもランクアップして欲しいのです。LEVANTEのために」
「ありがとうございます。私は相沢の元に戻ります。グランド マスターの期待に応えられるように、彼を支えてきます」
「志賀マネージャー、頼みましたよ‼️」
小山は志賀に全幅の信用をみせるようにニッコリと微笑んだ。
「ハイ、畏まりました」
志賀はグランド マスターにアタマを下げて、宙也の元に戻った。
◆◆◆
『宙也のこころを自由にさせてやれば····おのずと結果がでる』
志賀は宙也を理解している····
彼の好きに滑走させるのが、いちばん良い結果をもたらすことを····
狂技のとき、志賀は彼の自由奔放のマインドを引き出すことだけを念頭にサポートをはじめた。
「宙也、オマエにまかせるからな❗️
ココロのアクセルを全開にしてくれ‼️」
志賀の言葉を聞いて、宙也は笑顔をみせた。
宙也だって、自分や志賀の置かれている立場は承知している。ましてや最高責任者であるグランド マスターの小山が来ていることも知っていた。
でも·····志賀は彼に余計なことでプレッシャーを与えさせないために、グランド マスターのことはひとことも云わない。
『さすがマネージャー ありがとうございます❗️
オレにまかせるって言ってもらって‼️
突っ走りますよ‼️』
志賀の其の気持ちがうれしくて❗️
宙也の笑顔がこぼれた。
サービスが彼に申し送りをする。
「エッジ角88° ワキシング AW-07R使っている、
雪面摩擦係数低下中 ROTAMAT リリースポイント MAXI ポールセットはかなり難しいぞ、コースもかなり荒れて来てる❗宙也 油断するなよ‼️」
宙也は頷いた。
其れから少し目を瞑った。
そして目を開いた。
其の目は・・・
選手権と同じ・・・
宙也のホンキの目付きだ‼️
『おぉー、来た、来た❗️怖ェー怖ェー・・・
ホント人格が変わったみたいだな‼️
選手権と同じように·····
覚醒したんだな 宙也‼️』
志賀は驚異した。
志賀の言葉によって·····
宙也は本来の姿を取り戻した。
『コイツ····2本目はホンキでエキセントリックにスキーを走らせてくるぞ‼️』
志賀は直感的に感じている。
そして・・・
higher and higher in my soul
“Spread your ferocious wings“
宙也が狂暴な翼を開いた。
That's all それでいい・・・宙也‼️
志賀は思った。
チーフが宙也の愛機Tipo 零を雪面に置いた。
宙也はポールのグリップで先ずは右足のZ-Rブーツソールに着いた雪を落とした。
Tipo 零に装着されてる、RACING ROTAMATにステップイン。
続いて左足のZ-Rブーツソールの雪を落としてステップイン。
ROTAMATの白と赤のカラーリング
レーシングカーのサスペンションシステムを思わせる
左右4本の赤いスプリングで彼のフットワークを支えてきてる
RACING ROTAMATにステップインしたこの瞬間
宙也はいつも仕事にかかる前·····
“じいん”と痺れるような興奮が身体全体を押し包んでくる。
この瞬間がたまらなく好きなのである。
胸の“咲耶の御守”に手を当てて、
深く息を吸い込んで再び軽く目を瞑った。
宙也のこころには迷いがない。
「さぁ、行くぞ‼️」
宙也は眼を開いた。
サービスが四つ葉のクローバーがプリントされたヘルメットを渡した。
カーボンポールのグリップにグローヴを被らせて、ヘルメットを被った。
続いて
グリップのグローヴを左右の手に嵌めた。
ナックルガード付きのグリップのストラップに手を通しグリップを握った。
この瞬間····
宙也は自由を取り戻した“Fighter Pilot“になった。
スタートゲイトに向かう。
ギャラリー達の話が耳に入ってくる。
「ロイには勝てないよな❗️相沢がゲイムチェンジャーと言われていようが、相手は北米チャンプだから、もうムリだろうよ‼️」
『もうどうでもイイよ。ただ……滑りたいだけ❗️
やるだけやるのさ‼️』
ギャラリーの声など、どうでもよかった。
宙也はスタートゲイトに入った。
Grigio Capitolo Uomo Ⅱ 2本目
ラストを滑る宙也がスタートした。
「あぁ‼️こういうセットは相沢選手は苦手ぢゃあないみたいですね。イイですよ。攻めてますね」
解説者のコメントが響いた。
""ジャップになんか負けるワケない""
大澤もおらず自信満々ロイだったが···
『ココがポイントだ‼️この旗門を詰めてやれば……ヤツは焦るはずだ‼️」』
宙也はロイにプレッシャーをかける
空氣圧がさらに宙也を襲う…
""飛び込んでゆくスピードに 冷たすぎる風になるまで""
「ファック⁉️アイツ 羽根でもはえてんのかよ⁉️」
どんどん加速していく宙也に彼は徐々に不安を感じていた。
『こんなヤツが隠れていやがったのか⁉️
なんてヤツだ‼️
何人もの北米のトップランカーとやりあってきたけ
ど…これほどの正確なスキーハンドリングは…
こんなラップタイムの縮め方あるかよ‼️』
ロイは目をみはった‼️
『コッチがその時のゴールで最高タイムを出したって、あとからゴールしたコイツがコンマ1秒速けりゃ順位は入れ替わる。オオサワを潰したらラクな展開を考えていたが····見当がつかなくなった····
ただ確実に言えるのは、新たなオプションを考えなきゃあならなくなった』
ーブチかませ‼️
『イケる❗️突っ走ってやんよ‼️このまま』
『見てろ❗️突き抜けてやんよ‼️』
I Can make it Climbing high···
higher···higher···to the Top
higher and higher in my soul
Cause there's no points for second best‼️
『敗者に与えられるポイントなんてないんだよ‼️』
「ゴール」
宙也はゴールラインをくぐった。
二本目で宙也はファステストラップを叩きだした。
そして……合計タイムが奇しくも同1位となった。
其のタイムを確認して、満足したように宙也は雪面に倒れ込んだ。
「No way⁉️ルールはどうなる‼️
FISに準じると·····アイザワの勝ちになるのか⁉️北米チャンプのオレが負けるのか⁉️」
ロイは怯えて取り乱しはじめた。
「ロイ、ワタシにイイ考えがある」
マネージャーが取り乱してる、ロイの両肩を押さえて言い聞かせはじめた。
しばらくして、ロイのマネジャーか大會運営のテントに入っていった。
ロイ サイドが再び動いた。
「オイ❗️立ち上がらないぞ 大丈夫か❓️全然動かないぞアイツ⁉️」
ゴール地点ではギャラリーが騒然となった。
宙也が雪面に倒れたまま立ち上がらなかったからだ。
「ちゅーやぁ⁉️」
志賀とチーフは叫んで慌てて駆け寄った。
志賀は宙也を抱きかかえた。
チーフはROTA MATの赤いリリースレバーを押して、彼のブーツからTipo 零を開放させた。
「いいか❗️宙也‼️大きくゆっくり息を吸え」
宙也は志賀に言われた通り、ゆっくり息を吸ったが····
上手く吸えなかった。
其処にひとりの大會役員が駆け寄ってきた。
「志賀マネージャー 今後の進行の打ち合わせを行います。事務局までお越し下さい」
「今後の進行の打ち合わせだと⁉️」
大會スタッフからの呼び出しに志賀が首を傾げた
『どういうことだ……⁉️』
宙也の叩き出したタイムに現場はごった返しはじめた。
『本当にマージンなしのアタックかけたんだな❗️
呼吸が相当荒い‼️酸素が吸込みにくいのか❓️事務局がなんだってこんな時に呼び出しかよ⁉️イヤな予感がして来た····』
志賀はそう思い、自分のカンを信じた。
「チーフ、宙也を休ませてやってくれ‼️
取材は宙也に一切受けさせるな❗️
チーフとスタッフで取材対応してくれ、
オレは事務局へ行ってくる」
志賀は硬い顔でチーフに指示を伝えて事務局へ向かった。
宙也はチーフに肩を支えられLEVANTEのベースに戻ってきた。咲耶達は荒い呼吸を繰り返していた顔色の青い宙也をみた。
全ての力を出し切ってグッタリしていた。
「宙也 しっかりして‼️」
グッタリとした宙也をみて、咲耶は愕然とした。
「咲❗️宙也が酸欠でチアノーゼになってる‼️
サポートしないと……しのぶ、頼んだわよ❗️」
優子は宙也の顔色を診て、咲耶と一緒にベースに入っていった。
宙也はイスに座らされて荒い呼吸を繰り返していた。
「チーフ、アタシは看護師です。宙也君が酸欠でチアノーゼになっているので処置をします」
優子は言った。
「宙也、いま診てあげるからね。安心して」
宙也は黙って頷いた。
優子は彼の指先に機材をさした。
『酸素含有量86%❗️』
「マズイ❗️チーフ O2ボンベありますか❓️ありったけ持って来て❗️」
早口になった優子に咲耶の体は固くなった。
「優子、宙也は⁉️」
「咲、其処に座って、宙也の頭を膝枕で高くさせて、気道を確保して」
「O2ボンベ持って来ました」
スタッフが声をかけた。
「コッチに❗️えっ……3本しかないの⁉️
他のチームで持ってたら借りて来て❗️
それか買って来て‼️」
優子は宙也を横向きさせて、O2ボンベのマスクを彼の顔にあてた。
「咲、宙也はね、生まれつき気道が狭いのよ‼️
酸素を取り込み難くて体内の酸素含有量が低いのよ。前に滑落して入院した時の検査で分かったの‼️
特に瞬間的に瞬発力を引き出すと酸欠状態に陥りやすいの‼️」
「えっ……⁉️ウソ……宙也❗️大丈夫なの‼️」
咲耶は叫んだ。
「·····」
優子は指先にあてた機材の数値を視て、首を振った。
1本目が終わり、2本目を彼の顔にあてた。
「ダメ、数値が上がらない❗️全然足りない‼️
もっと、持ってきて❗️
チーフ、しのぶ❗️O2ボンベをもっと」
優子が声を荒らげて、外にいたふたりに呼びかけた‼️
しのぶとチーフがやってきた。
「オノヅカに有るかもしれん行ってくる」
チーフは立ち上がった。
「アタシも一緒に行くわ」
しのぶもチーフについていった。
◆◆◆
事務局のブースに志賀は入った。
ロイのマネージャーは既に来ていた。
『また、何かねじ込まれたか❓️』
志賀は苦々しく思っていた。
「お呼び出ししてすいません。相沢選手の滑りはお見事でしたね」
大會委員長が志賀に声をかけた。
「ありがとうございます。其れで今後の進行とはどういうことですか❓️」
「ロイ選手サイドからデュアルスラロームで勝敗を決めたいと申し出がありましてね」
ー来たか‼️ふざけるな‼️
志賀は怒りを覚えた。
「委員長。このレースはFISのルールに準じているのではないですか……
アメリカ側のワガママに振り回されて出走順まで変更になり……
そして今度はデュアルスラロームですか❓️
FISのルールでは、両者の2本のタイム合計が同着なら、1本あたりの最速タイムを出した方が勝者と記載されております」
「·····志賀マネージャー、ルールは存じあげてますが、今回で2戦目のルーキーと北米学生チャンプが互角に渡り合っていて、ギャラリーには最高に面白いワケで、御覧のようにギャラリーも決着が付くのを楽しみにしております。
このゲートレースがさらに人気が出て、来年度のために試験的に試してみたいと私は考えております」
大會委員長は答えた。
『ダメだ コイツは······ロイ サイドに抱き込まれている。デュアルは避けられないな❗️
ならば……宙也を休ませるために少しでも時間を稼ぎたい。先ずグランド マスターに動いてもらう』
志賀は考えた。
「委員長、現場でのコレだけのルール変更は、LEVANTEに報告をしなければなりません。
LEVANTEはスポーツ仲裁裁判所に上訴することもあり得ます。宜しいですか」
「えっ……其れは」
志賀の言葉に一同は驚いた。
委員長は志賀の言葉に黙考した
そして……
「分かりました。LEVANTEに報告をして下さい。
其の上で上訴されるならどうぞ。
我々はデュアルの準備を行います」
志賀は事務局を後にした。
そしてブースに戻りグランド マスターの小山に報告をした。
宙也の勝利を確信していた小山は声を荒らげた‼️
「なんですって‼️FISのルールに準じないのですか⁉️
すぐに相沢君の援護をしなければなりません。
ゲートレースの件 即時、上訴手続きを取ります」
グランドマスターの小山は答え、電話を取り出した。
「グランド マスターの小山だ、法務部長へ繋いでくれ」
法務部長と打ち合わせた。
「分かりました。仲裁裁判所に即時上訴致します」
法務部長の回答を聞いて、小山は電話を切った。
「志賀君、大會委員長のところへ行こう」
志賀は小山を大會委員長のところに案内をした。
◆◆◆
チーフとしのぶはオノヅカのベースに入っていった。
オノヅカのマネージャー 杉田が出迎えた。
「LEVANTE 工藤チーフ どうなさいました❓️」
「杉田マネージャー お願いがありまして、O2ボンベをお持ちでしたら譲って頂きたく参りました」
「どうしたのですか❓️」
「ぢつはウチの相沢が極度の酸欠状態に陥ってまして……」
名香での選手権で宙也の出現により『オノヅカ』は表彰台はおろか入賞すら逃した、そして今回はロイに大澤を潰されて……
『拒否されても仕方がない』状況だが····
宙也のためになんとしてもと思い、工藤はオノヅカの基地を訪問した。
「其れはタイヘンですね。分かりました。お譲り致します。少々お待ちください」
そう言って、ベースの奥に入っていった。
そしてすぐに戻ってきた。
「コチラへ」
杉田は案内をした。
「彼を運んできて、このテントの中に入ってもらって下さい」
其処には大型の酸素ボンベが用意された一角があった。
「ありがとうございます。助かります」
「いま入った情報ですが……どうやら、FISの同着ルールを適用するのではなくデュアルスラロームでケリを付けるみたいです。」
杉田が言った。
「えっ……まだ滑らすのですか⁉️」
しのぶは驚いて声をあげた。
杉田は続けた……
「コレは私の個人の気持ちです。相沢君には是非勝ってほしい❗️ウチはロイに大澤を潰されてますから、なんとしても彼に勝ってほしい、其のためになら、
相沢君をサポートしますから」
「ありがとうございます」
工藤は思わず声がうわずった。
「私、すぐ戻って、ココに彼を連れて来ます」
しのぶはLEVANTEのベースに戻って行った。
「咲、優子、オノヅカが酸素ボンベの入ったテントを貸してくれるから、宙也を運ぶわよ」
「しのぶ、ホント⁉️良かった‼️」
其処に志賀が戻って来た。
「志賀さん、宙也をオノヅカのベースに運んで‼️オノヅカが宙也のために、大型の酸素ボンベを貸してくれるって」
優子が言った。
「ホントか 其れ⁉️分かった‼️オイ タンカ持ってこい オノヅカのベースに宙也を運ぶぞ❗️
私は杉田マネージャーに御礼を言ってくる」
こうして宙也はオノヅカのベースに入っていった。
「宙也、もう大丈夫だからね」
咲耶は宙也の耳元でささやいた。
大型ボンベの酸素を満たしたテントのおかげで、
彼の呼吸が戻ってきた。
指先の機材の数値も90%後半台になった。
「み……水を下さい‼️」
宙也はようやくしゃべれる様になった。
咲耶が震える手でミネラルウォーターのペットボトルキャップを開けて彼に渡した。
「ふう」
息を吐き出した。
「だ····大丈夫❓️」
咲耶は心配のあまりに泣き出していた。
「大丈夫です」
みんながいるため敬語で彼女に答えた。
「宙也」
杉田と一緒にテントに入って来た志賀が声をかけた。
其の声は何時もと違う重い声音だ。
ー何か遭ったな
宙也は思った。
「宙也、判断はオマエに任せる。
嫌なら棄権してもかまわん❗️
ぢつはな、事務局から決着を着けるためにデュアルスラロームを提案してきたんだ‼️
通常ならこのレースはFISのルールに則って、ファステストラップラップを出したオマエが勝者なのだが……」
「えっ……志賀さん⁉️こんな状態になっても……まだ……宙也を滑らすのですか……アナタは‼️
宙也になにか遭ったらどうするのよ‼️」
宙也を護るために
咲耶は涙ながらに抗議をした。
「咲耶さん、今回のレースはあまりにもヒドイのです‼️アメリカ側に忖度して……FISのルールを無視して、先ほどLEVANTEのスキー事業部綜支配人に報告して、スポーツ仲裁裁判所に上訴の手続きを取りました。ただ……事務局は狂技を続けると宣告してます」
「だって····宙也がこんな目になっているのに····
他に手立てはないのですか⁉️志賀さん❗️」
「LEVANTEさんが上訴するなら、ウチも一緒に行動します。大澤も潰されてますから、ロイも訴えます❗️そしてオノヅカ相沢君をサポート致します。ロイを潰すために‼️」
杉田が宣言をした。
「ワークスの面子なんかどうだっていいわよ‼️
このコに何か遭ったら····私は許さない‼️」
「咲耶さん ありがとう」
宙也は声をかけた。
『幸せだよな❗️俺、咲耶に守られて』
やり取りを聞いて、
宙也は目を瞑り黙考をはじめた。
Don't be scared, my frightened soul.
Don't be sad, my fighting spirit.
The path will open in the darkness.
Strain your eyes, look closely.
The star is there in the darkness.
Even if I have to shake off a blood glue sticks on my palm.
I won't be scared, I only need to dive in.
Cause there's no points for second best
敗者に与えられるポイントなんてないんだ
Growing higher and higher in my soul
俺の魂がもっと上へと求めている
ー前へ進むべきだ❗️進まなければ……
He's told us not to blow it
こころのなかの宙也が「チャンスを棒に振るなよ」と忠告している
'Cause he knows it's all worthwhile
彼にはすべての価値がわかっているから
「……」
宙也は目を開いた。
「このままひっこめないや❗️多少酸欠気味だけど····闘うよ‼️」
「宙也⁉️そんな···ムリよ‼️」
「咲耶さん。大丈夫です。闘います‼️」
咲耶は怖かった……この時の宙也の目が……
どこまでも……
トコトンまで追い込んでゆく其の目が……
『宙也……』
宙也は変わった
自信があふれる感じではないけど……
覚悟を決めたふうでもないけど……
目には迷いがなくなっていた。
『宙也 何を思ってるの⁉️·····』
Continuare




