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COLORE    作者: Foglio
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Giallo Capitolo 黄色の章 Uomo ミモザ色の場所

Giallo Capitolo Ⅰ







「ぢゃあ、そろそろ行って来ます」


「宙也 無茶しないでよ、咲姉が悲しむからね」


従妹の彩乃が言った。


「あぁ」


「宙也君、スクールが決まったら直ぐに連絡してよ、ギアを送るからね」


洋二が握手をしながら肩を叩いた。


「ありがとうございます、お願いします」


「宙也 優子には私の方から話しておくからね、連絡頂戴ね、氣を付けてね」


咲耶の親友の塚本しのぶが声を掛けた。

もうひとりの咲耶の親友である三河優子は体調を崩して入院をしていた。


「ありがとうございます、優子さんも大変な時だから、お大事にしてくださいと伝えて下さい、お願いします」


宙也は、3人にお辞儀をした。


「ありがとうございます、行って来ます」


そしてアタックザックを肩に背負い、搭乗手続きに向かった。


"Now that i lost you"


9月末日

アリタリア-ヰタリア航空便

成田発ミラノ行き

宙也は機上の人となった。

約13時間のフライトで

早朝の5時に

ミラノ マルペンサ國際空港に着いた。

ミラノにある日本総領事館は、9時過ぎから始まるため、彼はアリタリアの CASA()と呼ばれる、ラウンジで休んでいた。


T1(第一ターミナル)から

ミラノ中央驛行きのシャトルバスに乗った。

約1時間で 

ミラノ中央驛前の、空港行きシャトルバス乗場で着いた。

直ぐ目の前に地下鉄3號線 、チェントラーレ驛があり、

其処で地下鉄に乗って

トゥラーティ驛で降りれば、直ぐ日本國総領事館があった。


ミラノ中央驛から真っ直ぐ

ヴィットル.ピザーニ通りを歩いて

フィリッポ.トゥラーティュ通りに入り右折すれば良い。

歩けない距離でもなかった。


考えていると、早速、ヰタリアの洗礼を受ける。

腕にタトゥの入った

胡散臭いヰタリア人の男が寄って来た。


Prendere un taxi

(タクシーに乗っていかないか)❓


ヰタリアでは日本と違って、

正規のタクシー會社では、流しのタクシーはない。

電話予約もしくは、タクシー乗場のサインがあるので、

其処で乗るのがルール。

彼に声を掛けた男は、明らかに日本で言う白タク(モグリ)で、良くてボッタクリ・・・

悪いと強盗になるというタチの悪い輩である‼️


宙也は肩にアタックザックを掛けて、

"Non andare piedi“

(歩いて行くから要らない)

そう、返した。


男はヰタリア語を喋る宙也を、

『"カモ"には出来ないと判断したのだろう』

走り去って行った。


宙也は歩き始めた。

レプップリカ驛を過ぎると、左手にプッブリチ公園や常設美術館が見えた。

総領事館はもうすぐだった。

美術館を過ぎて路地を右に入ると総領事館の建物が有った。

宙也が入ろうとすると、日本人男性が立っていた。

宙也が会釈をすると・・・


「相沢 宙也君ですか⁉️」


男性に声を掛けられた。


「そうですが・・・」


彼は怪訝そうに答えた。


「私は片山 圭です、洋二の同級生です」


「片山さん‼️わざわざ、来て頂いたのですか⁉️申し訳ありません」


「洋二から連絡が有ってね、

朝イチで、領事館に行くからと言ってたから、

手続きも繁雑だからね、僕が一緒にいた方がイイと思って、労働許可証等は有るのかな❓」


「ええ、LEVANTEがバックアップしてくれたので、

伊國内スポーツ委員会(CONI)から出ました」


「えっ⁉️其れはスゴい・・・

あそこは、なかなか許可は出さないんだよ‼️

ぢゃあ、領事館が終わったら、

ミラノ警察本部に行って、滞在許可証の申請して、

其の後、日本人會事務局で入會手続きしよう」


洋二は宙也が、ヰタリアに渡るにあたって、

高校の同級生で、某商社のミラノ支店の支店長である、

片山に連絡を取ってくれたのである。

そして彼は宙也に必ず、片山の処を訪ねる様に話していた。

総領事館の職員は、片山を知っているみたいで、

彼に笑顔で挨拶をしていた。

総領事館での手続きはスムースに済んだ。


「ぢゃあ、次は滞在許可証だ❗行こう」


ふたりは総領事館を後にした。



ミラノ警察本部は、総領事館の近くに有った。

総領事館を出て、モスコーヴァ通りの最初の十字路を左に曲がり、サンタンジェロ教會を過ぎてサンマルコ教會を目指すと、ミラノ警察本部の建物が見えた。


ミラノ警察本部に入ると、


「Ciao❗」


片山は何人かの制服警官に声を掛けた。


「Ciao❗Sig カタヤマ」


警官も返して来た。

たぶん顔見知りなんだろうと、宙也は思った。


移民課で滞在許可証の申請を行った。

此処でも、片山のおかげでスムースに済んだ。

自分だけならどうなってたかと、思うと冷や汗が出る。


片山の案内で

ルイージ.フィデリーニ通りから路地に入り、

ノルド()ヰタリア日本人會事務局に着いた。


「いやぁ、こんなにスムースなのは滅多にないよ❗

やっぱり、CONIの許可証のおかげだなぁ‼️」


片山は事務局の応接ソファーに座って、

事務員に緑茶を頼んだ。


「とんでもない‼️ありがとうございます、

片山さんがいなかったら、どうなるかと思いました」


「ところで宙也君

滞在許可証が、降りるまで約10日位掛かるから、

良かったらウチで過ごさないか❓

女房とふたりで暮らしているんだけど、わびしくてね、

洋二から甥っ子だけど、オレにとっては、もう息子の様な存在だから、頼むって言われてるんだ、

しばらくミラノに、滞在してみるのもイイだろう」


宙也は少し考えてから答えた。


「よろしいのですか❓ご迷惑になるのではないですか❓」


「大丈夫だよ、女房も喜ぶと思う、

君に何か有ったら洋二が悲しむからね、

僕と洋二は高校時代の仲間だからね❗

氣兼ねしなくてイイよ」


ふたりの前に事務員がやって来た。


「失礼します。片山理事、高井會長がおみえになりました」


日本人會會長が、やって来たことを伝えて。


「宙也君、會長に挨拶しよう」


立ち上がり、宙也を會長室に案内をした。

本業は報道機関の、ミラノ支局長のポストにいる高井は、

にこやかな笑顔で宙也に握手を求めて来た。


「はじめまして、會長の高井です」


「はじめまして、相沢宙也です、宜しくお願いします」


「相沢さんは、仕事でヰタリアに❓」


「SKIの修行です」


「ほう、随分、思い切りましたね」


「會長、相沢さんは、LEVANTEのWORKSに、所属してまして、CONIから許可証を貰ってます」


「其れは凄いですね、會員の方のスキーイベントの時が、樂しみですね、相沢さん、この會は會員さんの交流會があります、相沢さんも色々なイベントに、参加して下さいね」


「ありがとうございます、若輩者ですが、どうぞ宜しくお願い致します」


「細かい事は片山理事から、お話を聞いて下さい、

こちらこそ宜しくお願いします」


ふたりは會長室を後にした。


「ぢゃあ、宙也君、僕の家に行こう」


ふたりは事務局を出て、地下鉄2號線トゥラーティ驛に歩いて行った。


「ミラノは、10月から雨期に入るんだ、急に寒くなって来るからね、日本は梅雨が有るけど、ミラノは梅雨は無いんだ」


ゴシック建築の最高傑作

ドゥオモのある、ドゥオモ驛で地下鉄1號線の南西支線行きに乗り換えた。

バガーノ驛の先で1號線は分岐する。

ワーグナー驛を過ぎて彼は説明を始めた。


「バンデネーレ驛で降りるからね、此処は日本人学校も在って、日本人が多く住む街だよ、裕福なヰタリア人も住む比較的治安が良い街だよ」


バンデネーレ驛で地下鉄を降りた。

ピザ通りを歩いていると、日本人が多く住むだけあって

鮨屋や割烹料理屋、居酒屋等が並んでいた。

近くの日本人学校の生徒達が授業も終わり、教師が引率して集団で下校していた。

すれ違うと「こんにちわ」と声を掛けて来た。

ふたりは「こんにちわ」と返す。


「ヰタリアにいると、思えなくなりますね」


「100以上の日本企業が、進出してるからね、日本人学校にも何らかの形で、援助もしてるんだ」


片山は説明してくれた。

ショッピングセンター近くの高級マンションに入る。

ガードマンが常駐しており、腰のホルダーには、ハンドガンが収まっているのだろう❗恐らくベレッタのM92


『此処は日本ぢゃあないんだな』


緊張しはじめた。


エレベーターで最上階に上がった、角部屋が彼の住居だった。

チャイムを鳴らすと、彼の妻である美奈子が出て来た。


「お帰りなさい、はじめまして、相沢君、私は美奈子です、ヨロシクね」


どうやら、宙也をココに留まらせようと・・・

前もって、夫婦で話していたようだ。


「相沢宙也です、この度はお世話になります、宜しくお願いします」


「さあさあ入って、異國で慣れない事を、して疲れたでしょう」


中に案内されると3LDKの広い室内だった。

日本のマンションとはちょっと違っていた。

片山は海外赴任が多く、彼女も海外生活に慣れていた。

子供も独立しており今回はミラノという事で歓んで付いてきたと話した。

話好きな笑顔の素敵な女性で何処となく、

叔母の麻美を思い出す。


「この辺でネットを、使える場所はありますか❓」


彼には調べたい事が有った。

ヰタリア國内はネット環境があまり良くない。


「ネットならウチで、主人のパソコンを使えばイイわ

ねぇ、アナタ。」


「宙也君、好きに使ってイイぞ、ウチはネットカフェよりもレスが速いよ、そうぢゃあないと仕事にならないんだよ」


日本人が多く暮らすこの辺りは、ネット環境が整っていた。


「ありがとうございます、スキースク-ルを確認したかったのです」


「美奈子、彼はLEVANTEのWORKSに所属していて、CONIから許可証が出るくらいなんだ」


「其れはスゴいわね、今度のスキーイベントが樂しみね」


歓迎會を兼ねて、近くの鮨屋で3人で食事をして、

酒の強い片山は帰って来てから、また再び呑み始めて、

そして酔いつぶれて、其のままいびきをかきはじめた。


「越後の長っ尻‼️これさえ無ければねぇ」


美奈子は呆れたように言った。


宙也は、咲耶が父、洋二の事で同じ事を言ったのを、思ひ出して涙が出そうになった。

美奈子は其れを見逃さず聞いて来た。


「宙也君、どうしたの❓。」


咄嗟に、咲耶の事を叔母の麻美にすり替えた。


「僕を可愛がってくれた、麻美叔母さんの事を思ひ出しました。美奈子さんと同じ事を、洋二さんに言ってたのを思ひ出して」


「宙也君、私ね、麻美さんは会った事あるのよ❗

綺麗な人だったよね‼️」


「そうなんですか‼️美奈子さんを見てたら、麻美叔母さんに負けない位、笑顔の素敵な人だなぁと思ってました」


「宙也君、誉めてくれてありがとうね、さてこの人ベッドに運ばないと」


「手伝います、洋二さんで慣れてますから‼️」


美奈子はクスッと笑って毒づいた。


「酔っ払いの介抱は、あまり慣れたくは無いわね‼️」










Giallo Capitolo Ⅱ







宙也はパソコンとスキー場ガイドブックと

地図をにらめっこしていた。


「宙也君、お茶よ、何を調べてるの❓」


美奈子はフランクに彼に接していた、ボディタッチも多く、宙也は

『自分の子供に接してるような感覚なんだろうなぁ』と思っていた。


「スキー教師募集ですよ、國家教師になろうかと思ってます」


「宙也君が、どんな滑りするのか❓観てみたいわ」


「そう言えば、ノルドのスキーイベントって❓」


「私はまだ参加した事ないのよ、今回は宙也君が出るなら参加してみたいわ」


美奈子は時計を見た。


「さて、宙也君、私は婦人會の会合に参加するから、お留守番をお願いね」


そういって部屋を出て行った。

宙也は再びパソコンのディスプレイを眺めていた。

W杯等で有名なボルミオやコルティナ、ダンぺツィオーネなどのスクールの教師募集を見ていた。

検索を続けてそして、氣になった場所を見つけた。


"リヴィーニョ"


彼は地図で場所を確認していた。


数日後

3人で朝食を採っていると、片山が美奈子に話出した。


「美奈子、そろそろ滞在許可証が出てると思ふから、今日は宙也君に、付き添って行ってくれないか❓

私は急遽、出張になりそうなんだ」


「イイわよ❗宙也君とデイトしてくるわ」


「ハハハ、宙也君、妻とデイトしてくれるかい⁉️」


「僕で良ければ」


「アナタ、夕食はどおするの❓」


「デイトだから、ふたりは外で取って来たら」


「宙也君、私をエスコートしてね」


3人は笑った。

片山も美奈子も、いつもユーモアに溢れていた。

ヰタリアで暮らすとこうなるのかなぁと彼は思った。


10月に入って雨が続き、氣温も低くなってきたミラノ。

この日は久しぶりに晴れて来た。

宙也は

デニムに白T、グレーのパーカーを着て、其の上にAVIREXのバックプリントの黒のMA-1を羽織った。

美奈子は

黄色のワンピースにベージュのトレンチコートで、ふたりは出掛けた。

ラッシュアワーが終わった後なのでバンデネーレ驛は閑散としていた。


「ドゥオモで降りて、散策しながら行こうか❓」


美奈子が聞いてきた。


「分かりました」


ふたりはドゥオモ驛で降りて、最初にガレリア.ヴィットリオ.エマヌエーレ2世と名付けられてる、巨大アーケードに立ち寄った。

此処は東京ディズニーランドのワールドバザールのモデルになったと言われている。


ドゥオモ周辺はミラノの中心街、高級ブティックもあり沢山の観光客で溢れていた。


「宙也君。コレ知ってる❓」


彼女は床を指差した。

彼は床を見ると雄牛のモザイク画があった。


「この画の上でかかとを、中心に3回転すると幸せになれるって言われてるのよ、やってみようよ、まず宙也君よ」


宙也は画の上で3回転してみた。


「次はアタシよ」


美奈子はそう言って3回転した。

そしてよろけそうになったところ、宙也が支えた。


「ありがとう、宙也君、さすが‼️アスリートね」


美奈子は笑った。


久しぶりの晴天にドゥオモ周辺は

多くの観光客で騒然としてきた。


「先に滞在許可証貰いに行きましょう」


美奈子は言った


ふたりは

近くの停留所(フェルマータ)に向かって行った。

ミラノ中央驛行きの

路面電車(トラム)がやって来た。

トラムも満員状態だった。

まずは宙也が乗り込み、振り向いた処に美奈子が乗り込んだ。

ザックを背負った中國人が、無理矢理、背中から乗り込み、小柄な美奈子は圧された。


「痛い❗」


トラムが揺れると、ザックの硬い部分が、

彼女の背中辺りに当たり声をあげた。


「美奈子さん、失礼します」


美奈子の背中に右腕を廻して、美奈子を抱く様な形でザックが当たらない様にカバーした。


「ありがとう、優しいのね」


彼女は幾分、顔が上氣していた。


「私ね、小柄だから、満員の時は余りトラムや電車に乗らない様にしてるの、学生の時、嫌な事に遭ってね」


暫くすると、中國人のザックから何か変な臭いが漂い始めてきた。

さすがにこの臭氣に近くの人々は顔をしかめた。

「降りろ‼️」

ミラノっ子だろうか❓

中國人に向かって、氣色ばんでケツをまくっていた。

ミラノっ子は

『約束を守らない』

『ジコチュー』

そして乱暴だと、中國人を忌み嫌っている人が多い。

そして時には中國人の暴動が、発生してミラノ警察との乱闘を繰り広げる時もある。

彼は片山からチャイナタウンには、余り近付かない様にとレクチャーを受けていた。


美奈子も、臭氣と言い争いに耐えかねて、次のフェルマータで降りようと言った。

ふたりはトラムを降りた。


「ミラノの陰の部分のさわりってとこね」


彼女は宙也に言った。


ふたりは

ミラノ警察本部 移民課に入った。

だいぶ待たされて、漸く呼ばれてた。

滞在許可証は無事に発行されて受け取った。

彼は滞在許可証を見て少しホッとした。

あとは何処のスクールに所属するかを決める事だ。


警察本部を出ると外の景色は既に夕暮れになっていた。


「何処かで食事にしようか」


「ハイ、お願いします」


「この辺だとディヴィニタリアかなぁ。空いてるとイイなぁ」と美奈子は独り言の様に言った。


ふたりはモスコーヴァ通りのエノテ-カ(ワインレストラン)に入った。


美奈子はボーイにコートを預けた。

コートを着てて分からなかったが・・・

黄色どちらかというと、ミモザの花の色に近いタイトなワンピースだったので、彼女の身体のラインが強調されて、目のやり場に宙也は困った。


席に座って彼女は、イタリアに来て間もない宙也が

メニューとかも解らないので困ると思い


「私にまかせてね」


そう云って

美奈子はボーイを呼んだ。


「アぺリティーヴォ

(ドリンクを頼むと前菜とおつまみの食べ放題コース)

スプマンテ フランチャコルタ(スパークリングワイン)

単品で子羊の背肉のソテー」


一度区切って・・・


「宙也君、鴨も食べる❓」


「ハイ」


「ぢゃあ、鴨の胸肉のソテーもね」


エノテ-カでも美奈子の案内で入ったお店はカジュアルに入れるが、店内は静かに食事を楽しんだりするリストランテに近い雰囲氣のお店だった。


フランチャコルタが運ばれて来た。

彼女は笑顔でフルートグラスを持った。


「乾杯しましょう」


「ハイ」


宙也も同じようにグラスを持ちあげて


「宙也君のイタリアでのこれからに乾杯」


そしてふたりは喉が渇いていたせいで一氣に飲み干した。









Giallo Capitolo Ⅲ









「ぢゃあ、行って来ます」


「氣を付けてな、変な所だったら、すぐに戻れよ」


「宙也君、困ったら直ぐ連絡してね、遠慮しなくてイイのよ」


片山夫妻は、宙也をバンデネーレ驛まで見送りに来た。


先日、彼はリヴィ-ニョのスキースクールの

スキーインストラクター募集に応募した。

日本でのライセンスと、CONIの許可証も有ったから、

直ぐに会いたいとレスが来た。


地下鉄に乗り込み、ドアが閉まった。

宙也はお辞儀をして、ふたりに手を振った。

ミラノ中央驛から列車で、スイス サンモリッツ驛に向かった。

其処から乗り換えてオスピッィオ.ベルニナ驛へ。

今度はバスに乗り換えて、再びイタリア領に入り

ミラノから約5時間掛けて、リヴィ-ニョの中央バスターミナルに着いた。


リヴィ-ニョ

1年の半分が雪と氷の街。

アルトヴァルテッリーナ地方の

代表的なスキーリゾートエリアだ。


彼がヰタリアとスイスの国境のこの街を選んだのは、イントラの仕事がある事と、この地域が免税地域だった事が大きな理由だった。

ヰタリアもスイスも物価が高い。

彼はサンモリッツで乗り換え時間が有り、空腹を覚えたので近くのマックに入った。

ビッグマックのセットを頼んだら、1500円も取られたのだ。


リヴィ-ニョは

スキーリゾートとして、そして免税地域のため人の往来が盛んだった。

其のため宙也の様なStraniero(異國の人)をすんなりと受け入れられる。


スクールの事務所に着いた。

ドアを開けて中に入った。


Ottenere un colloquio di lavoro

(スクールの採用面接を受けに来ました)


彼は出て来た中年の女性事務員に伝えた。


Un momento perfovore

(少々お待ち下さい)


そう言って奥の校長室に入っていった。

直ぐに校長が出て来た。

ミッキーと呼ばれる校長はイタリア人ではなく、意外にも北米出身だった。

彼も若い頃から、どうやらスキーバム(スキー狂)だったのだろう。

偶然にも、長野の志賀高原に居たこともあり、カタコトながら日本語も喋れた。

アッサリとスクールの採用が決まった。

住む場所もスクールのアパルタメント(アパート)があり、こういった部分も日本のスキーインストラクターとは比べものにならないくらいの待遇だった。


「まぁ、日本のイントラはアマチュアだからな」

彼はひとりごちた。


滞在許可証、労働許可証等のコピーを校長に提出した。


「11月上旬にはコッチに来て欲しい」


書類を見ながら校長は言った。

宙也は片山夫妻に、あまり迷惑もかけたくないと思っていたので・・・


「10月下旬にはアパートに入ります」


希望を伝えた。


校長はそれと"宙也"と発音しにくいから、

コードネームを決めようと言って来た。

宙也は少し考えてイタリア語の雪の意味で

Neve(ネーヴェ)にしようと伝えた。


「OK ネーヴェ、ぢゃあヨロシク頼むよ」


彼は手を出して来たので宙也も手を出して握手を交わした。



11月に入り北風が強く吹きリヴィ-ニョも冬の様相になってきた。

スクールのアパートは外見は旧いが、部屋はお湯による床暖房で快適だった。

洋二がギアを送ってくれた。

荷物には手紙が同封されており、其れを読んでいた。

洋二からは

ひと回りもふた回りも大きく、強くなって日本に帰って来てくれと激励が書いてあった。

読み終わり、ギアの梱包を解いた。

久しぶりにギアを見た。

バイスに掛けて、先ずはバインディングのメンテナンスを行った。水置換潤滑剤をたっぷりとスプレーした。

次に保護ワックスをスクレイパーで削りワックスアイロンでワックスを塗った。

カーテンを開けて、曇りガラスの内窓を開けた。

外窓に映る景色は羽毛のような細かい雪の吹雪だった。

冷氣が外窓から伝わる。

内窓を閉めて、空腹を覚えたのでキッチンにいき電氣ケトルに水を入れてお湯を沸かした。

洋二から日本のカップラーメンが送られていたので、

久しぶりに、其れを食べようと思った。

アラームが鳴ってお湯が沸いた。

カップラーメンにお湯を入れた。


「お湯を入れて3分かぁ」


一緒に入ってた割りばしを割り、フタを取った。

カップから漂う日本の香りに、不覚にも涙が出て来た。


「リヴィ-ニョに来て数週間で、こんな事でどうすんの⁉️」


彼は自分を叱咤した。


待望の雪が降り、リヴィ-ニョの街は銀世界になった。


そしてスキーエリアも滑れる様になった。

宙也が待ち望んだ環境になった。

彼は日々のレッスンをせいいっぱいこなして、

レッスン後乃至レッスンの無い時は

自分を追い込むかのような激しいターンを重ねていった。

失われたターン()を探し求めて

無限のラインを

記憶のなかに刻み込む

そこまでして自分を追い込んで

漸く眠りに付けるのだった。

現在の宙也には、SKIに身を委ねるしかなかった。


幸せに過ごした日々は夏のように走り去っていった

宙也だけを残して・・・

悲しみを癒すものなんて何もなかった


もう二度とたどり着けない

あのやさしい眠りのなかへ・・・


レッスンを始めて1ヶ月が過ぎた。

校長のミッキーから呼ばれた。

校長室をノックすると


「Come in」


宙也が中に入ると

校長は立ち上がり笑顔になった。


「ネーヴェ、キミは素晴らしい❗お客さんからも評判がイイ❗キミを採用して良かったよ、もう試用期間は終わりにする、明日からは正式な条件になるから」


「ありがとうございます❗明日からも頑張ります」


「ところでネーヴェ、キミはお酒は飲まないのかい⁉️

夜レッスンが、ないときも練習してるね」


「飲みますよ、でも今はこの環境に、慣れる時なので止めてます」


「分かった、キミと飲みたい時に声を掛けるよ」


「ありがとうございます、ヨロシクです」


宙也は校長室を後にした。

そしてギアを持ち、ピステに向かった。





Continuare


















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