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COLORE    作者: Foglio
1/46

Rosso Capitolo  赤の章  Uomo  紅色の場所

Rosso Capitolo Ⅰ






「来るぞ‼️」


CORSE(チーム)監督が怒鳴り声が

ピット内に響きわたった。

プロテオロッソ(紅色)のアルファロメオ 156 3.0V6がゆっくりピットレーンに入って来た。


8時間に渡って繰り広げられた、自動車耐久レースは

終盤の局面を迎えていた。



相沢宙也。

彼は幼い頃からクルマ好きで

特にアルファロメオがお氣に入りだった。

彼は都内のアルファロメオディーラーで

オープンカーで紅色のSPIDERを購入した。

休日のある日に誘われて

ディーラーの走行會でサーキットを走ったら、

タイムが良かったために

ディーラーからCORSEで走らないかとスカウトされた。


こうして彼は

ワンメイクレースのアルファロメオチャレンジや

この耐久レースにディーラーチームの

ドライバーとして出場する事になった。


現在CORSEの順位は4位につけていた。

アラームが鳴り宙也は目を覚ました。

奥で休んでいた宙也はスタンバイするために女性スタッフに聞いた。


「今、何位です⁉️」


「現在4位です、宙也さん。頑張って下さい❗

ステップアップを期待してますよ、後5周で交代です」



-イイ位置にいるんだな-

宙也は思った。


しかしドライバー交代前に…

コンビを組んでる岸川から緊急無線(ラヂオ)が入る。

緊急コールのためにピット内に緊迫感が走る。


「どうした⁉️岸川‼️」


「トラブル トラブル 13コーナーで

右フロント バースト‼️バースト‼️

ピットに入る、用意してくれ」


「なんだと⁉️バーストだと‼️くそったれ」


監督か唸った。

ピットクルーはSタイヤの交換の準備を始めた。


このアクシデントで順位後退を余儀なくされる。

7時間目に入るこの終盤での

このアクシデントはCORSEにとっては痛かった。

タイムスケジュール計算をしていたスタッフが、

監督にこのまま宙也にドライバー交代しても

問題無い事を伝えた。

監督からの各スタッフへの指示が飛び交う。


「待ってろ‼️すぐ治してやる❗

宙也、行くぞ、スタンバイしておけ」


宙也はレーシングスーツのジッパーを上げて

四つ葉のクローバーが描かれたヘルメットを被り、

バイザーを上げてグローヴをフィットさせた。

156のドアが開き

岸川がマシンを降りて来た。


「スマン」


「仕方ないさ、単独だったからマシンが

クラッシュしてないのが幸いさ、

マシンとコース状況は❓」


「マシンはタイヤ以外はトラブルはない、

コースは路面が荒れて来てる、

タイヤブロックが所々落ちてるから、

踏まない様に氣をつけてくれ、

長時間走っているから、

速いマシンとⅠ遅い《周回遅れ》マシンが

ゴッチャ混ぜだ、

疲労しているからどちらに動くかが読みにくい

クリアするのに神経を使う‼️以上だ」


同時にピットクルーから


「右フロントオーケー‼️」

「左フロントオーケー‼️」


交換終了合図が出た。


ドアをあけてマシンに乗り込もうとすると

監督から背中をポンと軽く叩かれて


「宙也、残り1時間を切った、思いっきり行け‼️

スクランブル(勝負)時には10000rpm(回転)まで

ブン回して構わん‼️」


「10000⁉️」と聞いて宙也は驚いた。


「切り札を使う時が来たな、頼むぞ宙也」


監督はニヤリと笑った。


宙也は近くのクルーに

フロントガラスを拭いてくれと頼んだ。

ロールケイジにぶつからないように慎重に

スパルコのバケットシートに沈み込み、

ステアリングに手を掛けてシートをセットした。

ブレーキペダルを踏んで

サイドブレーキのグリップを押して下げた。

サベルトの6インチの6点式ハーネスをセットする。

クルーがフロントガラスを拭きあげた。

宙也はコクピットから右腕を出して、

人差し指で円を描いて

オーケーの合図を出した。


「コンタクト」


そして、クルーに声を掛けた。

クルーは|アシストパワーユニット《APU》の、電源を入れる。

156に電源が供給される。

彼はスタートボタンをプッシュした。

短いクランキングで

次の瞬間

アルファロメオが誇る

V型 6気筒 3.0DOHCが目覚める‼️。

既に7時間を経過した。

失いたくない1秒のために無理をさせてるマシン。

そして特に負担の掛かる変速機(ミッション)

彼は少しでもシンクロを労りたい

その氣持ちから

一度、2速にシフトを当てて其処から1速に入れた。


「さぁ、行こうか」


自分と156に言い聞かせる様に

アヰドル状態からクラッチを繋ぎ、156はスルスルと動き出した。


CINEMA(ドラマ)なら

ピットからマシンをホイールスピンさせて

追いあげをアピールするために

カッコ良く発進させる演出があるが…

リアルな世界ではピットでの事故防止のため

ピットレーンは60㎞走行のルールがある。

これを破れば当然ペナルティが付く、

どんなにタイムが速かろうが・・・

ペナルティが付けば敗ける事が必至である。


ピットロード出口はグリーンシグナルが点滅している。

幸いにコースはクリア状態だった。

慎重に後方を確認して156は7位でコースイン。


「ツイてる‼️上手く周回遅れが、ブロックしてくれて前に出られた、コイツらが8位のクルマを、ブロックしてくれる間に」


宙也は156のラフチェックを走りながら行い始めた。


1コーナー2速で進入。

出口で3速へシフトアップ。

続く高速コーナーの区間

バーストの影響が考えられるので

まだマシンに高い負荷をあまりかけたくない。

クーリング(冷却)をかねて4速のままで進入。


変な振動も異音も出ていない。

ソーイング(小刻みにステアリングを左右に切る)を送ってもボディの変な挙動や伝わる振動もない。


「バーストの影響は無さそうだな」


登りの

高負荷セクションに入った。

今度はパワーユニット(V6)のチェックを行う。

油圧.油温.水温.吸気.排気の各計器の数値も安定していた。


「オーケー、オールグリーン、

ダメージは無い、速度を上げよう」


ラヂオで車両状況をピットに伝える。


「了解、充分に勝てるマシンだ❗頼むぞ宙也‼️」


監督からゲキが飛ぶ。


156のエキゾーストノート(排気音)はヒートアップ

"早くあの場所へ(メインストレート)"

と言っている様に聞こえる。

アタックを駆ける前にバックミラーで後続車のチェック


「問題はない、高負荷高機動走行に入る」


アウト イン アウトのライン

宙也は綺麗に最終コーナー出口で

スロットルを開けられる様に156をラインに乗せる。

スロットル オン‼️

メインストレートに進入。

「クオーン」と甲高いサウンドを奏でながら

加速を始めるアルファロメオ 156 V6 3.0

其の姿は戦闘機のハイレートクライム(スクランブル)を思わせる。


ピットのボードサインを見る。

「GO」サインが見えた。


前方をにらむと6位のRX-8がマフラーから

青白い煙を吐いているのが見える。


「オイル上がりかな⁉️」


オイルを噴いているので

その後ろには付かない様にラインをズラした。

4速にシフトアップ。

スロウダウンするRX-8をクリアしてコレで6位に上がる。


「さてさてここから先は、

タービンで武装した統制の執れた

槍騎兵(ランサー)達だからな、

マトモに正面からぶつかっても勝てる訳がない❗

トリックを使って、

コチラが10000まで回せる事は

ギリギリまで伏せとかないとな」


彼はひとりごちた。


彼はまずは、スリップに付けられる

速そうな國産車を探していた。


「いた‼️」


中盤のブレーキトラブルで

周回遅れになっていたR33GT-Rが

その鬱憤を晴らすかの様にストレートで

スロットルを開いていた。

宙也は156をR33の後に付けスリップストリームに入った。


「さて、コイツのブレーキポイントは何処か❓」


本来ならトップグループを走ってもいいチームの

R33GT-Rが周回遅れなんて、

まだ何らかの深刻なトラブルを抱えているのか⁉️

まぁなんせ重量級だからな。

彼は頭のなかで推測していた。


「セオリーならば、180㍍辺りかな⁉️」


第一コーナーまで200㍍の看板を過ぎると、

R33のブレーキランプが点いた。


「どうやら、ブレーキがまたトラブってるみたいだな」


彼はステアリングを右に切り、

R33のスリップストリームから飛び出して、

156を加速させる。

150㍍の看板を過ぎると


「さぁ、忙しい時間の始まりだ」


オーバーレヴと駆動輪のSタイヤをロックさせない様に

細心の注意をはらって

ヒール&トウでブリッピングを繰り返して

5→4→3→2速までシフトダウン。

確実に乗せたSPEEDを殺してゆく。

第一コーナーの入口までの約150㍍の間に

推定約250㎞の速度から約90㎞位まで減速させる。

減速Gでサベルトが肩に食い込む。

そしてターンイン。

縁石を踏まない様に注意をする。

出口で3速にシフトアップ。

コカ・コーラ コーナーで5位のFD3S(RX-7)を捉える。

100Rからアドバンで徐々に距離を詰めていく。

高い運動性能を誇るFDも

さすがに7時間以上も高機動負荷を

繰り返して続けてるために、

恐らくは

タービンかアペックスシールが摩耗しているのだろう。

ロータリーロケットと呼ばれる

本来の加速の鋭さが無くなって来ていた。


「加速が鈍いから、次の300RでクリアでOKだな」


宙也はムリをせず

300Rで直線的なラインを採り

13B-REWよりスタミナのある

アルファロメオ

V6 3.0のワイドなトルクを活かしてパスした。

コレで156は5位に上がる。






Rosso Capitolo Ⅱ







プリウスコーナーで3位グループを捉えた。

3位の三菱ランエボ

そして4位のアルファロメオ 147GTAが見える。


「147GTA  宮城慎一か‼️」


宮城慎一。単車の元WORKSライダー。

GP500に出場したり特に國内では

鈴鹿8耐でレジェンドと呼ばれる位有名なライダーだ。

4輪も好きでアルファロメオ チャレンジや

シビックなどのステアリングを握り

ワンメイクレース等に参戦していた。


「タービン相手に互角の走りしてるな‼️

さすがプロだね。相手にとって不足はない」


宙也は名乗りを上げる意味を込めてパッシングをした。


宮城がパッシングに氣が付いた。


「うん⁉️156か❓確か岸川のチームだよな⁉️

岸川かっ⁉️

いや違う‼️

岸川ならこんな挑発はしない、

以前に一緒に組んで走った事あるから、

オレの速さを解ってるはずだ❗

ドライヴしてるのは、もうひとりの相沢って奴か❓

くっくっくっ、

なかなかの強氣だな、これだからレースはやめられない」


宮城はバックミラーを動かした。 

後ろを走っている宙也にも見えた。

其れはまるで宮城の

戦闘開始の合図の様に思えた。


「さぁこいっ、手加減はしないぜ❗

オマエはプロに、ケンカ売ったのだからな‼️

付いてこれるか‼️」


ランエボ.147GTA.156と列なって

最終コーナーを駆け抜けて行く。


「147と156 どちらのV6が優秀かっ‼️」


宮城はひとりごちた。

メインストレートに突入して


「あれ⁉️」


宙也は異変に氣付く。

宮城の147GTAの加速があまりにも強烈だったからだ。

彼は以前にアルファロメオチャレンジで

147GTAとは手合せした事があったが

充分にこの156で対応できた。


しかし…

宮城の乗る147GTAの加速性能が全く違ったのだ。


「ウソだろう⁉️バケモンか❓あの加速は⁉️

まさかCUPカーか‼️」


宮城は日本に未導入のエンジンでCPU制御が違う

147GTA CUPカーで出場していたのだ。


「くっ、使いたくはなかったが・・・」


宙也はギリギリまで手の内は隠したかったが、

しかしこれ以上は宮城に離される訳にはいかなかった。

宙也はスロットルを開く断を下した。

8000rpmで4速にシフトアップ

今までにない加速を見せる156 V6 3.0


「なんだって⁉️」


宮城はバックミラーを見て驚いた。

引き離したと思ったはずの、宙也の156がすぐ後ろに付いていたのだ。


「まさかコイツも156 3.2CUPカーかっ⁉️

次のブレーキポイントで確かめてやる」


宮城は疑心暗鬼になった。

宙也は

彼にこの加速で『10000rpm』の切り札に氣付かれたと思ったが・・・


「あっ‼️もしかしたらこれで156も、

3.2CUPカーと思ったかも❓

ならばしっかりと思い込んでもらおう‼️

トリックを使ってやる!

147の動きに同調させて、

彼の持ってる156のデータを全て無駄にしてやる」


宙也は断を下した。


第一コーナーまでの距離を示す200mサインを通り過ぎて、

推定約180mで147のブレーキランプが点灯する。

宙也も其れに合わせてブレーキングを行う。

其れを確認して、宮城は分析を始めた。


「どうやら、向こうもCUPカーだな、

マシンのパワーユニットはほぼ互角の性能だ❗

156はトランクが、あるからダウンフォースを得られ

コーナーリングは向こうが有利❗

確か相沢は関東rd(アルチャレ)を走っていたよな、

ハッチバックのためダウンフォースが得にくい

147(コイツ)のトップヘビーの

弱点を知ってるはずだから、

ダウンヒルの続く前半、

恐らくは・・・

第一コーナーで仕掛ける確率が高いな❗

勿論、タダで抜かせる事はないが・・・

クリアしてコッチが後ろについたら、

其の時ヤツがどう足掻(あが)くか・・・

特に後半の登り、其処が見ものだな」


宮城は同じアルファロメオ乗りとして、

其れを知りたかった。


宙也は147の後ろで動きを合わせながら


-何処で仕掛けるか-

黙考していた。


フロントヘビーな147GTAだから、

第一コーナーのブレーキングで前に出る事は可能、

ただ相手は世界のレーサーを相手に闘って来た。

コッチが第一コーナーで

仕掛ける事を当然読んでいるだろう、

問題はクリアした後だな。特に後半の登りの

マシンのアドバンテージは向こうに有利。

さらに宮城の強烈なプレッシャーと闘いながら

周回遅れのクルマを次々に追い越す事に・・・

其れに何処までオレが耐えられるかな❓。


「クォーン」


メインスタンドに響きわたるエキゾーストノート。


Il violino rosso


レッド ヴァイオリンと称されている。


「クルマ買ったら樂器が付いてきた」


「フェラーリ要らず」


との数々の逸話を生み出すほどの数々の名車を

アルファロメオは造り出してきた。


ふたりが乗るマシンは

神話に出てくるセイレーンのように

美しいソプラノトーンを奏でて人々を魅了する。


『世界一官能的なV型6気筒』


そう呼ばれるユニットを

アルファロメオ エンジニアリングは世に送り出した‼️

本國ヰタリアではアルファロメオはSPEEDの象徴で

世界中のエンスージアスト(クルマ好き)に愛されていた。


アルファロメオはサーキットが最も似合う。







Rosso Capitolo Ⅲ







3台はお互い手の内を探る様に巡航して周回を重ねていった。

宙也は宮城の動きに合わせ続けていた。

そろそろ膠着した場面が動きだそうとしていた。

メインストレートに差し掛かった時に

ピットから残りあと2周のサインが出た。


「相沢、何を考えている❓

仕掛けてこないなら、引き離すまでだ」


宮城は動き出した。

彼はブレーキポイントの180mを過ぎても、

147の加速を続けた。


「どうする。相沢・・・」


宮城は心の中で呟いた。


「何‼️何処まで行くんだ⁉️」


宙也は付いて行こうかと考えたが・・・

147のギリギリのブレーキポイントを見極めようと

まだ我慢だと断を下した。


-さぁオマエの性能を見せてみろ・・・-


宙也は声にならない声で呟いた。


147は推定160m辺りでブレーキングを行う。

宮城はバックミラーを見た。

「ふむ」と鼻を鳴らした。


「意外に慎重なヤツなんだな❗

ついてくると思ったが、

ムリをせずコチラのブレーキポイントを

探ろうとしてるな、見てろよ‼️」


147は第一コーナーにターンイン。


「オーバースピードだ‼️距離が足りないだろう」


147はアンダーが出てアウトに脹らみコースアウトを

宙也は予想した。


宮城はアクセルペダルを離して『タックイン』を行う。

アクセルが抜けたため

フロントヘビーな147はノーズをイン側に向けた。

荷重の抜けたリアセクションは、グリップを止めてスライドを始めた。

其の瞬間、宮城は最小限のカウンターを当ててスライドを止めて147GTAを理想的なラインに乗せて

出口に向けてスロットルオン‼️

3速にシフトアップ。

フル加速する147GTA。


「どうだ、相沢 自分の得意技を使われた氣持ちは❓

オマエだけのテクニックぢゃあないんだぜ‼️

コレで諦めてくれると良いのだかな」


彼が使ったテクニックは

宙也が重いV6エンジンが乗った

フロントヘビーなアルファロメオで

コーナーを回る時に使用してた技術だった。


そろそろ3位のランエボに集中したい。

そのために

宮城は宙也の闘志を挫くために敢えて使ったのだ。


「マジかよ⁉️ハッチの147でよくやるね、流石はプロだ❗コッチの意思を挫こうって事かい❓そうはさせるか‼️」


宙也は追撃モードに156を持っていく。

宮城はランエボに襲いかかる。

100Rを抜けて、アドバンコーナーに差し掛かった時に

ランエボにトラブルが起きる。


「3位ランエボ、4位アルファ147が並ぶか⁉️」


ランエボがブレーキングを行った瞬間、

ブレーキがロックした。

右フロントタイヤがロックしたため、

其れを軸に挙動が暴れ始めて

スピンモードに入った。

147に向かって来た。クラッシュしたらアウト。

宮城は此処でプロの判断能力の凄さを見せつける。


「チイッ 左に切ればコースアウト❗

右に切ればランエボが向かってくる❗

ならば真ん中を抜けてやる‼️」


ハードブレーキングを行い、

ランエボとの接触のタイミングをずらした。

そして冷静に

ステアとアクセルで147をコントロールする。

歴戦の勇士は鮮やかにランエボをクリアをする。

ランエボはグリーンゾーンに

土煙を上げてコースアウトする。


コースアウトしたランエボを見ながら

このアクシデントで再び宙也は追い付いた。

再び宮城にパッシングを行う宙也。


「どうやら、オマエに"ツキ"があるみたいだな‼️

"ツキ"があるのは大切な事なんだぜ❗

『相沢』

オマエとオレのどちらが速いか、

今度こそケリをつけてやる❗ついてこい‼️」


宮城は宙也に奇妙な親近感を感じて始めていた。

そして宙也とのケリをつける覚悟を決めた。


2台は最終コーナーを抜け、ファイナルラップに突入した。

沈みかけてる太陽が2台を柔らかく照らす。

ヘッドライト点灯のサインが出た。

2台はヘッドライトを点灯させた。


其れは恰かも

アルファロメオ156と147というGUN(ウエポン)を使う

宙也と宮城のふたりのGunSlinger(ガンナー)達の

これから繰り広げる

ドッグファイトの開始の合図になった。


宙也は宮城のブレーキポイントを160mと予測した。

彼は其処でアクションを起こそうと考えていた。


「見てろよ❗其処で仕掛けてやる」


彼の予測通りに147GTAは160mで減速を始めた。


「待ってたよ 其の操車を、マークインターセプト‼️」


宙也は147のスリップから抜け出した。

宮城は完全に虚をつかれた。


「何⁉️相沢‼️何をする氣だっ⁉️」


宮城はブレーキングを緩めてアクセルオン‼️

両車並びながら150mラインを通過する。


「この局面で相沢選手が仕掛けた‼️面白い。

世界を相手に闘って来た宮城選手を相手に、

第一コーナーのブレーキングバトルだぁ‼️

意地とプライドのぶつかりあい‼️

勝つのはどちらだぁ⁉️」


140mライン通過


「宙也 アナタなら出来るわ‼️」


宙也の耳にあのひと(・・・・)の声が聞こえた。


「くっ‼️ダメだ、これ以上はアンダーが出て、コースアウトする」


宮城はたまらずブレーキングを開始する。

フロント6POTのブレンボがフル制動を始める。

薄暮でベンチレーテッドディスクが

熱で赤く焼けるのがみえる。


宙也のドライヴする156は完全に147GTAの前に出た。

156は3位にランクアップ。


「相沢選手 何処まで行く⁉️」



130mライン通過して、


『クロス』


宙也は気合を発した。


素早く5→4→3→2と

ヒール&トゥを使って

ブリッピング(回転数)を合わせてシフトダウンを行う。

SKI スラローム狂技のフィールがよみがえる。

クールに156を減速コントロールを行って

第一コーナーに飛び込んでゆく。


「見事な操車だ」


宮城は宙也の156のコントロールを見ていて感じた。

アルファロメオチャレンジ関東rdに

参戦していた知人の話を思い出した。


「相沢宙也ってヤツが

走っているんだけど、

コイツの走りがモロ破滅型なんだ‼️

スーサイドジョッキー(自殺志願のドライヴ)って

呼ばれてるんだ」


「スーサイドジョッキー⁉️ とんでもない‼️

さっきの第一コーナーへの進入は見事だった❗

相沢(コイツ)は速い‼️

ペダルワークはプロ並みだ、

バランスの良いベルリーナ(セダン)とはいえ、

重いアルファのV6を搭載して見事なコントロール❗

何処で覚えた其の技は⁉️

これだけのコントロール技術を持っていながら、

今までコイツは、何故オモテに出て来なかったのだろう⁉️」


宙也のペダルワークの巧さに宮城は驚いた。


宙也はSKI スラローム狂技のアスリートだった。

動力源を持たないSKIを加速させたり、減速させたりするその技術からの応用をペダルワークに活かしていた。


「巧いなぁと感心してる場合ぢゃあないな、

このままぢゃあ済まさんよ❗

プロの名が泣くぜ、やられたらやり返す❗

次の100Rで必ず抜いてやる。プロの名にかけてな。

アドバンの出口で全開、同じ3.2のCUPスペックならば

ヤツを抑えられる‼️300Rを抑えればコレで決まりだな」


宮城は戦略を考えた。


「間もなく捕まえるな!100Rからはコッチが有利」

100R続くアドバンはプロとして

走り込んでる宮城のほうがアドバンスがある。

言った通り100Rであっさりと再び156をクリアする宮城。


「あぁ、100Rで宮城選手が抜き返した‼️

熾烈な3位争い‼️スゲェバトルを繰り返してる」


テクニカルなアドバンコーナーを抜けて

2台はスロットルを開いた。


同じ3.2CUPスペックと思い込んでいる宮城に対して

-さっきの100Rが宮城(オマエ)の意志なら、

300Rでコチラの強烈な意志を示してやる。-

宙也は声にならない呟きをした。


ふたりは300R進入した。


「ウエポンズ フリー‼️最大戦速‼️」


此処で宙也は3速フルスロットルをかけた。

遂に156 3.0V6の全性能を開放した‼️。


「Listen to me howlin' roar」

(聞け‼️俺の咆哮を)


今まで隠してきた牙を剥き出し、宮城に襲い掛かった。


「なに⁉️ウソだろう‼️此処でOvertakeかけるなんて‼️」


宙也はレヴカウンター(回転計)をにらんだ。

キッチリ10000rpmで4速にシフトアップ


「スゲェ‼️レヴカウンターの天井が抜けちまったみたいだ‼️」


156は強烈なダッシュを見せて、再び宮城の前に出た。


「違う‼️コイツはCUPカーなんかぢゃあない‼️」


宮城は156の加速性能に目を見張った。

そして彼は

宙也がCUPカーにカモフラージュさせていた

トリックにまんまと引っ掛かった事に氣がついた。


「迂闊だった❗まんまとしてやられた‼️

このままぢゃあ済まさんぞ‼️許さねえーよ相沢(オマエ)は」


宮城の凄まじい殺氣が背後から伝わって来るのが解る。


宮城は戦略ロジックを組み直す。


「あの加速だと、スリップロス入れても、10000まで回るな」


流石、世界で闘ってきただけに一度みただけで

即座に156の加速性能を見抜いた。

3速にシフトダウン。

ダンロップコーナーにアウトから進入

複合コーナーで

此処から先は登りの高負荷のセクションになる。

ひとつめは捨てコーナーで問題はふたつめだった。

登りなためアクセルは弛めてはいけない。

ふたつめのコーナーを全開で抜ける。

コクピットでみるよりも

かなりキツイ登りになる


「宮城は何処で仕掛けて来る❓

登りのセクションでトルクフルな3.2のオマエが有利だろう❗プリウス辺りかな❓」


宙也は宮城の凄まじい殺氣と闘いながら、

彼の戦略思考を読んでいた。

3速ホールドのまま

13コーナー縁石に乗りながら抜けて

そしてプリウスコーナーへ


「相沢、キミのタクティクス見事だったよ❗

でもここまでだ、次の最終コーナーでケリをつけてやる‼️」


「来る‼️」


2台は最終コーナーに突入する。

宙也は最後のストレートで10000まで使うために

ラインはアウトからの立ち上がり重視を選択。

宮城は156を後ろから見て


「速すぎる、スピードを殺し切れていない❗

どうやらオレのプレッシャーが、効いてるみたいだな」


156がアンダーステアに陥りアウトに

脹らみ縁石にヒットしてコースを飛び出す事を予測した。

156が飛び出す影響を受けない様に、

少しアクセルを抜いて156より

若干内側のラインに147を乗せた。


「相沢よく頑張ったよ❗オマエは・・・

でもコレで終わりだ‼️

プロのプライドをケチョンケチョンに、キズ付けやがって‼️必ず撃墜(おと)してやる‼️」


宮城の予測通り

宙也の156のフロントタイヤはスライドを始めた。


其のスライドが宮城の予測通りの大きいモノなら、

156はアンダーステアからインが空いて

其処に147GTAのアタマが入りこんでクリア

宙也の156はアウトに膨らんでコースアウト。

彼のレースは其処で終わっていたはずだった。


宙也は其の時

最小限のカウンターを当て

SKIスラロームのターンの感触の様な

繊細なタッチでスロットルをコントロールしていた。

スライド始めてた

フロントタイヤは小さなスライドで終わり、

宮城の予測を裏切り再びグリップを始めた。

そして最終コーナー出口に向けて156は

再び全性能を開放するためのラインに乗った。


「バカな⁉️マジかよ‼️

なんちうコントロールしてんだ‼️

コイツはバケモンか‼️」


156が飛ぶと予測していた宮城は驚異した。

こうなると宮城の方が

アクセルを開き切れるラインではないので苦しくなる。


「熾烈な3位争い、最終コーナー出口‼️

アタマは156だぁ‼️相沢選手が見事、宮城選手を抑えている‼️」


「いっけぇ‼️」


全性能を開放するアルファロメオ 156 V6 3.0。

クォ-ンとハイトーンのソプラノエキゾーストが響鳴していた。


「I need more POWER (もっとパワーを‼️)

POWER‼️」


ふたりにはゴールラインまでが

スロウモウションに感じた。


「くっ届かないっ‼️」宮城は叫んだ‼️


チェッカーが振られた。


「今、チェッカーをくぐる、2台❗

3位はアルファロメオ 156の相沢選手‼️

4位はアルファロメオ147GTAの宮城選手‼️

ファイナルラップで

凄まじい稀有なドッグファイトを

見せてくれた両選手に感謝です‼️ありがとう」


宮城を抑えてゴールラインをくぐり抜けて

ふうと息を吐いた。


「やるだけはやったさ」


宙也はひとりごちた。


ファイナルランを終えて

ピットに戻った宙也はクルーから手荒い祝福を受けた。

岸川が


「オマエスゲェな‼️宮城を抑えるなんて‼️

オレ、とんでもないヤツと組んで一緒に走ってたんだな‼️」

と興奮していた。


表彰式、表彰台に載った宙也の眼は何かを探していた。


「ココ二イルハズモナイノニ・・・」


解ってはいる。でも探さずにはいられなかった。


"永遠に再現出来ないジグソウパズル"のワンピースを

探し求めて彼の心はずっと彷徨を続けていた。


ピットに戻ると宮城が待っていた。


「おめでとう、相沢君」


「ありがとうございます、宮城さんが156をドライヴしてたら、勝てなかったです、トップヘビーな147GTAを凄いコントロールをしてましたね」


「相沢君。教えてくれないかな❓

他人(ひと)はキミを

スーサイドジョッキーと呼んで

危ない走りをすると言われているけど・・・

ボクはキミと走ってて、

ペダルワークの巧さを感じたんだ❗

マジ凄いと思ふ。何処で其の技術を磨いたのだい❓」


「宮城さん、

私はSKIのスラローム狂技をやってました❗

動力源の無いSKIを加速させたり、

減速させたり、出来るのですよ❗

SKIを走らせるのは荷重移動のコントロールです。

クルマも一緒だということに気が付きました。

其のためチョッとだけ、

細かいコントロールが出来る様になりました」


「なるほどな、だからか‼️」


宙也とのバトルで

宮城は彼に感じていた奇妙な親近感の理由が分かった。


SKIと単車

一見、全く違う世界だが

ピステとサーキットで

共に秒を削る事を仕事にしてきた者同士だった。

今、振り返れば、

宙也の走りは

確かにコンペティションの世界に

身を置いた者ならではの技術だ。

あれだけプレスを掛けたのに

ミスどころか跳ね返して走り、そして抜かれた。


宮城は宙也を理解した。


「ありがとう、

今日キミと一緒に走れたのは

ボクにとって凄いプラスになった。

確かに世界的なレーサーはSKIも巧いからね❗

ボクもトレーニングで採り入れるよ❗

本当におめでとう

でも・・・

次走る時は必ず撃墜(おと)すよ、キミをね、

この世界で生きてきた者のプライドに掛けてね」


宮城はそう言うと踵を返した。


宙也はパドックで激走を終えて休んでいる

156のボンネットに手を置いて感謝の念を込めた。


「ありがとう、

紅いヴァイオリンと呼ばれる其の音色❗

素直なハンドリング、癖の無い良いマシンだ」


宙也はパドックを出て空を仰いだ

空には

月と星が寄り添って輝いていた。







Continuare















































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