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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

優生思想

作者: ローズ

 親からマナーや倫理を教えてもらった記憶はない。自分自身で考えろ、客観的に物事を見ろ、十分に検討せよ。それらの三つのことはあらゆる場面で言われた記憶がある。

 私は勉強というものがさほど得意ではなかった。特に苦手というほどのものではないが、優れた成績を残したことはない。しかし、読書は非常に好きだった。学校の図書館では週にニ三冊ほど本を借り、それらを一週間のうちに二周ほどしていた。私は同じ本を何度も読むことが好きで、その本や作者の思想が自分にうまく溶け込んで、自分のもともとあった先入観や価値観に対して強い衝撃を与え、また「自分」というものが矯正されているような気がして、ひどく快感なのだ。中でも、私は哲学が好きである。哲学書というのは著者の思想がひどく強く練りこまれている。哲学書、もとい哲学は同じ問題を何度も何度も繰り返して、そして真理にたどり着くというのが鉄則であり、それが多くの哲学書にも応用されているのだが、何度も繰り返してもらえることでそこで提示されている問題をうまく理解でき、著者の考えもうまく自分の中にアウトプットすることができて、非常に効率の良いものであると感心している。

 読書のほかにも音楽、美術、映画など様々の文化を好んでいる。私は芸術についてある考え方がある、それは芸術家というものは一流でなければならないし、二流三流の芸術家は芸術家と名乗ってはならないし、そのような者は芸術家ではなく労働者になるべきという考えである。そのような者が自分は素晴らしいものを創り出しています、と胸高々に言ってるのを聴くと私は芸術に対して同情の涙を流し、それ以上に先達の芸術家に対して申し訳のない気持ちになり、そのような者が蔓延る世の中に産まれ落ちてしまったことを後悔するばかりだ。

 そこで私は一流の芸術家以外は芸術によって利益を得ることを一切禁止にした。当たり前のことである、二流三流の者に芸術で生計を賄えるなどということはこれまで人間が積み上げてきたものを破壊するようなものだ。そこでそのような者たちを一斉に解雇としたことで失職者が増大した。これを解決しようと私は思索に思索を重ねた。その最中私は一つの疑問にぶち当たった。そのような者たちは生きながらえる必要があるのだろうか。そのような者たちは世界の発展に役立たず、地球の財産を消費するばかりである。毎日毎日考え続け、私はついにそのような者たちはこの世に存在する必要はないであろうと結論付けた。そこでそのような者たちを死刑、または奴隷にした。そのような存在する意味のない人間からは一種の暴動のようなものが起こったが、なんとか武力によって制圧した。全く、知性のな人族は困ったものである、同じ人間であったことが恥ずかしい限りである。

 私は凡人死刑、奴隷制度を施行した翌年、動物をより家畜とさせる運動をした。まず、犬、猫などの食べることのできない、または食べても美味しくない動物は居ても食料の減少の種になるだけで存在価値がないため、駆除した。豚や牛などの食肉にできる動物などはより効率に食料が確保できるようにそれらをうまく繁殖させるための機械を作り、それをうまく活用した。人間以外のサル目はワクチンや薬の効果を試すために使っている。たまに奴隷が増えたときに人数調整のために奴隷を使用することもある。以上の政策を行ったことで、貧困層の激減、芸術、文化の目まぐるしい成長を実現することができた。世間からは私に対しての感謝とともにこのような世の中を一生続けていきたいと願う声が寄せられた。私は非常にうれしい。これからも人間皆手を取り合って、逞しく、慎ましく、楽しく生きていたいと思う。

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