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PM22:19

作者: 夏羽

ごめんなさい

いつからか、幸せな話が書けなくなった。

元々私は小説を書いていたのだ。エッセイを書くタイプの人間ではなかった。

どこにもない物語を作って落とし込んで遊ぶ生活を、ずっとずっと続けていた。


寒くなり始めてからというもの、私は自分の精神が明確にがたついていくのを感じている。

寝ても覚めても自殺のことしか頭に出てこない。幸せが分からない。前までは結婚式中のカップルをみなとみらいで見かける度に「今すぐ死ねばいいのに」とひっそり思っていたのが、もう目にすら入れられない。白い幸せのモヤから逃げ、きっと一生自分はあんな風に笑えないんだろうな、と悲しくなるだけだ。家族連れなんかを見かけたらその場ですぐに首を掻き切って死にたくなってしまう。未来の私は決してそのステージにはいない。


最近アルバイトを始めた。惣菜屋のレジである。

そこで閉店間際に来て半額の惣菜を買っていく疲れた顔の人達を、私はよく見てしまう。

わかりやすい未来の姿だからだ。脂でべちゃべちゃの美味しくもない惣菜を半額で買って、きっとそんなに広くはないであろう部屋で噛み砕く。

それでも彼らは仕事があって収入があるだけ幸せだ、とも思えてしまうから困る。私は仕事に就けるかも分からない。安いはずの半額の食い物を自力で買えるのか、クレジットカードを出せるようになるのか。きっと無理だ。


そういう時に私は精神科に行く途中に溜まるホームレスの人達を思い出す。あそこが終着点だからだ。

薄汚れた地下でダンボールを敷いて、どこから調達したのかわからない毛布を被り、寝る。道行く人達からは見向きもされず、タイルだらけの景色と同化して溶けていく。

うちの親はニートを許すほど寛容ではないから、私はきっとああいう風になるのだろう。若い女性のホームレスは非常に危険だと聞くが、仕方の無い話だ。風俗をこなせるほど私はかわいくない。


断じてあの日見たウエディングドレスを着ることも、我が子と手を繋いで歩くこともできない。

いつかの幸せなんでどこにもない。

あれは生まれつき権利が保証された人達が手に入れられるものだ。それに私は含まれていない。

誰も発達障害の人間と結婚はしたがらないし子供も作りたがらないから仕方がない話ではある。

私も自分と同じような病気を持って生まれてきた子供なんて育てられないし。てか十ヶ月も他人を腹に入れて生活するのが無理。

そんなこと言ってるから私はダメなんだろうなあと一人で笑うが、もう口角はきっと上がらない。

理由は分からないが、精神が疲れてしまっているのだ。外に出ると、他人の幸せが嫌でも目に入ってくることがある。

こういう人間が電車内で刃物を振り回すのかなとも思ったが、彼らはまだ動く体力があるだけマシである。私なんてもう包丁を持ったらそのまま自分の胸に突き立てにいってしまいそうだ。いや世間的にはそっちのがいいんでしょうけど。

人間は限界になるとヤケになることすらできなくなるということらしい。というかもうここが限界なのかもわからない。底があるのかないのか、私が今どこにいるのかもわからない。

溺れているのとも違う。何故ならとても静かだからだ。心はどこまでも、なめらかに右肩に向けて下がっていく。


先程私は死にたい的なことを書いたかもしれないが、本当は自分の命をどうしたいのかもわからない。死にたいのかと言われたらハテナだ。消えたいのか?消したいのか?私を?世界を?他人を?

もう何もわからない。このままではダメなんだろうけど「なんでダメなんですか?」と開き直る体力ももうない。疲れた。休みたい。どこか遠くで。

でもどうせまた学校だし課題だしバイトだし、休むことなんてできないんだろう。

もう無理です。本当に?というか無理ってなんでしたっけね?

米津玄師聴けなくなりました終わった

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