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アルビノワイバーンに生まれて  作者: イ尹口欠
アルビノワイバーンとエルフの魔女
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俺は全裸だった。

 ヴィルヘルミーナと出会って、二年の歳月が経った。

 俺は文字を習い、真理の魔術を習い、世界のことを色々と聞いた。

 

 エルフは滅びかけの種族であり、人間から隠れ潜むようにして暮らしているのだとか。

 どうやらエルフは人間より秀でた魔法の力に恐れをなした人間たちに迫害され、多くが殺されていったのだとか。

 

 だからヴィルヘルミーナは人里離れたこの辺鄙な森に結界を張って暮らしていたのだった。

 

《ではいよいよ真理の魔術、〈ビカム・ヒューマン〉の魔法を試すときが来たね、ロラン》

 

《ああ。ようやくここまで来た。ワイバーンの身体もいいけど、やっぱり人間の身体が恋しい》

 

《前世が人間だったとは驚きだ。輪廻の環もときどきよく分からないことをするものだな》

 

 俺の前世が人間だったことは伝えたが、異世界である地球での生活のことは言っていない。

 今更、地球に戻りたいとも思っていないからだ。

 

 そもそも異世界転生している時点で、前世の俺は死んでいるはずだ。

 どうやって死んだのか記憶にないが、なんとなくそこだけは外れていないと確信している。

 

 まあともかく、今はヴィルヘルミーナが組んでくれた人化の魔術を試すときだ。

 

《では行くぞ。〈ビカム・ヒューマン〉!!》

 

 果たして、俺の身体はどんどん縮んでいき、やがて人間の形をとった。

 

「やった、成功だ、ヴィルヘルミーナ!!」

 

「……その前に、前を隠してくれ!!」

 

「うん?」

 

 俺は全裸だった。

 

 * * *

 

 ヴィルヘルミーナからフード付きコートを借りて、身体を隠す。

 家の中に入ったのは初めてだ。

 これまではワイバーンの身体が大きすぎて入ることができなかったからな。

 

 鏡を見せてもらう。

 姿見に移る俺の姿は、白髪に白皙の肌、赤い瞳。

 アルビノの特徴そのままの姿で、人間の青年の形をとっていた。

 

「ほら、お茶を入れたぞ。薬草茶だから好みに合うか分からないが」

 

「いや、何事も試したい。……いただきます」

 

 マグカップに入った黄色いお茶を飲む。

 柑橘系の風味のするお茶だ。

 

「甘くて美味しい。やっぱり人の食べ物や飲み物はいいな」

 

「それは良かった。だが気をつけてくれ、その身体は本質的にはワイバーンの身体と変わらない。食事の量が減るわけではない」

 

「分かっているよ。力加減を間違えたら、このマグカップだって粉々に砕いてしまいそうだ。しばらくは力加減の練習もしたいな」

 

「その前に服をなんとかしたいな。布は貴重だ。できればロランの有り余っている魔力を使って、衣服を具現化してもらえるとありがたいのだが……」

 

「新しい魔術を組んでくれるのか?」

 

「……分かった。新しく衣服を創り出す魔術を考えてみよう」

 

「俺も魔術を新しく組むことができるようになるかな」

 

「真理の魔術を使いこなせていないだろう。その域に達するには、まだまだ時間が必要だ」

 

「そうか……」

 

 ぐるるるる。

 俺の腹の音だ。

 

「すまない、お茶を飲んだら食欲が……」

 

「いい、気にしないでロラン。君の身体は本質的にはワイバーンなのだから、一杯のお茶では腹の足しにもならないからね」

 

「では元の姿に戻って、狩りをしてくる」

 

「元の姿に戻るなら、外に出てからにしてくれよ!!」

 

 そのくらい、分かっているよ。

 

 俺は外に出て〈ビカム・ヒューマン〉の魔術を解除する。

 スルスルと身体がワイバーンのものに変わる。

 この二年でまた身体が一回り大きくなっていた。

 

 風の精霊を従え、空を飛ぶ。

 手近なところから獲物を取ると、ヴィルヘルミーナの食事に差し支える。

 彼女も家の付近で狩りをして食料を調達しているからだ。

 

 森をテキトーに飛んでいき、目についた獲物を狩る。

 

 川に住むワニを狩った。

 ついでに〈ビカム・ヒューマン〉で人間の姿になってみる。

 ワニはそれでも俺に恐れをなしたかのように逃げ回るが、俺は走って追いかけて爪を振るってワニを殺した。

 

 人間の姿でも、ワイバーンの持つ能力を使える。

 精霊魔法、真理の魔術、ワイバーンの力。

 楽しくて仕方がない。

 

 ヴィルヘルミーナには何か恩返しをしたいが、何かないだろうか……。

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