一般的には銅、銀、金と呼び習わすらしい。
冒険者ギルドは北門にあるということで、俺たちは城をぐるりと回って街の北に向かった。
冒険者ギルド。
剣と盾を模した絵の書かれた看板に書かれた文字を見つけて、俺たちは建物に入った。
扉を開けて入った瞬間、幾つもの視線がこちらに向かう。
「白い男……」
「あれが闘神の申し子か」
おいおい、もう噂になっているのか。
情報、早すぎませんかね。
値踏みするような視線をくぐり抜けて、俺たちは受付カウンターにたどり着く。
小柄な少女が、カウンターの向こうでお辞儀した。
「ようこそ冒険者ギルドへ。ご用件をお伺いします」
「俺たち、新しく冒険者になりたいんだけど」
「新規登録ですね。身分証明証はお持ちでしょうか?」
「ああ。持っている。ちょっと待っていてくれ」
ポケットに手を突っ込んで〈ストレージ〉から身分証明証を取り出す。
同じようにしてヴィルヘルミーナも身分証明証を提出していた。
「はい。確認します。……ロランさんとヴィルヘルミーナさんですね。推薦状などはありますか?」
「いいえ、ありません。ないと冒険者にはなれませんか?」
「そんなことはありませんよ。ただしかるべき推薦状があれば、始めから冒険者ランクを高くできたりはしますけど」
「そうですか。なら良かった」
「では冒険者ランク、銅Cランクからの登録となります」
少女の説明によれば、冒険者ランクは銅Cランクから始まって、銅B、銅A、銀C、銀B、銀A、金C、金B、金Aと上がっていくそうだ。
一般的には銅、銀、金と呼び習わすらしい。
「冒険者タグを発行しますので、しばらくお待ち下さい」
少女が奥に身分証明証を持って行った。
しばらく待たされると、十五分ほどで少女がふたつのペンダントタグを持って戻ってきた。
タグは銅製で、名前と性別、年齢が刻まれている。
「それではそれぞれのタグに血を一滴、垂らしてください。それで専用のタグになりますので」
血は魔力を含んでおり、特に個人個人で魔力波形が異なるため、個人の識別にも使える重大な個人情報である。
やや躊躇しつつも、これをしなければ登録が終わらないので、仕方がなく親指を噛み、滲む血をタグに押し付けた。
その後、〈ヒール〉で傷を癒やす。
「このタグは年が変わると自動的に年齢を更新します。持ち主が亡くなると、年齢の更新は止まります。これで冒険者登録は完了です。何か質問はありますか?」
「仕事の受け方はどうなっていますか?」
「あ、はい。あちらの掲示板に依頼票が貼り出されていますので、お好きなのを取って受付に持ってきてください。ただし条件にランクが指定されているものも多いので、その辺りは確認してから持ってきてくださいね」
「なるほど。……あちらの掲示板も依頼が貼り出されているんですか?」
依頼票が貼り出されているという掲示板とは逆サイドの壁に、もうひとつ掲示板があった。
「いいえ、あちらはパーティメンバーの募集掲示板となっています。パーティ登録は最大で六名まで可能です。クラン登録は人数無制限です」
「パーティはなんとなく分かります。クランについて教えてもらえますか」
「はい。クランは冒険者の互助を目的とした集団です。冒険者ギルドでは扱っていない範囲の助け合いを目的としているクランが多いですね。例えば『剣士会』は、剣の腕を磨くためにクラン専用の道場を所有していますし、『真理の瞳』は真理の魔術に関する研究を行っていまして、研究結果や論文などはクラン会員でなければ閲覧できないとされています。復数のクランに所属することもできますが、クランに所属している間はお金を支払う必要があるため、なかなか復数のクランに所属している冒険者は少ないですね」
『真理の瞳』について言及されたところで、ヴィルヘルミーナがピクリと反応した。
どうやら興味があるようだ。
「他に質問はありますか?」
「いいえ。ありません。ヴィルヘルミーナは何かあるか?」
「私もない」
「それでは無理をせずに、依頼を選んでくださいね。受付嬢のシルティでした」
ペコリ、とお辞儀をして、受付嬢シルティは微笑んだ。
さて早速、依頼票を確認しようと掲示板の方へ向かおうとしたところで、数人の冒険者に行く手を阻まれた。
「なあ、白い兄ちゃん。闘神の申し子ってアンタのことだろ。どうだい、ウチのパーティに入らないか」
「いやいや、コイツらのむさ苦しいパーティよりさ、ウチのパーティに来なよ。女性がいるなら、なおのことね」
「抜け駆けするなよな。まあいいけど。それより、クラン『夜の帳』に所属しませんか。冒険者ギルドにもない情報交換を目的としたクランでして――」
「いやこっちの『剣士会』に是非とも! 闘神の申し子ならやっぱり武器は剣ですよね!? 初心者も歓迎しておりますよ!」
勧誘のためにひっきりなしに声を張り上げるものだから、煩いことこの上ない。
そんな中、ヴィルヘルミーナは、ポツリと呟いた。
「『真理の瞳』というクランの人はいないの?」
その言葉に、その場がシンと静まり返る。
そして少し離れたところの席に座っていた数人が立ち上がった。
「クラン『真理の瞳』は、初心者を受け付けておりません。しかし真理の魔術の腕前いかんでは、入会を許可できるかもしれません」
真理の魔術を極めたヴィルヘルミーナに、そう告げたのだった。




