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アルビノワイバーンに生まれて  作者: イ尹口欠
アルビノワイバーンの冒険者時代

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16/66

しまった、怪しまれたか?

 街は城壁に囲まれた堅牢な作りで、入り口の門衛のもとには出入りする人々の列ができあがっていた。

 俺とヴィルヘルミーナは何食わぬ顔でその列の最後尾に並ぶ。

 

《ロラン、密談は〈マインド・リンク〉を使って行おう》

 

《分かった。風の精霊に頼んで、門衛と出入りする人々の会話を盗聴しようと思うんだが》

 

《いい案だ。どのような会話をするのかは気になるね》

 

 俺は風の精霊に頼み、門衛の辺りの音を拾ってきてもらうことにした。

 

「身分証明証を見せろ」

 

「おうよ」

 

「冒険者か。よし、通っていいぞ。……次!」

 

「どうもご苦労さまです」

 

「身分証明証を見せろ」

 

「はい、こちらになります」

 

「商人か。よし、通っていいぞ。……次!」

 

 次々と入国者たちを捌いていく門衛。

 というか、身分証明証ってなんだよ。

 

《どうするヴィルヘルミーナ、身分証明証なんて持ってないぞ》

 

《慌てるのはまだ早い。身分証明証もない田舎から出てきたと言えばいい。作るのにお金がかかるかもしれないが、迷宮産の銅貨や銀貨がある》

 

 迷宮産の貨幣は万国共通で使えるとのことだ。

 ヴィルヘルミーナの知識は古いから、今はどうなっているか分からない。

 しかしダンジョンが滅びることはないだろうから、流通しているはずだと聞いたことがある。

 

 盗聴を続けていても、身分証明証を持っていない者はいなかった。

 そして遂に俺たちの番がやって来た。

 内心の焦りを顔に出さずに、俺たちは門衛の前に立つ。

 

「身分証明証を見せろ」

 

「身分証明証ですか。申し訳ないが、持っていないのです。何分、田舎から出てきたもので」

 

「む? そうか。では詰め所まで来てもらおう。犯罪歴がなければひとり銀貨一枚で発行できる」

 

「なるほど。じゃあ行こうかヴィルヘルミーナ」

 

 俺はヴィルヘルミーナの手を引き、詰め所に入る。

 詰め所では門衛が紙束を持ってきて、一枚一枚、確認していく。

 時折、俺たちのことを見上げるが、それも徐々に回数が少なくなっていく。

 どうやら人相書きのようだ。

 きっと犯罪者かどうかを調べているのだろう。

 

「よし、この中には無いな。では身分証明証を作る、でいいのだな?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 俺はポケットに手を突っ込んで、〈ストレージ〉から銀貨二枚を取り出し、門衛の前に出した。

 

「お、ダンジョン貨幣じゃないか。お前たち、一体これをどこで?」

 

「普通に流通している貨幣じゃないんですか?」

 

「この辺りにはダンジョンはないからな。珍しいぞ。他の銀貨はないのか」

 

「生憎と銀貨はそれだけです」

 

「そうか。……ところで、田舎とは言ったがどこから来たんだ?」

 

「ずっと南から来ました」

 

「南、南か……まあいい。身分証明証を作成するにあたって、この用紙に名前と性別、年齢、職業を書いてくれ」

 

 ヴィルヘルミーナに文字の読み書きは最初に習ったから、問題なく書けるかと思ったが、いくつか読めない字があった。

 ヴィルヘルミーナも困惑しているようだ。

 

「どうも俺たちの知っている字と少し違うようなんだが、代筆を頼めるかい?」

 

「そんなに遠方から来たのか? 何日くらい旅してきたんだ」

 

「ええと……」

 

 素早く計算する。

 ワイバーンの姿でかなりの距離を飛んできたから、一ヶ月くらいだろうか。

 

「……三十日くらいですかね」

 

「そんなにか。その割には小綺麗にしているな」

 

 しまった、怪しまれたか?

 

「しかしそれなら納得だ。土地が変われば使う文字も変わると聞く。人類共通語は変わらないというのに、文字だけはその対象外だというのは、不便でならんな。どれ、代筆してやろう」

 

「ありがとうございます。俺はロラン。男で年齢は、……」

 

 はて。

 年齢は何歳と答えるべきか。

 

《俺って生まれて十年しか経っていないけど、十歳には見えないよな?》

 

《そうだな。十五歳と答えておくと良いだろう。私も人間の年齢や外見には詳しくない》

 

「……十五歳です。職業は今の所ありません」

 

「ふむ。この街に来た目的は?」

 

 用紙にない質問が来たぞ。

 

「俺たち、結婚したんです。それで折角なので都会で暮らしたいなと思いまして。仕事はこれから探そうと思います」

 

「ほう、新婚だったのか。兄妹には見えないから、恋人か夫婦かとは思っていたが」

 

 白髪頭に病的な白い肌、赤い瞳の俺と、金髪碧眼のヴィルヘルミーナとは似ても似つかない。

 兄妹という線はないだろう。

 

《おいロラン。いつ私たちが結婚したんだ!》

 

《いいじゃないか。順番が前後したけど、結婚自体はするだろ、俺たち?》

 

《く……っ、後で覚えていろよ》

 

「じゃあ次は奥さんの方だな」

 

「あ、ああ。名前はヴィルヘルミーナ。性別は女。年齢は……十五歳だ。職業は同じくない」

 

「ふむふむ。よし、じゃあこれで身分証明証を作るから、ちょっと待っていてくれ」

 

 俺たちは一時間ほど待たされた後、身分証明証を受け取った。

 今の年齢なんて聞いてどうするのかと思ったが、作成年月日が書かれているので、これを元に年齢を計算するようになっているらしい。

 

 ようやく街に入れる。

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