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深淵海域 -魔導書ソウラマリスの伝説を追え-  作者: 山鳥はむ


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深淵の奥底へ


 狐です。お面屋です。

 しつこいようだけど、もう一度だけ言わせてほしい。

 別に後悔はしていない。

 だけど本当に、どうして私はこんな場所に来てしまったのだろう……。


 沈没船の上で突如として始まった戦闘。

 亡霊がアット隊員に憑依しようとしたのを、ガイア隊員が守り、ヤタノ隊員とリーゼ隊員が撃退した。

 とてもあっさりと片づけていたが、幻想種というやつは並みの人間では対処不可能な存在である。基本的に物理攻撃のほとんどはすり抜けてしまうので、熟練の術士でもないと対抗手段がない。

 ましてや、ただのお面屋さんに何をどうしろというのか。頭の上で繰り広げられる人外の戦闘をただ呆然と眺めていた。

 まあ、リーチャ隊長もただ見ているだけだったし、同じといえば同じなのだが、あの人は隊長だから指揮官として超然としていればいい。それが隊長というものだ。


 ヤバすぎる隊員達に少し気後れしていると、トボトボと船倉から出てきたキノスラ隊員と目が合った。先ほど船倉で見つけた人形を「捨ててきなさい」と言われて、少し落ち込んでいるみたいだ。

 なんだか放っておけなかったので、慰み程度に海の中でも食べられるチューブ容器に入ったチョコレートペーストを一つあげた。最初は海の中での食事に戸惑っていたキノスラ隊員だが、ちゅうちゅうと吸い始めたら止まらなくなって夢中で一つ空にしてしまった。わかりやすく幸せそうな顔をして先ほどの沈んだ様子はすっかり吹き飛んでいた。


 船倉から甲板へと上がってきた私とキノスラ隊員を見て、リーチャ隊長が一声かけてくる。

「狐さん、ありがとな!」

 一瞬なんのことだろうと思ったが、先ほどキノスラ隊員の機嫌をよくしたことについて礼を言っているのだと少し遅れて気が付いた。

「ところで……キノスラさんが吸っていたチューブ、あれまだあるの? なんか俺も腹が減ってきて……」

 こそこそと私に相談してくる隊長。ああいうものが欲しいなら最初から言ってくれればいいのに。非常食としてたくさん持ってきている。

 チューブを三本差し出すと、リーチャ隊長は「とりあえず」と言って一本だけ受け取った。その場でちゅうちゅうと吸いながら、難しい顔で何か考えを巡らせている様子だった。


「よしっ! じゃあ、行こうか狐さん!」

 がしっ、と力強く肩を掴まれる。

「なんだかわからないけど、光の玉が深海の底の方へ吸い込まれていった。ひとまずあれを追ってみようと思う!」

 なんだかわからないけど突き進んでいく感じがリーチャ隊長らしかった。


 他の隊員達はまだ沈没船の辺りで探索を続けている。

 隊長は先陣を切って、この深海へ潜ろうというのだ。

 背筋がつうっと冷たくなり、喉がやけに乾く。ボンベの空気が乾燥しているせいもあるだろうが、緊張がわけわからないレベルに達しているというのが本当のところだ。

 しかし、私もここまで来たのだ。今更、怖気づいてはいられない。覚悟を決めよう。


 ぽん、と海底深くに続いている大穴の縁を蹴り、先が暗く見通せない水中洞窟へと潜っていく。下腹が疼くような浮遊感に襲われながら、ゆっくりと海中を沈んでいく。

「お。狐さん、やる気だな。俺も!」

 隊長もすぐに後に続いた。

 目ざとくこちらの動きに気が付いたヤタノ隊員が、九本の尻尾を器用に動かしながらスイスイと降りてきた。

 ありがたい。正直、人数が少なくて怖さがあったのだが、ヤタノ隊員がいれば安心だ。


 こうして三人は、深い深い海の底へと潜っていく。

 十分な光も届かない、深淵の奥底へと。


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