あるダンジョン研究家の発表
ひび割れた音声が聞こえる。
“……世界の秘密を解き明かさんとする探検隊ならびに冒険者の皆様へ……”
カビ臭い石壁に囲われた部屋で、俺は長い眠りから目を覚ました。
“……この度、とあるダンジョン研究家の調査によって……未踏破の新たなダンジョンが発見されました……”
ぼんやりとした意識のなか、鉱石ラジオから流れるニュースに聞き耳を立てながら、ゆっくりと身を起こす。
“……深淵に挑む気概あれば、最高の装備を整えて来られたし……”
ノイズの混じった音声が、狭い空間で反響している。
このラジオはかなり昔、手先の器用な友人が作ってくれたものだ。すごく単純な構造なのだが、電源もなしにこれでどうやって遠くの音声を拾ってくるのか、俺にはよくわからない。
ただ、そこから聞こえてくる声は、いつだって俺を長い眠りから目覚めさせてくれる。俺と世界とを繋いでくれる、大切な架け橋なのだ。
“……なお、ダンジョンの名前は深淵海域……”
このタイミングで俺が目覚めたのも偶然ではないだろう。
先程からラジオが流してくる情報は、俺の探検家魂を刺激し続けている。もうすっかり目は覚めた。新しい冒険の予感がする。
“……魔の海域に生まれた水中洞窟が口を開けて待っています……”
記憶を整理して、自我の統一を図る。
俺は探検家。探検家『リーチャ』だ。
“……それでは、皆様の冒険の健闘を祈っております……”
身支度を整えた俺は鏡の前に立ち、自らの手足の動きを確認すると裸足のまま歩き出す。
部屋の唯一の出入り口である石の扉を押し開けて、久しぶりに太陽の下へと己の体をさらした。
さあ、仲間を集めて冒険を始めよう。
未知への挑戦。新たな冒険の始まり。心踊らせる探検へ。





