月明かりに照らされ
「ビオラの森はやっぱり涼しいわね。」
腕をグーっと伸ばしながら、エリーゼは独り言を呟く。
エリーゼにとって満月に照らされた森は、不気味という印象よりも、神秘的で美しい印象の方が強かった。
エリーゼはビ小さい頃ー度だけ、ワーズティア家に行く時にほんの少しだけビオラの森を通ったことがあったが、しっかりと踏み入れるのは初めてであった。
「あれ?何かしら。」
森の奥にキラキラと何かが輝いている。
エリーゼは興味本位で、輝いている方に向かうと輝いているものの正体がわかった。
「湖だったのね!!」
満月に照らされた湖は、満月の光を反射しキラキラと輝いていた。
静かで透き通った水面には、満月だけではなく星をも鏡のように映していた。
『満月の夜のビオラの湖は一際美しいだろう?エリーゼ。』
不意にエリーゼの真後ろで男の声がした。
「誰?!」サッと後ろを振り返り、反射的に距離をとりつつ身構えるエリーゼ。
先程まで気配など全くなかったが、そこには通った白い肌に透き通った肌質の長身の男が立っていた。
満月に照らされた男は、神秘的な森と合わせると美しい絵画のようにみえるが、ワインのような色をした深紅の目は、エリーゼには少し恐ろしさを感じさせた。
『そう構えることはない。誕生日の可愛いエリーゼとお話をしようと思ってね。』
そう話す男は身構えるエリーゼにゆっくりと近づく。
「私の質問に答えていただけるかしら?貴方は誰?そして、どうして私の名前を知っているの?」
得体の知れない男が背後に既にいたことに驚きを隠せなかったエリーゼであったが、今のところ危害を加える様子の男にもう一度問いかける。
「エリーゼはせっかちだね。私の名前はイメア。君はエリーゼ=ヴィラモール。ヴィラモール家の一人娘。そして、能力もかなり強い事も知っているよ。」
イメアと名乗る男は軽く微笑んだが、美しさの中にどこか恐怖を感じた。能力向上を怠っていないはずの、エリーゼの背後にいたのだ。
(気配に全く気がつけなかった…。この男なんなの?)




