バーベナに行く理由
「お父様!今日はバーベナに行ってくるわ!」
エリーゼは書斎のメネフィスに声をかける。
「おお、そうか気をつけて行ってくるんだぞ。クロムよ、またエリーゼに付いていってあげなさい。」
「御意。」
返事をしたクロムは直ぐに馬車を用意してくれた。
「クロム、今日もよろしくね。あと、ホースレスさん、またよろしくね。」
エリーゼはクロムと、馬車を引くモンスターのホースレスにも声をかける。
「ヴヒィィン!!」
エリーゼの言葉の意味を理解したのかは定かではないが、ホースレスも元気いっぱいだ。
「さぁ、時は金なり!さっそく出発進行ですわ!」
昨日はカルミアの街、そして、本日はバーベナの街に向かうエリーゼ。
間髪入れずに、バーベナの街に行く理由は2つあった。
1つ目は、カルミア王国の1年という時間の進み方が、早すぎるということである。
ディジーファンタジアでは、10日で1年が経過したという換算だ。
現在5歳のエリーゼにとって、本来の恋愛ゲームがスタートする15歳になるまで、あと100日。
日にちはたっぷりあると感じる人が、いるかもしれないが、それは違う。
ゲームにおけるディジーファンタジアでは、1度物語をクリアし、再度コンティニューすると、極限まで極めた能力値のみ(MAXにした能力値のみ)コンティニュー先において、恩恵を少し受けることができる。
例えば、料理を限界まで極めた状態で終了し、もう一度ゲームを最初からでスタートするとする。
すると、限界まで極めていた料理の能力値が、次回のコンティニューにおいて、少しだけ料理上がりやすくなるのだ。
ゲームではその恩恵を駆使して、『胡蝶の全員下僕END』を編み出した前世のエリーゼであったが、今回はそうはいかないからだ。
そして今回も『胡蝶の全員下僕END』つまり、選んだ攻略キャラの好感度MAX及び、その他のキャラの信頼度MAXを目指すエリーゼにとっては、1日を有効活用しなければならないのだ。
2つ目の理由は、まだ、行ったことのないバーベナに足を踏み入れることで、ヴィラモール家から馬車に乗らずに、すぐに魔力を使って街へ飛んで行くことが可能になるからだ。
家から街へ飛べる画期的な魔法「メルラン」の発動条件は3つ。
①魔力が50以上あること。
②「メルラン」を発動するための詠唱の言葉を知っていること。
③一度行ったことがある場所であること。
エリーゼにとって①は余裕でクリアしている。何ならミルクを飲んでいた頃にもクリアしていたのだ。
②の詠唱の言葉に関しては、バーベナの街のはずれにある、魔法使いの老人の理不尽なクエストをクリアして教えてもらう必要がある。
しかし、ディジーファンタジアを何度もプレイして、詠唱の言葉を覚えているエリーゼにとっては、そんなもの聞く必要はなかった。
それに、魔法使いの老人自身も救済措置の1つらしく、モブ扱いで信頼度を上げることができない。そのため、嬉しいことに理不尽なクエストを投げかける老人の元へわざわざ赴く必要はないのだ。
(二度と会いたくないわ!あのクソ老人には!)
教えてもらえれば、かなり便利となる魔法であるが、その分クソ老人と悪態をつきたくなるほど、クエストの難易度は酷いものだった。
エリーゼがクリアしていないのが③の条件がある。
だからこそ、まだ行ったことのない街にさっさと踏み入れ、移動時間を短縮できるようにしたいのだ。
(メルランは救済措置と言われてはいたけど、あの老人のクエストは本当に初見殺しかつ、鬼畜クエストだったわ…。
というか、最初は救済措置じゃなくてただの嫌がらせなのでは?と思ってしまうくらいよ。)




