プロローグ04 全てが明らかになる誕生日
本日2話目、最終話です。
今、この誕生日パーティーの席で、ゲームのキャラクターだった8人の兄たちが自分に向かって自己紹介をしていく。
僕が転生したのは、第一王子のアーバンから第八王子のクラークまでが王位を争う、あのゲームの世界だったのだ。
一番年の近いクラーク第八王子とでさえ、6才も年が離れていることが明らかになる。
それと同時に、今はゲーム開始の5年前、しかも、自分はゲームの登場キャラクターにいない第九王子だということが、この誕生日パーティーで白日の下にさらされたのだ。
取りあえず、状況を整理しようと僕は考える。
ここは、あのゲームの世界、もしくはあのゲームに酷似した世界だろう。
その証拠に、ゲームの登場人物をそのまま幼くしたかのような8人の王子たちがいる。
ただし、確定ではない。よく似てはいるが完全に一致しているわけでもないのだ。
その最たるもの、最大のイレギュラーが自分自身の存在なのだから、疑義を挟む余地は大きい。
ゲーム世界では9人目の王子も、髪の毛が全く無い人物も、2属性以上の複数属性を扱えるキャラクターも存在していなかった。
自分の存在が、このゲームに似た世界にどう影響するのか……
そして何より、自分はこの世界で生きていけるのか……
僕にとって、考えれば考えるほどわからなくなる問題だった。
誕生日の翌日からの僕は、この世界でイレギュラーの自分が生き抜くためにはどうすればよいのかを考えるようになっていた。
もしかしたら、髪がないことで,、5年後のゲーム開始までにゲームの舞台となるこの世界から排除されるのではないかと思い至ったためだ。
今からできることは、クラーク王子が12才、自分自身が6才になるまでに、どれだけ生存確率を上げることが出来るかだ。
と言っても、1歳児の自分にはできることは少ない。
体を鍛えようにも幼すぎる。
剣術などの技術も1歳児に教えてくれることはないだろう。
となると、残るは魔法技術だけだ。
幸いここまで、見よう見まねで水魔法と火魔法は使えたのだ。
これをもっと強力なものにしたり、レパートリーを増やしたりすることで、自らの生き抜く力を底上げする。
その目標のために、マジカルビジョンを発動し、他者の使う魔法を見続けた結果、僕はほとんど全ての属性魔法を使うことができるようになっていた。
2才になる頃には、魔法の仕組みを魔素の観点から理解するという、この世界の誰もがなし得なかった知識を完全に掌握した。
これが如何に規格外の能力であるかを僕が知るのはずっと後のことである。
しかしこの時点で、普通の人は白色の魔素を呼吸や食事で取り込み、体内で自分に適合する色の魔素へ変換し、魔法を発動していることを理解する。
体に取り込んだ魔素が減ると魔法は発動しなくなるようだ。
対して僕は、体に魔素は取り込めるのだが、意識しないとその色を変えることができない。
反面意識しさえすれば何色にでも変えることができる。
そのため、変えた色に対応する属性の魔法なら、全て使うことができた。
僕が魔法を使うと眠気に襲われたのは、どうやら体内の魔素を消費したためのようだと言うことも理解した。
更に、3歳のときには、空気中に見えているだけの魔素を、直接色つき魔素に変えてしまうこともできることが判明した。
普通の人が体内の魔素しか変換できないのに比べ、この能力は規格外だった。
まず、体に接触していない遠距離でも、魔素さえ視認できる距離なら魔法を発動できる。
さらに、体内の魔素を消費しないので、眠気に襲われる心配もない。
こと、魔法に関してはかなりのアドバンテージをもらったと言える。
つぶさに観察し続けた結果、体外の魔素の変色ができるのは、自分を除くとゲーム主人公のクラーク兄さんだけのようだった。
と言っても、クラーク兄さんは魔法を使えない。これはゲームでも、現実となったこの世界でも同じことだ。
では、クラーク兄さんはどのような状況で体外の魔素を変色させているのか……
それに気がついたのは、兄さんのすぐ横で魔法を使おうとしているメイドが、魔法の発動に失敗しているのに気がついたときだった。
マジカルビジョンを発動させて観察していると、兄さんの近くでは全ての魔素が白色の基底状態へともどされているのだ。
兄さんに意識して魔素を変色させている様子がないことから、これは無意識のパッシブスキルだと言うことがわかる。
つまり、ゲームで兄さんに魔法が効かなかったのは、兄さんに向かってくる魔法は全て白色の魔素へと還元されるため、魔法が消失しているせいだとわかったのだ。
ちなみに僕も、クラーク兄さんのすぐ近くの魔素をマジカルビジョンで確認しながら変色させようとしたのだが、兄さんから30センチ以内の距離だと変色できないことがわかった。
さすがはゲームの主人公である。
3才からは体術や剣術なども練習した。
王子という立場上、教えてくれる人を探すのには苦労しなかったが、何もかも魔法に頼り切っているこの世界では、物理攻撃が非常に軽視されており、教われる内容は前世の体育で習う剣道や柔道以下のお粗末なものだった。
仕方ないので、自分で試行錯誤しながら剣の練習もしておく。
そんな生活を繰り返していたある日、僕と兄さんは父であるドナルド王から謁見の間へ来るようにと呼び出しを受ける。
クラーク兄さんが12才、僕が6才……
ゲーム開始のときだった。
【そして第一話へと続く……】
以上をもってプロローグ編は完結となります。
プロローグ編の完結をもって、本作自体を完結とします。
本編の後日譚は今のところ予定していません。
規格外の力をケントが揮う話は、書いてみたい気もするのですが、リアルの仕事の関係で執筆時間が確保できそうにありません。
需要があれば折りを見て書くかも知れません。
ここまで読んでいただいた皆さん。ありがとうございました。
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