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プロローグ02  どうやら魔素が鍵らしい

本日3話目です。

評価・ブックマークありがとうございます。



 夜中のベビーベッドの上で僕は、メイドに倣って『ファイヤ』と唱えてみる。

 しかし、何も起こらない。

 こういうときは何か前提となる条件が満たされていないものだ。

 僕は前世で読んだラノベや、やり込んでいたゲームの中にヒントがないか考える。

『こういうときは魔法が使える人の様子をよく見て、違いがあるか確認だな……

 魔力の元となる何かがあるのかもな……』

 そう考えた僕は、次にメイドが火をつけに来るのを待ち、メイドの周囲の気配にまで集中して、部屋のろうそくに点火するまでの一部始終を凝視する。


 すると、メイドの体の中を何か暖かな赤い光の粒が移動して、メイドの指先に集まるのが見えたような気がした。メイドの周りには空気中から白っぽい粒子が螺旋模様を描きながら集まってくる。

 それは僕の魔法を使いたいという思いが見せた幻か、それとも転生によって得た能力かはわからないが、手がかりをつかめたことに素直に喜ぶ僕であった。

 僕は自分が見えたと思っている赤い粒子や白い粒子に注目しながら観察を続ける。


「ファイヤ」

 メイドが呪文を唱えた瞬間、彼女の指先に集まっていた暖かな光は、指の周りの空間にらせん状の文様となって渦巻いていた白い発光粒子と混じり合い、小さな炎としてメイドの指先で火炎となった。






 やはり、僕の予想した通り、魔法を使う前に何かその魔法の元となる粒子のようなものが集まったり動いたりしているようだ。


『まずはあの粒子の認識と操作だな』


 仮に魔素と名付けた発光粒子を僕は意識するようにし、まずは自分の体内に向かって精神を集中する。


 すると、自分の体内に何か不思議な力を持った小さな存在が循環しているような感覚に気がつく。

『行けるかも知れない』

 そう感じた僕は、自身の中にあるエネルギー体を右手の人差し指に集めるように意識する。

 白い発光粒子が体内から指先へと流れてくる。

『このままではダメだ』

 メイドの体内から集まった粒子が赤かったことを思い出した僕は、炎をイメージしながら白い粒子に集中する。

『赤くなれ、赤くなれ---』


 心中で一心不乱に粒子の色が変わるように唱える僕である。


 10秒ほども唱え続けると、体内を巡りながら指先へと集まりつつある魔素の粒子が徐々に赤みを帯びてくる。

『今だ!』

 僕は螺旋に渦巻く赤い粒子が右手の人差し指に集中した瞬間にキーワードを唱える。

「ふぁいあ」

 舌足らずではあるが、その呪文に反応するかのように、マッチの火を少し小さくしたくらいの炎が人差し指の爪先に灯り、一秒も経たずに消えた。


『成功だ!』

 心の中で歓声を上げた僕は、今の感覚を忘れないうちに完璧を目指そうと決意する。


 再び指先に赤い魔素を集め、呪文を唱える。

「ふぁいあ」

 今度も爪先に小さな炎が灯ったが、大きさ、持続時間とも先ほどの1回目に及ばない。


『なぜだ?

 なぜ先ほどより劣化した?』

 疑問を感じつつも、繰り返し検証を試みる。


「ふぁいあ」

 三度目の呪文では更に炎が小さくなり、持続時間は一瞬であった。


 そこで僕は急激な眠気に襲われる。

 あっという間に意識を手放した僕が、次に気がつくと辺りは明るくなっていた。


『今の急激な眠気はいったい何だったのか』と不思議に思う僕だが、それはそれ、これはこれ……

 やはり魔法が使えた興奮は今も持続しており、すぐに次の魔法の検証に入ろうとしたが、残念ながらそこでメイドと母が部屋に入ってきたため、また人がいなくなるのを待たねばならなくなった。


 朝の授乳が終わると、今日からはフルーツをすり下ろした離乳食を始めると言うようなことを母が言い聞かせてきた。

「あうぅー」

 流石に7ヶ月の乳児がまともにしゃべるわけにはいかないので、わかっているのかわかっていないのか判断できなさそうな返事をしておく。


「あら、ケントちゃんはわかったのかしら?

 なんだか嬉しそうに返事をしたわね」

 母には僕が喜んでいるのが伝わったようだ。


 実際、高校生としての記憶があるケントにとって、毎日母乳というのはかなり抵抗があった。

『フルーツのすり下ろしなら、リンゴがいい』と思う僕だが、流石にこの世界にリンゴがあるかどうかはわからない。

 そんなことを考えておとなしくしていると、母とメイドは僕が眠くなったと勘違いして、静かに部屋から出て行った。


『魔法を使うチャンスだ』

 そう考えた僕は、早速次の検証に入る。

 それはずばり、母が使っていた水系統の魔法だ。


『火が赤なら、水は青かな?』

 何となくそう感じた僕は、自身の体を巡る魔素に水をイメージした青色になるように念じながら、指先へと誘導する。

「レイン」

 十分に魔素が集まったと思うタイミングで呪文を唱えると、爪の先に一滴の水が現れる。

 炎とは違い、消えることはないが、それにしても量がすくない。

「これでは母が使っていたような水やり用にはまるで足りないな……」


 自分の引き起こした現象への不満を抱くが、ここは練習しかないと再び魔法を使用する。



「レイン」

 そして4回目の水滴を出現させたところで、またもや眠気に襲われて眠ってしまう僕であった。







あと、1話か2話で完結です。

来週日曜日までに更新できればしたいと思います。

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