おぢさんは人生を哲学する そのヨン『ド忘れ』
おぢさんには日課の無料ネットゲが有る。
今夜も今夜とて、何時ものようにログインしようとした――。
のだが……。
「あ゛」
キーボードを前にして、突然おぢさんの手が止まっていた。
思い出せない。
半分パニック。
そ、そんにゃっっっ。
「うを」
そぅ、おぢさんはパスワードを打てずに真っ白に為って居た。
居たのだった。
毎日、毎晩、必ずプレイしているネットゲ。
インするためのパスワード。
『ソレ』が出てこにゃいっっっ。
おぢさんは焦らなかった。
おぢさんはタバコを一本、唇に挟み火を着ける。
フーっと紫煙をひとふかし。
そして、つぶやく~。
「ふ、こんな事もあろうかと」
ゴソゴソと一冊のメモ帳を取り出す、おぢさん。
色々と重要事項をメモってるページをめくり~。
目当てのパスワードを探し出す。
そして無事にログイン出来た、おぢさんだった。
何時ものように、何時もの如く、水割りを一杯。
「認めたくないものだな、自分のオッサンゆえのド忘れを」
おぢさんの、クールに言い放つ言葉に哀愁があった。
今回は、電子の海、デジタル情報なぞを全く信用していない、アナログな・おぢさんの勝利なのだった。
勝利?
おぢさんは確信して居る事が、ひとつ有る。
『人が作り、人が使う、人の道具』
絶対に、間違いが起る。
絶対に、故障が起きる。
絶対に、完璧に信用してはならぬ。
おぢさんの信念で有る。
不完全な存在が生み出すモノに、完全なぞ有り得ない。
だが人は、己の限界を超える道具の凄さに、目がくらむ。
作ったのも人ならば、メンテするのも人で、使うのも人、不完全な人なのだ。
そしてだ――。
世の中には『運』っーモノが確かに在る。
この運が恐ろしいのだ。
なので、色々とぅう~~~ぅ。
…………。
おぢさんは自分自身をも、まったく信用していないので有った。
おぢさんは日課のネットゲをプレイする。
「うふふふ、うへへへ、うひょひょ、ふへぇぇぇ」
3Dグラフィックの女性キャラクターに、愛のこもった声を漏らしプレイするのだった。
「今夜も幸福だ♡、ありがとう☆、また明日、おやすみなさい」
おぢさんは満足の微笑みにログアウト。
しかし、実は、登場キャラクターの名前を、突発的に思い出せなく為る――。
おぢさんだった。
おぢさんは今夜も一杯やって眠るのだった。
エロ水着姿の自プレイ・キャラを、夢の中で抱き締めながら。
そぅ、男を暖めてくれるのは――。
幼い頃は、母親が暖めてくれる。
若い頃は、女が暖めてくれる。
ツライ人生は、酒が暖めてくれる。
老齢は、布団が暖めてくれる。
そして~。
今の、おぢさんの魂を暖めてくれるのは、巨乳・桃尻の3Dキャラなので有った。
人生を哲学する。
幸福は人それぞれ♪




