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蒼星の旅団  作者: 暁月夜 詩音
第一章 双子との出会い
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出逢いと人形

 ミカとヤヅキは町を出て森の近くの道を歩き始めた。

 ここら辺は余り魔物も出ないためゆっくり歩いていけるのだ。


 そして、かなり道を進んだ時にふとヤヅキがミカに話し掛けた。

「ミカ、前に誰かいる」

「そんな、ここは道だぞ。人がいて当たり前だろ」

 確かに人がいるだけであったならこのような反応だろう。

「違う。かなり先に人が倒れてる」

 ヤヅキもそこまで阿保では無いので人が通っただけなら話しかけたりしない。町から一歩外に出たら死と隣り合わせなのだ。だから話し掛けたりはお互いにしないのだ。

「見えた。あれだとかなり危ないな。ヤヅキ、走るよ」

 そう言うや走り出すミカ。いくら道の近くだからといってこんな所で倒れるのは狂気の沙汰では無い。

「おい、大丈夫か」

 倒れていたのは狼人族の少女だった。かなり、衣服も汚れていたり破けていた。

「ヤヅキ、枯れ木を持って来て」

 ヤヅキに枯れ木を持ってくるように指示をだし、ミカは異空間の腕輪(アイテムボックス)からテントを取り出す。

 青い光と共にテントが現れその中に少女を抱き抱えながら一緒に入る。

 テントに入ってから予備の毛布を少女に掛ける。

 そして、少ししてからヤヅキが帰って来た。

「採って来たよー」

 ヤヅキは枯れ木の束をテントの外に置いてテントの中に入ってくる。

「ありがとう。次は、この子を見ていて」

「分かったよ」

 そう言うとヤヅキは少女の隣に静かに飛び地べたに座った。

 それを横目で見ながらテントの外に出る。


 外に出てから枯れ木に向かって無詠唱で火魔小球(ファイヤボール)の威力をギリギリまで絞り、枯れ木に火をつける。

 その後にまたテントの中に入る。

「起きそうかい?」

 座っていたヤヅキに聞いてみる。少女の泥で汚れていた顔は綺麗になっていた。

「んー。どうだろ。一応、身体浄化(クリーンウォッシュ)をかけておいたけど」

 身体浄化(クリーンウォッシュ)とは生活魔法に部類される魔法であり、対象の汚れを取り除く魔法だ。これは、ほぼ全ての人が必用とする魔法である。

「そうか。ありがとな」

 ヤヅキの頭を撫でながら言う。

「この子が起きるまではここで待っとかないとな」

「そーだね。ねぇ、この子、純血種の狼人族だよね?」

 純血種とはほぼ他の血を受け継いでいないことを意味している。純血種かどうかは、耳と尻尾がある者は大体そうであり他の種とかけ離れた力を持つことが多い。

「多分そうだろうな」

 そんなことをしながら数時間経った。


 少女がゆっくりと目を開けた。

「目を覚ましたかい?」

 一先ず起きているとは思っているが尋ねる。

「ここは?」

「私達のテントだ。私はミカ。そして、あっちに入るのがヤヅキだ。お前が目の前で倒れたからこうやって目が覚めるのを待っていた訳だ」

 そう言いながら異空間の腕輪からパンとスープを出す。

「サイカです。助けてもらいありがとうございます」

 その後に、柔らかいパンと暖かいスープを貰ってそれで食事をした。

「助けて貰っていて申し訳無いのですが。力を貸して貰えますか?」

 少し経ってからのことだった。いきなりサイカがそんなことを言い出した。

「事と場合によるが聞くだけ聞こう」

 大体のこと──唯一出来ないのは料理だけだ──は出来るが時間がかかる物は余りしたくない。なので期待させない様にそう言っている。

「実は兄のトーカと家族達が、王都の兵士に連れて行かれました。私を王都まで連れていって下さい。後は何とかします」

 自分の兄が連れ去られたという。そのことを聞きミカは決めた。助けると。正義などではない。しかし、王都の現王、エドマリス王には最近黒い噂が絶えない。最も、ミカの嫌いなことは、チビと言われることと、人の人生を狂わせることが何よりも嫌いなだけである。

「分かった。同胞を助けに行こうか」

「しかし、ミカさんは人竜族では...」

 確かにミカの見た目は人竜族である。しかし、狼人族血も混じっている。その為、狼人族にしかない金の瞳に量の多い髪がある。

「確かに竜人族の見た目だが、狼人族も竜人族の混血種だ」

「そうですか。では、お願いします」

 確かにそこには意思を固めた少女の姿があった。

「では、依頼の内容を確認する。王都にて同胞を助ける。これでいいな?」

「はい。お願いします」

 コレが大きなミライの分岐点であっことをこのとき誰もしらなかった。

 ───────────────────────────────

 とある実験施設にて

「こいつはいい。肉体も能力も」

 一人の白衣を着た男、ユミキが筒状のカプセルの中の薄い緑色の液体に浸けられている狼人族の少年を見ながら呟く。その首には首輪がついていた。

「だいぶ回復しました。時期に目を覚ますでしょう。ユミキ様」

 その隣にいた秘書が筒の下のモニタを見ながら言う。

「わかっていますよ。能力封じと隷属の紋をさせているので大丈夫ですよ」

 嗤いながら話す。

 隷属の紋や能力封じの紋は禁忌の魔道具である。その生命体の魂を縛ると言うための刺青の様なものであり、その紋を施した者にが死ぬか解除するかしないと消えない、もはや呪いのような代物だった。


「目を覚ましましたね」

 筒状のカプセルの中で目を覚ました少年、トーカを見ながら言う。

 カプセルから液体を抜いていく。液体に濡れた少年がそこには倒れていた。

「近づくなっ」

 倒れていたが、四つん這いにはなれたのかそのまま叫ぶトーカ。

「おや、隷属の方は四割程しか効果が無いようですね。まぁ、もう少し時間が経てば変わるでしょう」

 そんなトーカの反応を見て分析し始める。

「『眠れ』」

 隷属の紋による権限により意識を失うトーカ。

「実験室に連れていきなさい。後で私も向かいます」

 部下達に命じてカプセルのあった部屋から出ていく。


「目覚めはどうですか」

 そう聞いても鎖で繋がれたトーカは何も答えない。

「もう一度聞きます。目覚めはどうですか?」

 それでも答えない。

「はぁ、お仕置きです」

「ぐぅぅぅぅっ」

 鈍い痛みを圧し殺した声が実験室に響く。もちろんトーカからであるが。

 このお仕置き、実は隷属の紋の権限の一つである。対象に苦痛を与えるというおぞましい権限が。この痛みにトーカは耐える。

「痛いでしょう。苦痛でしょう?目覚めはどうですか」

「わ…るく……な…い」

 必死に声を振り絞っていう。

「そうですか」

 そう言うと隷属の紋の苦痛が消える。

「余り、隷属の効果が出ていないので他の魔法で応用しましょう。我が魔力で目の前の者の記憶に介入し我に服従させよ。魔傀儡人形(マニュプレイト)

 魔傀儡人形(マニュプレイト)とは古代魔法の一つであり、今は禁術扱いの魔法である。しかし、ユミキは平然と使っていた。このことから、古代魔法の文献の解析をしたことがあるのだろう。

 紫色の触手のようなものがトーカの頭をすり抜ける。

 その後に残ったのは意思の光をなくし、人形に成り果てたトーカだった。

「御用ですか?御主人様(マイマスター)

 この瞬間、一人の人間が人形へと変わった。






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