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イカの塩辛チャーハン

不定期更新です。


 


 ぷしゅっと缶ビールを開ける。


 左のてのひらからはキンキンに冷えたアルミの触感が伝わってくる。


 本当はお上品にグラスに注いで飲むのが正しいんだけど


 疲れ切った身体は、心は、もう待てない――


 プルタブを起こしたら冷蔵庫の扉をバタンと閉めて


 一気に煽る!



 ごくっごくっごくっ


 三回、リズミカルに……


 炭酸が口の中ではじける。


 喉を通るクリーミーな泡。


「っふはっ!!」



 生ビール? 瓶ビール? 発泡酒? 第三のビール?


 あのね、『最初の一杯』はどれを選んでも『最高の一杯』


 サラリーマンもOLも、大学生も専業主婦も、今日一日頑張ったその事実が最初の一杯の最高の肴。


(あー、この為に生きております)


 ジーンと身体の中に感動が渦巻く。


(安物の六缶パックのビールが私に「おつかれさま」って言ってくれてるわ)


「ニャー」


 足元で同居の白猫が鳴く。


「はいはい、ちょっと待ってね」


 ぐびっともう一口飲んで彼用の缶詰を開ける。


 ビールとは違うけれどこのプルタブをカチッて開ける音は猫である彼にとっても堪らないのだろう。


 ピンクの餌皿に盛り付けてやると途端に掻っ込む。


「……なんかあったかな」


 薄桃色の鼻先を突っ込んで一心不乱に食べ始めた猫を見ていると、お腹がすいてきた。


 ガサガサっと食糧庫を探ると賞味期限が二日前のイカの塩辛を発掘する。



「……よし」


 方向性は決まった。



 冷凍庫から冷飯を取り出し、電子レンジで三分。


「その間に―、卵とネギ……」


 ネギは少し干からびていたけど問題ない。


 材料を出して、ビールをもう一口飲んで。


 髪を一つに結んで。


「さあってと」


 ニンニク一欠けらを薄切りに。


 ショウガも同様に。


 その流れでネギを切って――


 油を引いたフライパンにニンニクとショウガを入れてほんのちょっと待てば。


(はあ~、この香りだけで飲めるわ)


 立ち上る煙を肺一杯に吸い込んでビールをもう一口。


 パチパチ、ジュウジュウ。


 薬味が躍るフライパンにネギを入れて塩コショウ。


(ついでに中華の素もちょっと入れて……)


 ご飯を入れる前に味付けしちゃうのがコツ。


 レンジの中のご飯の用意ができたら白米投入!


(間髪入れずに卵! ……そしてここで)


 ――イカの塩辛様を投入!!



 後はもう……


 炒め、炒め、飲む、炒める!!


 あ、一本空になった。



 そんなところで



 イカの塩辛チャーハンの完成!!














 トットットットット


 二缶目はお行儀よくグラスに注ぐ。


 泡の比率は黄金の三対七。


 チャーハンをお皿に盛って


「いただきまーす」


 レンゲを突っ込む。


 途端に香るニンニクと焼いたイカの匂い。


 そのまま口のなかへお迎えすると……


「んまーい、やっばい私天才」


 自画自賛しながらビールを飲む。


 一気に半分くらいまでなくなってしまったけど仕方ない。


 卵のふわふわと塩辛の濃厚な旨みがご飯にコーティングされている。


(イカもぷりぷりしておいしい……賞味期限切れと余りものの食材でこんな素敵なものを作れるなんて……これはさしずめ)


 シンデレラをお姫様にした魔法使いのよう!!


(……シンデレラじゃないところが私らしいわ)


 コポコポコポ。


 金色の麦酒を注ぐと幸せの音がする。


 魔法使いでなくても幸福は作れる。


 小さな小さな幸福だけど――


 苦味のある冷えたビールで口の中のチャーハンをリセット。


 猫がチャーハンの匂いをクンクン嗅ぐ。


 あげないよ?


 「はぁー、美味い」



 今日も、飲んでます









飲み友達が欲しい今日この頃。

付き合ってくれるのは猫しかいません。

カルーアミルクじゃなくて、カシスオレンジじゃなくて、生ビール頼もうよ!!


イカの塩辛って子供のころは嫌いだったんですが最近ようやくおいしさがわかってきました。

アレンジレシピもあって面白い食材ですよね。

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