1-014 二人の日常
昭和54年6月
いつもの二人の日常を描きます。
ジリリリリ…
早朝5時少し前。。。
けたたましい目覚ましと同時に広海と翼は目を覚ます。
漁師町に生まれた二人の朝は早い。
これは…小学生の頃からもう五年も続く習慣。
ちなみに翼は昨日退院したばかりにもかかわらず、
今日からこの早朝トレーニングに復帰する。
…信じられないくらいに頑丈なヤツだ。
ノソノソと布団を出ると着替と洗顔を済ませる。
家を出る直前、広海は炊飯器の…翼は洗濯機のスイッチを入れる。
高校に入り、二人暮らしを始めてからの習慣だ。
シューズを履いた二人は3キロほど離れた河川敷に向かう。
15分ほど時間かけて、ゆったりと談笑しながら走り抜ける。
夏至も近いこの季節は明るいので走りやすい。
まぁこの辺は街灯が明るいので、冬でも問題はなさそうだ。
河川敷で行うのはストレッチ・筋トレ・ダッシュ・ジャンプなど。
ゆっくりと体を目覚めさせる。
以前はボールも使っていたが、野良犬に喰われてからやめた。
仕上げは家まで3キロを競争。帰りは9分台で走り切る。
二人の走力は互角だが、今日ばかりは広海の圧勝だった。
とはいえ翼もラスト直前まではちゃんとついてきた。
入院中…どれほど鍛えていたのだろう??
…そして広海が先にシャワーで汗を落とす。
この競争に勝った方が先というのが二人のルール。
負けた翼はその間に洗濯物を干す。
洗濯と掃除は翼の担当だ。
シャワーを代わると、今度は広海が朝食作りを始める。
作ると言っても卵焼きかソーセージのような簡単なもの。
ただ味噌汁だけは必ず付けるのが広海のこだわり。
具は豆腐にワカメにネギにシジミに…とにかく豊富だ。
これに実家からの海苔、佃煮、シラスなどが添えられる。
…二人とも大食いだ。
広海はどんぶり2杯、翼は3杯を朝から平らげる。
朝から炊かれた一升飯は、ここで半分がなくなる計算だ。
しかしいくら食事に時間がかかろうと、遅刻は一度もない。
だって家の目の前が学校だから。
朝7時からは朝練に参加する。
男女混合の朝練では、相変わらず一緒に行動することになる。
まだ眠気の残る仲間を横目に、存分に体を動かせるのは二人だけだ。
8時半からは学生の本分、勉強だ。
進学率の低い離島出身の二人は、高校に進学できたことに感謝している。
もっとも翼は退院直後なので、期末試験の自信はないようだが…
そして昼食は学食で。
栄養のほとんどを学校で補うようにと考えている。
朝とは打って変わり、野菜と肉を中心にできるだけ多くの品数を選ぶ。
それゆえ経費節減のため、こっそりおにぎりを持参している。
…ちなみに今のところ、翼は男子生徒の扱いだ。
クラスの中での振る舞いも友人関係もこれまでと何も変わっていない。
休み時間は男たちと野太い声でガハハと談笑する。
選択授業も体育も男子側。もちろん更衣室も。
そんな翼に幸いだったのは、広島西北高校にプールがないこと。
さすがにもう…海パン一丁にはなれない…。
しかし…これが放課後になると一変する。
詰襟の制服を着た大男が、平然と女子バレー部の部室に入っていく。
着替を終えると、女たちと高い声でキャッキャと談笑する。
どうやらこの時間だけは、翼は女として過ごすことに決めたらしい。
人当たりのいい性格のせいか、世話係の村主のおかげか…
女の世界の人間関係もなんとかこなしているようだ。
練習を終えた午後7時。文武両道の西北バレー部には自習時間がある。
ここで部員たちは宿題を済ませる。
そして午後8時。ようやく学校から解放される。
だが広海はよく寄道する。お目当ては閉店間際の値引き品。
今日はおばちゃんたちと壮絶な戦いの末…半額の刺身を手に入れた。
その間、先に帰った翼は洗濯物を取り入れ風呂に入る。
そして帰ってきた広海が食事を準備する。
そして午後9時、ようやく夕食となる。
ここで朝に炊いた一升飯がきれいになくなるのだから驚きだ。
それを終えてやっと広海は風呂に入る。
午後10時、翼は洗濯物の整理と掃除を行ってから就寝。
広海は洗い物をし、受験勉強をしてから11時頃に就寝。
そして翌朝5時前…。
けたたましい目覚ましと同時に、広海と翼は目を覚ます。
…これが2人の日常である。
翼は大きく変わったが、今のところこの日常が変わる予定はない。




