ありがとう
この作品は東北大震災と関わる点があります。抵抗のある方はご注意ください。
人はときどき、絶望に救われることがある。
人はよく、自分だけが特別困難なことに向かい合っていると思うことがある。
光の届かない、暗い暗い深海に、ただ一人で縮こまっている。
見えないから、気づいてくれないからたった一人で悩み続けるんだと。
自分が辛いことに向き合っていると思うあまり、それを説得するために自らを追い込んでしまう。
暗い所にいる生き物だから、光もうとましくなることだってある。
そんなときに救ってくれるのは、はるか上にある光じゃない。
自分が海の底にいるのではなく、あくまで暗めの深海にいると気づくこと。
つまり、もっと深く、暗く、辛いこともあるって気づくこと。
東北大震災をレンズを通して見た人は、誰もがこう感じたと思う。
「酷い、ここで生きられるの? 絶対に辛い生活だろう」
自分の悩みなんかよりずっと大きいものだろうって、そう感じたと思う。
そう考えると、深海は深海でも浅い方に思えてくる。
海の底がもっと下にいって、自分は海水浴場くらいの深さにしかいないんじゃないかって。
自分はまだ動けるって。そうやって私たちは力をもらった。それで援助に乗り出そうって気持ちにもなれたんだよ。
だから私たちはまず、東北の人たちに言わなければいけない。
「ありがとう」って。
御一読ありがとうございました。
この作品のテーマは同シリーズの「悪魔が天使になった」と似ているものです。ただ、あれではわかりにくかったなぁと、書き終わってから思っていました。そこで内容をわかりやすくしようと書き換えたのがこれです。
上手く伝わっているといいのですが。