お前に。
女とでも男とでも取れるように『直〈なお〉』と俺にしました。気に入って頂けたら嬉しいです。
なぁ直〈なお〉、覚えてるか?
中学の入学式。
席が後ろだった俺に、声かけてきたお前。
「遥〈はるか〉って、女みたいな名前」
あん時は、はぁっ!?って思って、その後仲良くなるなんて有り得ないって思って。
3年間顔会わせては言い合いばっかして、周りからは冷やかされてばかりだったよな。
おんなじ勉強やってたせいか、成績もほぼおんなじで、おんなじ高校入っちまった。
しかも、おんなじクラス。
笑えるよな。
中学では帰宅部だった俺らも、高校では科学部なんかに入っちゃって。
ちょっと頭良く見えるかなーなんて思っちゃったんだよね。
馬鹿だなー。
その頃からお前、誰かと付き合いはじめちゃったりして。
「髪の毛さらさらだしー、顔もめっちゃ整っててー、」
めっちゃ浮かれてたよな、お前。
付き合ってた奴、お前が言うほど美形じゃなかったぞ。
大学は別だった。
お前は
「中学校の教師になる」
って教育学部に進んだのに、俺は何にも決まらんまま理系っぽいのに進んで。
俺だけ置いてけぼりくらったような気がしてた。
お前は俺なんかより、2倍も3倍も、おっきくなってたんだなぁ。
結局俺は大学4年間なんとなく過ごしただけで、これといったもん見付かんなくて、サラリーマンになっちまった。
毎日営業、営業。
夏なんか汗だらだらだぜ?
25歳ん時、中学で3年4組だった奴らとの同窓会。
お前、ちゃっかり数学の教師になってた。
「最近の中学生って生意気」
そう言ってふてくされた声だすお前。
でも顔、にやついてたぞ。
26歳ん時。
珍しくお前から葉書が来た。
『結婚します』
会場の住所と、開始時間。
なーんか、泣けてきた。
何でだろうな。
今でも分かんねぇよ。
6月13日。
式当日。
ジューンブライドなんて、カッコつけた事しやがって。
俺がおめでとって言うと、
「へへ、ありがと」
ってはにかむお前。
また泣けてきたんで、頬掴んでやった。
紅い絨毯の上を歩く、お前とアイツ。
高校ん時付き合ってたアイツだってさ。
見掛けによらず、一途だったんだな。
言ってた通り、髪はさらさらだった。
外に出て、皆に花投げ掛けられて。
歩いて笑ってるお前、誰よりも輝いてた。
俺は誰よりも泣きそうだった。
変だよな、俺。
あれから何年たったかな。
俺も結婚したよ。
お前んとこは、子供が出来たそうじゃん。
髪がさらさらの、目もとがお前にそっくりな女の子。
この前嫁と遊びに行った時抱かせてもらって。
ミルクっぽい匂いと、人間の暖かい重さ。
なんか、泣きそうになっちまった。
「遥ちゃんっていうんでちゅよねー」
遥。
女みたいな名前じゃん。